TOP > インタビュー一覧 > 「若者離れは後押しせよ!?」「仏教哲学×学生×起業家コミュニティ」「公園にて大規模地蔵盆フェスタ」など 京都市の抱える本気のお悩み解消へ、異色な知の交わりから価値を創造するアイディアソンを開催!
KYOTO Innovation Studio Session vol.11
KYOTO Innovation Studioでは、京都市内外の多様な「知」を持つ方を招き、「京都でイノベーションを加速させる」ことをテーマに、トークセッションや動画配信など様々な活動を行っている。
参考:KYOTO Innovation Studio 公式HP
第11回目となる今回は、従来のパネリストをお招きするセッション形式とは異なり、京都市の悩み事をお題に、参加者全員が議論の主体となるアイディアソンを開催。
京都市都市経営戦略アドバイザーの入山章栄氏がファシリテーターを務め、京都市内外の事業会社、スタートアップ、VC、クリエイター、アカデミア、学生など、多岐にわたる分野の方々が参加し、白熱した議論が展開された。
京都市のお悩みはこの3つ。
【1】15万人の若者が離れられない街にするには?
【2】これからの公共空間の可能性とは
【3】公共交通の多用な活かし方・稼ぎ方
様々な知を持つプレーヤーが交わり、課題の本質を突くようなアイデアも出された、熱気あふれる会場の様子をレポートする。
このページの目次
入山 章栄氏
京都市都市経営戦略アドバイザー 入山 章栄氏
早稲田大学大学院経営管理研究科早稲田大学ビジネススクール(WBS)教授。慶應義塾大学院経済学研究科修士課程修了後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院より博士号を取得し、同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
WBS准教授を経て、2019年に現職へ。「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)等の著書のほか、メディアでも活発な情報発信を行っている。
入山:KYOTO InnovationStudioでは、2022年から市内外の多様な「知」を持つ方を招待して「京都でイノベーションを加速させる」ことをテーマに、これまでに様々な方をゲストにお迎えしてセッションを行ってきました。
京都は世界的に有名な観光都市で、世界中の人が訪れたい場所です。
一方で、京都市を観光都市としてだけでなく、新しいビジネスが生まれる産業都市としてさらに成長発展させたいという京都市職員の方の思いを知り、
僕もそれに賛同して京都市都市経営戦略アドバイザーとなり、KYOTO Innovation Studioを立ち上げました。
すでに成果が出始めていて、たとえばForbes JAPANが行っている「カルチャープレナーアワード」の『カルチャープレナー』はKYOTO Innovation Studioから生まれた言葉です。
参考:CULTURE-PRENEURS 30|Forbes JAPAN(フォーブスジャパン)
通常はパネルディスカッションを行っていますが、今回は参加者の皆さんによるピッチ大会で、京都の課題を解決していきましょう。
今日の参加者は、京都市外から24名、市内から32名、京都市役所の方が8人。
事業会社、スタートアップ、VC、クリエイター、アカデミア、学生など、多岐にわたる分野の方々にご参加いただきました。
京都市職員から3つのお悩みについての説明を聞いた後、グループごとにディスカッションして、最後にピッチしてもらいます。
多様な立場の人がアイデアを出し合うことで、既存の価値観に縛られない新しい解決策がでてくるはずです。
これこそがイノベーションで、離れた場所にある知と知を掛け合わせることで初めてイノベーションが起こります。
実はこれが京都に足りない部分でもあり、意外と人と人がつながっていないんですよね。
これだけポテンシャルがあってこれだけ素晴らしい歴史・文化・技術があるのに、日本各地や海外とのつながりが不足しています。
また、外の人を受け入れることに抵抗がある京都の人もいるでしょう。
しかし、イノベーション都市になるためには、外とのつながりが必要不可欠です。
外の人というのは、インバウンドという意味ではありません。
旅行のような一時的な滞在ではなく、京都に何年も住んでもらったり、京都でスタートアップを起こしてもらうことが大切です。
2つ目の課題は、京都の中の人同士がつながっていないこと。
産業界、学会、アート、神社仏閣、大手企業、スタートアップなど、京都には素晴らしい能力をもつ人たちがたくさんいるのに分断されています。
異分野の人が京都市内でつながるだけでも、イノベーションを起こせるでしょう。
今まで離れていた人たちが集まって、一緒に議論して、いろいろな「人の組み合わせ」をつくることがイノベーションを起こすもっとも手っ取り早い方法です。
だから、参加者の方は、ぜひ「得意ではない分野だけど面白そう」と感じたお悩みの解決に取り組んでください。
遠く離れた知と知を掛け合わせたほうが、画期的なアイデアが生まれるからです。
ピッチ大会の後は、みんなで投票をして、1位のチームと入山賞のチームのアイデアが京都市の施策として採用検討されます。
京都市の方は、「実行に移す際に、提案した方も手伝って欲しい」と言っていました。
提案はクレイジーなことをどんどん出してほしいのですが、現実問題として明日からできる作業、参加者の方ができるサポートや人脈紹介などの提案もあると、より実行しやすくなるでしょう。
西田(京都市都市経営戦略監):京都市は松井市長のもとで”突き抜ける「世界都市京都」の実現に向けて”というスローガンで、他の都市ではできない突き抜けた政策を打っていこうとしていますので、皆さんの提案を聞けるのが楽しみです。
また、民間の方からの様々なアイディアを実現させる取り組みをたくさんしているので、これからもつながっていただけたらと思っています。
入山:それでは京都市のお悩みについて京都市職員の方々からプレゼンをしてもらいます。
小林(京都市人口戦略室):京都市最大の課題のひとつであり、かつ成長につながるチャンスでもあるのが、「15万人の若者が離れない街にするには?」というテーマです。
京都市は今、人口減少のフェーズに入り、 これは他の地域同様に少子高齢化も要因ですが、京都市特有の問題は若い世代の流出です。
大学卒業後の府内就職率は20%だったのが18%まで落ちていて、卒業後に多くの学生が京都から離れている状況です。かつて150万人弱だった人口は、2050年に約124万人まで減少するという推計もあります。
全国からたくさんの学生が京都の大学にやって来ますが、卒業後は東京や大阪に行く人が多く、ヒアリングすると、そもそも京都で働くイメージを持っていない学生さんが多いようです。
皆さんにはぜひ、この学生の流出を食い止めるためのアイデアを考えてほしいと思います。
井上(京都市まち再生・創造推進室):本日は皆様とともに、京都における公共空間の可能性について、議論をしたいと考えています。
世界の都市における公共空間の事例をいくつかご紹介します。
歩行者に開放されたニューヨーク・タイムズスクエア、水辺で自然と触れ合えるサウナがあるフィンランド、毎晩のように屋台が広場を埋め尽くすモロッコ・マラケシュなど。
いま、世界中で公共空間による都市再生が大きなうねりとなっています。京都にもたくさんの魅力的な場所がありますが、その可能性を生かして、生き生きとした活動や空間をいかに創れるかが、大きな課題だと考えています。
人を惹きつける公共空間に共通すること、それはアクティビティが外に開かれ、これまでに存在した境界や壁が曖昧になったり、なくなったりしていることではないでしょうか。
そのようにして、関わる人のあいだで交流やコモンズが生まれ、さらに今までにない発想や場、魅力的な風景が立ち現れるのではないでしょうか。
入山:広場のような共有地、いわゆるコモンズが足りないということですね。
井上:はい、昔は子供たちがもっと自由に動き回れる場所がたくさんあったと思いますが、今は子供が遊べる場所も少なくなっているのではないかという危機感もあります。
木村(京都市交通局営業推進課):京都市の市バス・地下鉄は一日あたり約72万人が利用していて、公共交通をつかって人と人がつながることで街の発展に寄与しています。
経営状況は、新型コロナ蔓延による落ち込みを経て、今は回復しつつあるもののコロナ前には戻っていません。
市バスはオーバーツーリズムで混雑しているのではないかと思われがちですが、実際には74系統あるうちの1/4だけが黒字、残り3/4はすべて赤字です。
利用者数が上がっている地下鉄は、丸太町駅のホテル建設が進んでいるところなど一部のみで、それ以外の駅ではお客様の数が増えていないのも課題です。
財政状況がまだまだ厳しいこと、混雑対策と増客という相反する目標を達成するのが難しいこと、また市バスの運転手が足りないという担い手不足でも困っています。
利用促進のための仕掛けづくりや、どの分野とどう融合していったらいいのか、どのように公共交通を生かせばいいのか?という点をお聞きしたいです。
入山:それでは、参加者の方は12個のグループ(3つのお悩み×各4グループ=合計12グループ)に分かれて意見交換をしてください。
※グループメンバーは、京都市内の方と京都市外の方、市の職員がバランスよくミックスされるよう調整
15万人の若者が外に出ることは、はたして悪いことなのでしょうか。
本当の課題は別だと考えた我々の提案は3つあります。
1つ目は、京都の大学生(卒業生)による海外起業・留学を、京都市がしっかりサポートすること。
2つ目は、跡継ぎや中小企業を応援する活動です。
これは262の法則で考えた時の、上位2割の意識が高い人向けの解決策で、中間の6割の人に向けての解決策として京都市と人々が困っていることをつなぐ組織をつくることも提案します。
たとえば、学生のインターンを京都市役所に置いて、困っている人が来たらこのセッションの学生版を行って問題を一緒に解決します。
これは、京都を応援する企業と京都市をつなぐ場にもなるでしょう。
学生時代に体験や経験を通じて京都のことを強制的に考える時間をもうけて、「京都って良いところだよね」と思えれば、将来的に京都市に戻ってくる可能性が高くなります。
入山:大学生が離れるという問題設定がおかしくて、京都に思いを残してくれれば、世界で面白い経験をした後に、やがて戻ってきてくれるから、その仕掛けをつくるほうが健全だということですね。
我々は、京都外への流出が悪いという意識自体を変えるために「飛び立て京都!おかえりやす京都!」というキャッチフレーズをつくりました。
流出が悪だという考え方は片道切符でしかありません。
「一度出たらもう京都に戻ってこれないのではないか?」と思うからです。
京都市は、外に飛び立ちたい若い人に往復切符を配ってあげれば良いのでしょう。
これは京都に帰りやすくするために「お帰りやす」と言ってあげましょう!ということです。
「君は何者でもなくていい」「すごく偉くなくてもいい」「夢が破れてもいい」「失敗してもいい」だから京都に帰っておいで、というのはどうでしょうか。
「頑張ることに疲れた時は京都のゆったりしたところで過ごしたら?」という京都の滞在の考え方も広め、京都に帰ってきたら「お帰りやす」と言ってあげられる、そんな京都がむしろ若者の挑戦を支援できるのではないかと考えます。
「恋愛都市♡京都!を目指そう」が、我々の提案です。
京都市として恋愛のマッチングを支援するだけなく、学生結婚を後押しして、「学生結婚は恥ずかしいことではなく、今や学生結婚は当たり前!」という価値観のコミュニティをつくる施策を提案します。
私は大学時代に京都にいましたが、東京で就職した理由は「稼ぎたいから」です。
逆に京都で就職した友人は、京都に親戚や友達や彼女がいて「人のコミュニティ」があるという理由で京都にとどまりました。
つまり、決め手になるのは「人とのつながり」の有無です。
コミュニティを京都につくって人のつながりを増やせば流出を減らせるはずだし、一番効果的なのは恋愛(恋人や結婚)です。
アプリをつくったり、お寺で婚活イベントをするなど、カップル映えする動線を京都市が支援する施策を進めていけばいいのではないでしょうか。
入山:この作戦は確かに効果がありそうですね。
私は京都出身で京都が大好きで、京都愛に溢れていますが、こんなにも京都に惹かれる理由はなんだろうと考えてみました。
実は、学生が社会人になっても住み続けることだけではなく、京都愛に溢れた関係人口の増加が、離れられない京都につながるのではないでしょうか。
ということで、「フィロソフィーバレー京都」を提案します。
具体的な施策は、京都に熱狂的なコミュニティをつくることです。
チームJには、すでに学生と起業家を結びつける活動をしてる人がいて、「京都に大好きなコミュニティがあるから通っている」と思えるコミュニティをつくることが大切だと気づきました。
京都にしかない仏教哲学×学生×起業家というコミュニティができれば、関係人口が増えるでしょう。
10年後に私のような京都が大好きな人=「京都のファン」が増えたら、さらに良い京都になると思いました。
入山:シリコンバレーならぬフィロソフィーバレーという言葉の意味は、京都にくると仏教や哲学とじっくり触れ合えるからですね。
入山:ここまでの発表を聞いて小林さんはいかがでしたか?
小林(京都市人口戦略室):若者に外に出てもらうという発想がすごく良くて、採用したいと思いますが、どうやったら帰りやすい京都にできると思いますか?普通は飛び立った人は帰って来ません。
発表者:「何者かにならないと帰って来てはいけない」という雰囲気がダメだと思います。
モラトリアムを過ごすように、京都での滞在をサポートできると良いですよね。
入山:「負け組が集まる街・京都」ですね。
発表者:そうです、むしろ「起業の成功はどれぐらい質の良い失敗をできるかにかかっている」なんですよ。
失敗した人を集める京都になって「失敗を恐れずに挑戦していこうよ」という応援をしたら良いと思いました。
京都市の公共空間を生かすためには、かつてコモンズのような役割を担っていたお寺のように、すでにある場所のハード面とソフト面の変化がカギになります。
我々の1つ目の提案は、お寺のコミュニティをオンライン化すること。
オンラインでも継続的に関われる、行きつけのお寺をつくってもらい、訪問者を分散すればオーバーツーリズムが解消し、公共交通機関の混雑も緩和されます。
さらに、孤独問題やウェルビーイングにも対処でき、お寺の経営難問題の解決にもつながります。
2つ目は、お寺の住職がどんな人なのか?どういうことをコーチングできるのか?の情報発信、コミュニティづくり、お寺をイベントスペースとしての設えを設けるなどです。
オンライン化やハード的な設えを整備する手順をパッケージ化して、行政からお寺に持ち掛け、お寺に実装してもらうプロジェクトが良いのではないでしょうか。
京都には、子供が遊べる公園や交流の場が少ないです。
一方で大学の広場やお寺など、パブリックでもプライベートでもない曖昧な空間は数多くあり、こういったスペースを利用すれば良いと考えました。
そこを子供の遊び場や交流の場としても活用すれば、新しくなにかをつくらなくても済みます。
この方法を実装する際には、簡単に子供が遊べる場所を探せたり、交流の場に出かけられるよう「公共空間マップ」も必要です。
また、子供の遊び場にもなり、同時にいろいろな人が集まれるイベントの開催・周知も提案します。
いま京都市はオープンパーク化(地域や企業、大学等と連携し、公園をどんどん外に開いていくこと)をしています。
我々の提案は、さらに公園同士がつながってコネクトしていく「パークリレーションズ構想」です。
まずは、地域や公園ごとにコミュニティマネージャーを配置し、それぞれの公園に特色をつけてもらいます。
たとえば、創作活動をしている人の生産拠点をつくったり、スポーツに特化していたり、ギャラリーが併設されている公園も良いですね。
そういった様々なコンセプトの公園をたくさんつくっていけば、最終的には回遊できる街になります。
公園を起点に回遊できれば、新しい観光資源になり、各地域ごとに誇りあるコミュニティをつくっていけるでしょう。
新しい観光の在り方を創造しながら、京都の自然環境も良くなっていく方法です。
入山:公園プラットフォームをつくる施策ですね。
我々の提案は、文化が育つ公共の場を京都市と一緒につくること。
公共の場の例の1つは、京都市役所前で、今は人が少なくガラガラの状態です。
他には寺社仏閣、大学のキャンパス、都市公園なども候補地になりますが、こういった場所をもっと活用できるのではないでしょうか。
具体的な施策は4つです。
1つ目はつながる場として、市役所広場前を使ったドッグラン・キャットランづくり。
これは孤独な人をなくすための場所です。
2つ目は寺社仏閣・公園をつかった堆肥づくりのネットワークです。
京都には昔から落ち葉をつかって堆肥をつくっているお寺や、コンポストを利用して堆肥をつくっている人がいます。
こういったところと行政がつながると、文化が育つ公共の場になります。
3つ目は、若い学生と先生が国内外の人にキャンパスの中を案内するアカデミックツアー。
4つ目は、都市公園を使った地蔵盆フェスタです。
町内会が運営している地蔵盆の担い手不足の解消と、国内外の方に向けた歴史文化・学習観光コンテンツとして地蔵盆フェスタができたらいいと思いました。
入山:公共空間の発表は、どのチームも独自の視点で考えられたアイデアでしたね。
ここまでいろいろな方法が思い浮かぶのは、まだまだ伸びる余地があるからでしょう。
入山:井上さんは、いかがでしたか?
井上(京都市まち再生・創造推進室):開かれたお寺のつくり方について、もう少し深掘りして教えてください。
発表者:まずはお寺を公園化することで、例えば芝生やファニチャーを設けるなど入りやすいデザインにして、ゆっくりくつろげる場所をつくる、そういったことをしながら一方でソフト面では、カジュアルに集まれるイベント開催を想定しています。
井上:Hグループのイベントとは、どういうイベントにするイメージでしょうか?
発表者:公園をLDKのように使うイメージです。
リビングには談笑している人がいて、ダイニングではご飯を食べている人がいて、キッチンでは料理をしている人がいるような、そういう1つの場所にいろいろな人がいるイベントですね。
たとえば、キッチンカーを出して自分達で食事をつくれる場所があり、食べる空間もつくり、その横で子供が遊んでいるようなイメージです。
我々のグループメンバーはタクシーや車、バイク、自転車などを使っていて、公共交通をほとんど使っていません。
一番早く、コストをかけず、効率よく行ける、という基準で考えて、公共交通機関以外を選ぶからです。
だから、公共交通を超えた別の手段を探る必要があり、公共交通の利用のみではなく、目的地までの移動という大きな視点で考えないといけません。
たとえば、電動キックボードや電動自転車等のシェアリングサービスと連携して、バス停や駅にスポットを置けば、バスや地下鉄を降りた後の移動がしやすくなります。
2点目は、収益の問題です。
乗客数を増やして収益を上げるよりも、公共交通がすでに保有している駅や地下街の広告を出して知名度を高めたり、集客力のある店舗を誘致する方法が良いのではないでしょうか。
乗客数で売上を上げるのではなく、副次的なところで上げていくべきだと考えました。
3点目の提案は、現状の公共交通にアミューズメント要素をプラスすること。
バスや地下鉄に楽しさを提供して子供たちが遊べる場所にすれば、利用人口を増やせるかもしれません。
私は京都市交通局の職員ですが、チームメンバーからは「そもそも何のためにバスを走らせてるのか」「京都市の目的がまったく見えない」という意見がもっとも多かったです。
「市民のために利用を促進したいのであれば、まず市民の意見を聞く!市民の意見を吸い上げて、できないことを言うのではなく、まずやれることをやる!」と言われましたが、これが本質でしょう。
市民のためにまず基盤インフラを整えていくことが一番大事です。
具体的な解決案として、1つ目は、公共交通以外も視野に入れ、インフラを支えている方々と連携して、それぞれが持っているリソースを組み合わせて利用促進をしていくこと。
これは、自分たちの利益を考えたわけではなく、街のため、市民のために他の組織と連携すべきでは?という背景があります。
2つ目は、市内さまざまな場所で民間企業が行っているイベントに行政がコミットして、「このイベントに行くために市バス地下鉄を使って行ってくださいね」とプロモーションする案です。
入山:「そもそも何のためになのか?」という視点で考えると、市民が乗ってないのだったら市民が求めていないということ。
「じゃあ、公共交通とは別の手段を考えたほうが良いのではないか」という結論になります。
さすがですね、このチームの猛者達は(笑)、とても本質的な問いでした。
解決策は2つあると考えました。
1つ目は、利用者が少ない場所にたくさんの訪問者をつくることです。
なんの変哲もないところでも歴史を語ると興味を持ってくれて、関係のある別の場所にも行ってくれて、さらにその地域を覚えてくれることがあります。
京都なら長年の歴史があるので、魅力的なエピソードがたくさんあるはずです。
だから、地図上にQRコードをつけて、そこを読み取れば、歴史を知れたり、他のお勧めスポットを紹介すれば移動を促進できます。
さらに、スタンプラリーのような仕組みを導入して、いくつかのスポットを回ると特別なクーポンをもらえて、普段だとなかなか入れない夜間の神社仏閣に入れるなどのインセンティブをつける。
こういった普段人が行かない所に向けた施策はいかがでしょうか。
また、デジタル化することで誰がどこに行ったかというデータが取れるので、データ販売するビジネスまで広げていけます。
2つ目は、混雑を緩和するために、ファストパスのようなものをつくること。
くわえて、バスの混雑状況をリアルタイムに情報提供し、「今はここの場所が空いてるからおすすめですよ」といったお知らせもして、人の動きをコントロールできると理想的です。
円安の今なら価格を高めにしてもインバウンドで利用してもらえるし、収益が増えればオーバーツーリズム対策にまわせます。
我々は、利用者が増えてこれ以上混雑しないよう、ほとんど利用されていない地域を探すことから始めました。
たとえば、東西線の東側エリアはクリーンセンターの跡地があるところで、利用者が非常に少ないです。
ここに、家庭を持ってる方が過ごしやすい場所をつくると子供の遊び場不足解消に役立つでしょう。
西側エリアは自然が豊かな場所。
バスに自転車を乗せられる方法を取り入れれば、バスを降りた後に自転車で移動できるので観光客を増やせます。
もう1つの提案は、アートシアターに年会費を払うなど、アートに貢献している人たちに、バス料金をディスカウントするアイデアです。
入山:地域を開発して良くしようというデベロッパー的な視点ですね。
入山:公共交通の課題について提案してくれた各チームの皆さん、ありがとうございました。
木村さんは、これまでの発表を聞いていかがですか?
木村(京都市交通局営業推進室):特にLチームの「市民の意見を聞く」という提案が胸に響きました。
「誰のための市バス地下鉄なのか」という基本を思い出し、その上で利用を促進することが大切ですね。
質問としては、人が住みやすくするには具体的に何をすれば良いのかを聞きたいです。
発表者:やはり金額面だと思います。
たとえば、人気のない地域でずっと空室の物件だと賃料が安くなる特典があれば、住みやすいですよね。
なおかつ、近くにスーパーがあるという環境も大切です。
このような分かりやすいインセンティブがあれば、住む人が多くなるのではないでしょうか。
発表者:僕は学生ですが、京都の学生が社会人になっても京都に住むと家賃が安くなる割引があれば嬉しいですね。
入山:若者が流出する問題とも絡めて、どちらも解決できる良い案ですね。
入山:それでは1人1票の投票を行ってもらいましたが、本当に僅差で1位が決まりました。
1位はチームJのフィロソフィーバレー京都です!
入山賞は各課題ごとに、若者離れではチームG、公共空間ではチームK、公共交通ではチームLです。
小林(京都市人口戦略室):皆さん、ありがとうございました。
若者が離れられない街にするには?というお悩みに「出て行っていいのではないか」という提案をもらいましたが、実は同じことを考えていました。
ぜひ京都でいろんな人を育て、それを外に発信し、そしてゆくゆくは回り回って京都に帰ってくる仕組みをつくりたいので、引き続き京都に関心を持っていただければと思います。
井上(京都市まち再生・創造推進室):京都市ではいろいろな実験的なイベントを行っているので、今日の皆さんのアイディアを反映したいです。
様々な提案を、本当にありがとうございました。
木村(京都市交通局営業推進室):本日はありがとうございます。
素敵なアイディアをいただいて、考え方も参考になりました。
京都の地下鉄とバスに乗ってもらうために、優先順位を決めて取り組んでいきたいと思います。
入山:どのような形で今回の提案が実現するのか、とても楽しみですね。
それでは、皆さま、ありがとうございました!
KYOTO Innovation StudioではSessionにて生まれたアイディアをプロジェクトとして実装していく取組を行なっています。
さらに、京都市内外での繋がりを広げていくために交流会やコミュニケーションプラットフォームを運営しております。
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