スタートアップ向け「資金調達手法比較ライブ~公庫・補助金・クラファンの選び方~」

スタートアップ向け「資金調達手法比較ライブ~公庫・補助金・クラファンの選び方~」

プロトスター資金調達ゼミ

記事更新日: 2026/04/09

執筆: 編集部

「株式調達の知識はインプットしているが、それ以外の選択肢を知る時間が取れていない」

そんな起業家が多いという課題意識から、プロトスター株式会社が企画したのが今回のセミナーだ。

登壇したのは、システム・アプリ・AI開発案件特化の補助金申請支援を手がける株式会社イチドキリ 代表取締役の徳永崇志氏、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)でスタートアップへの創業融資を担当する高田美奈氏、株式投資型クラウドファンディング国内最大手の株式会社FUNDINNOの岡 宗一郎氏の3名。

補助金・融資・株式投資型クラウドファンディングそれぞれの強みと活用シーンについて、実務家が本音で語ったセミナーの内容をレポートする。

■ 登壇者紹介|補助金・融資・クラファンの実務家3名が集結

中川:今日持ち帰ってほしいものは三つです。一つ目は各調達手法の強みと特徴。二つ目は、自社のフェーズに合わせた最適な調達戦略の組み合わせ。三つ目は、審査基準や成功事例から「自分が使えるか」の具体的なイメージです。

では早速、各登壇者からご紹介をお願いします。まず徳永さん、お願いします。

徳永:よろしくお願いします。イチドキリの徳永と申します。

補助金申請支援を行っている会社で、私自身は元々エンジニアで、IT系の事業会社を渡り歩いてきました。

補助金は数千種類あると言われていますが、弊社は開発案件に特化してご支援しています。

現在は補助金申請支援のほか、障害福祉の新規事業も立ち上げているところです。

高田:日本公庫の高田と申します。スタートアップへの創業融資を担当しています。

日本公庫は政策金融機関として、スタートアップを含めた中小企業・小規模事業者様の資金繰りを支えています。

本日はデットとエクイティの違い、そして日本公庫の融資制度について詳しくご説明します。

:FUNDINNOの岡でございます。FUNDINNOは2015年11月、日本で最初に株式投資型クラウドファンディング(以下、ECF)を立ち上げました。

株式投資型クラウドファンディング国内調達割合で弊社は90%弱のシェアを持ち、これまでに累計成約件数400件、累計成約額200億円を超える実績があります。

その中からIPOが2件、M&Aによるイグジットはプライム企業に買収された事例などがあります。

弊社は昨年12月に東京証券取引所グロース市場に上場いたしました。

本日はECFの仕組みと活用メリットについてお話しします。

■ 補助金——使えるケースと、創業期に気をつけるべきこと

株式会社イチドキリ(経営革新等支援機関)

代表取締役 徳永 崇志

徳永:まず補助金と助成金の違いから整理します。雇用や研修に関わるものは「助成金」と呼ばれ、主に厚生労働省の管轄で社労士が扱います。

弊社が専門とする「補助金」は経済産業省が主に管轄していて、設備投資など資産性のある支出が対象です。

国・都道府県・市区町村の三層に渡って「5,000〜7,000種類」ともいわれる補助金は、毎年度更新されるため情報のキャッチアップが大変な領域でもあります。IT開発案件でよく活用されるのは、経産省だと、ものづくり補助金、省力化投資補助金、新事業進出補助金などです。その他、都内助成金もよく活用されます。

重要なポイントとして、補助金はゼロから新規開発する場合に非常に向いていますが、既存サービス・プロダクトへの機能追加に活用できる制度は非常に限られています。

補助金を使いやすい条件は三つあります。一つは数百万〜数千万円規模の設備投資があること。二つ目は「ゼロイチ」の新規開発であること。三つ目は、貸借対照表の純資産がマイナス(債務超過)でないことです。債務超過だと補助金の審査はほぼ通りません。

ただし、創業初期への補助金活用は正直なところ使いにくいです。

申請から採択まで数ヶ月かかる上、採択後は事業計画の大幅変更(ピボット)もできません。不採択になれば、そこから別の手段を探すことになります。

創業初期はまず融資やエクイティを使い、補助金は事業が固まったタイミングを見極めて活用するのが現実的です。

中川:補助金の不採択になる原因はどのようなケースが多いですか?

徳永:大きく二つです。

一つは書き方・見せ方の問題。もっと多いのが「申請要件を満たしていないのに出してしまった」ケースです。

例えば東京都の創業助成金は、特定のプログラムに採択等の条件を満たしていない場合は申請すらできない。要件を確認せずに書類を出して審査の土台にも乗らなかった、という話はよく聞きます。

中川:補助金を探す際の便利な情報源はありますか?

徳永:中小機構が運営する「ミラサポplus」が非常に使いやすいです。都道府県・業種・資本金規模などで絞り込むと、自社が使えそうな補助金を一覧できます。今年度は切り替わりのタイミングで情報が薄い時期もあるので、春以降に改めてチェックするのがおすすめです。

中川:貴社のビジネスモデルについても教えてください。

徳永:当社は成功報酬型で、補助額の15%のみをいただいています。

前金はいただきません。受かりそうな案件だけお受けするスタンスで、財務状況や取り組みの内容を見て「今回の件は、資金調達方法として補助金は向いていないですよ」とお伝えすることもあります。

■ 融資——デットの活用方法

日本政策金融公庫 国民生活事業本部

北関東信越創業支援センター所長 高田 美奈

高田:融資について基本的なところから整理させてください。

エクイティとの違いということで、デットと呼ばせてもらいますが、デットは返済義務があるかわりに株式の希薄化がない、エクイティは返す必要がないかわりに株式が希薄化し経営への関与が生じうる、という点です。

スタートアップの資金調達はエクイティがメインと思われがちですが、エクイティだけで調達し続けた結果、株式が希薄化して困っているという相談を受けることがあります。

そのほか、VCとの交渉で株価を過小評価されてしまったり、経営権を実質的に握られてしまったりといったケースも耳にします。

中川:株式の希薄化とは、具体的にどのくらい差が出るものですか?

高田:仮に自身で設立時に350万円を出資した上で、設立時に150万円、一年後に1,000万円、二年後に2,000万円という累計3,500万円についてエクイティのみで調達した場合、経営者の持ち株比率が23%まで下がってしまいます。

一方、同じケースで二年後の調達金額である2,000万円についてを、1,400万円をデット、600万円をエクイティで調達した場合、二年後の時点で経営者の持ち株比率が53%確保できる計算になります。

デットを組み合わせることで経営権を守りながら資本を厚くできる、これがデットを活用するメリットの一つです。

日本公庫の概要をご説明します。

ここからは、デットを融資という言葉に置き換えますね。

日本公庫は、政策金融機関として、中小企業・小規模事業者等の資金繰りを支えていますが、令和6年度では28,032先の創業企業へ創業融資を実施しました。

平成元年以降に上場した企業のうち、日本公庫(国民生活事業又は中小企業事業)との取引を経て株式公開を果たした企業は975先(両事業重複を除きます。)で、全体の約3割を占めています。

新たに事業を始める方等にご利用いただける「新規開業・スタートアップ支援資金」の融資限度額(国民生活事業)は7,200万円で、主にこの融資制度を通じて幅広い方の創業・スタートアップを重点的に支援しています。

他にも融資制度をご用意しており、融資制度等によって異なる利率が適用されますが、担当者がお客様にとってご利用いただきやすい制度をご提案しますので、お近くの支店にお気軽にご相談ください。

中川:審査で重視されるポイントはどこですか?

高田:創業融資の審査では、事業計画書や資産・負債の分かる資料等を確認しながら、資金のお使いみちなどを伺っていきます。事業計画だけでなく、創業動機、勤務時の経験・人脈等も伺いながら、「やりたいこと・できること・求められること」の3つの観点を整理しながら、事業の実現性を見ていきます。

中川:過去に公庫とお付き合いがあった場合で担当者が異動した場合はどうすればいいですか?

高田:担当者が異動等でいなくなったとしても、是非、お取引のある支店で継続的にご相談ください。

継続的にご利用いただいていれば、前回のご相談内容をベースに、お客様の話を伺う体制を整えています。

徳永:私自身も今、公庫さんに追加借り入れの相談をしているところなのですが、担当者さんが最適な制度を選んでくださるんですよね。

本当に「味方になってくれる金融機関」だと事業者として感じています。

高田:ありがとうございます。これからも中小企業・小規模事業者様の安心と挑戦を支えていきたいです。

■ 株式型クラウドファンディング——PR効果も同時に得られる資金調達

プライマリー事業本部 FUNDINNO事業部 ECFコーポレートファイナンス部

マネージャー/ベンチャーパートナー 岡 宗一郎

:FUNDINNOの仕組みをご説明します。

FUNDINNOは、審査を通過したスタートアップの事業計画や募集ページを専門家や弊社が作成し、登録されている10万人超の投資家から少額ずつ出資を募るものです。

年間募集上限金額は1億円未満で、投資家が1社に対する年間投資上限金額は50万円です。平均投資金額は約25万円です。投資家1人あたりの株式の持ち分は0.1〜0.2%程度で大きなシェアは持ちません。

登録している投資家は富裕層の30から40歳代の経営者や士業、医師が比較的多いです。

スタートアップは資金調達に加え、会社の成長を応援してくれるファン株主を確保でき、認知度向上やトラクション増加が期待できます。

投資家は「企業の成長を応援したい」というファン的な動機で投資する人が比較的多いです。実施後、株主の顧客化で売上が増えたり、大手企業と事業連携に発展したり、VC・金融機関・証券会社から引き合いに繋がったりするケースも多く相乗効果が生まれやすいです。

昨年リリースしたミドルからレイター企業向けの新しい資金調達サービス「FUNDINNO PLUS+」でご支援したイノバセル社が資金調達からわずか14ヶ月で東証グロース市場へ上場承認という実績が出ました。

中川:どのようなフェーズの企業が主に利用していますか?

:アーリーからシリーズAまでの企業で、商品・サービスが売れ始めてこれから成長曲線に入るという企業が多いです。最短1ヶ月で資金調達が完了した事例もあり、平均成約金額は約3,200万円です。

中川:株主が増えることへの懸念はどう対応していますか?

:弊社では株主管理や経営管理ツールである「FUNDOOR」を提供しています。クラウドで株主名簿を管理、資本政策シミュレーションツール、株主総会の招集通知一斉送信・自動集計機能など株主管理に必要な作業をオールインワンで提供し事務負担を抑制しています。三菱UFJ信託銀行と提携しております。上場企業にもご利用いただいております。

株主が多いと上場が難しいとの噂もありますが、弊社自身が200人以上の個人・法人株主を抱えて上場しましたので、ご安心いただけると思います。

FUNDINNOを利用した企業で2025年度売上が2024年度売上よりも成長している割合は65%以上です。

2回以上FUNDINNOで募集を実施している企業の割合は18%にのぼります。

また、利用企業の2社に1社はVCから資金調達済みです。

FUNDINNO実施後、VCや事業会社から大型の資金調達につながった事例も複数ございます。

中川:資金調達までの支援体制はどうなっていますか?

:ビジネス・クリエイティブ・ファイナンスの3チーム、約10名が、募集ページ開示までの期間に事業計画作成や募集ページ作成等の打ち合わせを複数回実施し、より投資が集まりやすい方法を検討します。

また、調達後はExitまで専任担当者が付き、様々なメニューから支援できる体制を整えています。

■ パネルトーク「調達手法の組み合わせ方と戦略」

中川:それではパネルトークに入ります。テーマは「調達手法の選び方とベストな組み合わせ」です。創業期に寄せた観点でご意見をいただけますか。

高田資金調達の規模が小さい場合は融資をメインで検討してもよいと思います。ただ、例えば創薬系等、最初から何億・何十億という資金が必要な領域は全額を融資で賄おうとすると返済負担が嵩み償還可能性が見えづらくなってしまいます。そういう領域はまずメインで補助金とエクイティ、その後バランスをみてデットを入れてみる、という組み合わせが有効ではないでしょうか。全体の資金計画の規模によって組み合わせが変わってくると思います。

中川:徳永さんはいかがですか。

徳永:私が補助金をおすすめするのは三つの条件が揃っているときです。一つ目は一定の金額感、感覚では500万以上。二つ目は設備投資であること。三つ目は先ほどもお話しした債務超過でないこと。この三つが揃っている会社に補助金はすごく向いています。

中川:スタートアップのように初期に赤字を掘っていくモデルと補助金の相性はどうですか。

徳永:出資を受けながら補助金も使っているケースはありますが、補助金は後払いなので、開発費を先に出してから補助金が振り込まれるまでに数ヶ月かかる。その間の資金を「つなぎ融資」で補うという方法もあります。

中川:岡さんはどう組み合わせるのがよいと思いますか。

:まずは創業時に親や知人・友人などから援助してもらい資本を厚くしておくことが大事です。その後、最初は少額でも良いので融資で調達し、次にFUNDINNOやVC等から調達する流れが良いと思います。

資本を厚くしておくと、金融機関から借入しやすくなります。

スタートアップにとってVCはとても良い資金調達方法です。しかし、創業直後はバリュエーションが低く、調達金額が多いとその分株式の放出も多くなります。資本政策は後戻りできないので、最初でつまずくとその後の資金調達で苦労するので、専門家含め色々な人へ相談してください。

中川:資本政策という観点で、共同創業者がいる場合に気をつけることはありますか。

:創業者が複数いると「仲良く均等で株式を持ち合う」となりがちですが、誰かが離脱するのは珍しくありません。

代表者1人が大半を持ち、残りのメンバーにはストックオプションを渡すなどして、しっかり経営権を持つことが大切です。

事業が一旦始まってしまうと修正が難しいので、創業前に専門家含め、色々な人へ相談して1番良い方法を選択してください。

中川:起業家の皆さんへメッセージをお願いします。

徳永補助金は「タイミング」と「要件確認」が全てです。自社のフェーズや計画が固まってきたら、早めに専門家に相談してみてください。使える制度は想像以上にたくさんあります。

高田:「融資」は「返済」がつきものですから、リスクが高いとマイナスに思われがちですが、上手に活用すればプラスに働くはずです。

事業計画をしっかり作って、無理の無い返済計画が立つのであれば、是非融資相談をしてみましょう。日本公庫は、あなたの挑戦を応援します。

:1人で抱え込まずに色々な人へ相談して準備してください。事業の壁打ちをしてくれる人もいます。

そして、融資・補助金・VC・ECFそれぞれの特徴を理解した上で、自社に合った組み合わせを見つけてください。

中川:徳永さん、高田さん、岡さん、本日は本当にありがとうございました。補助金申請に迷ったらイチドキリへ、融資を検討したい方は日本政策金融公庫へ、株式投資型クラウドファンディングに興味があればFUNDINNOをぜひご覧ください。今日はありがとうございました。

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