2019年10月より施行された軽減税率制度は、請求書や納品書、帳簿への記帳などの経理処理にも影響を及ぼしています。その大きな点が、区分経理です。
区分経理は、全事業者が対応すべき経費管理の方式。特に、8%の軽減税率と10%の標準税率が混在する事業者では、記帳にも注意が必要です。
従来通りの経理処理を行っていると、これから迎える決算や確定申告の準備で慌てることにもなりかねません。
そこで今回は、軽減税率に伴って導入された区分経理について紹介するとともに、変化した経理処理のポイントについても詳しく解説します。
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税制改正で複数税率となったこともあり、従来の経理方法では異なる税率が混在し、処理が煩雑化してしまいます。そこで導入されたのが、区分経理です。
しかし、聞きなれない言葉のため、区分経理とは何かイメージしづらいのではないでしょうか。ここでは、区分経理の概要と、区分経理に関係する用語について解説しています。
区分経理とは、自社が取り扱う商品や材料などの資産を管理・運用する際に、税率ごとに分けて経理処理することを指します。
軽減税率制度が導入されるまでは、消費税率は標準税率1種類しかなかったため、区分けする必要がありませんでした。
ところが、軽減税率制度が制定されて税率が8%と10%の2種類になると、経理処理する際に品目によって税率が異なり、消費税の管理が難しくなったのです。
申告する事業者側としては、従来省略できていた税額算出処理を品目ごとに行う必要が出てきたため、経理処理への負担が増えることになります。
そうしたデメリットはありますが、事業者は毎年2月半ば~3月半ばの時期になると、確定申告で前年の所得と消費税を申告しなければなりません。
品目ごとに適用される税率から算出した税額を別途計上することで、申告側も管理が楽になります。
複数税率を従来のように内含した金額で計上していると、万が一計算間違いをしていても気づくことが困難です。
区分経理をしていれば、経理内容の透明性が上がり、正確な申告がしやすくなります。
区分経理には、いろいろな要素が絡んでいます。
関係する用語を理解しておくと、何のために区分経理をしなければならないのか、区分経理の重要性への理解が一層深まります。
軽減税率 | 標準税率アップによる低所得者層の経済的負担を軽減するために据え置かれた消費税率のこと。 |
区分記載 | 請求書や納品書(仕入れ明細書)、領収書などの請求関連書類での税率ごとの税額表記のこと。 |
免税事業者 | 課税売上高が1,000万円以下で、消費税の納税義務がない事業者のこと。 |
課税事業者 | 課税売上高が1,000万円を超えていて、消費税の納付義務がある個人を含む事業者のこと。 |
請求書等 | 請求書や納品書(仕入れ明細書)、領収書など取引で譲渡される、金額が明記された請求関連書類のこと。 |
区分記載請求書等保存方式 | 区分記載された請求関連書類を基に作成される申告とその方法のこと。 |
適格請求書等保存方式 | 区分記載された請求関連書類を基に作成され、なおかつ免税事業者からの仕入れにかかる消費税控除ができない申告方法のこと。 |
2019年1月~12月の確定申告は、区分記載請求書等保存形式が適用されます。
この申告のもとになるのが、区分記載された請求書等の書類と帳簿です。これらを管理・運用するのが区分経理なのです。
取引では、納品書(仕入れ明細書)や請求書、領収書などの書類を扱います。
これらには、品目ごとに金額が明記されており、その金額にはそれぞれ消費税が適用されます。
ここでは、そうした請求関連書類を社内でどのように扱うのかという点について、注意すべきポイントを紹介しています。
仕入れや卸す際、品目のなかに軽減税率の対象がある場合、どの項目が軽減税率の対象かがわかるように「*(アスタリスク)」や「☆」などのマークを入れます。
マークの有無によって、軽減税率なのか標準税率なのかを見分けるのが狙いです。
品目に軽減税率の対象がある場合、複数の税率が混在することになります。
ですから、どの項目の税額がいくらなのかがわかるように、それぞれの税率ごとに税額を表記しておかなければなりません。
経理方式が区分記載請求書等保存方式では、仕入税額において売り手が書き洩らしていても、買い手側が追記することが認められています。
しかし、現時点ですでに予定されている次の経理方式では、追記は認められていません。
その時期になって新たに請求書等の発行システムを変えるのは二度手間ですから、今から税率別で税額の合計を出せるシステムを構築しておきましょう。
軽減税率の対象項目に対してマークを付けた場合、そのマークの意味がわかるように、項目などの欄外に但し書きとして明記しなければなりません。
重要なのは、軽減税率の対象品目があるかどうかと税額がわかること。
但し書きを入れるのは、区分した項目が対象品目であり、軽減税率の対象になっていることを明確にするためです。
区分経理で最も影響があるのが、帳簿です。
軽減税率制度によって、記帳する際に、税率ごとに消費税額を分けて記帳することが定められたからです。
請求書など発行書類と同様に、品目ごとに軽減税率・標準税率それぞれで税額を記帳しなければなりません。
しかし、免税事業者の場合は、消費税の納税義務がないため、分けて記載せずとも良いとされています。
つまり、課税事業者に該当する立場のみ、区分経理が必要です。
2023年10月になると経理方式が、現行の区分記載請求書等保存形式から適格請求書等保存方式に変わります。
これに伴って、税率ごとに税額記載されていない請求書等は、税額控除の対象として認められなくなります。
経理方式の変更はまだ先の話ではありますが、次期の方式においても、区分経理という処理方法は引き継がれます。
区分経理は、正確な申告・還元、そして自社資産の管理・運営のためにも理解しておかなければなりません。
区分経理がわからなければ、請求書等の発行はもちろん、経理処理に対応できないからです。
業種や業態によって扱う品目が異なり、それによって適用される税率も異なります。
今回の確定申告では、改正前の標準税率8%と改正後の複数税率(8%、10%)が混在しますから、申告で慌てなくていいように、区分経理を進めておきましょう。
画像出典元:Pixabay、Unsplash
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