TOP > インタビュー一覧 > 「悩みブレーキ型離職」をなくす。JapanTaxiの川鍋氏が語る、ベンチャーにおけるマインドの重要性
組織の成長を促進する『全員経営者マインドセット』。
実際の組織でどう使われ、どんな効果が出ているのでしょうか。本著の中で語られたフレームワークを実践している経営者にお話を伺いました。
川鍋 一朗 プロフィール
Japan Taxi株式会社 代表取締役社長
─「全員経営者マインドセット」を組織に取り入れた経緯を教えてください。
ちょうど1年ほど前、社員が100人に達しそうになったころ、組織に停滞感が溢れた時期がありました。組織が100人規模になってくると、1人1人のモチベーションを維持することが難しくなります。全体的に意識レベルが下がって、離職が増え、社内コミュニケーションツール上で会社批判をする人も出てきたりしました。
この状況に危機感を感じ、なんとか社員の意識レベルを高めたいと思ったのが導入のきっかけです。
最初は、ベンチャー企業はスキルが重要だと考えていたのですが、やっていくうちにそうじゃないと気がついたんですよね。スキルよりも先にマインドが重要だと。しかし、それを伝えようとしてもなかなか上手く言語化できなかったんです。
また、社長である私が「マインドが大事」と社員に伝えても、説教臭く聞こえたり、社員の声を強制的に押さえつけているように見えてしまい、素直に受け入れてもらえませんでした。
そんな時に、吉田さんの前著『成長マインドセット』を手にとりました。スキル偏重でなくマインドもとても大事という内容で、まさに自分の考えていることが言語化されていたんです。自分が伝えたいことを、第三者の言葉で言ってもらえると大きな効果があるんですよ。この本を社員に読んでもらうことで、少しずつ社員にマインドを重視する考え方を浸透させることができました。
その後、経営者の知人に著書の吉田さんを紹介してもらい、研修などを通して『全員経営者マインドセット』の概念を導入していきました。
ー『全員経営者マインドセット』を取り入れて、どんな変化がありましたか?
まず、書籍に登場する「MSマトリクス」を活用することで、組織の状況をよりクリアに把握できるようになりましたね。
これまで、社員1人1人の状況を知るのは年2回の給与設定の際に、担当役員から受ける報告ぐらいでした。報告内容も実務ベースなので、社員が何を考えているのか、何をモチベーションに仕事しているかなどはわかっていなかったんです。
MSマトリクス
それが、MSマトリクスを使って社員を見てみると、意外な面が見えてきたんです。
特に嬉しかったのは、あまり覇気のない印象だった若手社員のマインドが高いとわかったことです。元気がなさそうな見た目の印象しかなかったので、目からうろこでしたね。逆に、一部中堅社員のマインドが意外と低いこともわかり、課題も見えてきました。
そこから、マインドが向上するための施策を始めました。
例えば、社員との1on1ミーティング。また、マインドを重視する考え方をミッション、ビジョン、バリューに落とし込み、MVV浸透委員会を組織して社内への浸透を図りました。コミュニケーションツールで使えるスタンプを作ったり、社員が好きなバリューを発表する機会を設けたり。
まだ社員の血肉となるところまでは至っていませんが、一部の人が変わるだけでも大きな効果だと思っています。
─特に効果が感じられたシーンはありますか?
社内ではみんな知っているエピソードなのですが、マインド施策のすぐ後に少なくとも3人の社員が退職を思いとどまってくれました。
1人は別の会社からオファーをもらっていて、あとは辞意を会社に伝えるのみという状態でした。そんな時に、社員自身の生き方やマインドを見つめ直す吉田さんの研修を実施したんです。
吉田さんが「他責ブレーキを踏んだままで別の道に行っても、またブレーキを踏んで悩むことになる。2年間とか期限を決めてブレーキを踏まない覚悟をして挑戦してみませんか」とおっしゃったのが印象的でしたね。研修を終えたあと、彼はうちの会社に残って頑張ることを決めてくれました。
社員のマインドを高める取り組みは、成果が見えにくい、見えたとしても時間がかかるイメージを持っていたので、吉田さんの考え方を取り入れることで即効性が出たことに驚きました。
マインドセットについての考え方を知ったことで、感化され行動に移す人は2割くらいだと思います。一見少なく思えますが、その人たちがマインドが低めの人たちの底上げをしたり、中間層の6割くらいを巻き込んだりしてくれます。
実際、他責思考で転職を考える人を同僚が吉田さんの言葉を駆使して止めたこともあります。うちの会社にとっては「悩みブレーキ型転職防止マインドセット」にもなっていますね。
そして、会社全体のマインドを向上させるためには、もともとマインドが高い層をさらに引き上げた方が効果が高いこともわかりました。
以前は、マインドの低い2割を引き上げようとしていました。しかし、もともと高い2割をさらに向上させると、その2割が中間層を引き上げてくれるため、全体としてボトムアップが図れるとアドバイスを受けたのです。
マインドを上げるべき人を見つけるツールとしても、MSマトリクスは有効だと考えています。
─MSマトリクスの考え方はどんな組織に向いていると思いますか?
ベンチャー企業には特に響くと思いますね。
そもそも、ベンチャー企業に入る人材はスキル重視で相対的にマインドの重要性を認識していないことが多いんです。もちろんスキルアップできる環境があるのは大事ですが、みんながそれだけを追い求めると会社としての一体感がなくなる大きな要因になってしまいます。人としても、スキルだけでは大きな成長は見込めない。
MSマトリクスの考え方を浸透させることで、マインドセットを高める必要があることを明確に示せることは、大きな意味があると思います。
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