【独占取材】NVIDIAが日本で取り組むスタートアップ支援プログラム「Inception プログラム」の全貌 〜スタートアップが絶対に知っておくべき徹底活用法〜

【独占取材】NVIDIAが日本で取り組むスタートアップ支援プログラム「Inception プログラム」の全貌 〜スタートアップが絶対に知っておくべき徹底活用法〜

NVIDIA

記事更新日: 2025/12/25

執筆: 編集部

AIとアクセラレーテッド コンピューティングの世界的なリーダーであるNVIDIAが、日本におけるスタートアップ支援をこれまでになく強化している。その中心にあるのが「NVIDIA Inception プログラム(以下「Inception プログラム)」だ。グローバルで2万社以上、100か国以上が参加し、日本国内でもこれまでに400社以上の国内スタートアップを支援してきた。「Inception プログラム」は、単にスタートアップのハードウェア調達を支援するだけのプログラムではない。

GPUやソフトウェアの大幅割引に加え、様々なクラウドベンダーのクレジットの無償付与、そしてVCや事業会社とのマッチングなど、資金調達から技術実装までの一気通貫の支援を特徴としている。

なぜNVIDIAはここまで日本のスタートアップ支援にコミットするのか。「Inception プログラム」の全貌に始まり、SoftBankやSTATION Aiとの連携を含むスタートアップへの支援内容、そして日本のスタートアップの未来にかける熱い想いまでをエヌビディア合同会社 Inception Community Manager オオセクン アヤさん、Head of Startups and VC Partnership 松本 美咲さんに聞いた。

コスト、技術、ネットワークを一気通貫で支援する「Inception プログラム」

NVIDIAのスタートアップ支援プログラム「Inception プログラム」の概要と、特にスタートアップにとって魅力的な支援内容について、まずはお聞かせいただけますでしょうか。

「本プログラムの特徴は、コスト、技術、コミュニティとのネットワーキングを一体的に提供する支援体制です。まずスタートアップの皆様が最初にメリットを感じやすいのは、コストの部分の支援かと思います。当社のGPU製品を含むハードウェアが約30%オフ、ソフトウェアが約75%オフの割引価格で提供されるので、間違いなくPoCや開発スピードの向上に直結すると思います。」

補足:すべての NVIDIA 製品が割引対象になるわけではありません。

NVIDIA 本社(アメリカサンタクララ)の外観写真

NVIDIAのハードウェア、ソフトウェアの割引だけでなく、他社のクラウドベンダーのクレジットまで付与されると聞いて驚きました。

「そうなんです。意外と知ってもらえていないのですが、スタートアップが取り組むプロジェクトの内容に応じて様々なベンダーのクラウド・クレジットの無償付与も行っています。以前はAWSやGoogle Cloudなどが中心でしたが、現在ではLambda Cloudのようなハイパースケーラー以外のクラウド・ベンダーさんとも提携を広げており、スタートアップの皆様は、一社ずつのサポートプログラムに応募する手間なく複数のベンダーさんのクレジットが手に入る可能性があるのは大きなメリットだと思います。」

コスト面の支援だけでも非常に大きなサポートだと思いますが、コスト以外のネットワークや技術の支援についてはいかがでしょうか。

「そうですね。まずネットワークに関しては当社の投資部門に支援するスタートアップを紹介するだけでなく、VC向けコミュニティ「Venture Capital Alliance」向けのイベントを通じた企業間交流を促しています。具体的なイベントとして、VCとスタートアップを対象としたマッチングイベントを定期的に開催し、お互いが興味を持ちそうなVCとスタートアップを繋いでいくことで、自然なつながりが生まれる仕組みをつくっています。」

資金調達を目指すスタートアップにとって、非常に貴重な機会になりそうですね。

「はい、単にマッチングするだけでなく、VCへのピッチ資料のレビューやフィードバックも行っており、マッチングの質を高める支援も大切にしています。また、NVIDIAの年次技術カンファレンスであるNVIDIA GTCでも、「Inception プログラム」のパートナーにピッチやブース出展の機会を提供しています。世界中からVCが集まるGTCでアピールすることで資金調達に繋がる例も出てきています。」

GTCでは投資家だけでなく、NVIDIAのエンジニアやプロダクトチームとのミーティングも設定されるのですよね?

「GTCはネットワーキングの側面もありますが、本当に最新の技術に触れられる場です。だからこそGTCに来ていただいたスタートアップには、終日ミーティングを設定させていただきます。VCやビジネス開発でのパートナー紹介はもちろん、NVIDIAのエンジニアとのミーティングを設定し、最新技術のフィードバックを直接受けていただく場を設けています。さらに、当社のセールスやエンジニアの知見とコネクションを活かし、大手企業とスタートアップを繋いだりといった、ビジネス面でのシナジーを生み出す機会づくりも行っています。」

使わなければ損!「Inception プログラム」の知られざる活用法

「Inception プログラム」をより効果的に活用するためにスタートアップが知っておくべきことを教えてください。

「意外とインパクトが大きいのはスタートアップのマーケティング支援です。「Inception プログラム」メンバーの取り組みをNVIDIAのオウンドメディアで紹介することで、投資家や業界関係者への認知度や信頼性を高める支援をしています。実際に掲載後に資金調達が進んだ例もあり、ぜひ活用してもらいたいですね。具体的にはプログラムに参加しているストックマーク株式会社FastLabel株式会社といったスタートアップが独自AIモデル開発や計算資源の高速化においてNVIDIAのプラットフォームやツールを活用した事例を発信しており、反響も大きいです。」

具体的にどういうことでしょうか?

「スタートアップによる開発モデルなど技術的な取り組みをより多くの企業に届けるため、NVIDIAのオウンドメディアを通じて活用事例として発信できる点が大きな価値になります。技術的な信頼性が高まり、ユーザ企業にとっても採用判断がしやすくなるというメリットがあります。

また、NVIDIAはGPU提供やクラウドクレジットの付与にとどまらず、開発を加速させる多様なツール群も提供しています。たとえば、LLMの推論を最適化するオープンソースライブラリ TensorRT-LLM、さらにオープンウェイト・学習データ・レシピまで公開し、高効率かつ高精度なAIエージェント構築を可能にする NVIDIA Nemotronなど、開発を多面的に支えるプラットフォームが揃っています。クラウドクレジットやGPU調達支援だけでなく、こうしたGPU最適化ツールを組み合わせて活用することで、開発コストの削減やモデル提供までのスムーズなワークフローが実現できる点も大きな魅力です。もちろん、GPUを使うからといってNVIDIAツールの利用が必須というわけではありませんが、活用することで開発が進めやすくなるケースは多く見られます。このようにNVIDIAは、ハードウェアに限らずソフトウェアを含めて技術開発をエンドツーエンドで支援できる環境を整えており、スタートアップの成長を幅広い側面から後押ししています。」

地方でのスタートアップ支援や、他社のプログラムとの連携についても教えてください。

「そうですね、福岡、大阪、名古屋など、地方巡業のような形でイベントを実施し、地域の特性に合わせたネットワーキングを促しています。最近では名古屋にある、日本最大級のオープンイノベーション施設「STATION Ai」と連携したスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「AI Boost Program」を開始します。

選抜企業には、NVIDIAからの4ヶ月間の技術支援、そしてAI特化のVCである株式会社ディープコアからのビジネス・マーケティング面のアドバイスを提供します。さらに、SoftBankからNVIDIA A100というGPUを無償提供も予定しているのでぜひ注目してもらいたいですね。「AI Boost Program」以外にもSoftBankのスタートアップ支援プログラム「AI Foundation for Startups」でもNVIDIAのDGX A100を最大60日間無償提供しており、今後も様々なプログラムと連携を広げていきたいと考えています。」

NVIDIAが目指す日本のスタートアップ・エコシステムの未来

ここまで手厚いスタートアップ支援をされているNVIDIAの根底にあるスタートアップ支援の理由について改めてお聞かせいただけますでしょうか。

「スタートアップ支援の目的は、AIの開発をもっと身近にし、より良い社会を早く実現したいという思いが根底にあるからです。NVIDIAも元々はスタートアップであり、AI領域のリーディングカンパニーとして、スタートアップを初めとしたデベロッパーのコミュニティ、さらにAIエコシステム全体をしっかり支援し続けることが重要だと考えています。」

NVIDIAのグローバルな活動の中でも特に日本に対しては、強い期待感があるそうですね。

「そうですね、日本に対しては強い期待とコミットメントを抱いています。2年前には当時の岸田首相と当社の創業者/CEOであるジェンスン フアンが会談し、日本のAIエコシステム強化への共同コミットメントを表明しました。特に、日本ではAIスタートアップだけでなく、AIを活用した製造業やヘルスケア、フィジカルAIやロボティクス分野などで大きなイノベーションを起こすことを期待しています。」

NVIDIAの日本への強いコミットメントにはどのような背景があるのでしょうか。

「今でこそ当社はAIインフラの会社として認識されているかもしれませんが、元々はゲーム用の半導体を開発していました。当時は経営的に浮き沈みが激しかった時期もあったのですが、苦しい時期には日本のゲーム会社さんが助けてくださったという深い恩義が経営陣の中に強くあります。また、スパコンに初めてNVIDIA GPUが採用されたのも日本です。NVIDIAの歴史のマイルストーンの中で日本は重要な役割を果たしてきました。そういった意味でも、ジェンスンは日本に対して強い思い入れがあります。日本のスタートアップが成功するその一助になりたいですし、国としてのAI開発力、いわゆるソブリンAIの強化という側面も含め、スタートアップの皆様を支援していくことが重要だと考えています。」

最後に日本のスタートアップの皆様へ、メッセージをお願いいたします。

「「Inception プログラム」だけでも、ハードウェアやソフトウェアの割引、クラウド・クレジット、VCとのマッチング、GTCでのグローバルなアピールの場など、様々な伴走支援を用意しています。SoftBankやSTATION Aiとの連携プログラムもあります。スタートアップがこうした支援プログラムを利用しないのは本当にもったいないので、ぜひこれらのリソースを活用し、自信を持って世界に挑んでいただきたいです。」

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