TOP > インタビュー一覧 > 経営学者 入山氏と東京・京都・石川の行政トップ達によるセッション【地域課題×スタートアップ】3都府県8社のピッチイベントも紹介
石川県
「今は『国』ではなく『地域』の時代だ」と語るのは、ファシリテーターである入山 章栄氏(経営学者・京都市経営戦略アドバイザー)だ。
パネリストは、東京都副知事の宮坂 学氏、京都府参与の山下 晃正氏、石川県副知事の西垣 淳子氏である。
プロトスター代表 前川 英麿氏の司会進行で、【地域課題×スタートアップ】というテーマについて3都府県の取り組みを共有した。
再発見した文化価値とスタートアップのつなげ方を模索したセッション&3都府県8社のピッチイベントをレポートする。
入山 章栄氏
早稲田大学大学院 経営管理研究科 早稲田大学ビジネススクール教授. 2021年より京都市経営戦略アドバイザーに 就任。著書に『世界標準の経営理論』他。
宮坂 学氏
東京都副知事 1997年にヤフー 入社。2012年に社長、 2013年にソフトバンク取締役、2018年 からヤフー 会長。東京都参与を経て、 2019年9月から都副知事。
山下 晃正氏
京都府参与 1975年入庁。2013年京都府副知事、2024年 から現職。産業振興を始め様々な施策立案 に携わり、産業界とのネットワーク、専門的 知見により、well-beingな地域創出を牽引。
西垣 淳子氏
石川県副知事 東京大学を卒業後、経済産業省に入省。 知財、デジタル、デザイン等の政策を担当。 2022年7月より石川県副知事に就任。
このページの目次
左から入山 章栄氏、山下 晃正氏、西垣 淳子氏、宮坂 学氏、前川 英麿氏
入山:今は国ではなく「地域」の時代です。
アメリカで例えると、アメリカ全土ではなく、シリコンバレーやNYなど一部の地域だけが発展しています。
日本も同じで、東京、京都、石川の各地域が強みを生かして盛り上がっていくことが大切です。
それでは、パネリストの方から自己紹介をお願いします。
宮坂:東京都で副知事をしている私の役割は、挑戦する会社を増やすことや行政のデジタル化です。
山下:京都府の参与で、伝統産業も担当しています。
西垣:現在は石川県の副知事ですが、経産省にいる時はイノベーション政策を行っていました。
宮坂:東京都の特徴は、数値目標を掲げていることです。
参考:Global Innovation with STARTUPS
スタートアップ×自治体」オールジャパンで連携し、自治体発のイノベーションを創出する
スタートアップとの協働数はすでに目標を達成したので約3倍に上方修正し、2027年までに300件という新たな目標をたてました。
東京都の取り組みは、「SusHi Tech Tokyo 2024」と「Tokyo Innovation Base」が2つの大きな柱です。
「SusHi Tech Tokyo 2024」では、4万人の来場者、400以上のブース(6割以上が海外からの出店)、3000件以上の商談が行われるアジア最大規模のスタートアップイベントが行われました。
「Tokyo Innovation Base」は、有楽町にある創業支援拠点で、自治体や世界中のスタートアップが利用できるイベントスペースです。
Tokyo Innovation Baseには「FAB」と「SHOP」があり、「FAB」には、ものづくり系スタートアップ向けの3Dプリンターやレーザーカッターなどが置いてあります。
「SHOP」はプロダクトのテスト販売をする場所です。
銀座の一等地に土地を借りるのは大変なので場所を提供しています。
東京の行政の課題は、変化するのが苦手なことです。
10年後も同じ行政をしていては生き残れないので、どこかで知の探索や冒険をしないといけません。
そういった視点で考えた時、大事なのは、スタートアップエコシステムというより、『アントレプレナーシップ』ではないでしょうか。
スタートアップというとVCから資金調達してイグジットすることなので、ごく一部の人に限られます。
だからこそアントレプレナーシップに力を入れるべきで、たとえば大谷翔平さんはアントレプレナーの1人です。
いろいろな業界で大谷選手のような「普通とは違うことをする人(アントレプレナー)」が次々と出てきて、初めてビジネス界でも世界で活躍する人がでてくるのでしょう。
ビジネスだけ伸びることはあり得ないので、あらゆるジャンルで変わり者だらけになって、その中で飛びぬけた天才が出てきます。
入山:非常に興味深いお話をありがとうございました。
山下:京都は文化を地域の魅力の一つにしていますが、「今の京都では昔の人が作った価値を消費してるだけだ。これからは文化やアート、伝統産業に投資する人が増えるような新しい仕掛けを作らないといけない。そうしないと、京都の文化をすり減らすだけだ」と怒られました。
京都の基底は文化です。
文化がすべての基礎で、そこにテクノロジーを組み合わせることで、グローバルで通用する京都独自の価値を生み出せます。
宮坂:東京にも豊かな食文化がありますが、継承するだけでなく価値を再解釈して変えていかねばなりません。
入山:文化で稼ぐカルチャープレナー(文化起業家)がありますね。
宮坂:世界には「うちの地域はテクノロジ―が強いから、テクノプレーナーを増やす」という戦略の地域もあります。
入山:つまり、戦略をハッキリさせて方向性を決めることが重要なのでしょう。
西垣:東京、京都、石川の共通点はカルチャーですね。
能登の震災では元に戻すだけではなく、能登の抱えている課題を解決しながら、かつ能登の持っている文化的な価値を再発見すべきだと思っています。
そして、能登の良さ、能登にある文化、これらを今の時代に合わせる際にはテクノロジーが必要なので、まさにスタートアップの出番です。
テクノロジーの力で文化の価値を再発見し、新しい能登をつくっていきたいです。
山下:関西文化学術研究都市「けいはんな学研都市」では、実証実験に協力していただける市民の方で「クラブけいはんな(約3,400人)」を結成し、現在スマートウォッチで健康データを集めています。
けいはんな学研都市の特徴は、実証実験が行える街づくりと技術の実用化を一気通貫して行うこと。
たとえば、高齢者になると社会参加が難しいのですが、新しい高齢者が施設に入った時に赤ちゃんロボットがあるとコミュニケーションがすごく豊かになることがわかりました。
また、スタートアップ関連では、コネクトフリーというユニコーン企業を創出しました。
また、京都はディープテックがとても多く、ディープテックは研究に時間がかかるので、長期的な戦略を立てています。
iPS細胞だったら、20年という長期スパンでみないといけません。
そういったスローなスタートアップを、いかに支援していくかが重要です。
京都で行った「IVS」というスタートアップカンファレンスでは、約1万人の参加者が集まりました。
このように、海外のスタートアップを京都に招いたり、京都はもちろん日本中の企業を海外に出したりする支援を行っています。
宮坂:京都はコミュニティが強いですよね。
歴代の経営者が後輩をサポートして、その後輩がさらに次の世代をサポートします。
「目には見えない人脈や仲間づくりの発達」が、京都の強みではないでしょうか。
ディープテックに関しては、時間がかかるからこそ国の力が必要で、民間企業だと10年赤字がつづくところに投資し続けることはなかなかできません。
行政は何十年単位で支援できるので、国が超長期投資を行ったほうが良いでしょう。
西垣:地方自治体がすべてを支援するのは難しいので、国と地方が一緒に地元のディープテックをどう支援して行くかが課題です。
山下:私はディープテックだからこそ、優秀な経営者をつけなければならないと思います。
実は過去に投資した1億円を使い込まれたことがあり、テクノロジーばかりに目が向いていて経営者のチェックが疎かになっていました。
技術と経営の両方できる人は稀なので、経営マネジメントに長けた人材と組まないとディープテック企業はうまくいきません。
入山:技術者と経営者をマッチングさせる必要がありますね。
西垣:能登の震災では、道路や電気、通信などすべてが断絶され、誰がどこにいるかわからない状況でした。
大量の支援物資を人々に配布するために徹底的にデジタル化しましたが、人の命がかかっていたのでデジタルが嫌いな人も反対しなかったんですよね。
たとえば、1回目だけ名前や住所などを書けば、2回目からはSuicaで本人確認ができるという取り組みを行いました。
他には、陸路だと自衛隊が5〜6時間かかる場所に、住民の方に薬を届けるためのドローンを飛ばしたり、ライドシェアも導入しました。
これらは「逆フェーズフリー」で、フェーズフリーは「平時から備えるデジタルライフライン」のことですが、能登では災害時に先にデジタル化してから平時にも取り入れたので通常とは逆です。
逆フェーズフリーの中で苦労したからこそ、普段から備えておくフェーズフリーの重要さを実感しました。
そして、フェーズフリーを徹底するためには、スタートアップの力が必要です。
今回、東京のWOTAというスタートアップに非常に助けられました。
参考:WOTA株式会社
過疎化した地域で道路の下に水道管をつなげていくと、時間もコストもかかり、それが水道料金に上乗せされて県民の負担にもなります。
しかも、今まで通りの規模で整備すると、どれぐらいの人が能登に戻ってくるかわからないので、過剰投資になる危険もあるんですよね。
そのリスクを予防してくれるのが、WOTAのオフグリッド(自立)型の水道でした。
金沢は、国連の世界知的所有権機関(WIPO)の技術革新力ランキング世界11位で高い技術力があるのにスタートアップが少ないという課題があります。
最大の原因になっているのは、変化が嫌いな行政です。
だから、研究シーズの発掘や事業化につなげる変化を起こすため、東京や京都と連携することを決めました。
入山:なるほど、逆フェーズフリーの話がとても勉強になりました。
宮坂:変化が起きにくいときは、天災がトリガーになりやすく、コロナもそうでしたよね。
日本ではデジタル化が一向に進みませんでしたが、コロナで仕事が回らなくなって一気に世の中が変わりました。
しかし、「危機に直面して初めて変わる」は二流で、本当の一流は平時からそれをやっている、つまりフェーズフリーです。
どうしたらフェーズフリーが実現するのでしょう?
入山:時間軸で可視化することが重要です。
30年後までの売上予測を立ててグラフ化したら売上が1/3に減った企業があり、それを役員会議に出すと危機感を共有できました。
もう1つのポイントは、新しい世界に行ってみること。
トヨタが電気自動車を裏で仕込んでいるのは、会長がシリコンバレーに行った時、誰もトヨタに乗っておらず、みんなテスラに乗っていることを見たのがきっかけです。
外の世界を知ることで、みえていなかった問題点に気づけます。
山下:フェーズフリーという大きな目標を達成するためには、「大きな夢」を持たないといけません。
小さな夢は小さな挫折で頓挫するが、大きな夢があれば小さな挫折を乗り越えられるからです。
質問:行政によるスタートアップ支援は、どこまでコストをかけられるのか?
宮坂:価格の妥当性はあるようでないもので、原価積算カルチャーを持ち込むところが、デジタルの品質が上がらない要因です。
品質・納期・コストのどれを重視するかですが、納期は固定されていることが多いため品質かコストになります。
大事なのは、やっぱり品質ですよね。
韓国で、価格を一定に固定して「同じ価格でどれだけイケてるものをつくれるか競う」という仕組みを見たことがあります。
そうしないと、デザインやデジタルの質が上がらないからです。
こういったやり方もアリだと思います。
宮坂:大人が挑戦しないと若い人が行動できないので、我々大人が動かないといけません。
「愚痴やできない理由を言う暇があったら、大人が先にやる!」これが大事です。
山下:大きな夢をいくつになってももつべきで、そのためにはものすごく自問自答せねばなりません。
任天堂では「このアイデアのなにが良いのか?」を1回だけでなく5回聞かれるそうです。
5回の質問をクリアするほどの、自分が腹落ちするビジョンを描ければ、素晴らしい世界がやってくるでしょう。
西垣:経産省では「やれない理由を考えるのは課長の仕事じゃない。部下が難しいアイディアを持ってきた時に、やれないと言わないための理屈を考えるために上司がいる」と言われて育ってきました。
やれない理由を言うのではなく、やれない理由をいかにブレイクスルーするかが経験者の知恵と能力だと思います。
公式HP:Spectee
画像出典元:株式会社Spectee公式HP
2011年東日本大震災で「東北の情報と東京の情報にはギャップがある」と感じたのが創業のきっかけです。
ミッションは「危機を可視化する」で、自然災害だけでなく、世界中の様々なリスクに関する情報収集を行っています。
発生から1分で、被害状況を可視化、予測するサービスです。
情報源は、SNS、気象データ、街中や河川のカメラ情報、交通情報、人工衛星など。
たとえば、SNSの投稿から場所を突き止め、近くにあるカメラや衛生からの情報をAIが分析して、この先に何が起こるかまで予測します。
契約数1000を超える導入実績があり、よく利用されているのは製造業小売、インフラ、金融です。
導入企業の1つであるイオンは全国に1万5千店の店舗がありますが、店舗が被災したり、物流センターから店舗までの間に災害が発生することがあるので、常にモニタリングしています。
200以上の地方自治体、中央省庁でも利用されています。
公式HP:石川県立大学 馬場研究室
画像出典元:石川県立大学 馬場研究室公式HP
東北大学にいた学生時代に東日本大震災があり、避難所にいた時、雑草だけは豊富にあったので、「雑草を発酵させてメタンをつくれば夜の明かりやコンロ、発電機などに利用できる」と思ったのが研究を始めたきっかけです。
しかし、植物はメタン発酵が難しいという課題があり、草を溶かす微生物がいる「牛の胃袋」に注目しました。
牛の胃の中の微生物をとり出して、人工の容器の中でも生かし続ける技術を開発すれば、雑草からガスや電気をつくることができます。
東日本大震災以降、12年間の研究を経てこの技術を開発し、これを実用化するために大学発ベンチャー「環境微生物研究所(株)」を設立しました。
すでに弊社のつくった装置「エコスタンドアロン」(世界初の事例)が、石川県内のショッピングセンターで稼働しています。
牛の微生物が入っている「ゲップソリューション」に、スーパーマーケットで出た野菜くずを入れるとメタンガスが発生する仕組みです。
メタンガスで雑草発電機を動かして、タブレット端末などの充電を行っています。
能登で地震が起きた時、このシステムを支援物資として届けることを検討したものの、「自衛隊による大きなトラック輸送を優先していて、小口の支援は迷惑になる」ということで何もできず、言葉で言い表せない思いでいっぱいでした。
このシステムは、災害前からその場所で稼働していないと役立てることができない(フェーズフリー)とあらためて思い知らされました。
そのため、各地のスーパーマーケットへの導入をできるだけ早く進めたいと思っています。
稼働時の残さ物である発酵液は肥料として活用できます。
私たちは発酵液でビールホップを栽培し、「防災ビール」を醸造して販売もしています。
公式HP:Stroly - イラスト地図をインタラクティブなモバイル体験に変える
画像出典元:株式会社Stroly公式HP
ストローリーは、デザインされたイラストマップをオンライン上に投稿して公開できるサービスです。
私達は、イラストマップをGPSに合わせるという技術を開発しました。
1万種類以上のマップがあり、いろいろな人物が描かれていたり、地域のストーリーを紹介しているマップもあります。
この事業の目的は、訪れる人が少ない場所にも訪問者を増やし、滞在時間を伸ばして経済効果を生むことです。
マップは、テーマやエリアごとに作成・編集できて、どんな縮尺の地図でもGPSのポジションが出せます。
イベントなどで自社のストーリーを教育的コンテンツやエンターテイメントとして伝え、ユーザーと良い関係を作りたい事業者が私達の顧客で、導入実績は、JTB、浜松市、JR東日本、住友不動産などです。
ストローリーなら専門的な知識がない人でもカスタマイズできて、自分のマップをデータ付きで見たり、Webサイトで発表することもできます。
また、祇園祭では、歴史文化を伝えることにくわえて、危険な場所を避けて案内するマップを作成しました。
情報を多言語で伝えることや、ベトナムではバスの利用を促す方法で大気汚染の問題解決にも取り組んでいます。
スペクティへの質問:フェイク画像対策をどうしているか?プライバシーの問題は?
スペクティ:情報をAIで分析してフェイクの可能性があるものを見つけ出すことにくわえ、最終的には人の目でのファクトチェックをしてから提供するという二段階で行っています。
個人情報に関しては、SNS各社の利用規約に則って運用しています。
宮坂:ビジネスを始めるとライバルが外国から山ほど入ってきますが、他の企業には真似できない部分を教えてください。
スペクティ:画像解析が我々の強みで、特許もいくつか持っています。
キーワードでSNS分析する人がほとんどですが、我々はキーワードではなく画像解析を行っています。
馬場研究室:牛の微生物はお腹から取り出すとすぐに死んでしまいますが、私達が開発した「ゲップパウダー」を定期的に入れると安定した発酵が可能になります。
これは、私達にしかできないことです。
ストローリー:イラストマップに位置情報を合わせるのは意外と難しく、それを簡単にできるアプリを開発しているのが強みです。
公式HP:Fermelanta
画像出典元:ファーメランタ株式会社公式HP
植物からつくられる医薬品原料は、年単位の栽培が必要で、さらに抽出が難しくコストがかかり、土地をつかうなど環境にも負荷がかかるという課題があります。
我々は微生物を用いて医薬品原料をつくっていますが、微生物だと3日〜4日ででき、目的の物だけたくさんつくれてコスト的にも10分の1になり、タンクの中で培養できるので、サステナブルでもあるのがメリットです。
具体的には、ケシから取れる「テバイン(鎮痛薬の原料)」や大麻由来の「カンナビノイド」など世界的に需要があるものを微生物発酵法でつくる研究をしています。
微生物の中での効率的な生合成経路の分析・設計をして、独自の技術で遺伝子を大腸菌の中に入れ、その中で適切な酵素を発現させて、さらに各酵素のバランス調整を行うなど、うちにしかできない技術が強みです。
実際に20個の遺伝子を大腸菌に入れ、タンクの中で培養することで、オピオイド系鎮痛薬の原料であるテバインを1リッターの培養液の中に150㎎生産できました。
あと7倍効率が上がれば1000mgになってケシから採取した場合と同じコストになり、10000㎎とれるとコストがケシの10分の1になるので商品化できます。
決して夢物語ではないということです。
そして、理系の技術者だけでなく、文系の経営者と組んでベンチャーを立ち上げました。
資金調達もして研究体制を大きくして、2年後には1000リットル、3000リットルのタンクを用いた生産を成功させて、生物学による発酵生産法により、物質生産手法に産業革命を起こしたいと思っています。
公式HP:オーガニックNico
画像出典元:株式会社オーガニックnico公式HP
我が社の基本理念は、「自然と人間と技術の調和を図り、人間と地球が真に健康でいられる社会づくりに貢献する」です。
有機農産物の普及率を1%から25%まで引き上げて、誰もが有機農産物が食べられる社会をつくりたいと思っています。
経営理念は、「データ活用型有機農業を極め、世界の有機農業をリードし、美味しく健康な農産物を普及させ、持続可能な循環型社会を作る」で、野菜づくりとアグリサイエンス事業の2本柱です。
農業法人は日本に何万社もありますが、我が社のような研究開発も行っている企業は、おそらく10社にも満たないでしょう。
有機農業は技術的にかなり難しく、生産者から課題やニーズがたくさん出てきます。
それをアグリサイエンスの技術者たちが解決して、生産者に伝え、また問題があったらアグリサイエンスで解決、こういったサイクルです。
この方法だと飛躍的に技術がレベルアップするので、高い技術力をコンサルティングやスクール受託、研究資材販売に役立てています。
生産技術にメスを入れて、標準化とデータ活用で有機農業の生産技術を革新し、世の中に広めることが1つ目のミッション。
2つ目のミッションは、資材や機器にメスを入れることで、化学合成肥料や化学合成農業の農薬の市場から化学合成ではない「堆肥」に置き換える取り組みを行っています。
公式HP:サグリ
画像出典元:サグリ株式会社公式HP
サグリは衛星データをAI技術で解析して見える化するサービスで、「農地の見える化で価値を創造する」がミッションです。
これまでは実際に農地に行って目視でチェックしていたので、衛星データの解析・見える化により現地に行かなくても農地の作付け調査ができる「デタバ」というアプリを展開しました。
「アクタバ」は、耕されなくなった耕作放棄地をみつけるサービスです。
耕作放棄地になっている確率がわかる仕組みで、石川県、京都府、尾道市、下呂市など、多くの市町村で使われています。
日本では農地の集積集約化を推進したいが進まないという課題があります。
この課題を解決するのが、「ニナタバ」という農地所有者と作り手・担い手をつなげる農地マッチングサービスです。
農地マッチングのトライアルとして「ひろしま サンドボックス サキガケプロジェクト」という実証実験を行っています。
農地マッチングで大切なのは、地権者の方との信頼関係ができている自治体との連携です。
自治体と共に農地として活用する「重点地区」の洗い出しからスタートし、次に重点地区の所有者の意向調査を行ない、それから所有者に作り手や担い手を紹介します。
西垣:サグリさんに質問ですが、自治体と協働する時の秘訣を教えてもらえますか。
サグリ:自治体にお電話すると「県内の事例はありますか?」とよく言われるので、「まず、あなたがファースト事例になってください!」と思いますが、自治体においてはなかなかそうはいきません。
実証実験を経て導入いただくなどして、1つずつ導入事例をつくってきました。
そういった泥臭い動きをしないと、自治体と協働できないというのが現状です。
首長がDXに取り組んでいる人材やチャレンジする人を昇格させている自治体だと反応が良くうまくいきやすいので、そういった自治体が増えてほしいですね。
入山:福岡市では、市の職員である的野さんという人が中心になってスタートアップ都市に成長させました。
京都市でも西田さんという市の職員が活躍しています。
こういったトップ以外の人材とスタートアップがつながることが大切なのでしょう。
公式HP:株式会社ドローンショー・ジャパン
画像出典元:株式会社ドローンショー・ジャパン公式HP
国内のドローンショーの多くを私たちが行っていて、ドローン本体は金型からすべて自分たちで製作し『メイドインジャパン』を売りにしています。
私たちのミッションは世界をエンタメ化すること。
ドローンに限らず、これから出てくる新しい技術を使って、どれだけ世界を面白くさせるかを追及しています。
オープンイベントの演出、企業のプロモーション・ブランディングなどドローンの活用シーンが広がっていて、プライベートイベントとしては本田技研の75周年記念でも担当しました。
通信免許も、我が社の強みです。
通常5GHz帯は屋外では使えないのですが、総務省と議論を重ねてドローンショー分野で実験局を開局させていただきました。
もう1つの強みは、IP(知的財産)の活用です。
エヴァンゲリオンのイベントを行った時は、中国のSNSで話題になり、世界中にイベント情報が拡散されました。
ドローンの組み立ては石川県の障害者就労支援施設と連携していて、一部組立作業をアウトソーシングしています。
公式HP:株式会社REA
画像出典元:株式会社REA公式HP
地方の法令指定都市や中核都市では深刻なタクシー不足で、30%の確率でしかつかまりません。
その背景にあるのは、タクシードライバー数の減少と非効率な配車方法です。
地方のタクシーは75%が電話での配車予約ですが、コールセンターの管理費が売り上げの10%以上にもなり経営を圧迫しています。
また、タクシーは運行時間の半分以上が空車なので、非効率でムダが多いのが問題です。
その問題をなくすために開発した「Noruuu-Sharing」はクラウド型AI乗合配車システムで、利用者の予約情報に応じて、AIが最適なルートを判断して配車を行うシステムです。
「Noruuu-Ride」は、顧客からの配車予約をアプリで受け付けるシステムで、配車業務のデジタル化に役立ちます。
これまでは電話がつながらないケースが多かった企業では、アプリ導入でつながる確率が30%から75%まで上がり、受電業務がなくなったことで残業代の削減、配車人員の合理化も実現して収益改善につながりました。
今後さらに進めていきたいのは、目的地サイドと連携して、デジタルクーポンなどのお得な特典を付けて人々の外出を促進させるサービスです。
複数のタクシー会社でのアプリの共同運営も進めていて、供給できる車の数を増やせば需給のミスマッチが改善され、一度の電話で配車できることで利用者の利便性も向上します。
取得した移動データやクーポンデータは自治体の都市OSと連携し、デジタルが普及してない地方部で事業展開する予定です。
REAへの質問:GOなど競合他社についていかがお考えですか。
REA:競合とは思っておらず、それぞれの強みと可能性を組み合わせたほうが良いと考えています。
電話で配車予約をしている地方の企業は私たちのサービスを使ってもらい、都市部はGOさんなどを使ってもらう、このようにサービスごとに最適な場所があるからです。
入山先生への質問:行政職員が成長するスタートアップを見極める目利き力はどうすればつくのか?
入山:とにかく場数を踏むことが大切なので、いろいろなことに手を出して、そうすると当然失敗もありますが、それを組長が守ってくれる仕組みがあると良いでしょう。
西垣:スタートアップエコシステムが石川県ではなかなか理解されてない中で、今日のイベントで皆さんにスタートアップエコシステムについて考えていただけたのであれば、それだけで大成功だと思っています。
山下:スタートアップが持ってる専門性を適切な場所につなぐことが行政の仕事だと感じました。
その学びを、私の後輩につないでいきます。
宮坂:仲間意識や空気感をつくることが大事で、このイベントで「なんか新しいことやりたい!」といった同じヴァイブスを持った人たちと集まれて嬉しかったです。
行政だけでなくコミュニティみんなでやらないといけないので、これからさらに仲間を増やしていきましょう。
「無理だよ」と言う人もいるかと思いますが、それをなんとかするのが挑戦する人です。
入山:最後に入山賞と宮坂賞を発表します。
入山賞はファーメランタ株式会社!
宮坂:宮坂賞は株式会社ドローンショー・ジャパンです!おめでとうございます!
入山:それではお時間となりましたので、これで今回のイベントは終了です。
みなさま、本日はありがとうございました。
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