TOP > インタビュー一覧 > 平均年齢24.8歳の組織が実現する超戦略経営!成長するEC事業の最適化を支援するACROVEの描く未来
株式会社ACROVE 代表取締役社長 荒井俊亮 氏
スマートフォンの高性能化、物流の進化、ステイホーム。加速するファクターに恵まれているEC領域、その利用者、利用企業は増加の一途だ。
一方、せっかくECサイトを立ち上げても集客やプライベートブランド(以下、PB)の創出で伸び悩む人は少なくない。
そんなECに関する悩みをトータルケアしてくれる、魔法のようなサービスが、EC最適化エンジン「ACROVE FORCE」だ。
サービスを提供する株式会社ACROVEは、EC効率化、PB立ち上げ、M&AといったEC事業者の悩みを幅広くサポートする。
中高時代に陸上競技で全国大会優勝も経験している創業者をはじめ、20代を中心としたユニークなメンバーが集まる同社。
ACROVEは今日に至るまでどのような軌跡をたどってきたのだろうか。代表取締役社長の荒井 俊亮(あらい・しゅんすけ)氏に伺った。
このページの目次
-- これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。
私は元々、学生時代から陸上に打ち込んでいまして、中学生時代に駅伝で日本一に。高校もスポーツ推薦で埼玉栄高校に進学し、全国3位を取っています。
さらに陸上を続けようと日本大学へ進学。駅伝の合宿でケニア、エチオピアといった、なかなか旅行では行かない国に滞在することがあったのですが、その時に幼い少年たちが道端で物乞いをしているのを目の当たりにしました。
それまで大学では国際関係論を学んでいたのですが、それはあくまで机上の論理にすぎず、「経済なき道徳は寝言」だと強く思ったことを記憶しています。
ECの経済性を追い求めようと考え始め、自分の得意分野であるスポーツとマーケティング知識を活かして、株式会社アノマを設立。
植物性プロテインDtoCの「ANOMAプロテイン」事業を始めたことがACROVEの前身となっています。
-- マーケティング知識はどこで身につけられたのでしょうか?
実は部活以外に、中学生時代からメディアビジネスもやっていました。
もっとビジネスサイドに振り切ってみたいという思い自体はありつつ、部活と並行しながら自分の適性を見ていました。
私が高校卒業から大学入学の時期は、マーケティングプラットフォームの株式会社マイクロアドの全盛期。
私自身もECや事業主に関心を高く持ち、電話回線の訪問販売、ゲームの情報サイト、アフィリエイト、人材紹介などさまざまな事業をやってみました。
自宅にパソコンがある環境だったこともあり、ECは身近なもので、たくさん勉強したというよりは、自然とそういう事業にトライしていったという状況でした。
アノマ設立時も、東南アジアにおけるグローバル・マーケティング企業AnyMind Groupで並行してインターンをしていました。
-- 早い時期からビジネスのご経験もおありになるのですね。「ANOMAプロテイン」はどのように成長していったのでしょうか。
「世界で最も、強く優しいプロテイン」というコンセプトのもと、エンドウ豆など植物性プロテインのDtoCブランド事業として展開。
並行して完全成果報酬型ECコンサルサービスも提供し、事業者のEC拡大や全体設計についてもカバレッジを拡大。
それにともない、トータルケア型ECプラットフォームを展開していくことを決め、2020年10月に今の社名に変更しています。
ANOMAの事業は前々からこれで起業しようと決意していたものではなく、どれだけ伸びるビジネスか、とりあえずやってみたいという思いが大きかったです。
-- ACROVEへ社名変更された背景と、名前の由来をお伺いしてもよろしいでしょうか。
とがったという意味の「アクロ」と、果樹園を指す「グローブ」をかけ合わせた造語になります。
とがった長所を使って、社会的な果樹園となるような会社をつくろうという理念からつくりました。
コロナ禍を経て、小売業が苦戦を強いられる中、生き残るのはお客さんや社会から本当に求められるサービスの提供者だと感じるようになりました。
自分自身、陸上やECなど多様な組織に所属していた経験から、組織とは個性を活かしあった方が強くなると思ってきたところがあり、志のもとに色とりどりな人が集まって欲しいと思ったのです。
-- なるほど。ACROVEの事業について簡単に伺えますか。
ACROVEの骨子は大きく二つ。
一つ目は、提携先のEC支援を行う「提携ブランド事業」です。
主に家電・食品・化粧品などの国内メーカー向けにAmazon・楽天などのECプラットフォームにおける成長を支援するサービスを提供。
導入後の平均売上成長率は300%を超え、既に100以上のクライアントに導入いただいています。
二つ目は「自社ブランド事業」。
「自動化による販売管理費削減を原価に充てて、ワクワクする品質の商品開発をする」をテーマに、ECやDtoCブランドの開発を支援。これまで取り扱った商材は、健康食品、フィットネス器具など。
既にAmazon内でいくつかのアワードを受賞するなど、お客様に愛されるブランドづくりに成功しています。
また、EC事業を運営する中で、成長戦略・後継者問題・先行き不安の解消などでお悩みの方向けに、M&A支援も行っています。
そして、提携ブランド事業から自社ブランド事業につなげていく戦略にもなりますが、Amazonや楽天などのECプラットフォーム上で展開されているブランドを買収、統合して、売上を上げていく「ECロールアップ」というやり方があります。
我々はECの成長をこのロールアップという手法で支援していることが特徴です。
-- M&Aによる成長ということですね。日本ではECロールアップはまだ聞き馴染みのない人が多いかと思います。詳しくお伺いできますか。
日本の小売市場は140兆円を超え、2020年におけるEC化率は約10%、すなわち14兆円規模。
日本においては、M&Aを行ってブランドの価値を上げていくよりも、それによって総合ブランド価値が下がる、いわゆる「のれんの減損」を恐れる風潮がまだあります。
また、日本は北アメリカに対してリスクマネーの総量が多くないため、一気にブランドを買収してグロースさせるのに必要な規模の資金調達が難しい。
これはACROVEでも同じ課題がありますが、我々は資金力以外の、ソーシングや採用力で勝負をするようにしていて、今後日本でECロールアップ手法を採っていく企業も同じ戦略でグロースができる証明にもなっているかと思います。
実際にアメリカでは、セラシオというスタートアップが、Amazon上のブランドを買収して売上を数倍伸ばし、創業からわずか2年で評価額1,000億円超のユニコーンに成長しました。
-- ECのソーシング、DD(デュー・デリジェンス)が鍵になりそうですが、どのように行っているのでしょうか。
細かでカバレッジの広いDDチェックリストの作成に注力しています。
チェックリストの項目は200以上。たとえば買収候補であるブランドの主な展開先がAmazonであれば、Amazon Prime対応や送料無料、売上ランキングなどをチェック。
楽天などプラットフォームごとにもチェック項目を設けているほか、5C分析、TAM・SAM・SOM、4P分析を行い、ECの価値を徹底的に定量化していきます。
そこから洗い出せた潜在的な価値を、我々はLTV(Life Time Value)ポテンシャルと呼んでいますが、堅実な運営をしておりLTVポテンシャルが高いECは買う価値あり、と判断できるようになるわけですね。
通常のM&Aであれば月50〜100件のうち1件成約すれば上々、という相場ですが、我々は月10〜20件の商談で1件の成約というペース。
加えて売上は前年同期比3倍を保ちながら成長していますため、DDが早く、ソーシングが正確で、グロースも早いということが数字に現れているかと思います。
人気となるECの条件は、まずは、年商1億円をバーとした安定した売上。続いて、ストーリーを含むオリジナリティ。そして固定ファン数になります。
-- かなり定量的に分析されているのですね。いよいよ買収となった後のブランド統合には、PMI(Post Merger Integration)のスキルが試されますが、ここはどのように強化されていらっしゃるのでしょうか。
ACROVEは垂直展開ですから、他社ブランドから自社ブランドまで、ECがグロースするために必要なデータがACROVE FORCEに溜まっています。
また、サービスを提供するためには社内に優秀なメンバーが必要ですが、新しく人が増えたとしてもクオリティを担保するために、2021年からTMB(Technic Mind Business Management)と呼ばれるモデルを導入しています。
まずはECを自分で運営して現場を経験し、成功までの肌感を掴んだ後、チームでのポジションを得るというものです。8割の人が2週間から1ヶ月ほどで結果を出せるようになります。
-- 成長環境がかなりしっかり用意されているようですね。組織風土、採用について伺えますか。
社員の平均年齢は24.8歳。新しいメディア、TikTokなどに詳しく、新しいものを売る新しいチャネルを熟知しています。
今、私は26歳でCFOも同級生。インターンには19歳の方もいます。
30代以上の方からすると10代も20代も変わらない様に思われるかもしれませんが、実はこの世代は1年違うだけで検索の仕方などもかなり変わってきます。
こういったギャップ、最新トレンドの肌感を直に感じられることが、マーケティングの新しい発想にもつながっていると考えています。
会社のミッションは「ヒトとモノを繋ぐ架け橋となる」。
どんなにロールアップしてECが巨大化しようと、最後には買ってくれる人がいて、良いものを届けることを目指すべきというのは常に変わりません。
従来は生産者・販売者、そして流通を担う商売人が仲介して、購買者に物が届けられてきました。
ところが、コロナ禍によって物流が変化し、物理店舗ではなくオンラインの仲介業者の存在感が増してきた。
我々が担うのはそこであり、形変われど中身変わらず、成し遂げたいのは良い購買体験なのです。
そして仲介業者だけでなく、生産者、販売者、購買者の意向や動向も常に変化している。
だからその潮流を常に把握し、良い購買体験をキープし続ける。ここを理解し、共感してくれる方に入ってきてほしいです。
職種はBtoBセールスから、BtoBのお客様を支援するカスタマーサクセス、新規事業開発、M&Aしたブランドを運用するメンバーなど多岐に渡ります。
現在は社員が約40名、業務委託も入れると約50名になります。勤務形態に関しては基本出社という形にしています。
-- 採用時に重視していること、聞いていることはありますか。
People first、Use leverage、Wisdom and speed、Be consistentという四つのバリューがありますが、どちらかというと経営方針にそぐうかどうかを見ています。
感謝、一番・一流、シンプル、スピードという四つ。風林火山のようなイメージです。
課題解決をする最短の方法は、「自分ごと化」して課題の本質を直接解決する施策を実行をすること。
たとえば、採用計画を立てるにあたっても、消費者に良い物を届けるには何人必要かという議論から始めます。全てを原理主義で考えるのは、クライアントに対しても内部に対しても同じです。
目標が高くなれば困難が増えますが、そこにソリューションを提供しようとする姿勢があれば、全て解決できるのです。
面談を通ったあとは、ジョブポストへの整合性の判定と、キャラクター診断があって、そこで配属を決めることが多いです。
ベーススキルとして見ているのは、バイアスを排除できる素直さがあるか、論理的で正確な認知ができる賢さがあるか、前向きなハードワークができるか、迷惑をかけてもやっていける愛され力があるか、この四つです。
これらを見た上で、夏休みの宿題は最初にやるタイプ、最後にやるタイプ?だとか、採用向き?営業向き?といった個性を見ています。
採用に限らずですが、弊社ではいろんなことを言語化しています。私自身が陸上と水泳で毎日日誌を書いていたこともあり、内省と言語化が習慣化しています。
加えて、スポーツを通し、日本のトップ選手が集まる集団や、ケニアでの合宿など、普通の人が入れない環境にたくさん所属することで、多様な人間を観察できる機会を多く得ることができました。
だからこそ、この経営ができているのかもしれません。日本で、弊社のメンバーくらい若いうちにインターネット事業の成長のコア部分に関与できる企業はそう多くない。
サイバーエージェントやソフトバンクはもう巨大すぎるので、もっと手触り感のある現場から、自由に羽ばたいて行きたいという人に来て欲しいです。
自由すぎてまとまりがなくなってしまうのではと言われることもありますが、逆にその雰囲気に納得感がない人は面談で辞退していくので、スクリーニングはできている気がします。
自分のやるべきことを決め、プロフェッショナル同士として会話ができる人たちが結果として残っているのでしょう。
-- 人が増えていくにあたり資金が必要になりますが、調達はいかがでしょうか。
ANOMA時代の2019年6月、起業して8ヶ月後に初期調達として、イーストベンチャーズなどからシード調達しました。
当時はバイアウトを想定していたので、人数強化も調達もさほど重視はしていませんでした。
ACROVEとなってからは、2021年4月にサイバーエージェントからプレシリーズAで約5,000万円を調達。
当時はECロールアップもまだあまり認知がなく、何をしようとしているかの理解を得るのが難しかったですね。
続いて、ちょうど先月の2022年6月に、リードインベスターとしてニッセイ・キャピタル、今後のシナジーも見据えた新規投資家として博報堂DYベンチャーズ、日本郵政キャピタルをお迎えし、シリーズAで約5億円を調達。
累計調達額(借入含む)は7億円を突破しました。
投資家とは長い期間ご一緒するので、自分の意見を素直に伝えて、否定するのではなくて、話し合ってくださる方がいいなと思いながら調達を進めています。
-- 学生時代はどのように過ごされましたか。
神奈川県の横浜市出身。子どものころから、人を驚かせたり喜ばせたりするのが好きでした。
中学校は公立の学校へ進んだのですが、そこで陸上部に入り、県大会を7連覇。先輩も箱根駅伝に出る人が少なくないレベルの高い環境で、自分も刺激され、陸上の道へ進みました。
そこからは冒頭にお話しした通りです。
-- 休日の過ごし方、リフレッシュ方法をお伺いできますか。やはり走ることでしょうか?
運動自体が好きで、最近ハマっているのはキックボクシングですね。
週2回は通っています。実はオフィスのフリースペースにもキックボクシング用の器具が置いてあります(笑)。
あとは好きなものを楽しむようにしていて、シーシャにお酒、サウナももれなく通っています。メンバーもサウナ好きは多いかもしれないですね。
-- プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか。
お金がないことは心配しなくてもいい。けれど、信用がないことは心配したほうがいいです。
信用があればお金は集まる。顧客の信用による売上でもいい、投資家の信用による資金提供でもいい。ただし、顧客を絶対に裏切らない。そして、お金をいただいたからには価値を提供する。
社員がいないからだとか、売上がないからだとか、そういうごまかしの文句はいつか終わりがきます。
信用こそが貯金、信用を得るのは素直さ、そしてやるべきことをしっかりやること。私が学生時代に学んだスポーツマンシップと同じだと理解しています。
-- 最後に、これからつくりたい世界観と、読者へ一言お願いいたします。
まずは、ポストリクルート、ポストサイバーエージェントと呼ばれるような会社の一つになりたいと思っています。
日本を支えていく企業としてきちんと成長したいし、日本のECやブランドをもっと成長させていく立場でもありたい。
DtoCなら消費者、BtoBならメーカー企業様。顧客に良い物を届けるというミッションをぶれさせずに、そのゴールに向けて何が足りないのかを常に逆算してサービス提供をしていくのがACROVEです。
ACROVEには全てのデータが蓄積されていきます。最も売上が伸びたサイトはどれか、クレームにつながってしまった取引はどれか。
ケースが蓄積されるほど戦略の再現性が高まり、ECを的確に評価することができるため、ロールアップの効果がさらに出る。
ACROVEに全て任せたほうがいいと思ってもらえるような会社にしていきたいと思っています。
ECが好きな人、顧客を喜ばせるのが好きな人、日本を支えていきたいと思っている人、そして成長事業をつくりたいと考えている人。ぜひ私たちとご一緒しましょう。
株式会社ACROVE
・住所 東京都新宿区大京町22-1 グランファースト新宿御苑5F
・代表者名 荒井 俊亮
・会社URL https://acrove.co.jp/
・採用ページURL https://acrove.co.jp/recruit/
銀行、通信企業での新規事業担当を経て独立。スタートアップのファイナンスやコミュニティの運営に長く携わる。自身でメディア運営をしていることがきっかけでライター活動も行なっている。
“裸眼のVR”で新しいバーチャル表現で池袋のカルチャーとコラボレーションするkiwamiの取り組みとは
日本のHR市場がこれから目指すべき、TalentXが描く「タレント・アクイジション」の世界
TalentX代表 鈴木貴史氏
「上場=目的達成のための手段」Kaizen Platformの創業者が語る“上場”とは
ビジネス書大賞『売上最小化、利益最大化の法則』の作家に聞く 「利益率29%の⾼収益企業を作る方法」
資金調達に新しい選択肢を。ブリッジファイナンスとしてのファクタリングを「PAY TODAY」が解説
【令和の渋沢栄一になる】エンジェル投資で日本にイノベーションを
米国新興市場上場を経て10億円を調達 「代替肉」で社会課題に取り組むネクストミーツの歩み
海外で活躍する女性起業家の実態 〜2児のママがシンガポールで起業した理由とは?株式会社ハニーベアーズ〜
湊 雅之が見る欧米と日本のSaaS業界の違い | 注目海外SaaS 6選
BtoB/SaaSベンチャー投資家 湊 雅之
広告事業だったのにコロナ禍で売り上げ上昇! 〜売り上げ90%減からの巻き返し〜
代表取締役 羅 悠鴻