「薄口政治評論家」としてテレビで大活躍の杉村太蔵さん。その傍ら投資家や実業家としての顔も併せ持ち、2018年からは北海道、音威子府(おといねっぷ)村で起業支援プロジェクト「起業版ベーシックインカム」に取り組んでいます。今回はそのプロジェクトについてお話を伺いました。
プロフィール
杉村太蔵
音威子府村とは北海道で一番人口の少ない村です。現在の人口は800人を切っており、村としても危機感を持っています。この村で僕は「起業版ベーシックインカム」というプロジェクトを始めました。
通常ベーシックインカムとは政府や自治体が最低限の生活を保障すべく、必要額を定期的に支給するといったものです。
「起業版ベーシックインカム」では政府ではなく、僕の個人事務所である杉村太蔵事務所が1年間、毎月8万円を支給します。最低限必要と思われる住居や食事も提供します。条件は音威子府村に住民票を置くこと。この一つのみです。プロジェクトの参加者は1年以内に新規事業を起こすことを目標に生活してもらいます。
2018年に募集した1期生の一人は大学を休学してこのプロジェクトに参加し「ゲストハウス イケレ」をオープンしました。最終的に村にネオン街を取り戻すという目標が彼にはあります。自由な発想で思いっきりやっていってほしいですね。
▲ゲストハウス イケレ
起業版ベーシックインカムを始めた理由は2つあります。それは「地方創生」と「起業支援」です。
地方ではどんどん過疎化が進んでいます。
プロジェクトの舞台となる音威子府村も限界過疎地の一つです。この問題は公共政策として政府や自治体が対処すべきというイメージがあるかもしれませんが、政治は公平に行われなければならないので、取り組むには限界があります。
そこで企業が解決する「民間政策」として打ち出したのが起業版ベーシックインカムです。企業といった民間の資金であれば、持ち主の意向に沿って好きなように使うことができます。
会社にとって利益は確かに重要です。しかし社会が良くならないと、会社が生き残っていくことはできません。
もしこのプロジェクトがうまくいけば、非常に真似しやすいので他の過疎地でも民間政策として様々な企業が取り組んでほしいですね。
日本では起業が少ないといった問題があります。働き方にはいろいろな選択肢があるにもかかわらず、起業が選ばれることはあまりありません。
起業というのは異才の人間がやるものとして見られてきました。
なぜそのように見られてきたのか。それは普通の人には起業の仕方がわからないからです。
僕は、日本では起業家への支援があまりにも整っていないと思います。営業をどうしたらいいのか、法務をどうしたらいいのか全くわからない。その状態で「起業しろ」と言っても無理があります。生まれたての赤ちゃんに走れというのと同じです。
そこで起業版ベーシックインカムではビジネスの根本を教えています。地方なので都心に比べて起業に必要なコストが小さいこともポイントです。
▲世界各国の開業率。日本はこの中で最も低い。
(出典:中小企業庁)
さらに僕はこのプロジェクトで起こった新規事業に投資しています。事業が成功すれば僕も儲かります。地方、起業家、投資家、この3者がWin-Winとなるのが理想ですね。
このプロジェクトは僕が慶應義塾大学大学院で行っている研究の一つでもあります。
僕はこのプロジェクトに生涯かけて取り組むつもりですが、研究としては成立しないかもしれません。
それでも、失敗してもいいと思ってやっています。何をすると失敗するのかを理解することはとても重要だと思うからです。失敗すると改善し、次にまた新しいことをするときに失敗経験を生かすことができます。今失敗したとしても、それは50代、60代で財産になります。
最近、定年となる年齢がどんどん上がっています。そのうち80歳まで働くことが当たり前になる時代が来ると僕は考えています。約60年働くということは、20代の内はいろいろなチャレンジができるようになるということです。失敗してもいいんです。失敗から得たものが、将来必ず失敗経験のない人との大きな差を生みます。
「大企業で成長してから起業する」それではいつまでたっても起業できません。起業で成功する秘訣はただ一つ、「まずやってみる」これだけなのです。
起業版ベーシックインカムについて熱く語った杉村太蔵さん。地方移住と起業を同時にかなえるこのプロジェクトが、今後のトレンドになっていくかもしれません。
現在、起業版ベーシックインカムでは2期生、特にシングルマザーを含めた女性の起業家を募集しています。自然豊かな土地で地域住民に見守られる環境は、育児にも良い影響を与えることでしょう。
山口出身。一橋大学商学部に所属。記者・インタビュアーを目指している。
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