ビジネス文書の書き方を解説!社内社外別フォーマットも紹介

ビジネス文書の書き方を解説!社内社外別フォーマットも紹介

記事更新日: 2021/12/28

執筆: 川崎かおり

ビジネス文書は、業務上のやり取りを円滑化・効率化するために、ビジネスシーンで使われる文書です。作成には決まり・様式があるため、正しい文書マナーや書き方を理解しておかなければなりません。

本記事では、ビジネス文書の書き方や具体例を記したフォーマット、さらにはいざというときに重宝する時候・感謝の挨拶を紹介します。

ビジネスパーソンに求められるスキルはさまざまありますが、正しく印象のよい社内・社外文書を作成できることも、重要なスキルの一つです。

正しいビジネス文書を作成し、ビジネスパーソンとしての信頼度を高めましょう。

ビジネス文書とは?

ビジネス文書は、文字通り「ビジネス上のやり取りで使われる文書」です。主な特徴として、以下のものがあります。

  • ビジネス上の証拠となる
  • 情報を正確に伝達できる
  • 情報を効率的に共有できる

種類はさまざまあるため、どのようなバリエーションがあるのかを理解しておきましょう。ビジネス文書の種類や使うシーンを紹介します。

ビジネス文書は大きく分けて2種類

ビジネス文書を大別すると、「社内文書」「社外文書」があります。

社内文書とは、文字通り社内でやり取りされる文書です。主に「情報伝達」の主旨で使われることが多く、企業内で定められた様式・フォーマットに従って作成されなければなりません。

一方社外文書は、社外の取引先・顧客等に宛てて送られる文書です。社内文書よりも「相手へ与える印象」により配慮する必要があります。

また社外に送る文書は、ビジネス取引が絡む「取引文書」だけとは限りません。相手との付き合いを円滑化する目的で、「社交文書」を送付することもあります。

ビジネス文書を使うシーン

社内文書は、主に以下のシーンで使われます。

  • 意見・提案をする:稟議書・上申書・提案書・計画書など
  • 報告をする:出張報告書・定期報告書・成果報告書・事故・トラブル報告書など
  • 指示・通達を出す:指示書・通達書・辞令など
  • 届出・申請をする:欠勤・早退・遅刻・休暇の届出・出張申請書・旅費交通費精算書・結婚届・顛末書など
  • 記録する:人事記録・議事録など
  • 連絡・調査する:通知文・回覧文・照会文・案内文・回答文・依頼文など


一方、社外文書は以下のシーンで使われます。

  • 取引を行う時:見積書・請求書・注文書・契約書など
  • 案内・お知らせを行う時:案内状・通知状など
  • 社交・挨拶:挨拶状・礼状など

 

ビジネス文書で大切な10のポイント

一読しても意味が分からないようなビジネス文書は、受け取った相手を混乱させます。「この人からの文書は読みやすい・分かりやすい」と言われるよう、意図が明確に伝わる文書を作成しましょう。

具体的には、以下のポイントです。

1. 結論・文書の目的から書き出す

2. あいまいな表現は避ける

3. 「一文一義」を意識する

4. 何でも「弊社では」を付けない

5. 5W3Hで構成する

6. ポイントは箇条書きで示す

7. 敬語・表現を正しく使う

8. 「ですます」調で書く

9. 文書の目的・相手を常に意識する

10. 校正を忘れずに行う


それぞれについて、詳しく紹介します。

1. 結論・文書の目的から書き出す

ビジネス文書のスタイルは、以下を踏襲するのが一般的です。

1. 結論(文書送付の目的)

2. 経緯・説明

3. 補足


文章が苦手な人の中には、「時系列」でダラダラと書いてしまう人がいます。これではいつまでたっても要件が見えず、何が言いたいのか分からない文書になるでしょう。

ビジネスパーソンの多くは、時間を有効に使いたいと考えます。文書の頭に要件が書いてあれば「今すぐ読むべき」「後に回してOK」の判断をしやすくなるのです。

2. あいまいな表現は避ける

ビジネス文書では、具体性を欠く表現はできるだけ排除しましょう。文言の根拠を具体的に提示して、文書の信頼性を高めることが大切です。

例えば「多くの顧客に好評をいただいています。」と書いた場合「どのくらい?」「どんな好評?」と相手に疑問を持たせるかもしれません。

「○人にアンケートを採った結果、全体の○○%から弊社の商品について「使いやすかった」「また使いたい」という言葉をいただきました。」

上記のように記せば、相手に伝わりやすくなります。

3. 「一文一義」を意識する

一つの文章には、一つの内容を入れるに留めましょう。句読点でダラダラと文章をつなげると、本当に伝えたいことが分からなくなります。

例えば以下の文章は、さらっと読んだだけでは要点が伝わりません。

先にお願いした○○と併せて、△△もお願いできたらと考えているのですが、弊社としては□□を最終期日としたく、貴社のご都合と希望期日をお伺いできればと考えた次第です。


一文一義にすると、以下の文章になります。

先にお願いした○○と併せて、△△もお願いできたらと考えています。弊社の希望最終期日は、□□です。貴社のご都合と希望期日をお聞かせいただけますでしょうか。

ビジネス文書では、「分かりやすさ」を意識してください。

4. 会社の意見と自分の意見を混同しない

自分の意見を言う時は「私ども」を使うのがおすすめです。

ビジネス文書でよく使われる「弊社」「弊社では」を使うと、文書に書かれたことは「会社としての意見」となります。

一個人の意見が「全社的な意見」と取られて、思わぬ誤解を招く恐れがあるでしょう。

5. 5W3Hを構成に盛り込む

5W3Hは、情報を漏れなく・正しく伝えるためのフレームワークです。ビジネスシーンでは特に重視され、ビジネス文書を作成する時はもちろん、メモを取る時・計画を立てる時などにも使われます。

5W3H の内容は以下の通りです。

  • When(いつ:時間)
  • Where(どこで:場所)
  • Who(誰が:対象人物)
  • What(何を:課題)
  • Why(なぜ:理由・動機)
  • How(どのように:手段)
  • How many(どれくらい:規模)
  • How much(いくら:金額)


相手に何か伝えたい時や確認したい時は、上記のフレームワークを意識すると情報漏れを防げます。

6. ポイントは箇条書きで示す

重要なこと・特に注意を払ってほしいことは、箇条書きするのがおすすめです。全て文章にしてしまうと、情報が埋もれて伝達ミスが発生するかもしれません。

○月×日10時より、◎◎にて新人対象のミーティングを行います。筆記具と資料を持参して集合してください。


この文章をより見やすくするなら、以下がおすすめです。

新人対象のミーティングを下記の通り行いますので、ご確認願います。

  • 日時:○月×日10時
  • 場所:◎◎
  • 必要なもの:筆記具・資料(○日配布済み)

 

7. 敬語・表現を正しく使う

どんなに丁寧で完璧なビジネス文書を作っても、敬語・表現が間違っていると台無しです。

個人への信頼度が低下するのはもちろん、「この会社は社員教育が行き届いていない」と会社にまで悪い印象を持たれてしまう恐れがあります。

例えば以下の文言は間違った敬語・表現で、ビジネス文書で使うのには適しません。

間違った敬語・表現 正しい表現
お分かりいただけたでしょうか ご理解いただけたでしょうか
大変参考になりました 大変勉強になりました
上司にも申し上げておきます 上司にも申し伝えておきます
お体をご自愛ください ご自愛ください

 

8. 「ですます」調で書く

ビジネス文書では、相手に対する気遣い・マナーを示す必要があります。文体は「敬体」といわれる「ですます」調で書きましょう。

「だ」「である」などの書き方は、読む人に上から目線な印象を与えます。たとえこちらが発注側で相手が受注側であったとしても、敬意を欠いた文体はマナー違反です。

9. 文書の目的・相手を常に意識する

「相手に何を伝えるべきか」によって、ビジネス文書に含むべき情報・内容は異なります。ビジネス文書を作成する際は、相手に合わせて情報の取捨選択を行いましょう。

ビジネス文書を作成する時は、以下のポイントを意識するのがおすすめです。

  • 相手の知識・経験:専門用語を使ってよいか・詳細な説明は必要か
  • 相手の担当業務:相手が最も知りたいことは何か・どの情報が必要で、どの情報が不要か

 

10. 校正を忘れずに行う

ビジネス文書を書き終えたら、初めから目を通してみましょう。誤字・脱字・言葉の誤用チェックはもちろん、文書の分かりやすさについても確認が必要です。

分かりにくく感じた文書は手直しをして、なるべく簡潔に仕上げます。大勢の人の目に触れる文書や重要な文書は、第三者にもチェックしてもらうと安心です。

ビジネス文書の書き方

ビジネス文書を書く時は、「A4」1枚に納めるのが基本です。ここからは、ビジネス文書のフォーマットを「社内」「社外」に分けて紹介します。

社内文書のフォーマット

社内文書の種類には以下のものがあります。

  • 意見・提案をする:稟議書・上申書・提案書・計画書など
  • 報告をする:出張報告書・定期報告書・成果報告書・事故・トラブル報告書など
  • 指示・通達を出す:指示書・通達書・辞令など
  • 届出・申請をする:欠勤・早退・遅刻・休暇の届出・出張申請書・旅費交通費精算書・結婚届・顛末書など
  • 記録する:人事記録・議事録など
  • 連絡・調査する:通知文・回覧文・照会文・案内文・回答文・依頼文など


具体的なフォーマットは以下の通りです。

1. 文書番号

文書の管理番号は、右詰で1番上に記載します。

これは社内の文書管理を効率化するためのものですが、決まった様式はありません。自社の定めに従いましょう。

2. 発信日時

文書を送付する日時です。作成日時ではないため、混同しないよう注意してください。和暦・西暦を用いるケースがあるので、こちらも自社の形式を踏襲することが必要です。

3. 送信対象者

文書を送る相手を記載します。

個人なら「様」「殿」などが後に付くでしょう。「各位」は、送信の対象となる相手が多い場合に使います。

4. 発信者名

文書を発信する人の氏名を記載します。社内文書なら、部署名から記すのが一般的です。

5. 件名・本文

件名は中央寄せで目立つように書きます。下線を入れたり太字にしたり、フォントを大きくしたりするとよいでしょう。送信内容を記載したら、「記」以下に詳細を記します。

記は中央寄せ、その他の文は左寄せにしてください。

担当者・連絡先は備考に記しておけばOKです。

6. 以上

社内文書の内容が終わったことを示します。文書の最後に右詰めで入れましょう。

社外文書のフォーマット

社外文書は、主に以下のような文書です。

  • 取引を行う時:見積書・請求書・注文書・契約書・督促状・断り状
  • 案内・お知らせを行う時:案内状・通知状
  • 社交・挨拶:挨拶状・礼状・見舞状・弔慰状


社外文書のフォーマットを見ていきましょう。

1. 発信日時

文書を発信した日付を記載します。西暦・和暦の選択は自社に合わせます。

2. 送信対象者

社外の人に送る場合は、名前・役職などを間違えないよう注意しましょう。同じ名前でも漢字が異なるケースは多いため、送る相手の名前をきちんと確認することが必要です。

なお不特定多数の人に送る場合は、「○○各位」を付けてください。「各位」とは、「皆様方」「皆様」という意味です。

まれに「各位様」「各位殿」「○○様各位」などと記す人がいますが、この書き方では「皆様様」「皆様殿」「○○様皆様」とおかしな意味になってしまいます。

「この人は常識を知らないな」と思われないよう、各位に「様」「殿」等は付けないように気を付けましょう。

3. 発信者名

発信者の社名・役職・部署・名前を書きます。会社としてのお知らせは、代表取締役の名前で出すのが基本です。

4. 本文

社外文書は文書の基本に則って、前文、主文、末文が必要です。

前文は頭語の「拝啓」から始め、時候の挨拶も入れましょう。相手の繁栄を喜ぶ言葉・日頃からお世話になっていることへの感謝も、必ず記載しなければなりません。

主文に入る時は「さて」と話題を切り替えます。

その後は、文書を送付した目的について、詳細を記載します。最後に頭語に合う結語(この場合は「敬具」)を入れれば、文章が終わったことを示せます。

5. 記書き

分かりやすく示したい内容は、「記」以下に詳細を記します。社内文書と同様に「記」は中央揃えにしてください。文書の最後を「以上」で締めたら完成です。

時候の挨拶と感謝の挨拶の一覧

改まった文書では「時候の挨拶」「相手への感謝の挨拶」を入れるのが一般的です。

時候の挨拶とは、季節ごとに定められた挨拶の定型文を指します。

古くから日本の四季の移り変わりの目安として使われた「二十四節気」にちなんでおり、季節・月によって選択すべき挨拶が異なります。時候の挨拶を入れる際は、文書を送る時期・季節にふさわしいものを選びましょう。

また感謝の挨拶は、相手が「個人」「法人」かで選ぶ言葉が違います。

まず個人が対象の場合、相手を呼ぶ時は「貴殿」が一般的です。一方法人を呼ぶ時は「貴社」としましょう。

なお相手の繁栄・健康を喜ぶ言葉も、個人・法人によって異なります。送信相手によって、正しく使い分けることが必要です。

以下、主な時候の挨拶と感謝の言葉をまとめました。

社外向けのビジネス文書を作る時の参考にしてください。

  時候の挨拶 感謝の挨拶
1月 新春の候、大寒の候、厳冬の候、寒風の候

【個人】
・貴殿におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
・貴殿におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます

【法人】
・貴社におかれましてはますますご繁栄のこととお慶び申し上げます
・貴社におかれましてはますますご隆盛のこととお慶び申し上げます
・貴社におかれましてはますますご隆昌のこととお慶び申し上げます
・貴社におかれましてはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます

【どちらでも使用可】
・貴殿におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます

2月 余寒の侯、立春の候、春寒の候、節分の候、春浅の候
3月 早春の侯、春暖の候、浅春の候、春寒ゆるむ候
4月 陽春の侯、桜花の候、春暖の
5月 新緑の侯、薫風の候、立夏の候、晩春の候
6月 梅雨の侯、入梅の候、紫陽花の候、向暑の候
7月 盛夏の侯、猛暑の候、大暑の候、炎暑の候、夏祭の候
8月 残暑の侯、秋暑の候、晩夏の候、立秋の候、処暑の候
9月 初秋の侯、野分の候、白露の候、秋分の候、秋桜の候
10月 秋冷の侯、菊花の候、霜降の候、紅葉の候、仲秋の候、灯火親しむ候
11月 晩秋の侯、向寒の候、立冬の候、落葉の候、深秋の候
12月 初冬の侯、師走の候、歳末の候、冬至の候、大雪の候

 

書き出しに困ったら

ビジネス文書の中でも、書き出しは特に重要です。一文目で相手に「この人は常識がない」などと思われないよう、正しい書き出しを理解しておきましょう。

書き出しの挨拶について、時候の挨拶や感謝の挨拶と共に紹介します。

1. 日頃から付き合いのある相手

日頃から付き合いのある相手には、「いつもお世話になっていること」への感謝から入るのが一般的です。事務的な連絡なら、頭語/結語や時候の挨拶はいりません。

  • いつも大変お世話になっております。○○株式会社マーケティング部の○×です。
  • 平素よりお世話になっております。○○株式会社マーケティング部の○×です。
  • いつもお力添えいただきまして、ありがとうございます。○○株式会社マーケティング部の○×です。
  • 日頃より大変お世話になっております。○○株式会社マーケティング部の○×です。
  • ご無沙汰しております。○○株式会社マーケティング部の○×です。
  • 大変ご無沙汰しております。○○株式会社マーケティング部の○×です。


上記の文章の後、用件を伝えましょう。

2. 初めて連絡をする相手

初めて連絡する相手に「お世話になっております」と言うと、違和感を持たれてしまうかもしれません。以下のような書き出しにするのが正解です。

  • 突然のご連絡失礼いたします。○○株式会社マーケティング部の○×太郎と申します。
  • 初めまして。○○株式会社マーケティング部の○×太郎と申します。

 

3. かしこまる必要のある相手・ケース

より形式ばったビジネス文書を送る必要がある相手には、頭語/結語、時候の挨拶等が必要です。ビジネス文書では、以下の構成をベースとしましょう。

1. 頭語

2. 時候の挨拶

3. 相手の繁栄を祝福する言葉と感謝

4. 本文

5. 結び


また頭語と結語は1セットなので、組み合わせを正しく覚えておかなければなりません。よく使う頭語としては以下のものがあります。

頭語 結語
拝啓 敬具、敬白など
謹啓 謹言、謹白など
粛啓 頓首、再拝など
急啓 草々


この後、時候の挨拶・相手の繁栄を祝福する言葉と感謝を述べ、本文に入ります。

書き出しの例文

拝啓 厳冬の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて ~用件~

敬具


時候の挨拶については前項の表をチェックし、季節に合うものをえらんでください。

まとめ

ビジネス文書は私的な文書とは異なり、「分かりやすさ」「明確さ」が必要です。上手な文書を書こうとするのではなく、「いかに誤解無く言いたいことを伝えるか」に注力してください。

また、ビジネス文書は社内・社外それぞれに適切なフォーマットがあります。

受け取る相手が不快に感じたり「意味が分からない」と頭を抱えたりしないよう、定められた様式で必要な情報を記載しましょう。

ビジネス文書を適切に作成できる人は、社内・社外からの信頼も篤くなります。正しい言葉遣い・言葉選びをマスターして、ビジネスパーソンとして一目置かれる存在になりましょう。

画像出典元:Unsplash、Pixabay

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