2022年6⽉29⽇(⽔)にゲートホテル京都⾼瀬川にて、京都市外の有識者と京都市の職員や各インキュベーション施設のコミュニティマネージャー、大学や企業の担当者をお招きしたイベントが行われました。
テーマは 「京都でよりイノベーションが加速するには 〜カルチャープレナーの聖地としての可能性〜」。
ファシリテーターは⼊⼭ 章栄先生(早稲⽥⼤学ビジネススクール教授)です。
佐宗 邦威 様(㈱BIOTOPE代表)
⼭内 万丈 様(Yamauchi No.10 Family Office代表)
久米 昌彦 様(東邦レオ㈱)
岩本 宗涼 様(㈱TeaRoom代表取締役CEO)
エリイ 様(Chim↑Pom from Smappa!Group)
前川 英麿(プロトスター㈱代表取締役)
このページの目次
入山:今回のセッションの趣旨を説明して、それから本題に入りたいと思います。
我々が中長期的に目指しているのは「京都をイノベーティブにして、めちゃめちゃ面白くすること」です。
僕は京都が大好きなんですが、一方で京都って課題もあって、日本中にいえることなんですけどイノベーションや新しいことが足りてない。
京都は世界で最も訪れたい場所であり、世界中の人が最も注目してる都市のひとつ。
だから、京都のポテンシャルはもっともっといっぱいあって、このセッションでいろんな人達が集まって、京都の良さをうまく生かしながら、京都がもっとイノベーティブになって魅力的になって世界にひらかれていくようなおもしろい街になってほしい。
イノベーションの根幹にあるのって「つながり」ってことなんですよ。
特に今まで出会ったことない人、お互いに存在は知ってるけど喋ったことがない人のつながり。
イノベーションの根源はもうわかってて、既存値と既存値の組み合わせなんですよ。
だからこそ離れた人達、今までつながってない人達を組み合わせるのがすごく重要です。
今日の課題は何かっていうと、京都は、意外なくらい京都以外のところとつながってない。
日本中に面白い人達がいて面白いコンテンツがいっぱいあるんだけども、京都とそこがつながってない。
一方で日本中の人が京都に来たがってるんですよ。
だから、それを何とかすればいいんじゃないの?と思うんです。
さらに言うと、世界中の人が来たい街なのに、意外なくらい京都で起きてることが世界に知られてない。
⇒京都の中の人と京都の外の人がつながる仕組みをつくれば、よりイノベーティブな街に近づく
入山:もうひとつの僕が問題意識を持ってるのが、京都の中でも意外とつながってないんですよ。
いろんなところで皆さんそれぞれいろいろなことをやってるんだけど、意外とそこのコミュニケーションがないと。
で、ここがつながって新しい組み合わせができることがすごく大事だと思ったんです。
そのためにやることは、僕の知ってる面白い方々にここ(京都)に来ていただいて、一緒に京都の魅力を語ろうと。
外の人とつながっていただいて、さらに言うとここに集まった京都の方同士でもいろいろなディスカッションをしてほしいです。
つながって無理する必要はないんだけど、なんか面白いことできそうだなっと思ったら勝手にやっちゃってください。
そういうオープンな秘密結社コミュニティみたいな感じを目指してます。
⇒このセッションで京都の中の人同士がつながって行動量が増えれば、よりイノベーティブな街に近づく
入山:それでは、議論に入りたいと思います。
今回のテーマである「カルチャープレナー」について、佐宗さんが定義したところや考えているところをシェアしていただけますか。
佐宗:もともと、カルチュラルアントレプレナーシップという言葉がグローバルにありまして、文化をつくっていく、文化起業家のような考え方。
これはイギリスで1990年代後半くらいに提唱された考え方で、それを日本語風にアレンジした言葉がカルチャープレナーだとお考えください。
佐宗:前提として、これからの日本はなにで生きていく?を考えた時に世界的にみても日本は成熟度が高いと言われていて。
富を増やしたい人よりも、精神的な満足を大事にする人が日本では多くなってる。
今だと「意味を大事にする」みたいなことを言われてますよね。
アメリカと欧州を比較した時、どっちに近いかというと日本は欧州に近い。
日本のイノベーションって基本的にはアメリカからきてるものが多くて、特にテックイノベーションはずっとアメリカのほうをみている。
だけど国の成熟度的にはヨーロッパに似てるし、ヨーロッパ側をもっとみたほうがいいのでは?と思ったんです。
ヨーロッパの起業家は新しいものをつくるだけでなくて、歴史を大事にしながら、歴史の文脈をうまく活用して、それを価値にかえていく。
京都は、日本の中でいちばんヨーロッパっぽい場所でもあります。
東京はテックイノベーションの中心になる、じゃあ京都は文化を武器にした起業家が京都内部だけでなく日本中から集まればいいと思います。
⇒京都はカルチャープレナー(文化起業家)が集まる場所を目指そう
入山:エリイさんは海外で個展とかされてるんですよね。
エリイ:イギリスのマンチェスターで、2019年に地元の方たちと一緒にプロジェクトを行いました。
マンチェスター・インターナショナル・フェスティバルという、音楽とアートの世界的なフェスティバルです。
マンチェスターは産業革命の地でもあり、コレラが流行った場所で、マス・グレイブというコレラで亡くなった方たちが埋められている場所があるんですけど、そこの土地を活用してプロジェクトを展開しました。
こういった取り組み、なにができるか考えて土地を活用するのは、どこの場所でも出来ることだと思います。
久米:町ぐるみの話だと、ヨーゼフボイスがいってる「社会彫刻」の概念がすごく近いですね。
ヨーゼフボイスの考え方は「人間の善なる活動はアートだ」と僕らは解釈していて、となると、街のためにゴミ拾ってるおっちゃんもアーチストになる。
アートっていうと絵画とか彫刻とか、そういうものももちろんあるんだけども、人間の活動そのものがアートだっていう考え方です。
3年くらい前の大阪・中津のアートフェスで、「100年後の未来を考えた時に残したいものはなんですか?」を街の皆さんに募集して、
古い写真や新しい写真を応募してもらって、それをのれんにして街の中で掲げたんです。
そしたら、アート展をめがけて外から来る人も中の人も楽しめて。
それがすごく印象的で、地域のおっちゃんおばちゃんの写真がアートになる、そういう考え方がすごく良い。
入山:山内さんはいかがですか?
山内:イノベーションを起こすのは、みんなやりたいと思っているけれどできなくて。
なんでシリコンバレーがあんなにうまくいってるのかとか分かってるんだけど、世界中でそれを導入しても失敗してるんですよね。
何が原因なのかな?と考えた時に、仕組みを導入するための土壌が整っていないと感じたことがあって。
土が整ってないから、種もってきても咲かないっていう。
では、土を良くするのは何なんだ?という問いに対しては、文化が重要だと思うんですよね。
だからカルチャーをまずつくって、その上にシステムをつくらないと根付かないと思います。
入山:岩本さんはいかがですか?
岩本:京都に来て思ったのは、最新だなって思ったんですよ。
なんで最新かっていうと、”わび”っていうのは最新なんですね。
”わび”は、どの時代どのタイミングでみても最新。
人がずーっと手をかけ続けてきた結果、それが現代においても最新だというのが”わび”の精神性だと言われてるんです。
入山:京都は”わび”で最先端だと感じた?
岩本:東京は見た景色がつぶされて、また出てくるけど、京都は全然景色が変わんないように見えて細部が生まれ変わっていて、今を生きてる感じがすごくします。
前川:さっきマンチェスターの話がありましたけど、マンチェスターって産業革命発祥の地。
カルチャーの街でもあるけどイノベーションがある土地だった。
京都も同じで、今やカルチャーの街って印象がありますが、元々は日本の中心でイノベーションの街でもあったんですよね。
そういう意味では重層的な流れの中で京都という街があるからこそ「最新」なのかと。
久米:僕は風土だと思ってて。
日本は農耕民族だから土を耕してましたが、土はそのうちに固まるじゃないですか。
外から風が入ってきて土をほぐさないと調和しない。
その土の固さや風の入り具合がすごく大事なのかなと。
東京は風がすごく強くて、京都は土が固い感じ。
だから一見さんが入ってこれないけども守られてるものがあり、そこに風が入ってくるとすごいふくよかな感じになると思う。
入山:京都でよく言われるのは、なかなか外を受け入れない。
でも逆に固い土があるところにポンっと外の風が吹くとめちゃめちゃ面白いカルチャープレナー的なことができるんじゃないかっていうことだと思ったんですが、山内さんいかがですか?
山内:京都では、縁があるかとか、誰がやるかで決まってしまうところもあると思います。
変えようとすることに気合いがいる街なので、気合いを入れたり腰を上げるまでがしんどいですけど、そこに理解を得られれば、割と京都の人達って受け入れてくれる土壌があるのかなと思います。
入山:本質が分かってもらえれば受け入れてもらえる?
山内:そうだと思います。
京都は敷居が高いといわれるけれど、敷居の高さっていうのは間口を広げすぎると大切にしてきた文化が薄まってしまうという警戒から敷居を高くしているという経緯があるのではないでしょうか。
そういうところでは、「この人ちゃんとわかってくれるんだな」という信頼があれば、京都の人達は全然受け入れてくれると思います。
佐宗:東京は自由になんでもつくれるからノーコンセプトで、京都は制約に合わせてなにかをつくっていく。
京都はコンテンツの中身を磨きやすい環境なんだと思います。
あと敷居の高さですが、「分かってるな!」と思われるくらいものをつくっていくジャンプをしなければいけない場所。
でもそういう人がうまく入ってこれると、本当に面白いことができる。
その例が、東京出身で今は京都で和食のお店をしているミヤシタさん。
お話をお願いできますか。
ミヤシタ:伝統と文化は切って考えないといけないんですよね。
カルチャーは耕すことが語源、常に新しく生まれ変わるもの。
トラディショナルは伝えていくもの、軸があるものです。
そういう意味で、京都は止まってないでずっと変わっていける街だと思いました。
岩本:文化は伝統になった瞬間に衰退がはじまると思うんです。
型が決まった瞬間にカルチャーは衰退をはじめる、なので、さっきの話はそういうことなんだと思います。
で、そのど真ん中にあるのは思想、日本に古来から続いてきたもの、価値観とかがらしさに変わって、いくら表層的なカルチャーやトレンドをがあってもそこに流れてるものが非常に本質的な価値があるんだろうなと思います。
入山:伝統になったらいけない……その咀嚼の仕方?解釈が難しい
佐宗:前職のソニーにいる頃は新しいものに価値があると思ってたんですが、別の会社の社長さんがずっと言うのは「僕らが変わらないために変わり続けるんだ」で。
どういうことかというと、世の中は変わる、世の中は変わるから変化に合わせてポジションを変えないといけないけど、でも本質的な軸は変えちゃだめだと。
適度に変化しないと普遍的な価値は生み出せない、と言われたのが印象的で。
「時代を長く生きるコツ」って、僕はこういうところにあるんじゃないかなって。
思想領域の普遍性と表現をしていく部分の革新性があって、両面を持つものがこれからの文化を作り出していく上ですごく大事だし、こういうことはテックイノベーションではあんまり語られない領域でもあると思います。
入山:本質的なものを追求するのが京都では大事なんじゃないか、というお話ですね。
エリイ:京都が来たい場所なのが重要で、たとえば今日の登壇料って少ないどころか此処にいること自体ですでに赤字なんですね。
他の皆さんもそうかと思いますけど。
なんで私がここにいるかって、京都だからなんですよね。
今日のトークはただのきっかけで、京都に来たかった。
そういう人を引き付ける価値がすでにあるわけで、それってお金を払ってもできないこと?じゃないですか。
その価値が今話されてたことだと思うんですけどね。
前川:うちも最初はこのプロジェクトをボランティアでやってたし、もっと言うと京都で仕事するために始めたくらいで。
これが京都の魅力で、そこまでしてきたい場所ってなんなのか?を追求することに本質があるのかと。
入山:普段なら講演料が何百万もかかる人に「1円も出さないけど京都のセッションに来て!」とお願いすると「行きたい」とみんな言う(笑)
面白いですよね。
エリイ:1円も出さないという仕事はよく分かりませんが、私が京都にくるのはバイブスが良いっていうか。
私の子供の名前は京都のタクシーの運転手さんが教えてくれた場所からとったんですよ。
なんていうか言語化するのは難しいんですけど、お寺がいいとか、砂の感じがいいとか、ご飯がいいとかもあるんですけど、なんだろうな……。
みんなが感じてるように、エネルギーみたいなものもありつつ、目でみて楽しめるところが大きいのかなって思うんですよね。
捉えられている時間の幅が広いから、東京とは違った観点から物事を考えたり、見たりする事が出来ますね。
入山:本質って言語化できないんですよ。
すごく難しい、本質だから。
あえて僕がいうなら、「イケてるから」ですよ。
たぶんバイブスと同じなんですけど。
岩本:京都は僕の中では時代の連続性が見えてるかなって。
なんか自分をゆだねたい感じがするんですね。
他の都市は非常に非連続に成長してて、つぶれてたりするんですが、京都は先人たちからの時代が連続してるんだって感じ。
歴史がつながってる感覚があると、そこに頼りたくなるっていうか、自分がそこに帰属したくなる感覚がある。
佐宗:僕も同じで、京都には自分のルーツがある、この土地につながってるんだなっていう実感を比較的もてる場所。
祖先とかがずっと作ってきたものに繋がれる気がして、自分は自分でいていいなーみたいな安心する気持ちはさっきの「イケてる」と近いんじゃないかなと。
山内:なんでみんな京都に来たいかは、ここでしか得られない情報があるからではないでしょうか。
人間がなんか行動する時ってインプットが大事だと思うんです。
情報には2種類あると思ってて、最先端の情報と、そこにしかない情報。
最先端の情報があるから東京やNY、ロンドンとかに行く。
京都は最新、最先端の技術の情報があるわけではないけど、ここでしか得られない感じれない情報がある。
入山:久米さんはいかがですか?
久米:大阪の人に何かを話すと「よし!まずやってみよう」となるのに、京都で同じ話をすると3回くらい怒られる。
だいたい皆さんそれでフェードアウトしてしまうと思うんですけど、僕はそこをぐっと入って5回ぐらい話すとすごく、さっきのように地域でしか聞けない話とかを京都の方がしてくださる。
入山:さっきの山内さんの話と同じで、京都の人は外部の風を嫌うけど、本質的なところに共感できると思うと急に受け入れてくれると?
久米:そうです。
入山:そこに5回かかる?
久米:はい、なんだかんだ5回かかりましたね(笑)
ほんと揉めるんですよ。
ある地域の方と別の地域の方で揉めてて。
そこに「まあまあまあ!」って僕が入ってくんだけど、そういうのが逆にすごく魅力的だと思いました。
入山:魅力的?
久米:それぞれ地域への思いがあって、その裏には語りきれない歴史が残っているんですよ。
京都の方と話してると、泣かれたりするんですよ。
こっちも泣いちゃいますよね。
それで、さらにもっと頑張ろう!となって。
お節介の連続をこっちからやっちゃうっていう。
参加者:街の人が大切にしている伝統があるんですね。
で、それは3回くらいでは分からないだろう、と思う。
5回くらい来てくれると、ようやくわかってくれるだろう、と思う。
その人付き合いの深さが大事なんです。
普通の町なら3回戦えばわかるけど、1000年の歴史がある京都は5回くらい戦わないと分からない
参加者:京都への違和感は、外部の人をよそ者扱いすることで、それをいつまで続けていくのか?と思ってて。
京都の人口がこれからかなり減って高齢者が多くなって、京都に住んでいる子供が少なくて、文化を受け継ぐ人間がどんどん少なくなっていく。
よそ者文化とか、内側にいるから感じるとか、そういうの関係なく、一個の都市として強いビジョンをもって動いていかないと、結局なんか50年後に「僕たちって何を守ろうと思ってたんだっけ?」っていう、守る物自体がなくなっちゃうなって。
入山:次は、今日のテーマであるカルチャープレナーとしてできる具体的なアクションの話をしましょう。
これをしてみたらおもしろいんじゃない?っていうのをシェアしてください。
岩本:僕は、圧倒的にweb3なんですけど。
別にトレンドに流されるとかではなく、やっとテクノロジーが追い付いてきたなという感じと。
ハイソサエティ、ハイコンテクストな社会(京都)がちゃんと世界中の方々に届けられるなら、それはどんどんやるべきだなって。
入山:僕もこのスタジオ自体をDAOみたいにしちゃえばいいかなと。
トークン出しちゃって。
岩本:おっしゃる通りです。
世界中の方々が日本の空き家が好きなのに日本にこれなくて、みんなでトークン買って、集まったお金で空き家を買ってリノベして、お金を支援した人は日本に来た時にリノベした空き家に泊まれるっていうDAOをつくってる取り組みがあって。
京都には昔ながらの町家がありますが、それを世界中の人が分散的に支えて、日本に来た時にはそこに住んで現地の人と交流する。
みたいなのが循環するとすごく良いなと思います。
入山:山内さんはどうですか?
山内:ちょっと概念的な話になりますが、京都の人は「シビックプライド」が高いと思うんですよ。
だから外部の人から分かったようなことを言われるとカチンとくるのは、、みんなそうだと思いますけどね。(笑)
NFTとかDAOとか良いんですけど、自分の家の隣の空き家に見ず知らずの人がウロウロしてたら怖いじゃないですか?
単純に、外の人が泊まりに来た時に、この地域のゴミの出し方わかるのかな?とか。
そういうことをみんな心配するわけですよ。
そこらへんがちゃんとフォローされたらテクノロジーはどんどん使ったほうが良いと思うんですけど、ユーザー視点を置いてきぼりにしないほうがいいのかなって思って。
具体的なアクションの話だと、京都には市内だけで37の大学があるんですね。
学生が勝手に入ってくる素晴らしいシステムがある。
京都の課題は、この若い人が外にどんどん出ていっちゃうこと。
それで、京都はテクノロジーの入る余地が十分にあるところだと思ってるんですよ。
たとえば、窯をつかった工芸では職人さんの長年の経験に頼ってしまっているが、そこに、テクノロジーをもたらすことで、最適な温度や環境を継承していくことができるようになると思うんですよね。
そこに神秘性があるんだろうけど、そこをテクノロジーで押さえれば技術継承がもっとスムーズになるし、空いた時間でもっともっと新しいこともできる。
だからテクノロジーとクラフトと、あとは企業がなんかおもしろいことをしたりするので、そこをつなげるのがいいんじゃないのかなって思ってます。
入山:ありがとうございます。
素晴らしいポイントで、大学生は外から入ってきても京都の皆さんは受け入れるじゃないですか。
で、その人達が京都に残ってくれれば良いですよね。
エリイさんはいかがですか?
エリイ:大学ってシステムとしてすごいですよね。
人間がやってきて、人生の4年を過ごすわけじゃないですか。
岩本さんがおっしゃっていたように大学生が帰属してくと思うんですよ、京都に。
でも、京都側はそれを受け入れられるんでしょうか?
ニシダ(京都市戦略室):京都は人口の1割が学生ですからね。
学生のパワーをどう生かすかが、まさに成長戦略の課題で。
京都は学生を受け入れてるけど手放してる。卒業後の学生の市内定住率は2割ほどです。
なんていうんですか、もっと京都にいたい!というマインドを呼び起こせてないというのは、すごくあると思うんですね。
学生が希望する就職先が足りないことなどが原因で、そのまま京都に残って起業したいって思う選択肢をつくれたら、京都に残るモチベーションになるんじゃないかなと思います。
佐宗:さっきクラフトの話がでたんですが、手仕事ってものすごいグローバルに可能性があって。
この前ロンドンの人と話してたんですけど、コロナ禍になってイギリスでは手仕事の価値がすごく上がったらしい。
でも、職人さんは発信しない。
ましてや英語で発信となると難しい。
翻訳がちゃんとできる人が職人さんと一緒にいるとすごく可能性があって。
プロデューサーやトランスレーターみたいな人がいれば。
伝統工芸を発信していく仕事を支援するインターンみたいな制度をつくったら、残りたい学生さんは残ると思うんですよね。
前川:大学生が京都に残らない理由は仕事だと思っているので、そこがうまく結びつけば需要はあるんじゃないかなと。
京都はスタートアップの数が少ないな~と思うんですが、京都の学生からみると、インターンできるところが少ない。
入山:京都はインターン先が足りてないんですね。
なるほど~。
さっきの話とつながってきますね。
山内さんはいかがですか?
任天堂はまさにカルチャープレナーという気がしますが。
山内:僕は任天堂で働いたキャリアはないので実体験から話すことは出来ませんが、いい裏切り方をするのが伝統の本質なんだと思っています。
今日話してるのは、京都の文化って今のままでいいのか?っていう話と、京都を盛り上げるために何が足りないのか?という具体的な話なんだと思うんですが。
クラフトとかってギークだから、多くの学生には刺さらないかもしれないんですけど。
逆に、海外の人や東京のエグゼクティブとかはクラフトをみたくてアクセスしてくる。
その人達が京都にきたときに、学生と繋がりを持たせることが大切で。
というのも、京都では起業してもライバルがいないんですよ。
先輩もいないし起業した時の苦しみとかを葛藤をシェアできる相手がいなくて寂しくてやめちゃうという現実がある。
京都で起業した参加者:ライバルがいないのは大きな問題で、先駆者がいないからロールモデルがないし、どんなところでつまづくかが分からない。
東京の人の話を聞くと、ロールモデルがいてやりやすそう。
そういうふうな環境を調整するのが重要なんじゃないかなと思いました。
山内:おっしゃる通りで、そういう先輩たちを引っ張ってくるために京都の文化があると思ってて。
京都の文化に深みがなくなると、そういう先輩たちが離れてしまうから、やっぱり京都は京都らしさの本質をついたような新しい活動をしないといけないし、「京都でこういうことをやってるんですよ!」と発信すれば見に行きたいなという人がでてくる。
そういう人達が望むのは、ギークなクラフト文化や伝統産業。
その時に学生との接点をつくるべきだし、京都の文化を海外の人がカッコいいと言ってるのを聞いて、学生の意識が「これカッコいいの?だったら伝統産業を生かして何かできないかな?」となっていくと思うんですよ。
入山:つながりの話ですよね。
今はつながってないから、そこをいかにつなげていくかっていう。
カルチャープレナーが根付くためにはなにが必要だと思いますか?
伝統と文化が完全に分かれるのではなく、交じり合う取り組みができれば良い気がしたんですが。
岩本:日本の伝統とされる文化って、明治以降になってから言われ始めたものが多いんですよ。
本来の伝統ってなんだっけ?文化ってなんだっけ?という議論が今されてるのは、すごく良いことだと思います。
佐宗:今日あった話ですが、カルチャーではなくカルティベイト(cultivate)、「耕す→新しくし続ける」をいかにやっていくかが課題だっていうのは良い気づきだと思いました。
入山:動詞で考えるのが結構大事で、名詞で考えると思考を閉じ込めるんです。
やるべきことを動詞にすることも大事ですね。
京都に住む者としては、京都の価値は外の人が思うような寺社仏閣が並ぶ風景や古い町並みとかではないと思う。
そこ(京都の魅力)をはっきりさせないと物事が前に進まない気がして。
たとえば東京にいたほうが資金調達のコストが下がるとか、そういうメリットに勝てるものがあるのか?という意味です。
岩本:起業家としては3〜4年先ではなく100年後をみないといけないと思ってて。
100年の軸がある都市である京都にいることに価値がある。
山内:日本には死ぬほどタンス貯金というものがあって、まだまだ生かしきれていない実態があります。
僕の個人的なミッションの1つとしては、そういった日本の活用しきれていないアセットをどのように活かしていくのがいいのか?資産を担う次世代の人間としてモデルケースになれたらいいなと思っています。
入山:良いですね。
カルチャープレナーの話をしていたけど、お金の引っ張り方はそんなにしてない気がする。
佐宗:そこは答えはなくて、明らかに時間軸の長い事業をすると、10年でこのスケールね、みたいな今のスタートアップのサイクルにはめようとするとはまらないものもあるんですよね。
別の資金調達の仕方が絶対に必要で、日本ではパブリックがお金を出すものという常識だったんですけど、そのモデルだと細っていくのは間違いない。
だから民間が長い期間をかけてお金を出していくためにはどういう仕組みが必要なのか?ということ自体の議論が必要ですね。
たとえば資生堂は文化に敏感。
そういう大企業が「京都に財団のようなものをつくろう!」と思えるトリガーをつくりえないのかな~とは思いました。
企業の内部留保は確実にあって、再投資の仕方が課題になってて、そこに京都は「うちは強いコンテンツもってます」と言いやすいと思います。
入山:ありがとうございます。
もっともっと話を続けたいんですが時間をオーバーしているので、これで終わりにしたいと思います。
みなさん活発な議論をしていただいて、本当にありがとうございました。
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