地方創生推進交付金(予算1,000億)とは?「地方創生」で東京一極集中対策!

地方創生推進交付金(予算1,000億)とは?「地方創生」で東京一極集中対策!

記事更新日: 2020/04/06

執筆: 宮林有紀

地方創生が上手くいかないと日本の未来はない!と、言われていますが、「大切な地元を守りたい!でも、何をすべきかが分からない…」そんな悩みを抱えていませんか?

地方問題を解決したい方におすすめなのが『地方創生推進交付金』!地方創生推進交付金を使えば、過疎化を食い止め、地方の活性化につなげられます。

今回は、地方創生推進交付金を活用するコツ(アイデア&プロセス)について詳しく解説し、地方活性化に悩む自治体を問題解決へと導きます。あなたの住む地域に元気を取り戻しましょう!

政府が掲げる「地方創生」とは?

地方創生とは?

地方創生とは、日本政府が考える「理想的な地方の姿」に近づけること。

政府が地方創生にここまで力を入れているのは、現状のままでは地方の過疎化に歯止めをかけられず、近い将来に危機的な状況になるからです。

政府は国の未来を考えた上で、地方の状態改善を試みています。

地方を理想的な状態に近づけるために作られた法律が、「まち・ひと・しごと創生法」。

地方創生推進交付金の概要にある「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を見れば、理想とする地方の姿が分かります。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、

(1)地方に仕事を作り安心して働けるようにする

(2)地方への新しい人の流れを作る

(3)若い世代の就労・出産・子育ての希望を叶える

(4)時代に合った地域を作り安心な暮らしを守ると共に地域と地域を連携する

この4つが良いサイクルで循環すれば、ベストな状態で地方自治が維持できると考えています。

地方創生の重要性

では、このまま地方創生が上手くいかず、政府が理想とする状態にならないとどうなるのでしょう?

地方の抱える問題点は3つ

1つ目は、経済・人口の東京一極集中による仕事不足・過疎化

2つ目は、若い世代の地元離れによる高齢者率の上昇

3つ目は、地域の特性に即した地域課題(単身高齢者、空き家問題、買い物難民など)

 

東京一極集中が今以上に進んだらどうなるか?

地方創生が失敗に終われば東京一極集中がさらに進み、地方人口は減少の一途をたどります。

その結果、過疎化による限界集落が増え、消滅する地域が続出。仕事もないため、地方に住んでいると生活困窮者になるリスクが高くなります。

若い世代が就労・結婚・子育てできないとどうなるか?

未来を支える若い世代が就労できない自治体では、仕事を求めて地元を離れる若者が増加

地元に残った若者は、安定した給与がもらえる仕事がないため結婚に踏み切れません。

結婚できても、安心して子育てのできない状況では「子供が欲しくても産めない…」という悩みを抱えるでしょう。

その結果、高齢者率の高い地域となり、街としての機能を維持できなくなります。

地域課題が解決できないとどうなるか?

地域課題が解決できないと、街に住む人々が安心して暮らしていけないのが問題です。

「ここでは生活していけない…」という悩みを抱えれば、別の場所に移りたくなるでしょう。人が住みにくい街になると、益々過疎化が進むという悪循環が起こります。

地方がこのような状態になると、都市部は潤っていたとしても、国全体として見ると日本は弱体化してしまいます。

地方創生は、そんな危機的状態を予防するための政策です。

地方創生を果たすために必要なこと

地方創生を果たすために必要なのが、地方が抱える3つの問題点を解消すること。

地方創生推進交付金の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本的考え方が、地方創生を果たすために必要なことと一致します。

まち・ひと・しごと創生総合戦略
【基本的考え方】

◆東京一極集中の是正

◆若い世代の就労・結婚・子育ての希望実現

◆地域の特性に即した地域課題の解決

これら3つの目標が達成できれば、自治体に活気が戻り、地方の状態が上向いてくるはずです!

そうすれば、政府が想定している「理想的な地方の姿」に近づけるでしょう。

そのために活用してほしいのが『地方創立推進交付金』です。次は、地方創生推進交付金について説明します。

地方創生推進交付金とは?

地方創生推進交付金に使われている国の予算

「予算1,000億円!」と話題になっている地方創生推進交付金。

使用された金額を見れば、日本政府が地方創生にどれだけ力を入れているかが分かります。

また、資金の内訳は2分の1が国からの交付金、残り2分の1は地方負担という名目になっていますが、地方負担に関しては地方財政措置が講じられています。

地方創生推進交付金は、都道府県では全47団体、市区町村では1,741団体のうち1,300団体(74.7%)が活用しています。

交付上限額(事業費ベース)

・都道府県(先駆):6.0億円

・都道府県(横展開):2.0億円

・市区町村(先駆):4.0億円

・市区町村(横展開):1.4億円

地元に元気を取り戻したいのなら、地方創生推進交付金を活用すべきです。しかし、地方に住んでいるだけで交付金がもらえるわけではありません。

次は、地方創生推進交付金による支援を受けるコツをお教えします。

地方創生推進交付金の目的

地方創生推進交付金による支援を受けるためには、交付金について十分な知識を得ることが重要。

まずは、「地方創生推進交付金の事業概要・目的」に込められている政府の見解を読み取りましょう。

【地方創生推進交付金の事業概要・目的】

地方創生の充実・強化に向け、地方創生推進交付金により支援します。

1. 地方版総合戦略に基づく、地方公共団体の自主的・主体的で先導的な事業を支援 

2.  KPIの設定とPDCAサイクルを組み込み、従来の「縦割り」事業を超えた取組を支援

3.  地域再生法に基づく法律補助の交付金とし、安定的な制度・運用を確保

 

1.  地方版総合戦略に基づく、地方公共団体の自主的・主体的で先導的な事業を支援

地方公共団体の自主的・主体的で先導的な事業を支援するのは、地方が「お金を継続的に生み出せる自治体=自立した自治体」になる必要があるためです。

地方が衰退した理由のひとつは、国からの補助金に頼り過ぎてしまったこと。今後も国の補助金をあてにしていては、地方の消滅は免れません。

しかし、改革には資金が必要なので、自立するまでは交付金支給により支援するということです。

2. KPIの設定とPDCAサイクルを組み込み、従来の「縦割り」事業を超えた取組を支援

KPIとは「具体的な成果目標の設定」を意味します。PDCAサイクルは、「P:策定→D:実施→C:検証→A:見直し」この4ステップのこと。

分かりやすく言うと、明確な目標を設けて、実施後には必ず検証し見直しをした上で、次のプランを立てるべき、という方針です。

これは、地方が「縦割り」組織であるせいで、たくさんの弊害があったことと関係しています。

地方がここまで深刻な状態になったのは、「管轄ごとの支配=縦割り」組織の影響が大きいです。

そのため、今までと同じようなやり方では地方創生は無理だと考えた政府は、縦割り事業の代替法として、KPIの設定とPDCAサイクルを提案。縦割り事業を超えた取り組みを支援するという方針に方向転換しました。

3. 地域再生法に基づく法律補助の交付金とし、安定的な制度・運用を確保

地方創生を成功させるコツは、長期的に取り組むこと。地方創生は、一朝一夕で簡単に成し遂げられるものではありません。

理想的な姿に近づいている途中で交付金が打ち切られてしまうと、元の状態に逆戻りしてしまうでしょう。

安定的な制度・運用を確保することで、地域創生の成功率を上げるのが地方創生推進交付金の狙いです。

地方創生推進交付金には、こういった背景があります。つまり、これまでとは違った「新しい形の地方」が求められているということ。

「交付金受給→使い果たして終わり」という使用用途では支援は受けられません。

地方創生推進交付金による支援を受けるコツ

地方創生推進交付金の位置づけ

地方創生推進交付金を上手に活用するためには、地域再生制度を知ることが大切。

なぜなら、地方創生推進交付金は、地域再生制度の支援措置のひとつだからです。

地域再生制度の主な支援措置メニュー

1. 地方創生推進交付金 

2. 企業版ふるさと納税 

3. 地域再生支援利子補給金 

4. 企業の地方拠点強化の促進に係る課税の 特例等

5. エリアマネジメント活動に係る負担金の徴収・ 交付(地域再生エリアマネジメント負担金制度)

6. 商店街活性化促進事業に係る手続・資金調達 の特例等

7. 「小さな拠点」形成に係る手続・課税の特例 

8. 「生涯活躍のまち」形成に係る手続の特例 

9. 農地等の転用等の許可の特例 (その他:特定政策課題の解決に資する事業への支援措置) など

※ 府省横断的に様々な支援措置の活用が可能

地方創生を推進しているのは、記事の冒頭で説明した「まち・ひと・しごと創生法」「地域再生法」

これら二つの法律が両輪となって地方創生を後押ししています。

認定を受ける必要がある

地域再生制度の支援措置を受けるためには認定を受けなくてはいけません。

地域再生制度とは、地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出その他の地域の活力の再生を総合的かつ効果的に推進するため、地域が行う自主的かつ自立的な取組を国が支援するものです。

地方公共団体は、地域再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受けることで、当該地域再生計画に記載した事業の実施に当たり、財政、金融等の支援措置を活用することができます。

引用:内閣府地方創生推進事務局

この内閣府の説明にある通り、地方公共団体は「地域再生計画を作成→認定」という流れを経てから支援を受けます。認定を受けるための重要ポイントは2つです。

重要ポイント1:アイデア(活動内容)

認定を受けられる地域再生計画を立てたいのであれば、【交付金事業のねらい】まち・しごと・ひと創生総合戦略【政策5原則】がヒントになります。

これらが、政府が重要視するポイントだからです。

まち・しごと・ひと創生総合戦略
【政策5原則】

◆自立性:地方自治体・民間事業者・個人等の自立につながる

◆将来性:地方が自主的かつ主体的に、夢を持って前向きに取り組むことを支援

◆地域制:各地域は地方版総合戦略を策定、国は利用者の側から人的側面を含めた支援を実施

◆直接性:ひと・しごとの移転・創出やまちづくりを直接的に支援する施策を集中的に実施

◆結果重視:短期・中長期の数値目標を設定し、施策効果を客観的な指標により検証、改善

地域を活性化するためのアイデアを考える時には、これらの条件を満たす内容にしてください。

先駆タイプとして支援を受ける場合には、【交付金事業のねらい】の1.2.3.4.全て、横展開タイプの場合には、1.は必須、2.3.4.のうち2つ以上を含む必要があります。

重要ポイント2:プロセス(活動過程)

そして、政府が重要視するポイントはもうひとつ!

「KPIの設定(目標設定)」+「実施手順がPDCAの流れに沿っているか」です。

<KPIの設定で大切なこと>

視点1:「客観的な成果」を表す指標であること

視点2:事業との「直接性」のある効果を表す指標であること

視点3:「妥当な水準」の目標であること

KPIを設定する時には、これら3つの視点で考えるようにしてください。

<実施手順で大切なこと>

目標の確認→手段の企画→KPIの選定→目標水準の設定→事業実施→事業評価→事業改善

実施手順では、これら全ての過程を順番通りにこなすことが望ましいです。

重要ポイントまとめ

【支援を受けるための3つの重要ポイント】

・交付金事業のねらい・政策5原則を踏まえた活動内容

・適切なKPI設定

・PDCAの流れに沿った実施手順

この3点を満たせば、地域再生計画の認定が受けられます。計画申請は年3回。これまでに認定された地域再生計画は5,796件です。

あなたも地域創生推進交付金を上手に活用してくださいね。

また、地方創生推進交付金による支援を受けた場合には、地域公共団体は事業ごとの効果検証をして、KPIの達成状況を国に報告。政府は国におけるマクロの効果を検証し、次年度以降の交付に反映するという流れです。

地方創生推進交付金の活用で国全体が良い方向に向かっていると判断されれば、今以上に地方創生への取り組みが強化される可能性があります。

そうすれば、益々地方が活性化するという好循環が生まれるでしょう。

地方創生推進交付金の活用事例

地方創生交付金による支援を受けたいのであれば、過去の事例を参考にするのがおすすめ。

次は、地方創生推進交付金の事業イメージと活用事例を見ていきましょう。

事業イメージ・具体例

対象事業1:先駆性のある取組及び先駆的・優良事例の横展開 

◇官民協働、地域間連携、政策間連携、事業推進主体の形成、 中核的人材の確保・育成 

対象事業1の具体例

・しごと創生(地域経済牽引事業等)

・観光振興(DMO等)

・地域商社

・生涯活躍のまち

・子供の農山漁村体験

・働き方改革

・小さな拠点

・商店街活性化 など

 

対象事業2:わくわく地方生活実現政策パッケージ(移住・起業・就業支援)

◇東京圏からのUIJターンの促進及び地方の担い手不足対策

◇女性・高齢者等の新規就業に要する費用などの経済負担を軽減する取組

対象事業2の具体例

・地域の中核的存在である中小企業等への就業に伴う移住支援金給付事業

・地域における社会的課題の解決に取り組む起業への支援金給付事業

・統一性・一覧性を持って検索可能である幅広い求人情報の提供や、効果的な求人広告の作成等を支援する事業

・現在職に就いていない女性、高齢者等の新規就業のために都道府県が官民連携のプラットフォームを形成して支援する事業 など

 

活用事例1. 山形県、山形県寒河江市、金山町(先駆タイプ)

対策法

官民協働による中間支援プラットフォームを構築し、住民主体で地域づくりを行う地域運営組織を全県域で形成

交付金の使途

1. 地域運営組織形成に係る「手順書」作成。 県内の先駆モデルである、「きらりよしじまネットワーク」の組織形成過程をマニュアル化し、組織形成の取り組みの普及拡大を図る

2. 地域再生計画を着実に展開するためのアドバイザリーボードの設置(2名程度)

3. 中間支援プラットフォームによる「地域運営組織形成モデル事業」の実施。 県内4地域にモデル地区を選定し、地域運営組織形成の取り組みへの重点支援を実施

4. 地域づくり担い手確保(外部人材)と人材育成・活用事業

5. 住民主体の地域づくり機運醸成事業(地域未来フォーラム)の開催。地域運営組織形成の取り組みに関する地域住民の意欲拡大と取組みへの参画拡大を図るためのフォーラムを県内4地域で開催

先駆性に関わる取り組み

【自立性】

行政サービスの受託(国・県・市町村)ができる体制整備やコミュニティビジネス展開支援を行い、自立した運営を目指す

【官民協働】

中間支援団体との協働による最適化された支援施策の実現。民間の参画により、連続性・継続性が担保された施策展開及び専門的支援が可能

【政策間連携】

県本庁各部局の地域づくり施策を最適化(パッケージ化)するとともに、施策及び相談窓口を県内4地区 の総合支庁に集約し、受益者(市町村・地域住民)から見た施策を最適化

【地域間連携】

連携市町村は集落調査を行い、地域診断書を作成し、中間支援プラットフォームで情報を共有。各主体が地域課題ごとに連携又は役割分担を明確にし、最適化された施策展開を実現

活用事例2. 石川県七尾市(横展開タイプ)

対策法

最小コミュニティを結ぶ「地区」を七尾版「小さな拠点」と位置付けて協議会を設立

交付金の使途

1. 地域コミュニティ交付金

基礎的活動費(世帯数に応じた額)+地域活動費(1地区500千円)として、地域の防災及び防犯活動、見守りサービスや買い物弱者支援等に対する活動への支援

2. 地域づくり協議会事務局支援

地域の共通課題の解決と、地域コミュニティの活性化のため、3地区の地域づくり協議会の人件費相当分を支援

3. 地域創生交付金

さらなる地域活性化を図るために、市の総合戦略に掲げる事業を「地域版総合戦略」として掲げ、取り組む活動への支援

4. 地域づくり研修会の開催等

立ち上げた地域づくり協議会の協議の進め方や課題解決に必要なノウハウを学ぶ勉強会、地域が稼ぐための広域的な仕組みづくりや法人化に向けた研修会の開催等による支援

先駆性に関わる取り組み

【自立性】

公共施設の管理運営、美化作業等行政からの委託費、各地域づくり協議会が行う事業(ちょい寄りカフェやレンタサ イクル事業)などにより自己財源を確保 

【官民協働】

地域づくり協議会は、「地域版総合戦略」に掲げる事業を推進し、行政は地域づくり協議会の取り組みに対する支援研修等の学べる場を設けることで、七尾版「小さな拠点」づくりを推進

【政策間連携】

地域づくり協議会の活動を支援することにより、地域づくりだけでなく、移住定住の推進や世代間交流、コミュニティビジ ネスに参画する人材の育成等、様々な施策を推し進めることが可能

まとめ

地方創生を叶えるまでには大きな苦労を伴うため、時には諦めたくなるかもしれません。しかし、街が消滅すると歴史が途絶え、大切な地元を取り戻せなくなります。

重要なのは、現状を維持・向上させつつ持続可能な仕組みを作ることです。

すでに危機的な状況に追い込まれている自治体は、今がラストチャンス!地方創生推進交付金を上手に使い、地域に元気を取り戻してくださいね。

画像出典元:o-dan 

最新の記事

ページトップへ