資本金払込とは、会社設立時の資本金を発起人名義の銀行口座に振り込むことです。(→発起人とは?)
法務局は払い込まれた金額を見て、資本金があるかないかをチェックしています。単純作業ですが、意外に間違えやすい手続きでもあるため、しっかりと手順を理解し、一発で手続きが終わるようにしましょう。
この記事では、会社設立時の資本金の払込の方法と注意事項について解説していきます。
このページの目次
資本金の払い込みの手順は、大まかに分けて5段階です。何をどうすればいいのか、順番に説明していきます。
まず、発起人個人の銀行口座を用意します。
用意する口座種別は、普通口座で問題ありません。これは、資本金の払い込み先となる口座です。
この時点では、まだ会社名義の銀行口座が作れません。しかし、法務局に資本金の有無を伝えるためには、その証拠が必要です。そのため、会社名義の口座の代わりに資本金があることを示すため、必然的に個人の銀行口座を使うことになるのです。
発起人が複数人いる場合は、代表となる発起人(これを発起人総代といいます)の口座に振り込みをおこないます。よって、発起人総代の個人名義の銀行口座を用意する必要があります。
口座は新しく開設してもいいですし、既存の口座を使用しても構いません。なお、払い込みで使用する銀行口座は、定款等で示す必要はありません。
用意する口座は、通帳がある銀行のものを使いましょう。これは、あとから振り込みをしたことを証明する必要があるからです。
用意した口座へ、資本金を振り込みします。預け入れでは、誰がどれだけの金額を支払ったのか証明できないためです。振り込むことにより、資本金を払い込んだ発起人の名前と金額が通帳に記載されます。
口座の名義人である発起人であっても、これは同じです。
ただし、発起人が1人の場合は、他に資本金を支払う人物がいないため、預け入れで資本金払込を行うことが可能ですと。
また、発起人の代表者が各発起人から資本金を預かり、まとめて口座へ払い込んだとしても、手続きをするうえで特に問題にはなりません。
払い込む金額は、設立事項に定めた金額と同額、もしくはそれ以上でなければなりません。
発起人が複数いる場合は、誰がどれだけの金額を払い込んでいるか、確認するようにしておきましょう。万が一、払い込まれた金額が少ない場合は、不足分を請求しなくてはならないからです。
各発起人が資本金を払い込んだあとは、まず通帳に記帳をし、それから以下のページをコピーします。これは、各発起人がきちんと資本金を払ったことを証明するためです。
用紙サイズは特に決められてはいませんが、のちに作成する証明書とサイズを合わせておくほうがよいので、A4サイズをおすすめします。
銀行によって氏名や口座番号が書かれているページが、表紙のすぐ裏であったり、最終ページであったりと異なります。表紙裏にないこともあるので、よく確認してください。
コピーを取ったあとは、取引内容に発起人が払い込みしたことがわかるように、その一行をマーカーで印を付けておくといいでしょう。
通帳のコピーを取ったあとは、各発起人が資本金を支払ったことを代表取締役が証明するための書類を作成します。これを「払込証明書」と呼びます。証明に必要な項目は、次の7つです。
いくつかの記載方法が分かりづらい項目について、補足説明します。
定款に記した通りの金額と数量を記載します。
「払い込まれた金額の総額」÷「払い込まれた株数」で算出した金額を記載します。
年月日に記載するのは、資本金が払い込まれた最も遅い日以降の日付でなくてはなりません。この証明書を作成するタイミングが、資本金が全て払い込まれたあとになりますから、払込証明書の作成日にすればよいでしょう。
設立事項で定めたものを記載します。住所にビル名などが入っている場合は、設立事項と同じように表記するようにします。
払込証明書のすべての項目の記載ができたら、会社代表印を押印します。
押印箇所は下図の通りです。払込証明書の左上に1つと、払込証明書の代表取締役の氏名右側の2箇所です。
払込証明書の左上に押印する際は、綴じるときに隠れてしまうことがあるため、それを考慮して左隅ぎりぎりではなく余裕を持たせておくといいでしょう。
作成する部数は、1部です。法務局に提出するために必要なだけですので、複数作る必要はありません。
※左上の代表印は「捨印」というものです。あとからの修正を許可する意思表示として押印されるものです。これをしておくことで、書類作成ミスをしていた場合の修正が楽になります。
払込証明書を作成したら、予め取っておいた通帳のコピーと合わせ、1冊にまとめます。まとめる順番は、次のとおりです。数字の小さい方が最上段になり、数字の大きい方が最下段になるように重ねます。
1. 払込証明書
2. 通帳の表紙
3. 通帳の表紙裏
4. 通帳のコピー(取引内容記載箇所)
払込証明書が一番上にきていたら大丈夫です。
左側上下2カ所をホチキスで止めて、各ページの境目に会社代表印で割り印を押印します。
資本金を払い込むうえで、注意すべき事項をまとめています。ぜひ、参考にしてください。
資本金の払込先に使用できる銀行口座は、発起人が「ここに振込みするように」と決めたところに払い込むことになります。誤って異なる発起人の口座に振り込んだとしても、資本金の同額もしくはそれ以上の金額が振り込まれていれば、資本金としてみなされます。
しかし、払い込みを証明する際に、全ての口座のコピーが必要となってしまい、手間がかかります。また、管理もしづらいため、1つの口座にまとめておくほうがベストです。
使用する口座については、発起人ではなく、会社設立時に定めた代表取締役名義の銀行口座を使うことも可能です。この場合は、発起人が代表取締役に対して、資本金を受け取る権限を託したことを示す証明書(委任状)が必要です。
資本金払込に使う銀行は、ゆうちょ銀行やネットバンクでも可能です。
ゆうちょ銀行は、民営化されて郵便局から銀行へと変わり、都市銀行同様に通帳もあるためです。また、利用者が増えているネットバンクを資本金の払い込み先にすることも可能です。
ただし、ネットバンクの場合は通帳がないため、取引状況をプリントアウトすることになります。
ネットバンクを利用する場合は、次の項目が掲載されているWEBページをプリントアウトしてください。複数ページにわたる場合は、次の項目が含まれるようにプリントアウトするか、もしくは同一の口座であることを証明する必要があります。
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画像出典元:GMOあおぞらネット銀行公式HP
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原則、資本金払込は定款認証日以後にする必要があります。
例外的に、東京法務局のみ定款を作成後、認証前に払い込んでも良いようです。これは、あまりにもタイミングを間違える人が多いためだそうです。
しかし、基本的には会社法に基づいた対応となりますので、定款の認証日以後に払い込みをしたほうが間違いないでしょう。
資本金を払い込んだあとは、すぐに記帳してコピーを取るようにしましょう。
以前は、会社設立の手続きが済むまで、資本金に触れることはできませんでした。ところが、現在では払い込みされたあと、資本金を流用して備品購入などの費用に充てることができるようになっています。
しかし、資金の動きが激しいと、コピーをするページが多くなってしまったり、払い込まれた金額をチェックしづらくなります。
資金を使うことも踏まえて、発起人全員の払い込みが終わった後は、早急に通帳をコピーしておくといいでしょう。
使用する印鑑は代表者印(会社の実印)です。
代表者個人の実印ではないので、間違えないように注意しましょう。
多くの方にとっては関係のない話ですが、株式の一部を発起人が引き受けて、残りの株を引き受けてくれる人(株主)を募る募集設立で会社設立する場合は、上記の書類の他に「払込金額保管証明書」が必要になります。
これは、定款を作る発起人による設立とは資本金の取り扱い方が異なるため、発起人が払い込んだ資本金を保全する役割を担っているからです。
「払込全額保管証明書」は、銀行で発行してくれます。発行してもらうには、法務局で定款の認証がされてからとなります。
手順が発起人による会社設立と少し異なるので、募集設立時にはこの証明書が必要になると覚えておきましょう。
資本金の払い込みは、さほど難しいものではありません。だからこそ、つい間違えてしまうということが多いようです。
大切なポイントは、払い込む先の口座を1つに絞ることと、払込証明書をつくるタイミングです。
今回解説した手順を順番に踏んでいただければ、まず失敗することはないでしょう。
資本金払込が終わったら、いよいよ次は法務局での登記です。必要書類を準備しましょう。法人登記の必要書類は以下の記事でまとめています。
今回は資本金払込についてご説明しましたが、いかがでしたか。
この後に控える定款作成や登記手続きはもう少しだけ手間のかかる作業になってきます。
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画像出典元:ペイレスイメージズ