ちゅらさんにも出演。小橋賢児が現在目指す「未来型」エンタメとは

ちゅらさんにも出演。小橋賢児が現在目指す「未来型」エンタメとは

記事更新日: 2019/07/08

執筆: 篠田侑李

NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」などのヒットドラマに出ていた小橋賢児さんは27歳で俳優を休業。

アメリカでのULTRA MUSIC FESTIVALという音楽フェスとの出会いから、ULTRA JAPANやSTARISLAND(未来型花火エンターテインメント)のプロデューサーを歴任されました。

今回は現在の小橋さんの新たなフィールドである「未来型」エンタメ製作について、チームづくりや「セカンドIDを持つこと」を絡めてお話を伺いました。

サイエンス×クリエイティブのチーム作り

僕は以前まで、どこかの会社様にクリエイティブディレクターとして入って事業を作っていく形を取っていたのですが、最近は会社としてプロジェクトの立ち上げから遂行までをやっています。

そんな中、僕みたいなアーティスト型の経営者が日本でなかなか成功しづらいのは、自転車操業的な感じで自分自身でやっている部分が多いからなのかも知れないと思っています。

そして今会社のチーム全体を見たときに足りないのは、サイエンスの人間。

特に日本だと理系と文系って早いうちに分けちゃうから、なかなかここの人たちが混じり合うことは少ないと思うんです。でも、どんなプロジェクトもクリエイティブ型とサイエンス型が一緒にやって初めてうまく行くと僕は思います。

理系の人たちで「アーティスト経営の会社には力になれないんじゃないか」と思っている方が結構いるのですが、クリエイティブ側の僕らも、イベント内容フォーカスしている間にビジネス面が抜け落ちていたりしているんです。

ビジネスサイドをもう1人見られるようなパートナーが見つかると、アーティスト型の経営者の生業が立つ社会になると思っています。

最近ようやくITとエンタメの人が交わるようになっていますが、まだ経営側とクリエイターが交わっていないように思います。
アーティストだけのチームはすごくやっていることは派手なんだけど、ビジネスとしてうまくいってないことが多いです。その二者のシナジーを促すために、僕自身の会社がわかりやすい成功例になれたら良いなと思っています。

—イベントはプロジェクトファイナンスが重要ですが、「どこまで利益を出して、そのためにはこういう契約の仕方をして」と、本当に楽しいだけでは完結できない部分が多いですよね?

そうなんです。
でも僕は、ビジネスの仕組みがちゃんとできてくると、もっとコンテンツに時間と費用をかけられると考えています。

先日マカオに行った際に、ザハ・ハディドが手がけたモーフィアスといった素晴らしいIR(Integrated Resort=複合観光集客施設)に訪れました。
日本のIR法案では、カジノ面積はIR建物の3%未満しか作ってはいけないと決められているらしく、残りの9割以上はホテルやレストラン、エンターテイメントの施設なんです。

ある意味カジノからの膨大な収益によって生まれる「余白」で、残り9割のエンタメができているので、とんでもない額でエンタメ施設を作ったり、シルク・ドゥ・ソレイユのディレクターを引き抜いたりと、普通のコンテンツだけの収益だけでは考えられないようなことができています。

右脳型と左脳型の人が一緒に仕事をして、アートとビジネスロジックを掛け合わせることで、IRで示されているような、新しいエンタメの仕組みができるはずなんです。これによってもっといいコンテンツをつくれるし、お客さんもより良い体験ができてお互いがウィンウィンになります。

僕はこの「余白」がないとアートやエンタメは本当に良いものができないと思っています。
でも日本だとヨーロッパにあるようなパトロン制度はないので、会社としてちゃんと収益を確保して基盤ができた上で、その余白として、人々の人生が変わるようなエンタメ体験を作りたいです。

「未来」の定義から作る未来型エンタメ



小橋さんがクリエイティブディレークターを務めた子供用エンタメ施設「Puchu!」。アソビル(横浜)に5月にオープンした。

僕が今情熱を持ってやっているのは「未来型のテーマパーク」を作るというプロジェクトです。

20世紀にとってのテーマパークはディズニーランドかもしれないけれど、21世紀は違うかもしれない。

その「未来」の定義からつくっていきたいなと思っていて、そのためにも、様々な視点、価値観を持つ人たちを巻き込んでいかなければと思っています。

今は最初のステップとしてコミュニティーをつくっています。
さまざまな会社に普段属していたり、色々なことをやっているメンバーが「セカンドID」=もう一つのアイデンティティを持ってコミュニティーに集まる。
そして子どものときの会議じゃないですけれど、「こういうのをやったらワクワクしない?」と、一見とりとめもない議論をしていくことで、世の中を変えるような新しいものが生まれてくるんじゃないか、と思っています。

小橋さんの壮絶な経験が綴られている、「セカンドID」(きずな出版)。

セカンドIDを持てるようなコミュニティー

自分にとって予測不可能な事態、例えば事故や病気の経験から、新たなアイデンティティーを見つける方もいらっしゃると思います。

でもそのような原体験がなくても、普段自分とは関わらない違ったコミュニティーにいることによって、新しい気づきやアイデンティティーを増やすことができると思います。

自分の思いが、色々な出会いと繋がることで化学反応が起きますが、それを起こすには自分が属しているコミュニティーの中だけでは難しくなって来ている。だから自分を様々な人の集まりに入れていくことは大切だと思います。

—違ったコミュニティに属することで、今までと違ったアイデンティティーをっていく人が世の中に増えきているように感じますね。 

そうですね。

100億人いたら100億人の多様な人生、多様なクリエイティブ、多様な創造が生まれていっていいはずじゃないですか?

僕が構想しているテーマパークも、様々な人の意見を取り入れながら作っていきたいんです。もしかしたらリアルな場じゃないかもしれないとか、そういう定義も含めて、僕はあえていつも「未来型」って言っています

STAR ISLANDを未来型エンターテイメントと呼ぶのは、そもそも未来って、「テクノロジーだけが進んでいく未来なのか?テクノロジーに頼らないような、本質にむしろ戻っていくっていう未来もあるんじゃないか」と思ったからです。
生き方としてもサステナブルとかオーガニックとか、原点回帰しているものって沢山あるじゃないですか?

これから、AIが台頭することによって、人々が働かなくていい時間が増えた時に、未来の人たちに、何を僕らは提供するのか。

未来は僕たちが作っていくものなので、その未来の定義を、みんなで話していきたいなといつも思っています。

単純に海外でイベントをするだけじゃなくて、「逆輸入」型にしたい

「未来型花火エンターティメント」STARISLAND

日本から世界にコンテンツが行くよりも、世界から日本に来てもらいたいです。

昨年もシンガポールでカウントダウンをやったことで、56カ国22,000人以上の人たちが「来年も行きたい!」と言ってくれました。

僕は、エンターテイメントって翻訳言語だと思っています。
例えば、海外では花火を鑑賞する文化がないけれど、ちゃんと海外の人たちにもわかるようなコンテクストに落としこんで鑑賞してもらうと、その良さを分かって貰えて、また参加したいと思って貰える。

このように、日本のエンタメをグローバルスタンダードにもっていき、それを体験した人たちが再び世界から日本のコンテンツを目指して来て欲しい。だから、「世界から日本へ」というところに僕は持っていきたいです。

今までは、「日本の文化が世界に行った」というところがゴールになっていました。テレビでも「あのアーティストが世界へ行った」「このコンテンツが世界に行った」と盛り上がりますが、実際海外に行くと、そんなに注目されていないことが結構あります。

それよりも、世界にまず認知されて、世界からこの日本を目指してきて欲しい。

今後、オリンピックや万博も含めて、世界の人たちが日本に来る機会が増えていきます。それに備えて、お客さんがもっとグローバルスタンダードで楽しめるようなコンテンツをつくっていきたいとは思っています。

だから目の前で「あれができない、これができない」はもちろんいっぱいあるのですが、「どうせ日本なんて」「どうせ俺の人生なんて」といった否定の壁みたいなものを、僕は壊していきたいです。

篠田侑李

この記事を書いたライター

篠田侑李

テキサス大学オースティン校で映画・メディア・インテリアデザインを学ぶ。趣味は旅行、そぞろ歩き、都内のアンテナショップ巡り。テーマパークの創り手側につくのが夢。

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