TOP > イベント > 産学公連携の一大拠点、桂イノベーションパークを経営学者 入山 章栄氏が訪問! 京都に、世界が注目する”ディープテック”ベンチャー企業が続々誕生。
「KYOTO Innovation Studio」は、京都発のイノベーションを加速させることを目指すコミュニティプラットフォームだ。
活動を指揮するのは、早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール教授 入山 章栄氏(京都市都市経営戦略アドバイザー)である。
「KYOTO Innovation Studio」では、京都にある多様なビジネス拠点を入山氏が訪問し、未だ知られていない魅力やイノベーションの可能性を発信している。
前回は梅小路エリアを訪れた入山氏だが、今回は京都大学 桂キャンパスに隣接する『桂イノベーションパーク』を訪問した。
桂イノベーションパークは、京都市の産学公連携の一大拠点である。
最新技術と経済活動を結びつけることで、イノベーションを加速させる効果が期待できる”産学公連携”は、昨今世界的にも非常に重要視されているが、ここでは一体どんな取り組みが行われているのか、レポートしていく。
このページの目次
今回の話題の中心となるのが『ディープテック』だ。
ディープテックとは、科学的な発見や革新的な技術にもとづいて、社会に深く根ざした課題を解決できる技術のこと。
たとえば、人工知能(AI)、バイオテクノロジー、ブロックチェーン、ロボティクス、量子コンピュータ、無線給電などの技術分野を指す。
新型コロナウイルスのワクチンを開発した「モデルナ社」もディープテック系ベンチャー企業の1つである。
京都大学 桂キャンパスは、電子工学や分子工学などの「工学系」の研究が主に行われている場所。
その京大 桂キャンパスのすぐ隣にあるのが桂イノベーションパークである。
「桂イノベーションパークは“ディープテック"系ベンチャー企業が生まれている場所です。」と入山氏は語る。
京都市/産業観光局企業誘致推進室 岡田氏による桂イノベーションパークの説明は以下の内容であった。
画像出典元:市民しんぶん西京区版「にしきょう No272」
初めに訪れたのは、「京都大学大学院工学研究科イノベーションプラザ」。
同施設は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)から京都大学に移管された建物である。
ここでは、京都の産学公連携を推進している"京都高度技術研究所(ASTEM)"地域活性化本部長孝本氏と京都大学大学院工学研究科附属学術研究支援センターで実質的な活動を担っている"京都大学学術研究展開センター(KURA)"リサーチ・アドミニストレーター大西氏に話を伺った。
孝本:公益財団法人である京都高度技術研究所(ASTEM)は、公的な立場でベンチャー企業や中小企業の第二創業を中心に支援している京都市の外郭団体です。
大学の技術をつかって新しくベンチャーを起こす人などを含め、地域企業を支える目的で設置されています。
産学公連携を進めるためのコーディネーターやインキュベーションマネージャーを、京大桂ベンチャープラザと京都大学大学院工学研究科イノベーションプラザに合計7名派遣しています。
大西:京都大学学術研究展開センター(KURA)は、研究者に最も近い場所にいる大学内の支援組織です。研究者個人がもつシーズやニーズを把握して、研究者が企業とつながるための支援を行っています。今は研究もチーム制になってきて、研究者1人だけでは研究をすすめられない。そういった背景もあって日本各地でURAがつくられています。
孝本:国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)から京都大学に移管されたのは、“大学のシーズを産業界で役立てるために産学公連携をすすめる“という本来の目的を逸脱しないための措置であり、京都大学大学院工学研究科イノベーションプラザにコーディネーターを置くのは京都市のミッションでもあります。
入山:桂イノベーションパーク内からでてきたベンチャーの事例を教えてもらえますか?
孝本:京都大学のシーズをつかった成功事例として、京大桂ベンチャープラザの卒業企業で、時価総額が百億円以上のベンチャー企業が誕生しています。
大西氏からは「URAでは単に研究者と企業をつなぐだけでなく、若手研究者のマインドも育てている」という興味深い話があった。
大西:若手の研究者が社会貢献や企業との連携を上手にできるよう、民間企業との交流などを行っています。
入山:アメリカに比べると日本の研究者は真面目です。自分の技術を世の中に役立ててお金を儲けるんだ!という意識が低いんですよね。
大西:京大はその部分が弱いかもしれません。京大は基礎研究を大事にしてるせいでしょうか。
入山:孝本さんはいかがですか?
孝本:大企業のオープンイノベーションを推進するイベントでは、地域のベンチャー企業や大学等の研究者にも参加いただいており、自分の研究を社会に役立てたいという思いをもった研究者も増えてきているのではないでしょうか。
オープンイノベーションのイベントは、国内の大企業に協力いただき、京都のベンチャー企業や研究者等を中心にマッチングをしております。
京都の技術を、京都はもちろん京都以外の場所でも活用させるための取り組みですね。
続いて話を伺ったのは、ベンチャー企業に対し事業スペースの賃貸や支援を行う京大桂ベンチャープラザ(運営:(独)中小企業基盤整備機構)のチーフインキュベーションマネージャーである阿部氏。
インキュベーションとは「卵などが孵化(ふか)する」という意味の英語が語源で、『新規事業の創出をサポートしながら育成すること』だ。
阿部氏は、入居企業の資金調達などの支援を行っているという。
阿部:京大桂ベンチャープラザには67部屋ありますが、入居企業は37社です(複数居室を賃貸されている企業あり)。その中で京都大学等の大学発ベンチャーは10社、京都大学と共同研究している大企業4社が研究開発活動をしていますが
京大桂ベンチャープラザは京大との関わりがなくても入居は可能で、「研究開発をしていて新規事業を立ち上げる意志があること」を条件としています。また隣接する京大桂キャンパスには工学研究科が設置されていますが、当館では工学系だけでなく吉田キャンパスの医学部等とも連携するバイオ系企業も多く活動されています。
入山:工学系ベンチャーだけでなく、京大 吉田キャンパスから生まれたバイオ系ベンチャー企業も入居しているんですね。
入山氏は「京大はノーベル賞受賞者をたくさん出しているところで、世界で注目されているディープテックを創出できる技術がある貴重な場所だ」と言う。
しかし、素晴らしい技術だけではディープテック企業として成功できないので、産学公連携が重要なのだ。
阿部:ベンチャーキャピタルからの出資や補助金獲得等の資金調達、マスコミ取材等の広報、様々な連携を目的とした大企業や大学の紹介など、ベンチャー企業に関する支援はなんでも行っています。
またハードウェア面としてはウェットラボ仕様など様々な研究開発に対応することができ、京大桂ベンチャープラザには5年まで入居可能、最長8年まで延長できることが特徴です。
入山:ディープテックはお金も時間もかかるので世界中でみんなが大変な思いをしていますが、京大桂ベンチャープラザはディープテックにとって魅力的ですね。
阿部:そういうメリットを生かして、過去に京大桂ベンチャープラザに入居していた企業が1社上場していて、2023年は2社が上場する予定です。
入山:成功するためには、なにが大事だと思いますか?
阿部:成功するために必要なのはコアコンピタンス。即ち差別化できる技術が必要です。京大は様々な分野の先生が特色のある研究をしているのが強みです。また事業は衆知を集めることも重要ですが、当館では入居企業同士の交流もしており、複数の企業や人がコラボした事例もあります。
入山:日本がディープテック大国になるきっかけが、京大桂ベンチャープラザにあると感じました!
阿部:京大桂ベンチャープラザに入居したい方、関心がある方はHPを見ていただき、お気軽に電話などでお問い合わせください。
京大桂ベンチャープラザに入居しているディープテック系ベンチャーのひとつが『Space Power Technologies』だ。
Space Power TechnologiesのCFOである武田氏によると、京都大学で研究されていた宇宙太陽光発電の技術を生かしてワイヤレス給電に成功したとのこと。
武田:弊社の社長が埼玉大学で研究しているときにワイヤレス給電の権威である京大の先生からご指導いただき、そこでベンチャーキャピタルから出資の話があり、一念発起して始めました。
入山:武田さんは日本長期信用銀行や三井住友銀行で働いた経験があるエリート金融マンで、米国でMBAも取得したんですよね。
武田:私は長く金融業界にいましたが、いつかは自分が社会の役に立つことをやりたかったんです。
入山:京大桂ベンチャープラザを選んだ決め手はなんでしたか?
武田:コストを抑えつつ安全に実験ができ、京都市から賃料補助もありました。アドバイザーに相談できて、自分たちでは用意できなかった機材をほぼ無償で提供してもらえた点も良かったですね。さらに、防犯がしっかりしているので安心して利用できます。
入山:ディープテック系だと実験するための設備やノウハウが必要です。京大桂ベンチャープラザにはそれがあるんですね。最終目標を教えてもらえますか?
武田:上場するだけでなく社会を良くする製品を提供する会社になりたいです。
京大桂ベンチャープラザに入居している『MiCAN Technologies』は、再生医療技術を活用した事業を行っている。
研究用の白血球を製造・提供。現在は動物の血球をつかって薬の安全性をチェックしているが、我々の技術をつかえばヒトの血球で検証が行える。
代表取締役 宮崎氏によると、『MiCAN Technologies』の強みは「他社が真似できない技術を持っていること」だという。
宮崎:医療用ではなく研究用なのが特徴です。臨床用だとコストがかかるので、我々は安く大量につくることを大事にしています。
入山:たくさんの設備が揃っていますが、資金調達はどのようにしましたか?
宮崎:国や地方自治体からの支援とベンチャーキャピタルからの投資を受けています。
入山:これまでの経緯を教えてもらえますか?
宮崎:私は製薬会社の研究員でしたが、感染症をこの世からなくしたくて最初は副業として行い、商品ができそうになった時に起業しました。血球をつくるときは遺伝子を入れるなど少し難しいことがあって、限られた施設でしか行えません。京大桂ベンチャープラザはそれができる施設でした。あと私の信条として、繁華街から30分以内の場所が良いんです。リフレッシュが必要ですからね。京大桂ベンチャープラザは、その条件も満たしています。
入山:ディープテックは根を詰める仕事だから息抜きが必要ということですね。ディープテックは適度に遊べる場所じゃないとできない……というのは名言ですね!
「いま世界で注目されているディープテックが、ここ京都で起きていて、その拠点が桂イノベーションパークなんですね。」と入山氏は興奮した様子で語った。
高度な技術をつかった事業を行い、順調に規模を大きくしている企業がすでに何社もあるという。
岡田:株式会社FLOSFIAは、京都大学発の企業で、京大桂ベンチャープラザで成長し、今は地区内に立地されています。
入山:スタンフォード大学の近くにシリコンバレーがあるように、京大の桂キャンパスのそばにFLOSFIAのようなベンチャーがたくさんでてくるのが夢ですね。
岡田:京都は大学がたくさんあって、京都の企業はたくさんの技術をもっています。それを産学公連携でイノベーションにつなげて京都を支える新たな産業をつくっていきたいです。桂イノベーションパークは、産学公連携の一大拠点として重要な役割を果たしていると思います。
入山:スタンフォード大学、カーネギーメロン大学、MIT、オックスフォード大学などは、すべて産業界と交流してるからこそイノベーションが起きてきています。日本ではこの桂イノベーションパークがその役割を担っているし、すでに成功事例が出てるんですよね。
岡田:はい、すでに世界に羽ばたいている企業、これから羽ばたいていく企業がたくさんあります。
桂イノベーションパークから世界を変えるようなディープテック系ベンチャーが次々と誕生する日は、そう遠くはないだろう。
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