会社の経理を担当している方にとって、1年を通して最も重要な作業は「決算」ではないでしょうか。
決算を行うことで税務申告の基礎となる決算書を作成し利益を確定させ、それに基づいて法人税等を計算し納税するという作業は、一大イベントであるといっても過言ではありません。
この決算で行う作業の総称を決算整理といい、その際に追加する仕訳のことを決算整理仕訳といいます。
今回はその具体的な作業手順とポイントについてわかりやすく解説します。
このページの目次
決算整理仕訳とは「決算整理」の際に追加する仕訳のことであり、決算で行う作業を総称して決算整理とよんでいます。
決算とは月次処理と税務申告を繋げるための調整作業のようなものです。
毎月行う月次処理は決算日前の財務内容を概算額で計算したものに過ぎず、税務申告をするにあたっては、概算額を確定額に修正する必要があるからです。
月次処理 → 決算 → 税務申告
ちなみに、この決算整理を月次処理と区分するために「決算整理月」と呼ぶこともありますが、これは「12ヶ月の月次処理+決算整理月」という解釈です。
決算整理の具体的な作業な以下のとおりです。
決算整理の作業を進めるにあたってはいくつかのステップを踏んで順序良く進めていく必要があります。
12月31日決算の会社を例に、作業手順について解説していきます。
決算のスタートはその土台となる決算月(12月)までの月次処理を完了させるところから始まります。
この数字をいわば叩き台にして検討を進めていくわけです。
決算整理の最も大切なポイントは「決算日現在の確定額は可能な限り、第三者が作成する資料で確認する」ことです。
会社が独自に判断し、計上した数値では意図的に操作した可能性が生じてしまいますが、第三者が作成した資料であれば計上額の客観性を担保することができるからです。
第三者作成資料としては、以下のようなものがあります。
2. で収集した第三者作成資料を使って確認作業をします。
貸方 | 借方 |
売掛金(資産) 100 | 売上高 100 |
仕入高 200 | 買掛金(負債) 100 |
交際費 50 | 現金(資産) 50 |
このように、仕訳には「資産科目」「負債科目」が含まれているのが殆どです。
資産科目、負債科目の残高さえ正しく計上されていれば、おのずと収益、費用の金額も正しく計上されるということになります。
3. の作業において、帳簿を第三者作成資料の数値に合わせるために仕訳を追加する場合があり、この作業が冒頭に説明した「決算整理仕訳」です。
仕訳の追加や検討が必要な決算整理仕訳の項目について、ポイントを絞って列挙してみましょう。
売掛金、買掛金には「締め日」というのがありますが、会社の決算日と請求締め日は必ずしも一致しません。
月次処理の段階では締め日の金額を採用して経理処理をしている場合「締め日から決算日までの売上、仕入」を追加しなければなりません。
貸方 | 借方 |
売掛金 50万円 | 売上高 50万円 |
将来の経費や収益を当期中に一括で支払った(受け取った)場合、12ヶ月を超える部分については当期の経費や収益とすることは認められず「前払費用」「前受収益」という勘定科目で処理しなければなりません(1年基準)。
逆に、前期以前に「前払費用」「前受収益」として経理処理したものについては当期分(通常は12ヶ月分)の経費や収益として計上することができます。
貸方 | 借方 |
車両費 12,915円 | 前払費用 12,915円 |
決算日現在の実地棚卸により計算した棚卸資産(商品、製品、仕掛品など)を追加計上します。
貸方 | 借方 |
期首棚卸高 200万円 | 商品 200万円 |
商品 100万円 | 期末棚卸高 100万円 |
貸方 | 借方 |
期首仕掛品 50万円 | 仕掛品 50万円 |
仕掛品 100万円 | 期末仕掛品 100万円 |
30万円以上の資産については購入した年度に一括で全額経費とすることができず「固定資産」という資産科目で一旦処理し、経過した期間に応じて「減価償却費」として経費に落としていきます。
貸方 | 借方 |
減価償却費 300万円 | 建物 300万円 |
減価償却費 80万円 | 車両 80万円 |
※直接法の場合
完成していない請負工事について、出来高払した外注費や得意先から受け取った中間金などは、当期の経費や収益とすることができません。
工事が長期間に渡り決算日を跨ぐことがある建設業の会社では特に注意が必要です。
貸方 | 借方 |
前払金 500万円 | 外注費 500万円 |
売上高 1,000万円 | 前受金 1,000万円 |
月次処理において計上し忘れている資産科目、負債科目がないかを確認します。
具体的には、月次処理で計上した資産負債と、決算日の翌日以降に入金・支払いしたものを、通帳等を使って突き合わせしてみれば計上漏れしているものが浮かび上がってきます。
貸方 | 借方 |
売掛金 1,000万円 | 売上高 1,000万円 |
4. で確定させた後は、収益と費用の金額の内容について精査する必要があります。
具体的な検討内容についていくつか列挙してみましょう。
例:翌年1月分の費用を12月中に支払いしていた→前払費用へ振替
例:50万円の工具を消耗品としていた→固定資産へ振替
例:個人的な飲食代を交際費としていた→貸付金又は賞与へ振替
例:全額資産計上の保険料を全額経費としていた→保険積立金又は前払費用へ振替
例:決算日直前に購入した材料が仕掛工事にかかるものだった→仕掛品へ振替
収益や費用は消費税法上「課税取引」「非課税取引」「課税対象外取引」の3つに分類されます。
そのなかでも「非課税取引」(本来は課税取引だが政策上課税取引とされないもの)、「課税対象外取引」(そもそも課税取引ではないもの)について、課税区分の処理に誤りがないかを確認します。
・預貯金の利息、支払利息
・地代、電柱敷地料
・支払保険料
・社会保険料、労働保険料
・受取保険金、助成金収入、損害賠償金
・自家建設にかかる売上高
・賃金給与、役員報酬
・減価償却費
・収入印紙、固定資産税等の公租公課
ここまで作業を終了した段階で、法人税法上認められている特典が適用できるものがないかを検討します。
以上、一般的な決算整理の手順と決算整理仕訳について解説しましたが、実際には会社によって処理すべき項目は異なりますし、検討すべき点も数多く存在します。
会社は生き物であり、常に変化していくものですので、前年の数字をただ書き換えるのではなく、決算書の勘定科目、特に資産負債科目については「第三者作成書類」により一つ一つ慎重に確認することを心がけましょう。
画像出典元:o-dan
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