ベンチャー企業を外部関係者として支える「エンジェル労働家」須田仁之氏。これまで数々のベンチャー企業に携わり、上場請負人として知られる彼が「幹部を目指せ」と言う真意は何なのでしょうか。お話を伺いました。
プロフィール
須田仁之
-まず須田様の経歴について、お伺いしてもよろしいですか?
最初に就職したのはイマジニアというベンチャー企業でした。他の会社説明会に行ってもつまらない大人ばかりであるように思えて、軽く社会に絶望していたのですが、イマジニアだけはステキな大人がそろってる印象でした。入社してからは社長秘書のようなことをやっていました。
そこで仲良くなった同期にソフトバンクに入社しないかと誘われ1年半で転職。その後、その同期が起業した会社の経営が危ないから来てくれと誘われ、経営陣の一員となり、入社2ヶ月で事業を楽天株式会社に売却することになりました。
その後、新規事業として「お惣菜屋」をやることになりました。しかしこのお惣菜屋を潰してしまい、3000万円の借金を抱えてしまいました。精神的にかなり辛かったのですが、また同期が「上場準備してみるか」と言い出して、いろいろあったのですがラッキーなことにアエリアという会社を上場させることが出来ました。
今はその経験を活かし「エンジェル労働家」として、20社ほどのベンチャー企業の社外役員・アドバイザー・株主として働いています。
-同期に誘われ転職、言われて上場…かなり受け身な姿勢であるように感じます。
そうですね。僕は仕事において自分から何かをしようと思ったことはなくて、基本的に人に流されることが多いです。仕事を楽しいと思ったことがないからですかね(苦笑)
-「流される」という言葉はあまりいい意味では使われませんよね。それでも今ご活躍なさっているというのは、何かうまく流されるコツがあるんでしょうか。
若いころに仕事を詰めて実力をつけることが、重要だったのかもしれません。そもそも実力をつけないと、人に声をかけてもらえないので。 僕自身、上司からの無茶な要求を受けて月に460時間働いたり、会社に6連泊したりしていましたから(苦笑)この苦い経験によって「仕事ができる人間」になり、声をかけてもらいやすくなったのかもしれません。
今は僕の若いころと違って「働き方改革」が始まっているので、会社で長時間働いてスキルを磨くというのは難しいかもしれません。僕が今の若者だったら副業してでも経験を積みますね。何個か副業を持っていれば幅広くスキルを身に着けられるし、一つ失敗しても他があって安心感がありますし。
また優秀な人に流されるように、周囲の人を見極めていたかもしれません。
-須田さんにとって優秀な人はどのような人ですか?
うーん、難しいですね。知識量がある人、意思決定力がある人、何手先までも読む人、すぐ実行する人、エネルギー値が高い人とかかな。「エネルギー」ってあいまいですけど、何かを諦めずにやり続ける体力や精神力のようなものですかね。
-なるほど。やはりそういった優秀な人が起業して成功されるのでしょうか。
実はそうとは限らないんですよね。
-どういうことでしょうか?
優秀な人が今言った条件をすべて満たすわけではありません。例えば、知識量がかなり豊富でも意思決定力は弱い人もいます。最近だと、そういう人が一人で起業してなかなか事業を拡大できないケースをよく見ます。
「3本の矢」という言葉がありますよね。起業もそれと一緒で、弱点を補い合える優秀なメンバーが数人集まることによって「チームでオール5をとる」ことができるんです。アエリアが1年半というスピードで上場できたのも、それぞれ「クレイジーな発想力」「技術力」「実行力」を持ち合わせたメンバーが揃っていたからであるような気がします。一つでも欠けていたら難しかったでしょうね。
今は起業に関する情報も豊富で、簡単に起業できる環境が整っているおかげで、若者が起業しすぎている印象があります。起業家自体が増えることはいいことだとは思いますが、「3本の矢」の経営チームが増えて欲しいです。それを考えると、若者は幹部という道も視野に入れた方がいいかもしれませんね。経営幹部になるのはそんなに難しくありません。ある程度、経験値を積んで実力をあげればいいだけですから。
須田氏が若いころがむしゃらに働くことで見出した仕事術を伝授する「捨てる。手を抜く。考えない。月460時間労働から抜け出した私の方法」(かんき出版)、そして彼がどのように流されながらも上場までたどり着いたのかを、より詳しくつづった「恋愛依存症のボクが社畜になって見つけた人生の泳ぎ方」(ヨシモトブックス)は現在、好評発売中です。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
山口出身。一橋大学商学部に所属。記者・インタビュアーを目指している。
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