TOP > ベンチャー > ベンチャー・スタートアップ > プロダクトマーケットフィット(PMF)とは?意味や見つけ方を徹底解説!
スタートアップ企業が事業を成功させるため、新商品やサービスを流通させるために重要な指針となるのがプロダクトマーケットフィット(PMF)です。
自社の提供するプロダクトが特定の市場にフィットしている状態を意味する言葉で、スタートアップや起業関連でよく使われます。
この記事ではプロダクトマーケットフィットの定義、その調査方法、PMFと合わせて使われるプロブレムソリューションフィットについても解説します。この記事から新しい事業を成功させるカギともなるプロダクトマーケットフィットの意味を正しく理解する助けになれば幸いです。
このページの目次
プロダクトマーケットフィット(Product Market Fit)は略してPMFとも呼ばれています。
PMFはその元の英語の意味のとおり、自社の提供するプロダクト(製品もしくはサービス)が特定のマーケットに適合している状態を指します。
要約すると「大衆(市場)のニーズに当てはまった製品やサービスをきちんと提供できている状態」がPMFといえます。
PMFはベンチャー企業や新規事業の立ち上げのときに投資家や創業者が好んで使う言葉です。
PMFはマーク・アンドリーセンが提唱し世に広めた考え方といわれています。
彼は、世界初のテキストと画像データの同時表示を可能にしたWebブラウザ「Mosaic」や「Netscape Navigator」などを開発したソフトウエア開発者で、その成功をもとに現在では投資家、企業経営者として手腕を発揮しています。
彼はプロダクトマーケットフィットについて次のように説明しています。
”Product market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market.”(プロダクトマーケットフィットとは、「マーケットに対して、そのマーケットを満足させることができる製品があること」である。)
注目すべきポイントは「正しいマーケット(good market)」と「そのマーケットを満足させる製品(product that can satisfy that market)」です。
この2つの要素を満たしてはじめて、プロダクトマーケットフィットが完成するわけです。
プロダクトマーケットフィットが大切な理由は、それがスタートアップ企業や新規事業の成功の鍵だからです。
逆にプロダクトマーケットフィットを達成できていないスタートアップ企業や新規事業は失敗する確率が高くなります。
画像出典元:CB Insigts
アメリカのスタートアップ企業やベンチャーキャピタルなどの動向を調査分析するCB Insigtsはアメリカのスタートアップ企業が失敗する理由トップ20を報告しています。
その調査によると、スタートアップ企業が失敗する最も多い理由が「市場ニーズがなかった」ことです。
その調査では、「市場ニーズに対応するのではなく、解決するのが興味深い問題に取り組んだことが失敗の最大の理由として挙げられる」と報告しています。つまり市場ニーズがないのに、その問題を解決できるプロダクトを作ってそれを売り出そうとして失敗したということです。
いくら素晴らしい製品やサービスつまりプロダクトがあっても、それを売り出す市場が小さければ事業としては成り立ちません。
つまり、スタートアップ企業や新規事業の成功には、マーク・アンドリーセンのいう「良いマーケット」と「そのマーケットを満足させる製品」の2つが欠かせないというわけです。
プロダクトマーケットフィットがスタートアップ企業や新規事業を成功させる鍵であることは分かりました。
このプロダクトマーケットフィットと合わせて語られることが多いのがプロブレムソリューションフィット(Problem Solution Fit:略称PSF)です。
プロブレムソリューションフィット(PSF)の意味を理解すれば、さらにプロダクトマーケットフィットについてもより理解できるようになります。
なぜならプロダクトマーケットフィット(PMF)の前段階がプロブレムソリューションフィット(PSF)だからです。
プロブレムソリューションフィット(Problem Solution Fit)の言葉に示されているように、解決するに値する問題や課題(プロブレム)とその解決策(ソリューション)を見つけることがPSFの定義です。
私たちの周りに顕在もしくは潜在している課題を見つけ出し、それを解決する方法を見出すことを意味します。
プロブレムソリューションフィットができれば、それを事業として成り立つかどうかを考えるために、次の段階つまりプロダクトマーケットフィット移行するということになります。
プロブレムソリューションフィットは以下の4つの手順を踏んで実践できます。
1. 課題の検証
2. 解決策の提案
3. コミット率の検証
4. 購買意欲を検証
まずは解決するに値する課題を探すことです。
自社や自分が持つ製品・サービスが解決できる課題を探す作業を行います。その時に注意しなければならないのは、「自分は解決しなければならない課題と思っているが、消費者も同じようにそれを感じているか」という点です。
自分の頭や仲間内の声だけを頼りにするのではなく、アンケートなどで実際の消費者の声を集めつことが必要でしょう。
解決すべきと判断できる課題が見つかれば、次はそれを解決する方法つまりソリューションを提案することです。
注意すべきポイントは、提案がきちんと課題の解決策になっていることと、その解決策が消費者に受け入れられるものか検証することです。
この部分が不安定であれば事業計画としては心もとないものとなります。
課題の解決策を開発するプロセスにコミットつまり積極的に協力してくれるかどうかを検証します。
一例として最低でも5人の想定ユーザーが開発プロセスにコミットすると反応してくれたなら成功といえます。
お金を支払ってでもその製品やサービスを利用してもらえるかを検証します。
この2点に注目してアンケートやヒアリングを行います。
開発段階では、ヒト・モノ・カネのリソースがどうしても限られています。こうした情報を仕入れることで、無駄な機能の開発に時間と資源を割くことを避けることができ、さらに収益とコストのバランスも確認できます。
プロブレムソリューションフィット(PSF)がうまくいき「解決すべき課題とその解決策」が見つかったなら、次は「その解決策をもっともニーズが高い市場に投入する」段階に移ります。つまりプロダクトマーケットフィット(PMF)させるということです。
次にプロダクトマーケットフィットしているかどうかをどのように検証できるのか、その方法を紹介します。
プロダクトマーケットフィットしているかどうかの見つけ方としては次の方法があります。
ネットプロモータースコア(Net Promoter Score)は顧客のロイヤルティを測る指標です。
「わたしたちの会社の製品もしくはサービスを友人や同僚にすすめる可能性はどれくらいありますか?」と質問し、それを0~10の段階で判断してもらい、9・10の評価を付けた人を推奨者、7から8の評価を付けた人を中立者、0から6の評価を付けた人を批判者と分類します。
この推奨者の割合から批判者の割合を引いたものがNPSになります。NPSの指数が良ければ、自社のプロダクトはマーケットにマッチしていると判断できます。
Dropboxを成功に導いたショーン・エリス(Sean Ellis)の作ったテストもプロダクトマーケットフィットを検証できると言われています。
そのテストは「もしこの製品が使用できなくなった場合、どのように感じますか?」と質問するだけです。
答えの選択肢は次の4つです。
もしユーザーの40%以上の人が、「とてもがっかりする」と回答するならばプロダクトマーケットフィットしていると分析できます。
製品に対するエンゲージメント(愛着)や収益につながっているユーザーの割合などの指標分析もプロダクトマーケットフィットしているかどうかを検証する指標となります。
たとえば以下のような先行指標データを分析します。
新規顧客の大部分が製品やサービスの使用を開始後、利用を停止していないかどうかを分析します。
製品やサービスをローンチした後には、リテンションレートいわゆる定着率や継続率は下がります。一般的にはリテンションレートは低下し続けるか、どこかの時点で平坦になります。
もしこのリテンションカーブがどこかの時点で平坦になるパターンを示していれば、特定のマーケットで定着、継続しているのでプロダクトマーケットフィットしていると判断できます。
全ユーザーのうち何パーセントのユーザーが収益を生み出すための行動をしているかを分析します。
お金を払っているユーザーがある程度いるということは、そのプロダクトがマーケットで価値を見出されているという証拠です。
ライフスタイルの多様化によりニーズも多様化しています。マーケットは細分化され種類も増えてきました。
それに伴い多様化するニーズを満たすための商品やサービスもどんどん増えています。
マーケットもプロダクトもどんどん多様化し増えているわけです。ですから最初はマーケットにフィットしていたプロダクトもこうした流れを受けてそうでなくなる可能性もあります。
変化するマーケットとニーズに対応し、競合する他社のプロダクトとの競争に勝つためには、プロダクトマーケットフィットが常に維持されているかの調査と分析が必要です。
プロダクトマーケットフィットできていない状況についてもマーク・アンドリーセンは説明しています。
”You can always feel when product/market fit isn’t happening. The customers aren’t quite getting value out of the product, word of mouth isn’t spreading, usage isn’t growing that fast, press reviews are kind of ‘blah’, the sales cycle takes too long, and lots of deals never close.”
(顧客が製品に価値を感じていない、口コミが広がっていない、利用量がそれほど急速に増えていない、プレスリリースへの反応が「ぼんやり」している、販売サイクルが長い、案件がなかなか成約しない、といった状況はPMFが起こっていないと判断できる。)
プロダクトマーケットフィットの維持に問題があると判断できる場合、以下の点を調査分析する必要があります。
顧客が継続して製品やサービスを利用することの障害となっているものを分析します。
たとえば、顧客に製品やサービスの利用価値を十分に伝えきれていないことが原因なのか、顧客の変化するニーズにもはや商品やサービスが対応しきれいていないことが原因なのか、といったことを考えます。
ユーザーに対して十分な選択肢を与えたり、敬意を払うことで信頼を示しているかを分析します。
ユーザーはどれくらい積極的に商品やサービスを利用しているかを考えます。
全顧客の中で休眠顧客つまり製品の継続利用や購入をしていないユーザーの占める割合を分析します。
どういったユーザーが一度商品やサービスを利用してから二度と再び利用しなくなるのかを考えます。
利用をやめるユーザーの特徴を分析します。さらに利用を停止する理由も考える必要があるでしょう。
もし最初はうまくいっていたプロダクトマーケットフィットが維持できていないと感じるならばこうした点を分析し、分析結果をもとに再調整できるでしょう。
プロダクトマーケットフィットとは、自社の提供するプロダクトつまり製品もしくはサービスが特定のマーケットにフィットつまり適合している状態を指します。
スタートアップ企業の多くが市場のニーズに対応していないことを理由に失敗していることを考えると、問題を解決できるプロダクトを持っているだけではビジネスにならないということがよく分かります。
解決しなければならない課題とそれを解決する方法を探るプロブレムソリューションフィットを行い、それからプロダクトマーケットフィットするように物事を運ぶことが大切です。
新しく事業を始めるときは、このプロブレムソリューションフィットとプロダクトマーケットフィットの両方がきちんと満たされているかを確認しながら計画を進めていくことが重要です。
そうすることで無駄な時間やコストを削減することができ、事業の失敗を回避することができるでしょう。
画像出典元:pexels
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