自己破産を救ったのは人との関わり。起業家、沼倉正吾の復活劇

自己破産を救ったのは人との関わり。起業家、沼倉正吾の復活劇

記事更新日: 2019/09/26

執筆: 大野琳華

2014年と早い時期から、VR事業に取り組んできたSymmetry Dimensions代表、沼倉正吾さん。

最近ではNTTドコモと「デジタルツイン」を活用した、建築・土木業界の次世代の働き方を実現する共同実証実験を実施することに合意するなど、目覚ましい活躍を見せています。

しかし、実は過去に自己破産を経験しているとのこと。

そこには何があったのか、また自己破産からどのように復活したのか、お話を伺いました。

プロフィール

沼倉正吾

2014年にVRソフトウェア開発に特化したSymmetry Dimensions Inc.(旧社名:DVERSE Inc.)を米国に設立。同社CEO。アイデア・イメージを共有し合意形成を加速させる建築・建設向けXRソフト「SYMMETRY(シンメトリー)」を開発している。

市場環境に敗北

僕が初めて代表を務めた会社ではパソコン向けのゲームを開発していたのですが、事業はとても順調で初年度から黒字でした。

当時はVCと呼ばれる存在はほとんどいなかったため、このゲームで稼いだお金と銀行からの借り入れで、新しい事業を始めることに決めました。

それがブルーレイディスクです。


ゲーム製造の技術を活用し、ブルーレイの冒頭でネットにつながり、リアルタイムでターゲティング広告を配信できるようにしました。

かなり画期的な技術で、実際多くの人におもしろいといっていただきました


しかしこれが大失敗しました。

想定よりブルーレイ市場が伸びなかったのです。

DVDとブルーレイの違いがわかりにくかったために、利用者はなかなかブルーレイにシフトしませんでした

そうこうしているうちにスマートフォンが普及し、HuluやNetflix等の動画配信サイトが登場しました。

DVDからブルーレイへの移行は行われず、僕たちが開発した技術の需要はなくなったのです。

借金だらけとなった会社をたたむ決意をし、自己破産しました


半年ほどかかる手続きを済ませた結果、貯金は没収され、保険も解約することになってしまいました。

VR事業で復活

自己破産して保険も解約され、貯金も無くなりましたが嘆いている暇はありませんでした。

社員の仕事をなんとか確保できるよう、他社に社員を雇ってもらったり、自社のプロダクトを事業譲渡したり等の対応に追われていました。

そのうち僕自身も移った会社で新規事業をいくつか担当することになりました。


そのころ趣味で発注していたVRの開発キットが海外から届きました

それが本当に面白かったので、新規事業の中に入れることにしました。

実際に社内でチームを作り、プロジェクトを始めたところで、会社が財政的にピンチになり新規事業をすべて打ちとめることを決めました。

とはいえ始めたプロジェクトをやめるわけにもいかないので、会社には内緒で続行していたのですが。


プロジェクトが完成して、メディアでも取り上げられたことで会社に発覚することとなり、プロジェクトを進めていた私とエンジニアは辞める事になりました

しかしVRにすっかり魅せられていた私はあきらめることができず、一緒に辞める事になったエンジニアと立ち上げたのが今のSymmetry Dimensionsです。

▲Symmetry Dimensionsが開発したVRの画面の様子

意外かもしれませんが自己破産したにもかかわらず、もう一度会社を立ち上げることは怖くはありませんでした

何故なら、自己破産を経験した時の「1番最悪な状況」を知っていたので、未知の部分が無かったからです。


ただ2度は自己破産できないので資金調達についてはかなり勉強しましたね。

この時にはすでにVCはメジャーな存在だったので、今回は投資を受けることにしました。


会社の立ち上げ当初、日本でのVRに対する投資家の興味はほとんどありませんでしたが、アメリカでは大きな投資が行われており話題となっていました

そのためアメリカに会社を設立し、海外からの投資を得られるようにしました。

その後、日本でもVRへの投資が注目されるようになり今に至ります。

起業家仲間がいてくれたから

僕は運のいいことに今の会社を立ち上げる際、あるVCの知り合いのおかげでオフィスを無料で借りられ、シェアハウスに転がり込むことができました。

もしもたった一人で事業を進めることになっていたら、資金的にも精神的にも早々に詰んでいたと思います。

特にシェアハウスに住んでいた事が1番の幸運でした。

一人で事業を進めているとどうしてもマイナスの思考に入ることがあるのですが、シェアハウスに戻ると夜中からたこ焼きパーティーしたり、互いのサービスを詰め合ったりとか、そんな学園祭の準備を毎日しているように楽しく過ごせたので暗くならずに済みました。

またシェアハウスには起業や起業家を目指す自分と同じような仲間が集まっていたので、やる気にさせてくれる「ヘルシーな嫉妬」を常に抱いて切磋琢磨していくことができました。

自分の周りで大きな資金調達をしたという起業家が出れば「あいつにできるなら、俺もできる!」といった風に「素敵な勘違い」をする事ができるのも良い環境でした。

夢を追いかける時には、同じ夢を追いかけている仲間やライバルの側にいる事はとても重要だと思います。

 

あとは悩みを気軽に相談できるのも良かったですね。

恋愛の悩みと似ていますが、起業家の悩みというのは、はたから見たらそれほどでもない悩みでも、渦中にいる人は視野が狭くなってしまって深刻な悩みだと思ってしまいがちなんですね。

だから自分や自社の社員よりも、当事者ではない起業家仲間の方が最適解をパッと出せるというのは往々にしてよくあることなんです。

厳しい状況こそ物事は進む

今振り返ってみれば、自己破産する前にもっと早く見切りをつけるべきだったとは思います。

プロジェクトの9割方は失敗するという認識があの頃はできていませんでした。

しかし、いろいろ悪いことに見舞われましたが、そのあとには必ずいいことがありました。

厳しい状況の方が、真剣にそのことについて考えるので案外、その次の物事がうまくいくのです。

 

どんなに失敗しても、折れずに立ち上がり続ければ必ず実を結ぶ。

このことを僕はこれまでの人生で実感しています。

大野琳華

この記事を書いたライター

大野琳華

山口出身。一橋大学商学部に所属。記者・インタビュアーを目指している。

この記事に関連するラベル

ページトップへ