近年、働き方改革の一環として、直行直帰を導入する企業が増えています。
しかし、直行直帰は、従業員の自由度を高める一方で、労働時間の管理で課題も生じます。
本記事では、直行直帰のメリット・デメリット、労働時間の適切な管理方法、そして具体的なルールの作成ポイントを解説します。
直行直帰を検討している企業は、ぜひ参考にしてください。
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直行直帰とは、会社に出勤せず作業現場や営業先など目的地へ出向き、業務が終了したら会社に寄らずに帰宅することを指します。
直行直帰を行う多くは、外回り営業で会社に寄ると約束の時間に遅れてしまう場合や、予定の現場が会社よりも自宅の方が近くある場合など、会社に出勤・帰社するよりも明らかに効率的に業務が遂行できるといった場合に行われます。
なお、直行直帰は医療・保険・広告など外回りを中心とした営業職、そのほかホームヘルパーや家庭教師など訪問先が日々異なる職種に比較的多いです。
直行直帰の場合、どの時間が労働時間に含まれるのか疑問に思うことでしょう。
ここでは、直行直帰における労働時間の考え方について詳しく解説します。
直行直帰が労働時間に含まれるのは、以下のようなケースです。
会社や上司の命令で直行直帰する場合や、仕事をしながら移動しないといけない場合は、すべて労働時間に含まれます。
例えば、所定労働時間が9時~18時の企業で、上司の命令で9時に現場に直行し、20時まで取引先を接待して直帰した場合、この日の労働時間は9時~20時となり、2時間の残業手当が必要になります。
以下のように、直行直帰が労働時間に含まれないケースもあります。
労働時間に該当しない直行直帰の移動時間は、通常の通勤時間と同じ扱いとなるため、賃金は発生しません。
基本的に出張の際の移動時間については労働時間には含まれません。
移動時にスマートフォンやタブレット端末で動画を観たり仮眠をとるなど、時間を自由に利用することができるためです。
ただし、上司から物品の運搬やパソコンなどで仕事をするよう指示されていたり、業務の打ち合わせを行ったり、移動中でも業務に関する何らかの作業を行う場合などは、労働時間に含まれます。
原則として出張期間中の休日は労働時間に含まれません。
出張期間中に休日があったとしても、会社や上司などから休日労働が命じられない限り、通常勤務と同じ休日扱いとなります。
たとえば、月曜日の早朝から出張へ行くなどの場合、あらかじめ前日(日曜日)に移動し、現場付近で前泊するケースがあります。
こうした前乗りに関しても、会社や上司などから業務命令に基づくものではないため、労働時間には含まれません。
労働基準法では、「労働者に対して少なくとも週1回の休日、または4週間を通じて4日の休日を付与しなければならない。」と定められています。
出張が休日を含む場合は、出張先でもしっかり休日が取れるよう出張者のスケジュール調整を行いましょう。
直行直帰スタイルに関するメリットついて理解を深めておきましょう。
以下の3点が主なメリットとして挙げられます。
「時間を効率よく活用できる」、これは直行直帰における最大のメリットと言っても良いでしょう。
直行直帰では、「会社へ出向く」という行動自体が省け、時間の余裕が生まれます。
その時間をほかの業務に充てることができ、業務効率化や残業の削減にもつながります。
直行直帰は、ある程度その日の業務スケジュールを自分のペースに合わせて取り組むことが可能です。
滞りなくしっかりと自分のやるべき仕事をこなせば、基本的に自由裁量で働けます。
仕事に対して柔軟性が得られるのも直行直帰のメリットでしょう。
職場環境や人間関係によって感じ方は変わりますが、社内で仕事をする場合、人によっては上司の目が窮屈に感じるというケースもあるでしょう。
直行直帰では、自身の裁量権が大きくなり、主体的に働けるので、仕事に対するモチベーションの向上にもつながります。
直行直帰は比較的メリットの多い働き方ですが、以下のようなデメリットもしっかりと知っておきましょう。
会社に出勤してオフィスなどで仕事を行う場合、大抵は上司の管理下のもとで業務が進められていきます。
そのため、仕事の結果に至るまでのプロセスが見えるので、たとえ成果が上がらなかったとしても「真剣に取り組み頑張っていた」など評価されることでしょう。
しかし、直行直帰は基本的に一人で業務を遂行します。そのため、評価されるのはあくまで仕事の結果だけであり、結果に至るまでの業務プロセス、頑張りは不明瞭なのです。
つまり、自分なりに一生懸命頑張ったつもりでも結果が出ていなければ「手を抜いてサボっていたのでは?」など、低く評価されてしまうこともあるのです。
直行直帰スタイルは自分のペースで働くことができますが、「営業成績が全ての評価材料となる」ということをしっかり覚えておきましょう。
直行直帰は単独で動く時間が非常に多いため、上司や他の従業員から仕事をしている姿を見られるということは極めて少ないです。
そのため、怠けようと思えば、すぐにでも好きなだけ怠けることができる環境下にあります。
人間というのは、どうしても楽な方へと流されてしまいがちです。
直行直帰スタイルは、仕事に対する使命感や責任感をしっかりと持ちつつ、自身を管理する自己管理能力が大きく求められるということを念頭に入れておく必要があります。
責任感がなく、なおかつ自己管理が苦手だという人に直行直帰は不向きでしょう。
直行直帰の制度を導入する際に、労働時間に関するトラブルを防ぐ3つの対策について詳しく解説します。
直行直帰の制度を導入するうえで、重要なポイントは直行直帰に関するルールを決めることです。
労働時間の把握、そして管理の効率化のためにも、以下のルールを定めましょう。
始業時刻と終業時刻を通常の出社・退社と同じ規則を適用するか、それとも直行直帰の場合は柔軟な時間設定にするかをあらかじめ定めておきます。
勤務時間の記録方法についても、タイムカードや勤怠管理システムを利用するのか、それとも従業員自身で勤務時間を記録するのかなど、明確な方法を定めます。
移動時間を労働時間とするか否か、または一部を労働時間とするかなど、明確な基準を設けます。
業務開始までの待機時間や休憩時間についても、労働時間とするか否かを定めます。
直行直帰の残業代はどのように計算するのか、いつまでに申請するのかといったことを定めておきます。
また、直行直帰の場合も通勤手当を支給するか、支給する場合の計算方法なども定めます。
直行直帰の場合は管理者が現場にいないため、始業時刻・終業時刻ともに正確な労働時間の把握が難しくなります。
そこで「事業外みなし労働時間制」という制度があります。
事業外みなし労働時間制は、会社以外で業務を行う場合、あらかじめ決められている所定の時間を労働したとみなす制度のことです。
たとえば、会社の所定労働時間が「9時~18時(うち休憩1時間)の8時間」であった場合、一日に働いた時間が5時間だろうと10時間だろうと、いずれも8時間としてみなします。
直行直帰のように労働時間の算出が困難な場合、労働時間の計算が非常に簡単になります。
なお、事業外みなし労働時間を導入するには、下記の要件を満たしていることが必要です。
1. 労働時間の全部もしくはその一部について事業場外で業務に従事していること
2. 労働時間の算定が困難であること
要件1について、たとえ事業場外で従事していたとしても、下記の場合はみなし労働時間制の適用はできません。
要件2について、「労働時間の算定が困難であること」とありますが、これはあくまで使用者が労働者の実労働時間を把握、管理できない状態にある場合のみです。
仮に、タイムカードや業務日報など業務時間の報告を義務付けていたり、あらかじめ会社から具体的に指示されていたり、始業・終業時刻を指定していたりなど、こうした場合は労働時間の算定が困難であるとは言えないため、事業場外みなし労働時間制の適用は認められません。
直行直帰は会社に立ち寄ることなく業務を行うため、タイムレコーダーなどによる打刻ができません。
そのため、打刻漏れなどミスが発生しやすく、虚偽申告など不正が行われる可能性も否めません。
勤怠管理には給与計算のみならず、業務改善の判断材料や従業員の健康管理など、「働くこと」に関する重要要素を多く含むため、勤怠管理は適正かつ確実でなければなりません。
近年では、外出先でも簡単に打刻が行えるクラウド型の勤怠管理システムなど、勤怠管理業務をより効率的にしてくれるツールが多数リリースされています。
直行直帰は自由度の高い働き方である一方で、従業員ごとの管理が非常に煩雑となるため、人事担当者の負担は増します。
働き方改革により柔軟な働き方が求められているならば、企業側も効率的かつ柔軟に管理が行える手段を積極的に取り入れるべきです。
交通費精算は、申請から精算処理までの業務フローが非常に煩雑で、1件処理するにも多くの手間や時間を要します。
直行直帰や出張が多い企業は交通費精算の発生件数も膨大となり、処理件数が増えれば増えるほど申請時や処理時のミスが増える可能性が高まります。
ミスが生じれば修正処理も行わなければなりませんので、さらに時間や労力を使うことになってしまいます。
交通費精算システムを導入すると、交通費の精算時における業務フローがシステム化され、これまで負担だった申請時の手間やチェック時の手間もすべて省いて業務を効率化します。
月に数件でもコンスタントに交通費精算が発生するのであれば、交通費精算システムの導入がおすすめです。
直行直帰はスタンダードな働き方とは異なるため、労働時間の適用範囲や交通費精算など、管理するうえでいくつかの問題が出てきます。
直行直帰制を導入する際は制度についてはもちろんのこと、メリット・デメリットをしっかり把握したうえで、直行直帰を導入する必要性はあるのか、導入することで企業や従業員における生産性の向上につながるのか、正確な勤怠管理が行えるのかなど、さまざまな視点から検討を進めていくべきです。
勤怠管理システムの導入を含めしっかりとした管理体制を構築することが企業にとって、従業員にとって何よりも重要であると言えるでしょう。
画像出典元:O-DAN
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