TOP > インタビュー一覧 > 目指すのはデータ活用の民主化。データサイエンスで社会課題を解決するDATAFLUCTの挑戦
株式会社DATAFLUCT 代表取締役CEO 久米村 隼人氏
「世界標準の課題を解決する自社プロダクトを展開する」
脱炭素・スマートシティ・ダイナミックプライシング等、幅広い領域でデータビジネスを展開する久米村 隼人(くめむら・はやと)氏はこう語る。
自社プロダクトと受託開発を掛け合わせ、データビジネスパートナーとして顧客の課題に向き合い続ける、株式会社DATAFLUCT 代表取締役CEOの久米村 隼人氏に話を伺った。
編集部:改めて、事業概要を教えてください。
久米村:DATAFLUCTの事業の一つは、データプラットフォーム事業です。顧客となる企業さまのデータ基盤をつくったりデータ利活用を推進する事業です。
もう一つが、複数の種類のデータを活用し、社会の課題起点でAI・MLプロダクト開発を行う事業です。
プロダクトの領域は絞らずに、顧客企業の課題に着目して開発したサービスの中でPMF(Product Market Fit)を達成したものは全て自社事業として残しています。
挑戦した領域への理解が深まるので、プロダクトの領域を広げることは無駄だとは考えていません。他のプロダクトに応用できる場面も少なくありません。
編集部:創業後、DATAFLUCTは多数のプロダクトを発表しています。PoC(Proof of Concept)で終わらせずに社会実装まで到達させるために工夫している観点はありますか?
久米村:取り組みがPoCで終わってしまったり、スタートアップが下請けになってしまったりという課題は確かにあります。
このような課題を乗り越えるために、機能は単純でもよいからプロダクト化させ、スタートアップが主導権を握る方向性に舵を切りました。しかし、顧客の企業さまが抱えている課題は、倉庫の自動発注やルート最適化などニッチなものが多いです。
どれか一つに絞ってしまうとDATAFLUCTがユニコーンを目指すことが困難になる。そこで、プロダクト化を複数推し進め、細かい課題を多数解決するビジネスモデルを採用しました。
現在もスマートシティや脱炭素、食品流通などの社会課題に着目したプロダクトを展開して複数の業界に参入しています。
編集部:大企業と提携する上で大事にしている観点を教えてください。
久米村:我々の視点からはプロダクト導入ですが、顧客の視点からは課題解決です。
プロダクトの導入がゴールではなく、顧客の課題に対して自分たちのプロダクトを一部使ってもらうことがゴールであるという視点を大事にしています。しかし、自社プロダクトで解決できない領域があると、それは受託開発となります。
受託開発と自社プロダクトの合わせ技で課題解決ができる点が、DATAFLUCTのビジネスモデルの特徴です。
編集部:DATAFLUCTは、クライアントに対して経営コンサル・AIベンチャー・SIerが担当する領域を一気通貫で提供しています。具体的にどのように実現しているのでしょうか。
久米村:とてもシンプルで、全ての人材を揃えたからです。私が会社員時代に新規事業開発に取り組んでいた際もこの発想でした。
やりたい事業のために、できる人をスカウト、アサインしていく。映画製作ととても似ています。この仕組みをDATAFLUCTにも当てはめました。
2019年に起業し、SIer・データサイエンティスト・営業・コンサルと必要な人材を確保しました。AIのアルゴリズム開発のみ、コンサルのみと事業領域を区切らない、スタジオ・オーケストレーションの発想がDATAFLUCTの根幹になっています。
編集部:創業してから大変だったことを教えてください。
久米村:たくさんありますが、一番は資金調達です。特に、2021年4月に発表したシリーズAの資金調達は大変でした。
当時のDATAFLUCTのプロダクトは実店舗向けのものが多かったため、新型コロナウイルスの影響がかなり色濃かったのです。
そういった情勢の中で、伸びそうな領域として物流にピボットさせました。
今年の4月にシリーズBの資金調達を発表し、40名程度まで拡大させたフルタイムの従業員の雇用をしっかり守るフェーズにシフトしています。
加えて、我々のデータ基盤であるAirLakeへの投資はまだ必要です。資本の選択と集中を行い、プロダクトを成長させてExitまで到達させることに挑戦していきます。
編集部:週末はどのように過ごしてリフレッシュされていますか?
久米村:子どもと遊ぶ時間が一番のリフレッシュです。スタートアップのCEOとして大変な瞬間ばかりですが、家族との時間は大事にしています。
最近は、子どもと一緒にあじさいを見に行ったり、自転車の乗り方を教えたりしています。
編集部:久米村さんは、学生時代はどのようなことを考えながら過ごしていましたか?
久米村:大学生の時はアルバイトに明け暮れていました。当時はIT産業が伸びていた時期でITベンチャーでインターンをしていました。
当時からアルゴリズムをつくる仕組みに関心があり勉強していました。大学院でもデータサイエンスを研究していました。
技術は理解していたものの、技術をどのようにしてビジネスとして拡げていくかはあまり理解しておらず、社会人として経験を積みたいと考えていました。
編集部:大学卒業後、様々な企業での経験を経て、DATAFLUCTの創業に至った背景を教えてください。
久米村:会社員時代は、10以上のBtoCの新規事業をつくってきました。教育・人材・メディアと業界は様々ですが、共通点はデータビジネスであることです。
各社が所有するデータを活用し、人や顧客を動かす事業を立案していました。独立を考えている際に、産業としてBtoBの事業も面白そうだなと思いリサーチし創業に至っています。
ですので、過去の経験が全てDATAFLUCTにつながっています。
編集部:BtoBの領域で事業をつくる上で、衛星データに着目したきっかけを教えてください。
久米村:ちょうど独立を考えていた際に、ご縁でJAXAさんから新規事業をやりませんか?とお声がけいただいたのが、きっかけの一つです。
2018年から、衛星データや気象データを活用して新規事業立案を開始しました。衛星データをはじめとする社外のデータを活用してデータプラットフォームをつくろうというのが、DATAFLUCTの構想になります。
その後、衛星データと様々なデータを掛け合わせてプロダクト化させようと考え、2019年1月にJAXAベンチャーとして創業させました。
カルチャーコード”FACE”
クレジット:DATAFLUCT
編集部:CXO及びエグゼクティブ人材をどのように獲得していますか?
久米村:2022年7月1日に新しい人事発表を行いましたが、CXOのポジションの大部分が埋まって盤石な体制になりました。
CXO獲得に繋がったのは、ビジョンに共感いただいたからです。特に私のブログを読んでいただいた方には深く共感いただき、早いスピードで参画が決まっています。
昨年のシリーズAの資金調達直後から1年間かけてCXOの採用に取り組んで来て、一つのマイルストーンを達成しました。
(参考:取締役CSOに吉川 尚宏、取締役COOに間山 哲規が就任 非構造化データをはじめとしたマルチモーダルデータ活用を強みに、 社会課題を解決するデータビジネスパートナーとして事業を強化)
編集部:スタートアップの採用でどのような課題がありますか?
久米村:事業がわかりにくいことですね。私たちのプロダクトを一つずつ細かく説明しても、どこにインパクトがあるのかが分かりづらいと思います。
Webサイトをより分かりやすくしたり、事例発表を通じて顧客企業とどういうビジネスをしているのかをしっかり説明しなければと考えています。
編集部:具体的にどのような人材を獲得していく予定ですか?
久米村:DATAFLUCTは、カルチャーコードとして“FACE”を掲げています。課題に向き合い、顧客に向き合い、データに向き合う人材にぜひ参画してほしいです。
我々が取り組む事業は、技術的に難しいし、顧客の課題も難しいものばかりです。そして新規事業に取り組むため、難しい課題があっても向き合って自力で解決していくメンタリティーが求められます。
人や物事に向き合い続けることができるメンバーで自律的なチームを組成していくのが、今のフェーズのDATAFLUCTで必要だと考えています。
(参考:[FACE]:DATAFLUCT culture code)
カルチャーコードについて
クレジット:DATAFLUCT
編集部:自律的な組織にするために工夫している点はありますか?
久米村:採用をしっかり頑張ることだと思います。自律は育成して獲得できるメンタリティーではないです。
その人ごとに自律したい理由が必ずあるので、採用の段階からその部分に着目しています。
DATAFLUCTでは、まずは1ヶ月ほど業務委託として一緒に働いてもらい、その期間でDATAFLUCT的な自律した働き方をご一緒できそうかお互いに確認しています。
編集部:これから特に採用したいポジションがあれば教えてください。
久米村:もともとデータサイエンティストのための会社として創業したので、その人材の層は厚いです。
今後は、事業をつくることができる、BizDevの方が必要です。DATAFLUCTの顧客は細かい課題を抱えているので、特定の業界やテーマが好きな方に興味を持っていただけると嬉しいです。
編集部:過去に恩恵を受けたイベントやプログラムがあれば教えてください。
久米村:ほぼ全てのピッチイベントには恩恵がありました。また、アクセラレータープログラムでも、担当者が大企業とのマッチングに対して努力してくれるプログラムは恩恵が大きかったです。
編集部:世界で日本のスタートアップが勝っていくために、何が必要でしょうか。
久米村:大きな市場を狙うことだと考えています。データプラットフォームという巨大なマーケットで少しシェアを取るだけでとても大きな規模になります。
また、DATAFLUCTがフォーカスする課題は全て世界標準のものです。脱炭素・スマートシティ・食品流通といった世界標準の課題に着目するのも、将来的に海外の巨大マーケットを取りに行くためです。
現在は日本の顧客を満足させることに注力していますが、海外でも受け入れてもらいやすいプロダクト名を採用するなど、海外展開は常に視野に入れています。
編集部:最後に、日本のスタートアップエコシステムに対して感じていることを教えてください。
久米村:二点あります。一つは、M&Aがもっと日本でも増えて欲しいです。私の周りをみても、M&Aさせた人の大多数は、シリアルアントレプレナーとして再チャレンジしています。
人材の流動性の観点でも、日本のスタートアップエコシステムに間違いなくいい影響をもたらしていると思います。
二点目は、大企業とスタートアップの連携です。スタートアップも、結局大企業に育てられています。
BtoCビジネスの場合は、大企業が抱えるユーザーにどのようにアプローチできるか。BtoBビジネスの場合は、バリューチェーンの中にいかにスタートアップのプロダクトを組み込むか。
日本には良い技術がすでにあるので、大企業との連携で、しっかり成長できるスタートアップを増やすのが重要なのではと思っています。
編集部:ありがとうございました!
株式会社DATAFLUCT
学生時代に宇宙工学を専攻。ビジネスコンテストやアクセラレータプログラムの企画運営に関わりながら、ライフワークとして宇宙ビジネスメディアにライターとして参画。趣味はロードバイクとラグビー観戦。
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