「Be Smart Tokyo Inclusive」が描く誰一人取り残さないインクルーシブシティの未来

「Be Smart Tokyo Inclusive」が描く誰一人取り残さないインクルーシブシティの未来

東京都スマートサービス実装促進プロジェクト「Be Smart Tokyo Inclusive」

記事更新日: 2026/04/14

執筆: 長沼 良和

東京都スマートサービス実装促進プロジェクト、このプロジェクトは2022年度にスタートし、これまでにわたって多くの実装事例と知見を積み上げてきました。

そして、2025年度からは、後継事業として「Be Smart Tokyo Inclusive」が新たに始動しています。この事業では「インクルーシブ」を明確なテーマとして掲げ、多様な都民が直面する社会課題に焦点を当てているのが特徴です。

デジタルサービスの力で都民一人ひとりの困りごとの解決を実現し、社会課題の解決を前進させる、それが本プロジェクトの目指す姿です。

本記事では、「Be Smart Tokyo」の成果を振り返りながら、「Be Smart Tokyo Inclusive」の狙いと価値を、具体的な事例とともに紐解いていきます。

なぜ今、スマートサービスの“実装”が求められるのか

「Be Smart Tokyo」は、東京都のスマートシティ政策の一環として、2022年度に開始されました。スタートアップのデジタルサービスを都内のさまざまなフィールドに導入し、都民の暮らしをより便利で快適なものにすることを目的としてきました。

近年、行政を取り巻く課題は、ますます複雑化しています。少子高齢化、都市機能の高度化、人手不足、地域コミュニティの希薄化など、従来の制度や仕組みだけでは対応が難しいテーマが増えています。

こうした背景の中で重要になるのが、スタートアップの持つ新しい技術やサービスを、実際の社会に実装する仕組みです。

「Be Smart Tokyo」が重視してきたのは、まさにこの”実装”です。単なる実証実験にとどまらず、都内の施設や公共空間、事業者の現場に導入し、都民に使われる状態まで持っていくことを目指してきました。その実現には、スタートアップの選定、導入先の調整、運用設計、費用の負担、継続性の確保など、実務的なハードルを一つひとつ乗り越える必要があります。

こうした課題を乗り越える役割を担っているのが、TIS株式会社をはじめとする「スマートサービス実装促進事業者」です。スタートアップと導入先の間に立ち、双方の事情を踏まえて調整することで、実装の成功確率を高めてきました。

 実証で終わらせない——京王電鉄株式会社との取り組み

「Be Smart Tokyo」の具体的な事例として、京王電鉄との取り組みがあります。 

オープンイノベーションプログラムを起点にeスポーツやデジタル教育を推進しようとしていた同社とスタートアップの株式会社TechnoBlood eSportsは「BeSmart Tokyo」を活用して、京王沿線で「KEIO eSPORTS LAB.」の取り組みを展開しています。単に施設を運営するだけではなく、沿線各地での体験会や小中学生向けのマインクラフトコンテストの開催など、面的に取り組みが展開されているのが特徴です。

この事例のポイントは、実証で終わらず、継続事業として自走している点です。プロジェクトをきっかけに、スタートアップが主体的に事業を拡張する流れが生まれ、大企業の側にも、スタートアップとの共創を積極的に実施しようという姿勢が生まれたことが特徴的です。

さらに、この取り組みは、鉄道4社によるeスポーツコンソーシアムへと発展しています。個別の実装が業界横断の取り組みにつながった点は、実装促進事業の意義を示す好例といえます。

インクルーシブを軸にした社会実装「Be Smart Tokyo Inclusive」

2025年度から始まった「Be Smart Tokyo Inclusive」は、従来事業を引き継ぎつつ、「インクルーシブ」を明確なテーマに据えたプロジェクトです。年齢や障がいの有無、国籍などに関わらず、すべての人が社会に参加し活躍できる、その実現を目指しています。

対象となるのは、高齢者、障がい者、子育て世帯、外国人など、多様な都民です。これまでデジタル化の恩恵を受けにくかった層にも、必要な情報とサービスを確実に届けることを目標としています。

デジタルサービスを通じて個人をエンパワーメントし、日常の困りごとを解決する。その結果として、手取り時間の増加や生活の質の向上を実現することがゴールです。

また本事業では、自治体・企業・各種団体と連携したエコシステムの構築も重視しています。単発の導入に終わらせず、持続可能性な形で社会に定着させていくことを目指しています。

TISが担う「社会実装の伴走者」

本プロジェクトで重要な役割を担うのが、実装促進事業者であるTISです。

スタートアップのサービスは先進的である一方、現場で使うためには運用や制約への対応が不可欠です。そこでTISはITの専門性と自治体・企業との豊富な連携経験を活かし、サービスを実装可能な形に落とし込む役割を担っています。

「Be Smart Tokyo Inclusive」においても、その役割は変わりません。スタートアップと導入先の双方に寄り添いながら、導入後の運用まで見据えた伴走支援を行っています。

「Be Smart Tokyo Inclusive」が生み出す3つのメリット

本事業の価値は、都民、導入企業、スタートアップの三者それぞれにあります。

まず都民にとってのメリットは、日常生活の困りごとが解消され、可処分時間が増えます。移動や情報取得の負担軽減、外出時の不安の解消など、生活の質が向上します。

導入企業や自治体にとってのメリットは、課題解決の選択肢が広がります。TISが間に入ることで、課題解決につながるスマートサービスを紹介することで、意思決定の負担が軽減されます。

そして、スタートアップにとってのメリットは、東京都という大規模なフィールドで実装実績を積むことができます。ただし重要なのは技術力だけではなく、「誰にどんな価値を届けるのか」を明確にすることです。

導入の現場で問われるのは、「誰のどんな課題を解決するのか」「どんな変化が生まれるのか」という点です。そこまで設計できて初めて、実装の議論が具体化します。

子育て世帯の行動範囲を広げるTrim株式会社「mamaro」の実装

「Be Smart Tokyo Inclusive」の最新事例の一つが、Trimによるベビーケアルーム「mamaro」の導入です。東京都内で3カ所に設置されました。

「当社が『Be Smart Tokyo Inclusive』の事業を活用させていただいたのは、自社のミッションとの親和性の高さが大きかったことです。mamaroはよりよい子育て環境を提供することを目指したプロダクトですが、この取り組みもまさに社会全体の包摂性を高めるものだと感じました。採択に至った背景としては、mamaroを単なる便利なサービスではなく、子育て世帯の外出負担の軽減や、育児におけるジェンダーバイアスの解消といった社会課題に直接アプローチしている点を評価いただけたのではないかと考えています」と担当者のTrim社古川さんは語ります。 

「mamaro」は授乳やおむつ替えができる個室型のベビーケアルームです。本事業の支援により、都内での展開が加速しました。

外出先で安心して育児ができる環境は、子育て世帯の行動範囲を広げ、生活の質向上に直結します。

「mamaroの導入によって、子育て世帯の外出に対する心理的ハードルは確実に下がっていると感じています。特に、これまで設備の制約から外出を控えていた方々が、より自由に行動できるようになった点は大きな変化です。また、男性の育児参加を後押しする側面もあり、育児は母親だけのものではないという意識の変化にもつながっています。こうした小さな変化の積み重ねが、誰もが安心して社会参加できるインクルーシブな環境づくりにつながっていくと考えています。」と本事業の将来性を語られました。

Be Smart Tokyo Inclusiveのロードマップ

「Be Smart Tokyo Inclusive」は3カ年の取り組みです。現在は、スタートアップと導入先のマッチングを進めながら、実装とプロモーションをを並行して進めています。すでに50〜60社程度のスタートアップや導入先企業と面談を実施し、課題とサービスの適合性を見極め、2025年度では7件実装しています。

TISではスタートアップから見ると以下のステップで支援していきます。

フェーズ①:課題を持つ団体とのマッチング支援

フェーズ②:サービス導入・プロモーション

フェーズ③:横展開による拡大

2026年度は、引き続き新しいスタートアップや導入先と面談をしながら、事例の創出に加え、一つの場所で成功したサービスを他のエリアにも広げることで、都内全体にインクルーシブなスマートサービスを浸透させていきます。

実装から“当たり前”へ

「Be Smart Tokyo Inclusive」は、単なる実証の場ではありません。社会に定着する仕組みをつくるプロジェクトです。

インクルーシブなスマートサービスの普及は、特定の人のためだけのものではありません。結果として、すべての人にとって暮らしやすい都市をつくることにつながります。

デジタル技術を社会課題の解決に結びつけ、実際に使われ続ける形で定着させる——その挑戦が、今まさに進んでいます。

TISでは引き続き、インクルーシブを推進するサービスを持ったスタートアップ、インクルーシブなサービスを導入したい事業会社・自治体を探しています。興味がある企業にはぜひ東京都のスタートアップ支援事業を積極的に活用して欲しいと考えています。

興味がある企業は、下記ページよりお問い合わせください。

https://www.tis.jp/special/be-smarttokyo/

 

水船 慎介(みずふねしんすけ)
TIS株式会社
ビジネスイノベーション事業部 ストラテジー&デジタルコンサルティング第2部 ディレクター

2006年入社、公共セクターでのSE、営業、事業企画を経験し、SaaSの立ち上げや全国展開等を担当。2018年より新規事業の企画支援コンサルとして、事業会社の 官公庁・観光等の事業立上げに従事。2020年より東京都のスタートアップ支援・スマートシティ推進等の協定事業を複数受託、責任者として従事。「TIB CATAPULT(鉄道×スタートアップ TRIP)」、「Be Smart Tokyo」、「Tokyo 5G Boosters Project」、「Tokyo Next 5G Boosters Project」

長沼 良和

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