現物出資の方法と注意点 | 賢い会社設立のための基礎知識を解説!

現物出資の方法と注意点 | 賢い会社設立のための基礎知識を解説!

記事更新日: 2019/01/03

執筆: 小石原誠

会社を設立する際には「資本金」を準備する必要があることに加えて、会社設立等の手続き自体にも数十万円単位の手数料なども支払わなければならないために、安くはないお金が必要になります。

もちろん会社設立後の運転資金もあらかじめ確保しておくべきですから、会社設立には想定していた以上のお金がかかることがザラにあります。

とはいえ、会社の創業にチャレンジしようとする方全員が十分なお金を確保できるかといえば、決してそうではないでしょう。できる限りお金のコストを節約して会社を設立したいという場合も多いはず。

そこで今回は、現金ではなく自動車などの「モノ」を資産とみなし会社の資本金として出資する「現物出資」の方法と注意点について解説していきます。

現物出資とは

「資本金」は数十万円から数百万円を用意するのが通常

会社を設立する際には「資本金」を準備しなければなりません。

資本金の金額はかつては株式会社の場合1,000万円以上とされていましたが、2002年の法改正により1円からでも会社設立が可能となりました。

とはいえ、資本金を1円とすることには様々なリスクやデメリットがあるために、現実的には初めての会社設立であっても数十万円から数百万円の資本金を出資することが通常となっており、現存する会社の資本金額も平均で300万円というデータもあります。

現物出資の仕組み

資本金は基本的には現金を口座に振り込む形で準備するのが通常ですが、実はお金ではなく、ある程度の価値がある資産も「現物資産」とみなして出資金とすることができます

これを「現物出資」といいます。

事業で使う予定のモノを現物出資することで、資本金として用意する現金を最小限に抑えることができます

現物資産の事例

現物資産とされるモノの事例としては、土地や建物といった不動産や、有価証券、自動車、設備・機器といったモノが挙げられます。

他にも最近では技術やノウハウといった目に見えないモノも現物資産と扱われ取引に利用されるような事例まで出てきています。

今回解説している会社設立時における現物出資、特に法人成りなどにより初めて会社を設立するといった場合には、その個人が所有しているモノや会社運営のための備品として購入予定の設備・機器などを現物資産として出資することが考えられます。

金額が大きなモノとしてはまず自動車が挙げられますが、他にも例えばパソコンやオフィスデスクなども現物資産として出資することができます。

現物出資のメリット・デメリットと注意点

現物出資のメリットは現金のコストを削減できること

現物出資を行う最大のメリットは、出資金として準備しなければならない現金のコストを削減できることでしょう。

仮に資本金を100万円としたい場合に、その内の50万円を現物出資で賄うことができれば、準備しなければならない現金は50万円で済みます。

資本金は企業融資の際の融資金額を決める基準となったりするなど会社運営において重要な意味を持つ指標です。

たとえば法人口座の審査に影響したり、創業融資を受けやすくなるなど、会社経営のあらゆる局面で大きな意味をもちます。

現金だけに頼らずに現物出資を検討することで、資本金の金額設定に幅を持たせることができ、これが後々の会社運営に様々なメリットをもたらしてくれるのです。

現金出資よりも設立費用や手間がかかる

現物出資には現金による出資と比較して会社設立の際に費用や手間がかかるというデメリットもあります。

例えば(あまりないとは思いますが)土地や建物を現物資産として現物出資する際には、土地や建物の所有名義を個人から法人へと移す必要があります。

土地・建物の名義は登記により管理されているので登記移転の手続きを行うことになり、この際にいくらかの登録免許税がかかりますし、さらに不動産取得税も支払う必要も生じます。さらに個人としては土地・建物を法人へと売却したと見なされるために所得税もかかってしまいます。

つまり、土地・建物を現物出資するだけで「登録免許税」「不動産取得税」「所得税」と3種類もの税金を支払う必要が生じてしまうのです。

自動車の場合には土地・建物のような登記関連の手続きは必要ないですが、会社名義となるために車庫証明を新たに取得しなければなりませんし、運輸局での名義変更の手続きも必要となります。

土地・建物の登録免許税等ほどではありませんが、数百円~数千円の手数料も払わなければなりません。

現物出資額が500万円を超える場合

現物出資を行う場合において注意したいのは、現物出資の金額が500万円を超える場合です。

現物出資の金額が500万円を超える場合、出資した現物資産の価格について裁判所が選任する検査役(弁護士・公認会計士など)に調査・証明してもらう必要が生じます。

実は現物出資については2006年4月までは「現物出資の総額が資本金の5分の1以上または500万円以上の場合」には検査役の調査・証明が必要とされていました。

これが中小規模での企業を妨げているとされ、新会社法の施行により2006年5月からは「500万円以上の場合」にのみ限定されるようになった、という経緯があります。

先述のとおり資本金の平均金額が300万円であることを考えると、現物出資額だけで500万円を超えてしまうことは、特に初めて起業するという場合にはあまりないことだといえますが、もし該当してしまうようなら調査・証明が必要だということを忘れないでください。

現物出資の方法

現物出資を行うための具体的なプロセス

ここからは、会社を設立する際に現物出資を行うための具体的なプロセスについて説明していきます。プロセスは以下の3つです。

1. 現物出資を行う資産の価格を調べる

2. 現物出資を行う旨を定款に規定する

3. 調査報告書と財産引継書を作成する

現物出資を行う資産の価格を調べる

現物出資を行うためには、出資する現物資産の価格について調査を行い価値を正しく算出する必要があります。

なぜならば、もし自動車を100万円の価値のある現物資産だとして現物出資を行ったとして、後から自動車の価値が実際には50万円しかないと判断された場合、不足する50万円分を現金か別の現物資産で補填しなければならなくなるためです(会社法第52条第1項より)。

もう一つ気を付けるべき点は、現物資産の価格はその資産を購入した際の価値(=定価)ではなく、会社設立時の価値(=時価)で算出されるということ。

ですから、現物出資を行う資産の価格は、インターネットのオークションサイトや中古販売サイトなどでリサーチして時価を調べてみると良いでしょう。

現物出資を行う旨を定款に規定する

出資を行う現物資産の時価が分かれば、次に現物出資を行う旨を定款に規定しましょう。以下の事項を規定してください。

  • 現物出資を行う出資者の氏名
  • 現物出資を行う資産の情報(名称、製造年月日、型番、製造番号等の資産を特定できる情報)
  • 現物出資を行う資産の価格(先述のとおり時価で記載)
  • 現物出資に対して割り当てる株式の数

調査報告書と財産引継書を作成する

定款での規定までが済めば、あとは「調査報告書」と「財産引継書」という書類を作成します。

調査報告書とは、現物出資がある場合に会社設立の登記手続きにおいて提出が必要となる書類です。現物出資として引き渡された現物資産の時価が適正であるかどうかを、会社の代表者が調査を行って作成します。

財産引継書とは、現物資産が実際に個人(出資者)から会社へと引き渡されたことを証明する書類です。こちらも調査報告書と同様に会社設立の登記手続きで必要となります。

まとめ

現物出資には、出資金として準備しなければならない現金のコストを削減できるというメリットがあります。

その一方で現物資産の移転に関する手続きが必要となり、税や手数料といったコストと手間がかかるというデメリットもあります。

また、現物出資を行う際には現物資産の時価を適正に算出し、定款に記載をし、そして調査報告書と財産引継書を作成するというプロセスも必要になります。

現物出資を行う際には、それにより得られるメリットと余計なコストや手間とを天秤にかけて、どちらが会社設立及びその後の会社運営にとって最適かを考慮しなければなりません。

お金を用意しなくて済む!と安易に考えることなく慎重に判断しましょう。

 

また、これまでの記事の内容からも現物出資を自分ひとりで進めるのは難しいと感じた方は多いかと思います。まずは気軽に税理士に相談してみるのがおすすめです。

税理士の探し方・選び方については以下の記事も参考にしてください。

画像出典元:Photo-AC

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