公務員から独立はできる?元地方公務員、黒瀬啓介に聞いてみた

公務員から独立はできる?元地方公務員、黒瀬啓介に聞いてみた

記事更新日: 2019/10/10

執筆: 大野琳華

一見、対極の存在に見える公務員と起業家。しかし公務員から独立して成功している方もいます

その一人が地方公務員から転身し、株式会社トラストバンク株式会社CroMenなどさまざまな企業で活躍している黒瀬啓介さん

今回は黒瀬さんになぜ独立したのか、そして独立するには何が必要なのか取材しました。

プロフィール

黒瀬啓介

LOCUS BRiDGE 代表。
1980年生まれ。長崎県平戸市出身。2000年に平戸市役所に入庁。在職中は、主に広報やふるさと納税などを担当。ふるさと納税担当時には寄附金額日本一を達成。その後、トラストバンクへ出向を経て、平戸市役所に戻るも今年の3月に退職し、フリーランスとして独立。現在は東京を拠点に活動している。

「将来何がしたいの?」

もともとは長崎県の平戸市役所で勤務していました

広報や移住定住、協働のまちづくりなど、どちらかというと窓口ではなく企画の仕事が多かったですね。

移住定住を担当している時、ふるさと納税も兼務していました。

ちょうど平戸市の特産品のブランド化推進事業があったのもあって、当時はあまり注目されていなかったふるさと納税に可能性を感じ、全国に先駆けてカタログポイント制を採用して力を入れました。

その甲斐あって、平戸市のふるさと納税が全国から注目され寄附金額日本一を達成することになったんです


そんな中で、ふるさと納税関連のさまざまな会議やイベントに参加するうちに、いろいろな企業からも注目され、たくさんの方と交流するようになりました。

ある日、お世話になっていた「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの須永代表とご飯を食べているときに、ふと「黒瀬さんは将来、何がしたいの?」と聞かれたんです。


それまで僕は「ずっと公務員として働き続ける」ことに何の疑問も持っていませんでした

周りに、公務員から転職する人はやはり少なかったですから。

ここで初めて、自分は将来、何がしたいかということを真剣に考えるようになりましたね。


ふるさと納税や広報での実績から、全国各地を飛び回って講演なども行なっていたので、平戸だけでなくこれまで関わってきた他の地域にも、まだまだ伝えきれていない魅力がいっぱいあると思いました。

「平戸だけが幸せになればいいのか」そう自分の中に違和感を感じたんです。

僕のやりたいことは平戸だけの魅力を伝えるのではなく、さまざまな地域が持つ魅力をもっと世に広めることだと気づきました。


このことを気付かせてくれた須永代表に「良かったらウチに来ない?」と誘われて、ひとまず出向という形でトラストバンクに参画することにしました。

▲「地域とシニアを元気にする」がビジョンのトラストバンク。
オフィスの日本地図には、同社を訪れたさまざまな地方自治体がメッセージを残している。

「わくわくする人」と働きたい

約2年間の出向を終え、市役所に戻ってくると民間企業との働き方の違いに苦しみました

トラストバンクでは、様々な案件に対してスピード感を持ってやれていたけど、市役所ではなかなかスピード感をもってやれない。

何か新たなチャレンジをやろうとしても、結局4~5年かかってしまう。

この時間がとてももったいなく感じました

また、トラストバンクでは本気で地域を元気にしようとと思っている人たちばかりだったのに、逆に公務員からはその気概を感じることが少なかったのです

仕方がないのかもしれません。

職員数が減らされる中で業務は多様化したために、どんどん職員の負荷は増えているし、失敗してはいけないという風潮からチャレンジもできにくいですから。


何をするかより誰とするか。地方への本気度が高い「わくわくする人」と仕事がしたい

その思いが強まり、公務員を退職し、独立することを決めました

現在は自身の活動のほか、4社に参画し、アドバイザーやプロデューサーとして働いています。


ただ、私としては勘違いしてほしくないのですが、公務員が嫌だから辞めたのではありません

私自身、今はフリーで活動していますが、いずれは公務員に戻りたいなと思っています

独立してから改めて、公務員という仕事は本当に尊い仕事だと感じているのです


もちろん、住民の皆様からの税金でお給与をいただいているわけですが、公務員は純粋に、対価を求めずに、その地域のためだけを思って仕事ができる唯一の職業ではないかと思っています。

独立して気づいたのですが、民間だとどうしても自分の活動が全てお金に直結するというのがあるので、どうしても「自分の生活のため」という感覚で見られてしまうのでは、と引っかかっています。


公務員に戻った時のためにも、今は自分のキャリアも含め、新しいことにどんどんチャレンジして、自分の幅を広げようと考えています。

いずれは行政と企業をつなぐハブのような役割を果たせるようになりたいですね。



思いの言語化

意外に思われるかもしれませんが、公務員から独立するのはさほど大変ではありませんでした


まず資金面から言うと、市役所からの退職金を独立するための資金に充てることができました

僕は19年働いたので580万円程いただきました。

このお金が無かったら、独立は厳しかったと思います。


また、自身がふるさと納税で実績を出したこともあって注目されたのもあって、複数のメディアに取材されていたことも幸いしました

ウェブサイトに僕がどんな人物か、どんな考えを持っているかが記事として残ってあるので、他の人に僕の思いを伝えやすかったのです。


この「思いの言語化」が起業するにはとても重要だと思います。

思いを言語化することで、ビジョンを明確にすることができますし、思いに共感してくれる人々とつながりやすくなります。

僕のメディア出演というパターンはなかなかないやり方だと思いますが、今はSNSもありますし、どんどん発信していくべきだと思いますね。

▲黒瀬さんの社名であるLOCUS BRiDGE。
ここにも起業と自治体、都会と地方の橋渡しになりたいという思いが込められている。

今の僕自身の思いですか?

そうですね…地方をステータスに感じる時代を作りたい、ですかね。


確かに都会は、仕事もあって、人もたくさんいて、チャンスもたくさんあって、選択肢がいろいろとあって、洗練されていて…何もかもが充実している印象は少なからずあると思います。

だから地方からすると都会をステータスに感じている人が多いと思うんです。

現に地方創生といいながらも、結局、首都圏一極集中の構図は変わっていない。

でもそれは地方の良さや可能性に本気で向きあわないまま、進学、就職しているからなんだと思っています。


地方には、食や自然はもちろん、何より人の温かさ、人間らしさという意味での豊かさがあります。

そして、いろんな課題があるからこそビジネスチャンスも広がっていると思うんです。


充実度という一つの要素だけではなく、他の要素も見たうえで地方と都市部を比べたときに、自分のフィールドはどちらなのか

やっぱり都市部でがんがんビジネスやりたいという人は都市部を選択すればいいし、逆に地方の方が幸せに生きていけると思うのであればその選択をすればいい。

そういう選択肢がある時代を作りたいのです


だからこそ、私はあえて東京に拠点をうつすことで、少しでも地方と、故郷と、多くの人が向き合えるきっかけを作っていきたい

そう思って活動しています。

大野琳華

この記事を書いたライター

大野琳華

山口出身。一橋大学商学部に所属。記者・インタビュアーを目指している。

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