TOP > インタビュー一覧 > IPOだけじゃない!スタートアップはM&Aを検討すべき理由|成長戦略としてのM&Aで自己実現も叶える方法とは
STARTUP M&A Circulation
M&Aはスタートアップにとって重要な出口戦略の1つだが、機密性が高いためリアルな情報を入手しづらい状況だ。
そんな課題を解決するために、STARTUP M&A CirculationではM&A経験者だからこそのリアルな内容を語るイベントを開催している。
今回登壇したのは、海外企業へのM&AとMBOを経験したアドイノベーション株式会社 代表取締役会長の石森氏、昨年(2024年)末にM&Aを実行したSaaSを展開しているAnyflow株式会社 代表取締役の坂本氏だ。
モデレーターを務めたプロトスター株式会社の池田は、年間100社以上のスタートアップ企業のM&A相談に携わる人物。
M&A戦略の立て方、交渉のリアル、成長を実現するプロセスについて、深く実践的な知見が共有された当イベントをレポートする。
表には出にくいM&Aのリアルを知るチャンス。貴重な実体験が詰まった本記事をぜひ最後までご覧ください。
このページの目次
池田:まずはゲストの方から自己紹介をお願いします。
石森: 私は2010年にアドイノベーション株式会社を立ち上げ、2017年にイスラエルの会社に売却しましたが、2023年にMBOしました。
創業した会社を売却した後に買い戻して会長になり、もう一度会社を伸ばしている最中です。
経営・M&Aの経験を活かしたコンサルティング会社も運営しながら、エンジェル投資家として30社以上のスタートアップへ出資なども行っています。
坂本:私は新卒でサイバーエージェントに入り、エンジニアをしていました。
2017年に「人の時間を創る。」をミッションとしたAnyflow株式会社(API連携サービスを提供)を創業して、つい3ヶ月前の2024年 11月にアスエネ株式会社にグループジョインしたところです。
アスエネ株式会社はCO2の排出量を計算する事業を行っている非常に勢いのあるスタートアップで、未上場の企業同士のM&Aでした。
池田:坂本さんはM&Aをしたばかりなので、オフレコの話がたくさん聞けることを期待しています(笑)
池田:私はプロトスター株式会社が運営している『STARTUP M&A Circulation』の事業責任者をしています。
新卒でベンチャー企業に入社して、人材領域のエージェント業務やシステム開発の提案営業、ディレクション、採用人事などに従事していましたが、2023年にスタートアップカンファレンスIVSで企画ディレクターを経験した後プロトスターに転職しました。
同時に、ずっと感じていた日本のスタートアップの課題を解決するために、STARTUP M&A Circulationを立ち上げ、昨年は100社以上のスタートアップのM&Aに関する相談に乗り支援も行いました。
池田:では最初のテーマである「M&Aまでのストーリー」について、お2人の体験談をお聞かせください。
坂本:AnyflowではSaaSとSaaSをつなげるシステムをつくっていますが、私が初めて起業した24歳からの約1年半は別のシステム(BtoCサービス)をつくっていました。
当時エンジェル投資家3名から2000万円弱の投資を受けていましたが、当時展開していた事業はマネタイズが難しいという課題があったため、最初にピボットしたのが2019年くらいで、何度かピボットを繰り返しながら2020年から今の事業を行っています。
SaaSは開発期間がかかるので、IVSやB Dash Campなどに出てプレゼンスを高めて累計3億ほど資金調達しました。
M&Aをしたのは、事業運営の調子が良くなってきたタイミングです。
必要に迫られてM&Aをしたのではなく、そのまま自分たちでもやっていける状態でしたが、戦略的にM&Aを選びました。
池田:我々が受ける相談として「計画的にM&Aを検討しているケース」や「M&Aしか選択肢がないケース」が多いのですが、 まさに計画的なM&Aだったんですね。
坂本:そうですね、こちらから積極的に相手を探したというより、何社からかオファーをいただいて、その中から選んで決めました。
池田:投資家とのコミュニケーションはうまくいきましたか?
坂本:●●●●●●●●●●●●です。
「IPOしたとしたら、これくらいのバリュエーションになるだろう」と社内でシュミレーションしていたので、VCとの対話は●●●●●●●●●●●。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●のが良かったのかもしれません。
池田:シリーズAあたりのフェーズで、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●がレアケースですよね。
最初から将来を見据えて、メンバーを選んだのでしょうか。
坂本:運的な部分が大きいのですが、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●です。
社員が10人もいない時期に●●●●●●●を採用して、VCとのコミュニケーションでも●●●●●が主導していたので期待値調整もできていたと思います。
池田:聞いているだけで素晴らしいケースですね。
石森さんはスタートアップのM&Aを支援されている立場から、いかがですか?
石森: スタートアップやエンジェル投資家からの相談を8年やっていますが、役員にIPO経験者がいる会社はほとんどありません。
私が会社を立ち上げた時に経営者仲間が10人ほどいましたが、社長が1人で経営も経理などもやっていた会社とCFOなどの経営陣を揃えていた会社とで事業の伸び方が違うんですよ。
社長がいくら優秀でも、1人で大きく伸ばすのは難しいからです。
池田:スタートアップの初期に ●●●●●●を口説くのは大変だったのではないでしょうか?
坂本:●●●●●●●●給料は驚くほど●●●●●●●●●●●。
最初は●●●●として入ってもらい、のちに●●●となりました。
●●●のタイミングで●●●●●●●●●●●●●。 ●●●●●●●●●●●●でまだ若かったです。
しかも●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ではありませんでした。
●●●も当時30歳前半ぐらいで、前職の給料●●●●●●●●●●●程度だったと思います。
石森:スモールIPOの人を探すのが狙い目ですね。
池田:次は石森さんのM&Aについて教えてもらえますか。
石森: 2013年の資金調達では6億円、その後に約4億円調達していますが、そこまではグローバル展開をしていました。
でも組織が赤字になって、そこからV字回復する中で、M&Aを成長戦略として選びました。
2017年にイスラエルの会社とM&Aをした後、色々あって2023年にMBOしましたが、●●●●●●●●●●●●ので、そういう意味では良かったです。
MBOは人生プランに入ってなかったものの、予想外の毎日を楽しんでいます。
M&A後も事業も社員も大好きで楽しかったのに辞めたくなってしまい、他の会社に投資していたし、やりたいこともあるので、そちらに意識が向いていましたが、結局MBOをして戻りました。
池田:海外M&Aになると、言語やカルチャーの違いが関係してきますが、どういうところが大変でしたか?
石森: M&A先をイスラエル企業にした理由は、面白そうだと思ったからです。
売った後のギャップに関しては、私は楽しめたのですが、管理側のマネジメント層には苦労させてしまいました。
すべて英語の資料で決算月は向こうに合わさなければならず、土日でもバンバン連絡がきて、半年くらいは相当大変でした。
坂本:売却先はどうやって選んだのでしょうか?
また、交渉の仕方は日本企業とは違いますか。
石森:国内の通信会社やマーケティング会社などから声がかかっていて、海外企業だと韓国の大きい広告会社なども視野に入れていました。
相手企業を決めるために私が行ったのは、会社の予算をつけて『特命係長』を雇うこと。
英語ができてお酒大好き、グローバル企業の偉い人と仲良くなるのが上手な特命係長は、いろいろな会社のイベントに参加していて人脈があり、イスラエルのいくつかの会社とつながっていました。
それがきっかけで売却先が決まりましたね。
特命係長は、社内で「なんであの人いるんですか?」と言われる存在でしたが(笑)
交渉については、私は英語が話せないのですが、トーマツベンチャーに相談して、英語が話せる優秀な方を紹介してもらえました。
池田:坂本さんのケースと同じで、やっぱり仲間のつくり方が大切なんですね。
池田:M&A先が海外企業だと、カルチャーの統合など、PMIはいかがでしたか?
石森:先方からいろいろな働きかけがありましたが、完全なカルチャーフィットはしなかったです。
シンガポールやタイなどの合併企業は管理部を全部切られていたのに、うちだけは売上の規模もグループの中では大きかったせいか幹部が退職させられなかったことも関係していたかもしれません。
イスラエルでのパーティーにもよく招待されて参加しましたが、我々は染まらなかったですね。
池田:先方は自社の文化に染めたかったのでしょうか。
石森:そうですね、買収された後すぐ「石森は英語ができないし、言うことを聞かないので、経営を新しい人に変えたい」という話がありました。
買い手としては、「経営者をチェンジしてコントロールしたい」という狙いがあったのでしょう。
ただ、業績を保っていたので、やり方に文句を言われなかったし、強引に経営者を変えられることもありませんでした。
そして、新しい経営者候補の何人かと面接したのですが、条件に合う人がなかなかいませんでした。
そのタイミングで向こうのトップがとある事情で捕まってしまい親会社が変わり、新しい親会社にはなぜか気に入られたので経営者のポジションで居続けられました。
池田:M&A後に先方との関係性をどう構築するかが重要ですね。
池田:坂本さんはM&A後のギャップがありましたか?
坂本:うちの会社は8割ぐらいエンジニアの組織で僕自身もエンジニアなので、エンジニアのカルチャーが根強くて、わかりやすく言うと「API連携が得意な陰キャ集団」です(笑)
売却した会社は正反対で、営業が7割くらいいて明るく華やかな雰囲気の印象でした。
約100億円を調達していて、非常に勢いのある会社ですが、当初は「うちとカルチャーがマッチするだろうか?」という不安は多少ありました。
しかし、デューデリジェンスをする中で、先方の話を聞いてコンフリクトしないことが予測できたため、M&Aを決めました。
M&A後のギャップに関しても、最初からわかっていたことが起きているだけなので想定内ですね。
池田:譲渡先をアスエネに決めた一番の理由はなんだったのでしょう。
坂本:何件かオファーをいただいた中で条件が一番魅力的だったことと、顧客のユーザー基盤との相性が良かったことです。
我々はAPIを接続する会社なので、たくさんシステムを入れているエンタープライズを顧客にもつアスエネがマッチすると思いました。
実際自分たちだけは獲得できなかったような企業や日本を代表する企業と商談できているので、我々のプロダクトとアスエネが持っている顧客基盤は非常に相性が良かったのでしょう。
池田:条件がもっとも良かったということは、アスエネはAnyflowのどこに魅力に感じたと思いますか?
坂本:アスエネは資金調達をして積極的にM&Aしていることを公言していて、メインのCO2排出量の算定サービス以外にも多角的なプロダクト展開をしています。
長期戦略を描いた絵にはAPI連携いわゆるiPaaS市場もマッピングされていて、将来的にアスエネが欲しいパーツに我々が一致していました。
その中でiPaaSのスタートアップを検索してみると、国内の競合は数社。
資金調達をしてすでにM&Aをしている会社や、上場企業の子会社などを対象外とすると、残るのはうちくらいで、バリュエーションの面からみても、iPaaSを買収するのだとしたら我々ぐらいしか選択肢がなかったのではないでしょうか。
池田:お互いに補完し合えるM&Aだったんですね。
坂本:はい、先方がもっていない「Anyflowのエンジニアとプロダクト」が欲しかったのでしょう。
石森:だとしたら、エンジニアがM&A後に辞めてしまわないよう特別な施策が行われましたか?
坂本:アスエネはSHIFT流のM&Aをしているので急激なPMIをしていく方針ではないようで、独立的な経営を任されていて、エンジニアの待遇などに関してはほぼ何も変わっていません。
だからエンジニアが働き続けやすい環境でした。
石森:M&Aをしたイスラエル企業はキーマンが辞めないよう、"営業チーム"だけじゃなく、バックオフィスも含めて私がキーマンを7人ほど定めてKey Employee Bonus(キーエンプロイーボーナス)を設定しました。
海外企業ではよくあることなのでしょうが、すべて計算されていたと思います。
また、私は株がなくなったら急にやる気がなくなってしまいましたが、坂本さんはどうでしたか?
坂本:そうですね、私はCEOでありながらプロダクトマネージャーのような役割もしています。
今は自分の時間の9割をM&A前に仕込んでおいた新規事業の立ち上げに使っていて、プロダクトに向き合う時間が非常に多いんですよ。
モチベーションが保たれている理由はこれで、新規事業を他社のアセットを使ってできているからかもしれません。
池田:M&Aをする目的は、会社を成長させることと、経営者としてのキャリア形成の両面があります。
比重はどちらが大きかったですか?
坂本:会社と個人のどちらを意識したかというと半々ですね。
スタートアップ創業者は「自分=会社」で表裏一体なので、自分のことを考えていても結局会社につながるし、そこは分けて考えられません。
また、我々に投資してくれているエンジェル投資家3人とも M&Aの経験者です。
事業がうまくいかない時に相談していましたが、彼らの話を聞いているとEXIT後に次のチャレンジをしている姿が楽しそうに見えました。
1回事業を売却したことによって、次のキャリアでさらに大きな会社を築き、自己実現をしていっていたんですよね。
それを知っていたのが、IPOではなくM&Aにした要因の1つかもしれません。
池田: 石森さんはいかがでしたか?
石森:M&Aをした当時は会社を成長させることに目が向いていました。
でも面白くないとイヤだと思い、相手先をイスラエル企業にしました。
実はバリュエーションは日本企業のほうが高かったかもしれないのですが、自分の楽しさを優先しました。
そして、個人として考えた場合、経済的なゆとりができるし、次の事業がやりやすいこともM&Aをした理由です。
池田:ありがとうございます。M&Aの事例はたくさん公開されているのですが、リアルな話は少ないので、体験談を聞けるのは本当に貴重です。
池田:次は参加者からの質問にお答えしてもらいます。
質問① VCにIPOは厳しいと言われましたが、どうコミュニケーションすればお互いにとってベストな選択ができますか? M&Aの紹介も受けるべきでしょうか?
石森:まずVCに本音で話してもらうことが大切です。
エンジェル投資家もVCも起業家にすごく気を使っています。
私が感じているのは、甘えている起業家が多いこと。
スタートアップのM&Aを手伝っていますが、理想(起業家が想定している自社のバリュエーションなど)と現実に乖離がある経営者が多い印象です。
だから、VCはもっと本音で厳しいことを言ったり、M&Aの紹介もして起業家が現実を知る機会をつくったほうが良いでしょう。
たとえば、5年やっても目標を達成できてないなら、何かを変えないといけません。
でも、ふわふわしたビジョンの話しかしない起業家もいます。
確かにビジョンは大事だけれども、「いつまでに何を成し遂げるのか?そのために何をすべきなのか」をハッキリさせるべきです。
VCが優しいと、この指摘をしてもらえないので、起業家にとってもVCにとっても良い選択をするためにはもっと本音で話す必要があります。
池田:私もVCから「起業家にどこまで突っ込んで言っても良いのでしょうか?」という相談をされることがあります。
ふわっとしたやりたいことは決まっていても、明確なゴール設定が定まってない起業家が多く、VCも悩んでいるのでしょう。
坂本:私も、VCはリアルな話をどんどんしてM&A先を積極的に紹介して良いと思います。
代表取締役は上司がいないので、創業すると叱られることがなくなるんですよね。
叱ってくれる人がVCとお客様くらいしかいなかったせいか、私自身は今でもVCや投資家から言われたアドバイスが記憶に残っています。
叱ってくれる人が少ない環境だからこそ、厳しく率直に言ってもらわないといけません。
起業して3~5年経つタイミングで、M&Aという選択があるということを自分の中で認知して現実味を帯びてくると、考え方が変わってきます。
そのタイミングで起業家が自らIPOやM&Aをした先輩から「実際どうなんですか?」と質問すべきで、そうすれば解像度が上がって自分の目指すゴールが見えてくるはずです。
池田:聞きたいことはまだまだあるのですが、時間がやってきてしまいました。
リアルなお話をありがとうございました。
ゲストのお2人に拍手をお願いします(拍手)
“裸眼のVR”で新しいバーチャル表現で池袋のカルチャーとコラボレーションするkiwamiの取り組みとは
日本のHR市場がこれから目指すべき、TalentXが描く「タレント・アクイジション」の世界
TalentX代表 鈴木貴史氏
「上場=目的達成のための手段」Kaizen Platformの創業者が語る“上場”とは
ビジネス書大賞『売上最小化、利益最大化の法則』の作家に聞く 「利益率29%の⾼収益企業を作る方法」
資金調達に新しい選択肢を。ブリッジファイナンスとしてのファクタリングを「PAY TODAY」が解説
【令和の渋沢栄一になる】エンジェル投資で日本にイノベーションを
米国新興市場上場を経て10億円を調達 「代替肉」で社会課題に取り組むネクストミーツの歩み
海外で活躍する女性起業家の実態 〜2児のママがシンガポールで起業した理由とは?株式会社ハニーベアーズ〜
湊 雅之が見る欧米と日本のSaaS業界の違い | 注目海外SaaS 6選
BtoB/SaaSベンチャー投資家 湊 雅之
広告事業だったのにコロナ禍で売り上げ上昇! 〜売り上げ90%減からの巻き返し〜
代表取締役 羅 悠鴻