【ペライチ創業者&メガベン出身の再起業家が語る】起業経験を活かしたセカンドキャリアの築き方|自分事化して動ける元起業家は希少価値が高い!

【ペライチ創業者&メガベン出身の再起業家が語る】起業経験を活かしたセカンドキャリアの築き方|自分事化して動ける元起業家は希少価値が高い!

TOKYO Re:STARTER コミュニティイベント第5回

記事更新日: 2025/01/28

執筆: 宮林有紀

起業経験は一生の財産だといわれている。

なぜなら、どんな結果になろうとも、挑戦した体験が社会から高く評価されるからだ。

それを身をもって体験したのが、当イベントに登壇した株式会社RemitAid 代表取締役CEO 小川 裕大 氏である。

小川氏は起業を経験した後に株式会社ディー・エヌ・エーで活躍し、さらに2度目の起業に挑戦している。

もう1人の登壇者は、起業経験後にエンジェル投資家となり、OASIS FUND(VC)を立ち上げた橋田 一秀 氏だ。

橋田氏は、投資家としてたくさんのケースを見てきた経験を元に「元起業家は企業に歓迎される貴重な人材だ」と述べた。

起業後のキャリア形成について、当事者の目線で語られたイベントをレポートする。

起業後のセカンドキャリアはスタートアップを支援する投資家・VC|OASIS FUND 代表パートナー 橋田 一秀 氏

橋田 一秀 氏

橋田 一秀 氏

OASIS FUND 代表パートナー
1983年東京都生まれ。2007年東京理科大学工学部電気工学科卒業後、株式会社NTTデータに就職。その後株式会社うるるにてエンジニアとして勤務後、2014年株式会社ホットスタートアップ(現:株式会社ペライチ)を創業。代表取締役に就任。2023年4月全役職を退任。同時にスタートアップを支援する組織、株式会社BOOTを設立。渋谷駅徒歩5分にスタートアップが無料で使えるコミュニティスペース(SHIBUYA STARTUP OASIS)を運営。エンジェル投資家としては2022年から2024年で77社投資実行。2024年、スタートアップを創業から支援するVC、OASIS FUNDを設立。

司会:今回のトークセッションのテーマは「いま成長企業が求める起業経験人材たち」です。

登壇者の橋田さんと小川さん、自己紹介をよろしくお願いします。

橋田:2007年に大学を卒業した後、株式会社NTTデータに就職し、その後、現在は上場していますが、当時は社員十数人規模のベンチャー企業だった株式会社うるるでエンジニアとして勤務しました。

起業したのは2014年です。

誰でも簡単にホームページを作成できる「ペライチ」を提供する株式会社ホットスタートアップ(現:株式会社ペライチ)を創業しました。

2022年からは、エンジェル投資家としても活動し、2024年までの2年で77社に投資しています。

2023年4月には創業した会社の全役職を退任し、同時にスタートアップを支援する株式会社BOOTを設立しました。

2024年にはOASIS FUND(VC)を立ち上げましたが、これはエンジェル投資家という個人ではなく、もっと大きな力でスタートアップを応援したいと思ったからです。

また、渋谷駅徒歩5分にスタートアップ関係者が無料で利用できるコミュニティスペース(SHIBUYA STARTUP OASIS)の運営もしています。

うつ病を乗り越えた再起業家|株式会社RemitAid 代表取締役CEO 小川 裕大 氏

小川 裕大 氏

小川 裕大 氏

株式会社RemitAid 代表取締役CEO
早稲田大学商学部を卒業後、株式会社ネットプロテクションズに入社し、アライアンス営業に従事。同社を退職後、起業。サービスのリリース・グロース・資金調達の経験を経て、株式会社ディー・エヌ・エーに転職。新規事業のプロダクトオーナー(事業責任者)として業務を行う。その後、当時株式ディー・エヌ・エーの子会社である株式会社ペイジェントにて新規事業の責任者として戦略の策定・事業企画・セールスを担い、大手からスタートアップ、国家プロジェクトで活用されるプロダクトにまで成長させる。2022年8月に株式会社RemitAidを創業し、現在に至る。

小川:大学卒業後に、株式会社ネットプロテクションズという後払い決済をしている企業に入り、アライアンス営業をしていました。

それから起業しましたが、2回目の資金調達のタイミングでうつ病を発症し、退任した経験があります。

その後、株式会社ディー・エヌ・エーに転職しました。

ディー・エヌ・エーでは、新規事業の責任者を務めた後に、子会社である株式会社ペイジェントで新規事業の責任者を担当しました。ペイジェントにて立ち上げたプロダクトは大手企業やスタートアップ、官公庁でのプロジェクトなどで活用されるほどになりましたが、「もう一度起業したい!」と思ったんですよね。

それで、2022年8月に株式会社RemitAidを立ち上げました。

司会:小川さんは2度目の挑戦をしている起業家ですね。

1つ目の起業経験でのうつ病の発症は、予想外の展開だったのではないでしょうか。

小川:はい、今だから話せますが、当時は資金調達や外部からのプレッシャーなどの人間関係でかなり悩んでいましたね。

一方でストレスの原因が自分自身でわかっていたので、退任後2週間程度で動けるようになり、1カ月半後にはディー・エヌ・エーに就職できました。

また、一緒に起業した共同創業者やVCなど、当時関わりがあった方とは今でも良好な関係を保っています。

司会:起業後の就職先としてディー・エヌ・エーを選んだ理由はありますか?

小川:正直な話ですが、当時はスタートアップで働くことに抵抗がありました

2015年頃は今よりもスタートアップ業界が小さかったので、スタートアップというコミュニティに所属したままだと知り合いに会って「自分で創業した会社を諦めた人」だと思われてしまうのではないかと想像してしまいました。

そのため、一般的な転職エージェントに相談して、普通に転職活動をしました。

ディー・エヌ・エー以外にもたくさんの選択肢がありましたが、ゆくゆくは再起業することも視野に入れて、IT業界で働くのがベストだと思っていました。

なおかつ、当時のディー・エヌ・エーは新規事業のポジションが空いていて、起業経験を活かして働けるのではないかと思ったのが決め手です。

いま思うと、この段階で次の起業を考えるのは図々しいと感じますが、どうしても諦めたくなかったんですよね。

【起業家のセカンドキャリア】辞めるタイミングと辞め方で未来が決まる

司会:橋田さんは投資家として多くの起業家を見てきていますが、退任後や事業をクローズした後の典型的なパターンはあるのでしょうか?

橋田:ケースバイケースですが、また起業する人もいれば、会社員として働く人もいるし、借金を背負った結果として収入を重視して仕事を選ぶ人もいます。

たとえば、資金調達できなくて個人でキャッシングして事業を続けると、倒産した後に個人に借金が残るので返さないといけません。

小川:私の知り合いにも、そういう方が何人かいました。

やはり、辞めるタイミングが重要なのでしょう。

資金面だけでなく体調もそうですが、ぎりぎりまで無理をすると、次のキャリアに支障がでます

将来のことまで考えて、撤退するタイミングを見極めないといけませんね。

また、創業した会社を畳んだり退任したりする時は、VCなどお世話になっている周りの人に誠実さを見せることが非常に大切です。

私がもう一度起業にチャレンジできたのも、辞める時に誠実なコミュニケーションを心がけたことも要因だと思っていて、うつ病でとても辛い状況ではあったのですが、丁寧なコミュニケーションを怠らなかったことが今に繋がっていると感じます。

辞める時の重要ポイントは、「タイミングとコミュニケーション」この2つです。

投資家が大きな期待を寄せる!成功する起業家の条件は「粘り強さ」

司会:「橋田さんから見た小川さんの起業家としての魅力を聞きたい」という質問が参加者からきていますが、いかがですか。

橋田:小川さんとの付き合いは2015年頃からで、起業家仲間でもあり、今は投資家としての関わりもあります。

小川さんの魅力は、ものすごく粘り強いこと。

ディー・エヌ・エーで働いていた頃から、2回目の起業の話を聞いていて、精神的に大変だった時期を経て会社員として活躍して、さらに挑戦しているところが素晴らしいです。

今の事業も結構難しい領域ですが、粘り強さがあるからこそチャレンジできたのでしょう。

私は投資家として小川さんの粘り強さに賭けて投資しています。

司会:小川さんにとっても橋田さんのような良き理解者がいるのは心強いですね。

【元起業家の強み】組織を成功に導く「自分事化」する能力&2回目の起業が成功しやすい

司会:続いての質問は「転職時の起業経験の活かし方、起業経験が就職時にどう生かされたか?」です。

小川:ディー・エヌ・エーでは、メンバーの1人として新規事業のプロジェクトに参加していましたが、入社から3ヶ月で責任者になりました。

責任者という職務を与えられた理由に、起業経験が関係していると思っています。

ディー・エヌ・エーではサラリーマンだけど起業家のようなことをしていて、簡単に言うと3ヶ月おきに会社から約1,000万円の資金(予算)調達をしていました。

予算を確保できるのは、KPIをしっかり設定し、分析も十分に行った者だけです。

投資家から資金調達をするのとほぼ同じようなことで、事業について考え抜いて、次の調達に向けて成果を出していく必要があります。これは自分事化できている人にしかできないことなんですよね。

自分事化とは、課題に対して「誰かがなんとかしてくれるだろう」という他人ごととして考えるのではなく、「自分がなんとかしなくては」と考えて主体的に動くこと。

組織の中で事業をつくってみてわかったのですが、起業経験によって自分事化して動くマインドセットが身についていると、「KPI設定や分析をするのは当然のこと」という感覚に自然となります。

ここがサラリーマンとは違うと感じる点で、私は組織の中に入って、元起業家の希少価値の高さを実感しました。

ディー・エヌ・エーには元起業家が複数人いて、素晴らしい結果を残していましたね。

司会:起業した人はサラリーマンとは違う視点で動ける事も多いため、責任者のような重要なポジションを任されるのでしょう。

次の質問「投資家の視点でみて、連続起業家と1回目の起業家の違いはありますか?」に関して、橋田さんいかがでしょう。

橋田:連続起業家の人は最初から大きな金額を調達できる傾向がありますが、それは「経験が豊富だから大きな事業に成長するだろう」と思われやすいからで、ようは投資家の期待値が大きいんです。

もう1つは、挫折することで経営者として成長できるからでしょう。

なんでもそうですが、1回目に失敗したら2回目は改善するので、1回目よりも内容が良くなります。

そういった意味でも、失敗したとしても起業経験は無駄になりませんね。

サラリーマンにはないオーナーシップ!会社にとってベストな選択ができるのは起業家だけ

小川:ペライチで起業経験のある方を採用したことはありましたか?

橋田:ペライチで新規事業をつくろうと思った時、当時の社員は30~40人でしたが、新規事業をつくれる人がいませんでした。

サービスを伸ばすことに長けた人を採用していたので、ゼロからイチをつくることができる人がおらず、起業家のマインドセットを持った人が社内にいないことに気づきましたね。

創業者とそれ以外の社員では、得意分野が明らかに違います。

自分事化に近い意味になりますが「オーナーシップ」も重要で、オーナーシップがある起業家は自分のためではなく会社にとってベストな選択ができます

そして、起業家の特徴は社内にこもるのではなく、外からリソースを集めてくる仕事の仕方をすること。

起業経験者は外に情報を取りに行ったり、予算があれば外から人を取ってくるなど、そういったことが自然にできるので、とても貴重な人材です。

どんな会社でも起業家のマインドセットをもつ人が欲しいのですが、「オーナーシップがある人材を採用したくてもなかなか見つからない」というのはよく聞く話で、それほど希少価値が高いのでしょう。私もペライチの時は、自分でゼロイチ部分をやり切るという選択肢を取りました。

とにかく貴重なので、起業家のマインドセットがある人は組織にすごく歓迎されますね

新たな挑戦はさらに大きな力でスタートアップを支援すること|橋田氏

司会:これからのお2人の挑戦について聞かせてください。

橋田:ペライチを創業し、エンジェル投資家を経て、今はベンチャーキャピタリストをしています。

ベンチャーキャピタルというキャリアは、私にとってまさに次の挑戦

2023年の4月に退任した時は、ベンチャーキャピタルではなく、エンジェル投資家という形でスタートアップを支援するつもりでした。

しかし、自分の資産だけでずっと続けるのは困難だと感じ、投資のための資金を預かって、スタートアップに投資をして増やしてお返しするベンチャーキャピタルに方向転換しました。

責任を背負ってでも、さらに強力にスタートアップを応援するのが私の挑戦です。

司会:特に応援したい起業家の特徴はありますか?

橋田周りを巻き込む力がある起業家ですね。

ビジョンやミッション、売上のような目標がありますが、この目標に対してリソースを集めるのが経営者の仕事です。

誰もが最初は身一つでリソースがなにもない状態ですが、経営者はビジョンを掲げて仲間を集めないといけません

人を巻き込む力がある人は、そこで実力を発揮します。

ここがきちんとできていると、長く戦えるでしょう。

ここがブレていると、途中で諦めてしまうかもしれないので、人を巻き込んだり、人への影響力がある人に投資したいですね。

再起業した理由は「悔しかったから」日本を代表する企業をつくることが目標|小川氏

司会:小川さんが再起業という2回目の挑戦を決めた一番の理由はなんですか?

小川:ひと言で言うと、悔しかったからです。

退任した会社の情報がSNSで流れてくるたびに悔しくてしょうがなくて、もう一度起業したいという思いが強くなっていきました。

2度目の起業を「クロスボーダー決済プラットフォーム」という分野にした理由は、マネーロンダリング規制などの関係で、ニーズがあるのが分かっていても当時所属していた会社ではできなかったからです。

加えて、フィンテックの法的な知識があったことも関係しています。

でも、これらの条件は後付けですね。

一番の原動力は、悔しかったから何かやりたいと思ったことです。

司会:実際に再起業して今はいかがですか?

小川:もちろん大変なこともたくさんありますが、毎日が文化祭の前日のようなわちゃわちゃした雰囲気でとても楽しいです。

今はタイムリミットがあるので緊張感があるとはいえ、それでもメンバーがいてお客さんがいて事業があるだけで幸せを感じます。

司会:起業が好きだという気持ちが伝わってきました。

小川:はい、ビジネスをつくるのが好きですね。

司会:そんな小川さんが、今後挑戦したいことは何ですか?

小川:スタートアップでもスモールビジネスでも事業をつくること自体が尊いことですが、私はスタートアップを選んだので、やるからには大きいことをやりたいです。

1回目の起業をした時とは違い、一般的にもファンドサイズが大きくなってきていて求められているものが変わってきていますし、日本社会としてみても大きな産業をつくらないといけません。

そういった大きな挑戦をスタートアップという手段を使って行い、日本を代表する企業をつくることが目標です。

司会:おふたりの挑戦の話を聞いているとワクワクしますね。

起業の価値とは「誰かの人生を変えられること」「とにかく楽しい」

司会:最後の質問は、おふたりにとって「起業の価値とは?」です。

橋田:自分がつくったサービスをいろんな人に使ってもらえることでしょうか。

今でも「ペライチ使っています」と言われるとすごく嬉しいですね。

起業したことで誰かの人生を変えることができ、「ペライチを使ったら売上が上がりました」といった話を聞くと感動します。

人々の人生を動かすことができて「やりがいを感じられる」のが起業の価値です。

一方で精神的にしんどかったり、会社のキャッシュが心配で眠れなくなることもあって、感情のジェットコースター状態ですが、いろんな経験をするからこそ人間的にも成長できると思います

小川:個人的な意見になりますが、起業はとにかく楽しいんですよね。

実は起業した大元の理由をストレートに言語化すると、承認欲求を満たすためです。昔から学級委員長や生徒会長、サッカー部のキャプテンをしていたのですが、根本の欲求としては「目立ちたい」「褒めてもらいたい」と思うタイプ。

それがオーナーシップにつながっていて、モチベーションにもなっています。

「欲求と書いてエネルギーと読みます」という感じですが(笑)、私にとってエネルギーを適切に使える場所が起業です。

司会:非常に貴重なお話ですね。起業後のキャリアに迷われている方は、お2人の話を参考にしていただければと思います。

改めて橋田さん、小川さんに大きな拍手をお送りください。(拍手)

元起業家を求める企業によるピッチ

本セッションの後には起業経験者の経験をポジティブに評価する企業6社による「会社紹介ピッチ」が行われた。

ピッチ登壇企業からは、それぞれの会社の考える起業経験者の魅力や、起業後に実際に転職をした当事者から見た会社の特長、社内で活躍する起業経験者の事例などが語られた。

会社紹介ピッチ登壇企業は以下のとおり。

左から、

清水建設株式会社 NOVARE ベンチャービジネスユニット アクセラレーション
グループ グループコンダクター 加藤 大輔 氏
株式会社丸井グループ 共創投資部 共創投資担当 シニアマネジャー 桝井 綾乃 氏
クラスター株式会社 People&Culture部 Talent Acquisition Group / Manager 猪飼 直史 氏
ユナイテッド株式会社 マネージャー 中鳥 直人 氏
株式会社Plott 取締役 久野 圭太
プロトスター株式会社 代表取締役 前川 英麿

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宮林有紀

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