ビジネス文書は、業務上のやり取りを円滑化・効率化するために、ビジネスシーンで使われる文書です。作成には決まり・様式があるため、正しい文書マナーや書き方を理解しておかなければなりません。
本記事では、ビジネス文書の書き方や具体例を記したフォーマット、さらにはいざというときに重宝する時候・感謝の挨拶を紹介します。
ビジネスパーソンに求められるスキルはさまざまありますが、正しく印象のよい社内・社外文書を作成できることも、重要なスキルの一つです。
正しいビジネス文書を作成し、ビジネスパーソンとしての信頼度を高めましょう。
このページの目次
ビジネス文書は、文字通り「ビジネス上のやり取りで使われる文書」です。主な特徴として、以下のものがあります。
種類はさまざまあるため、どのようなバリエーションがあるのかを理解しておきましょう。ビジネス文書の種類や使うシーンを紹介します。
ビジネス文書を大別すると、「社内文書」「社外文書」があります。
社内文書とは、文字通り社内でやり取りされる文書です。主に「情報伝達」の主旨で使われることが多く、企業内で定められた様式・フォーマットに従って作成されなければなりません。
一方社外文書は、社外の取引先・顧客等に宛てて送られる文書です。社内文書よりも「相手へ与える印象」により配慮する必要があります。
また社外に送る文書は、ビジネス取引が絡む「取引文書」だけとは限りません。相手との付き合いを円滑化する目的で、「社交文書」を送付することもあります。
社内文書は、主に以下のシーンで使われます。
一方、社外文書は以下のシーンで使われます。
一読しても意味が分からないようなビジネス文書は、受け取った相手を混乱させます。「この人からの文書は読みやすい・分かりやすい」と言われるよう、意図が明確に伝わる文書を作成しましょう。
具体的には、以下のポイントです。
1. 結論・文書の目的から書き出す
2. あいまいな表現は避ける
3. 「一文一義」を意識する
4. 何でも「弊社では」を付けない
5. 5W3Hで構成する
6. ポイントは箇条書きで示す
7. 敬語・表現を正しく使う
8. 「ですます」調で書く
9. 文書の目的・相手を常に意識する
10. 校正を忘れずに行う
それぞれについて、詳しく紹介します。
ビジネス文書のスタイルは、以下を踏襲するのが一般的です。
1. 結論(文書送付の目的)
2. 経緯・説明
3. 補足
文章が苦手な人の中には、「時系列」でダラダラと書いてしまう人がいます。これではいつまでたっても要件が見えず、何が言いたいのか分からない文書になるでしょう。
ビジネスパーソンの多くは、時間を有効に使いたいと考えます。文書の頭に要件が書いてあれば「今すぐ読むべき」「後に回してOK」の判断をしやすくなるのです。
ビジネス文書では、具体性を欠く表現はできるだけ排除しましょう。文言の根拠を具体的に提示して、文書の信頼性を高めることが大切です。
例えば「多くの顧客に好評をいただいています。」と書いた場合「どのくらい?」「どんな好評?」と相手に疑問を持たせるかもしれません。
「○人にアンケートを採った結果、全体の○○%から弊社の商品について「使いやすかった」「また使いたい」という言葉をいただきました。」
上記のように記せば、相手に伝わりやすくなります。
一つの文章には、一つの内容を入れるに留めましょう。句読点でダラダラと文章をつなげると、本当に伝えたいことが分からなくなります。
例えば以下の文章は、さらっと読んだだけでは要点が伝わりません。
先にお願いした○○と併せて、△△もお願いできたらと考えているのですが、弊社としては□□を最終期日としたく、貴社のご都合と希望期日をお伺いできればと考えた次第です。
一文一義にすると、以下の文章になります。
先にお願いした○○と併せて、△△もお願いできたらと考えています。弊社の希望最終期日は、□□です。貴社のご都合と希望期日をお聞かせいただけますでしょうか。
ビジネス文書では、「分かりやすさ」を意識してください。
自分の意見を言う時は「私ども」を使うのがおすすめです。
ビジネス文書でよく使われる「弊社」「弊社では」を使うと、文書に書かれたことは「会社としての意見」となります。
一個人の意見が「全社的な意見」と取られて、思わぬ誤解を招く恐れがあるでしょう。
5W3Hは、情報を漏れなく・正しく伝えるためのフレームワークです。ビジネスシーンでは特に重視され、ビジネス文書を作成する時はもちろん、メモを取る時・計画を立てる時などにも使われます。
5W3H の内容は以下の通りです。
相手に何か伝えたい時や確認したい時は、上記のフレームワークを意識すると情報漏れを防げます。
重要なこと・特に注意を払ってほしいことは、箇条書きするのがおすすめです。全て文章にしてしまうと、情報が埋もれて伝達ミスが発生するかもしれません。
○月×日10時より、◎◎にて新人対象のミーティングを行います。筆記具と資料を持参して集合してください。
この文章をより見やすくするなら、以下がおすすめです。
新人対象のミーティングを下記の通り行いますので、ご確認願います。
どんなに丁寧で完璧なビジネス文書を作っても、敬語・表現が間違っていると台無しです。
個人への信頼度が低下するのはもちろん、「この会社は社員教育が行き届いていない」と会社にまで悪い印象を持たれてしまう恐れがあります。
例えば以下の文言は間違った敬語・表現で、ビジネス文書で使うのには適しません。
間違った敬語・表現 | 正しい表現 |
お分かりいただけたでしょうか | ご理解いただけたでしょうか |
大変参考になりました | 大変勉強になりました |
上司にも申し上げておきます | 上司にも申し伝えておきます |
お体をご自愛ください | ご自愛ください |
ビジネス文書では、相手に対する気遣い・マナーを示す必要があります。文体は「敬体」といわれる「ですます」調で書きましょう。
「だ」「である」などの書き方は、読む人に上から目線な印象を与えます。たとえこちらが発注側で相手が受注側であったとしても、敬意を欠いた文体はマナー違反です。
「相手に何を伝えるべきか」によって、ビジネス文書に含むべき情報・内容は異なります。ビジネス文書を作成する際は、相手に合わせて情報の取捨選択を行いましょう。
ビジネス文書を作成する時は、以下のポイントを意識するのがおすすめです。
ビジネス文書を書き終えたら、初めから目を通してみましょう。誤字・脱字・言葉の誤用チェックはもちろん、文書の分かりやすさについても確認が必要です。
分かりにくく感じた文書は手直しをして、なるべく簡潔に仕上げます。大勢の人の目に触れる文書や重要な文書は、第三者にもチェックしてもらうと安心です。
ビジネス文書を書く時は、「A4」1枚に納めるのが基本です。ここからは、ビジネス文書のフォーマットを「社内」「社外」に分けて紹介します。
社内文書の種類には以下のものがあります。
具体的なフォーマットは以下の通りです。
文書の管理番号は、右詰で1番上に記載します。
これは社内の文書管理を効率化するためのものですが、決まった様式はありません。自社の定めに従いましょう。
文書を送付する日時です。作成日時ではないため、混同しないよう注意してください。和暦・西暦を用いるケースがあるので、こちらも自社の形式を踏襲することが必要です。
文書を送る相手を記載します。
個人なら「様」「殿」などが後に付くでしょう。「各位」は、送信の対象となる相手が多い場合に使います。
文書を発信する人の氏名を記載します。社内文書なら、部署名から記すのが一般的です。
件名は中央寄せで目立つように書きます。下線を入れたり太字にしたり、フォントを大きくしたりするとよいでしょう。送信内容を記載したら、「記」以下に詳細を記します。
記は中央寄せ、その他の文は左寄せにしてください。
担当者・連絡先は備考に記しておけばOKです。
社内文書の内容が終わったことを示します。文書の最後に右詰めで入れましょう。
社外文書は、主に以下のような文書です。
社外文書のフォーマットを見ていきましょう。
文書を発信した日付を記載します。西暦・和暦の選択は自社に合わせます。
社外の人に送る場合は、名前・役職などを間違えないよう注意しましょう。同じ名前でも漢字が異なるケースは多いため、送る相手の名前をきちんと確認することが必要です。
なお不特定多数の人に送る場合は、「○○各位」を付けてください。「各位」とは、「皆様方」「皆様」という意味です。
まれに「各位様」「各位殿」「○○様各位」などと記す人がいますが、この書き方では「皆様様」「皆様殿」「○○様皆様」とおかしな意味になってしまいます。
「この人は常識を知らないな」と思われないよう、各位に「様」「殿」等は付けないように気を付けましょう。
発信者の社名・役職・部署・名前を書きます。会社としてのお知らせは、代表取締役の名前で出すのが基本です。
社外文書は文書の基本に則って、前文、主文、末文が必要です。
前文は頭語の「拝啓」から始め、時候の挨拶も入れましょう。相手の繁栄を喜ぶ言葉・日頃からお世話になっていることへの感謝も、必ず記載しなければなりません。
主文に入る時は「さて」と話題を切り替えます。
その後は、文書を送付した目的について、詳細を記載します。最後に頭語に合う結語(この場合は「敬具」)を入れれば、文章が終わったことを示せます。
分かりやすく示したい内容は、「記」以下に詳細を記します。社内文書と同様に「記」は中央揃えにしてください。文書の最後を「以上」で締めたら完成です。
改まった文書では「時候の挨拶」「相手への感謝の挨拶」を入れるのが一般的です。
時候の挨拶とは、季節ごとに定められた挨拶の定型文を指します。
古くから日本の四季の移り変わりの目安として使われた「二十四節気」にちなんでおり、季節・月によって選択すべき挨拶が異なります。時候の挨拶を入れる際は、文書を送る時期・季節にふさわしいものを選びましょう。
また感謝の挨拶は、相手が「個人」「法人」かで選ぶ言葉が違います。
まず個人が対象の場合、相手を呼ぶ時は「貴殿」が一般的です。一方法人を呼ぶ時は「貴社」としましょう。
なお相手の繁栄・健康を喜ぶ言葉も、個人・法人によって異なります。送信相手によって、正しく使い分けることが必要です。
以下、主な時候の挨拶と感謝の言葉をまとめました。
社外向けのビジネス文書を作る時の参考にしてください。
時候の挨拶 | 感謝の挨拶 | |
1月 | 新春の候、大寒の候、厳冬の候、寒風の候 |
【個人】 【法人】 【どちらでも使用可】 |
2月 | 余寒の侯、立春の候、春寒の候、節分の候、春浅の候 | |
3月 | 早春の侯、春暖の候、浅春の候、春寒ゆるむ候 | |
4月 | 陽春の侯、桜花の候、春暖の | |
5月 | 新緑の侯、薫風の候、立夏の候、晩春の候 | |
6月 | 梅雨の侯、入梅の候、紫陽花の候、向暑の候 | |
7月 | 盛夏の侯、猛暑の候、大暑の候、炎暑の候、夏祭の候 | |
8月 | 残暑の侯、秋暑の候、晩夏の候、立秋の候、処暑の候 | |
9月 | 初秋の侯、野分の候、白露の候、秋分の候、秋桜の候 | |
10月 | 秋冷の侯、菊花の候、霜降の候、紅葉の候、仲秋の候、灯火親しむ候 | |
11月 | 晩秋の侯、向寒の候、立冬の候、落葉の候、深秋の候 | |
12月 | 初冬の侯、師走の候、歳末の候、冬至の候、大雪の候 |
ビジネス文書の中でも、書き出しは特に重要です。一文目で相手に「この人は常識がない」などと思われないよう、正しい書き出しを理解しておきましょう。
書き出しの挨拶について、時候の挨拶や感謝の挨拶と共に紹介します。
日頃から付き合いのある相手には、「いつもお世話になっていること」への感謝から入るのが一般的です。事務的な連絡なら、頭語/結語や時候の挨拶はいりません。
上記の文章の後、用件を伝えましょう。
初めて連絡する相手に「お世話になっております」と言うと、違和感を持たれてしまうかもしれません。以下のような書き出しにするのが正解です。
より形式ばったビジネス文書を送る必要がある相手には、頭語/結語、時候の挨拶等が必要です。ビジネス文書では、以下の構成をベースとしましょう。
1. 頭語
2. 時候の挨拶
3. 相手の繁栄を祝福する言葉と感謝
4. 本文
5. 結び
また頭語と結語は1セットなので、組み合わせを正しく覚えておかなければなりません。よく使う頭語としては以下のものがあります。
頭語 | 結語 |
拝啓 | 敬具、敬白など |
謹啓 | 謹言、謹白など |
粛啓 | 頓首、再拝など |
急啓 | 草々 |
この後、時候の挨拶・相手の繁栄を祝福する言葉と感謝を述べ、本文に入ります。
拝啓 厳冬の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて ~用件~
敬具
時候の挨拶については前項の表をチェックし、季節に合うものをえらんでください。
ビジネス文書は私的な文書とは異なり、「分かりやすさ」「明確さ」が必要です。上手な文書を書こうとするのではなく、「いかに誤解無く言いたいことを伝えるか」に注力してください。
また、ビジネス文書は社内・社外それぞれに適切なフォーマットがあります。
受け取る相手が不快に感じたり「意味が分からない」と頭を抱えたりしないよう、定められた様式で必要な情報を記載しましょう。
ビジネス文書を適切に作成できる人は、社内・社外からの信頼も篤くなります。正しい言葉遣い・言葉選びをマスターして、ビジネスパーソンとして一目置かれる存在になりましょう。
画像出典元:Unsplash、Pixabay
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