「Aichi Startup Camp 2019」10 代で起業し資金調達3億円 | デイワークアプリで業界課題の解決へ

「Aichi Startup Camp 2019」10 代で起業し資金調達3億円 | デイワークアプリで業界課題の解決へ

記事更新日: 2019/11/16

執筆: 編集部

「Aichi Startup Camp(あいちスタートアップキャンプ)2019」(主催/愛知県)で行われた、起業家マインドを醸成する講演のスピーカーに、Wakrak(ワクラク)株式会社 代表取締役の谷口怜央さんが登壇。

いつでも、どこでも、なんでも、好きなことができる世界を作る」というビジョンのもと、デイワークサービスのアプリで10 代で起業した谷口さんに、起業までの道のりや情熱、事業とお金の話をしてもらいました。

登壇者プロフィール

Wakrak 株式会社 代表取締役 谷口怜央さん

1999年愛知県名古屋市生まれ(20歳)。腰を骨折し車椅子生活を送った経験から、困っている人を見て見ぬふりをしない社会をつくりたいと決意。その思いをかなえるため、高校2年で休学し単身上京。
 
IT 企業で半年勤務後、2017年6月会社設立。19歳で Forbes「アジアを代表する30歳未満の30人(CONSUMER TECHNOLOGY 部門)」に選出。“必ず明日仕事がある世界” を掲げ、デイワークアプリ「ワクラク」の運営・開発を行う Wakrak 株式会社で代表取締役として社員15名を束ねる。
 

Aichi Startup Camp(あいちスタートアップキャンプ)とは

出典元:Aichi Startup Camp公式HP

起業間もない、または起業をめざす方を対象にした新規ビジネス創出のための週末3日間を利用したブートキャプ型ワークショップです。

かつてトヨタグループの豊田佐吉、ソニーの盛田昭夫などの起業家を輩出した愛知県。現在、製造業で日本一を誇り、先端技術の集積地に。そして、次世代を担うスタートアップ起業家の発掘を!豊田佐吉、盛田昭夫に続く起業家を!と愛知県は本格始動。

同プログラムならではの講師陣を迎え、ビジネスの戦闘力を整えるための新しい体験の場を提供します。

キャンプは基本講座「BASIC」と更なる飛躍を目指す「LEAP」選択式の二部で構成。各専門分野の豪華講師陣と経験豊富な先輩起業家の指導により、ビジネスモデルに頼らない最小コストのリーンスタートアップでビジネスの成功確度を高めます。

約6ヶ月の長期バックアップで、起業家精神のマインドセットとビジネスプラン、プレゼンテーション技術向上を手厚くサポート。キャンプの集大成は金融機関や投資家、大手企業の新規事業担当を招いたプレゼンテーションイベントで事業化につながるチャンスの場も。

Aichi Startup Camp 2019 概要


・期間

2019 年 9 月~2020 年 2 月(参加者募集は終了しています。)

・応募資格
新しい市場を狙った「ビジネスアイデア」「取り組みたい課題」をお持ちで、将来、愛知県内での起業を考えている方。
※必ず愛知県内で起業しないといけない、というわけではありません。

・参加料
無料(飲食費、交通費等は実費)

・キャンプ定員
30組程度(審査による選考あり)

・開催場所
ミッドランドインキュベーターズハウスほか

・主催 愛知県

・公式HP
https://aichistartupcamp2019.tsucrea.com/

 

起業の原体験は車椅子生活。ゲバラに衝撃→高校休学→10 代で起業

真っ黒な服でおなじみの谷口です。名古屋で生まれ育ち、現在20歳です。高校2年の時に休学し、IT 企業で半年働いた後に起業し、今に至ります。

起業理由はいろいろありますが、中学時代に腰の骨を折り、下半身が一切動かなくなったことが、最も大きな起業の原体験です。その後1年以上車椅子生活でした。

その頃、キューバ革命の革命家、チェ・ゲバラに出会い、衝撃を受けます。彼のドキュメンタリー番組を見て、地位を捨て、困っている人のために命がけで戦う姿に、自分が目指すべきはこれだ!と。

というのも、車椅子生活当時、見て見ぬふりをされる場面に遭遇するたび、「何でこんなにみんな余裕がないんだろう?」と感じていました。そこから「見て見ぬふりをしない社会」への模索を始めます。

脚が治った高校1年生の時、何かできないかとアフリカに行ったり、NPO 活動をしてみたりしました。その後、慈善活動ではなく、世の中にもっと影響を与えられることをしたいと決意。東京に出るため高校を休学し IT 企業にインターンで入社しました。

落ちるのは人かお金でメンタルをやられた時。上がるのは高いハードルを乗り越えた時

IT企業に住み込みで勉強させてもらい、半年後に起業。プロダクトイメージは固まっていたものの、壁は資金でした。

1日4~5人、計100人くらいの投資家の方に会っては断られ、もうダメだと。待っていられず先行してプロダクトを作成。

何とか支払いの段階で投資家の方が見つかり、出資が決まりました。

サービスリリース後に、社員が全員辞める危機も。自分のハードシングスは、基本「お金と人」に関わることです。

これまで3億円ほど資金調達していますが、資金調達するのは、事業は伸びていても財政状況がよくない時なので、精神的には厳しいですが、それを乗り越えた時はモチベーションがものすごく上がります。

採用の課題をありそうでなかった形で解決

デイワークアプリ「ワクラク」は、シンプルに言うと日雇いのデジタル化です。

僕らが考えるデイワークの特徴は、すぐに働ける「短期就労」、「評価データ」の蓄積、そして「ワーカー主導」。

対する企業側の課題は、「採用費用が高い」こと。人手不足といっても100万円かければ1人は採用ができるわけです、たぶん。

しかしそこまで費用をかけられないから、どうにかして安く採用できないかと模索するわけです。

次が「採用までの時間が長い」点。今人手がほしくても採用は1カ月後、2ヶ月後。

最後は「採用してもすぐに辞める」問題です。サービス業界の平均勤務月数は1.5ヶ月ほどです。この3つを何とか解決できないかと考えました。

課題の根本にあるのは、生産労働人口の圧倒的な減少。過去10年で800万人減り、向こう10年も同ペースで減る。

しかし企業は採用を辞めないので人手獲得が激戦化します。デイワークが最終的にこれらを解決していきます。

長期雇用ではなく1日単位で、1つの仕事を1人ではなく0.1のリソース×10人でできるのでは?というのがデイワークの考え方です。

かつ、評価データを蓄積し、面接をしなくても、相性のいい人とだけマッチングする土台を構築しています。

従来の求人サービスは基本的にはマッチングまでですが、デイワークサービスは仕事後の評価や給与の支払いまでも行われます。

評価データを含めた採用を一貫して行えるのが強み。

いままでは企業側が採用するか最終的な意思表示をしていましたが、デイワークサービスではユーザーである働く側が「この会社で働きます」と宣言したら採用が確定するのも特徴です。




 
 

一番の価値は、企業が知りたい「評価データの蓄積」

日雇いサービスの競合さんは約20社ほどありますが、数字ではワクラクが先行しています。現在月間約6000件の仕事がアプリで行われ、登録者10万人、提供事業者が 3000事業所ほどになりました。

マッチングを重視し、夕方必要な人材が当日朝の募集で集まるような、アクティブなユーザーが集まるサービスを強みにしています。

アプリ内で契約を結ぶため(電子雇用契約書)、ハンコを持って現場に行く必要はなく、給与がアプリ内にチャージされ、最短翌日には振り込まれます。

マッチングで目先の人材は確保できますが、僕らのサービスの一番の価値は、誰がどこで働き、どんな評価を受け、何ができる人かという、企業が知りたい「評価データの蓄積」

そのデータを基に相性のいい人としかマッチングしないアルゴリズムを構築しています。

月額費はなく、マッチングが行われた場合のみ手数料として企業から給与の30%分を受け取るビジネスモデルです。

約600社に登録いただき、大手ではモスフードサービス、大戸屋ホールディングスほか、ヤマト運輸のような物流系企業で導入。

現在営業社員3人で月間約400店舗と契約し法人営業が成長につながっています。

その他、百貨店からの依頼で、アパレル業界に特化したデイワークサービスを11月から開始します。これまで縁がなかった百貨店領域、ハイブランド企業にも波及。今後は領域の多角化を進めていきます。

投資家と15分のお茶で出資決定も

ワクラクは、これまで4回、約3億円の資金を調達。個人では、クラウドワークスの吉田浩一郎社長、鳥貴族の大倉忠司社長などに出資をしていただきました。

こういった個人投資家とどうつながったかというと、ほとんどがTwitterとFacebook。初めに出資いただいた投資家の方にも、Twitterで「お茶させてください」と話しかけ、15分お話しただけで出資が決まったりしました。

ゲバラが目指した平等な社会を実現するために100%仕事がある状態をつくる

会社として現在3期目、目指したいのは、ゲバラが目指した平等な社会です。

彼は完全な左で社会主義的な思想家ですが、彼が今生きていたら、どんな世の中をつくるだろう?と考えるんですね。あの思想のままでは現代に受け入れられないと思うので。

見ず知らずの人に「見て見ぬふりをしない」ってとても大変で、自分もできていませんが、その状態って自己を超越しているのかなと。

自己超越的な状態に到達するには、自己実現していないといけないし、前提として、生きていかなきゃいけない。

多くの人は好きなことを仕事にしようと言いますが、好きなことの前に、まず生きていかなきゃいけない

僕らはデイワークを通じて、100%仕事がある状態、生きていける状態をつくろうとしています。なので、仕事を失わないセーフティネットの役割もあり、アプリを開けばどんな人にも明日は絶対仕事がある、それが僕らのファーストミッションです。

いずれ好きな仕事ができれば、余裕が生まれ、第三者に見て見ぬふりをしないアクションがとれると思っています。

 

谷口さんへの質疑応答タイム

「何でも答えます。何でも聞いてください!」と谷口さん。最後に質疑応答タイムが設けられました。

Q. この事業は、頭の中で考えてから思いつきましたか?


A.
考えてはいましたが、言語化はできていなかったです。「見て見ぬふりをしない」みたいなことをずっと考えてはいたものの、事業展開に落とし込むまではできていなくて。この1年くらいで徐々にできてきたものです。

自分はゲバラの生まれ変わりだと思っています。彼が今の世の中にいたら何をするのか?どういうふうに世の中を変えたのか?にしか興味がないんです。

 

Q. ほかのベンチャーとの差別化はどんな点だと考えていますか?


A.
機能は付加できるのでマネされます。僕らの強みはマネされないデータを蓄積して活用できる点。アルゴリズムをシステムとして構築しているのが強みです。

企業側が求めているのは、安く採用したい、いい人を採用したいという2点だけ。安さは他社がマネでき、下げれば下げるほど価格競争になる。そういう戦いではなく、質を担保することに対して技術開発を進めています。

 

Q. 今のメンターはいますか?


A.
メンター的な存在は一切いなくて、僕はあまり人の意見を聞かない人間なんですね。成功者にアドバイスを求めるより、自分で失敗を繰り返して学んでいくタイプで、変えたほうがいいとは思っています。

ただ、成功者からノウハウをもらって身につける方法もあると思いますが、僕はその選択をしないと決めました。

理由は、自分の肌感として、失敗して次に生かす方が、圧倒的に言語化できるから。他者が言語化したものをそのままアウトプットしたとしても、なぜ上手くいったか、なぜ失敗したかの前提条件が見えません。

 

Q. 起業するには原体験が必要でしょうか? 


A.
明確な原体験が必ずしもある必要はないと思っています。サクセスストーリーは、あくまでとらえ方の問題。

僕の場合は脚が動かなくなるという明確な原体験がありましたが、そのような体験がなくても、その人が人生の中で何らか影響を受けて生まれた「起業したい」と思ったストーリーを、どう人に印象づけて伝えるかがテクニック。

こういう人になりたいという指標はあったほうがいいと思いますが、僕の場合は、「こういう人になりたい」というよりは、「この人だったら今どうするか?」と考えます

「こういう人になりたい」では、その人以上になれない。僕はゲバラを超えるつもりですし、ゲバラだったら今何をしたか考えた上でアクションを取るようにしています。

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