TOP > インタビュー一覧 > アバターロボット「ugo」で次世代の働き方を提供|社会実装ファーストで開発を続けるugo株式会社
ugo株式会社 代表取締役CEO 松井 健氏
2006年にメイカームーブメントが起き、世界的にものづくりが身近になっていく中で、ものづくり大国として知られた日本はかつての勢いをなくしています。
また、新型コロナウイルスの影響で働き方の多様化が進み、「働き方」のアップデートはホワイトワーカーのみならず、現場業務においても世界的なミッションといえます。
そんな中、時代に合わせた次世代のものづくりのカタチを考え、アバターロボット「ugo」と共に新しいライフスタイル、新しい働き方を切り開くugo株式会社の松井 健氏にお話を伺いました。
ー これまでのキャリアと、起業のきっかけを教えてください。
学生時代はソフトウェアを専攻し、その後システムインテグレーターの企業に入社したのですが、同社で知り合った先輩が独立する際に起業メンバーに誘っていただき、2006年に株式会社モンスター・ラボという会社の立ち上げに参画しました。
モンスター・ラボでは、音楽事業の自社プロダクト開発や、企業向けシステム開発を担当していたのですが、2011年頃にスマホと他のデバイスを接続し、新しい価値を生み出すようなサービスが流行りはじめました。
IoTの普及や、米国初のクラウドファンディング「Kickstarter(キックスターター)」の流行によって、様々なデバイスやガジェットが次々とリリースされるようになったのです。
さらに、3Dプリンターの普及によりメーカーズムーブメントが推進され、個人がものづくりをする時代に。
私も触発されて、それまでソフトウェアで扱っていたデジタルの世界だけでなく、ハードウェアでリアルな世界も変えていきたいと思い、モンスター・ラボから独立し株式会社ミラを立ち上げました。
株式会社ミラは、ugo株式会社の前身であるMira Robotics株式会社より先に立ち上げた会社で、Bluetoothを活用してスマートフォンとつながるカメラや、スマートロックなど、さまざまなIoTデバイスの受託開発をメインに行っていました。
ー ugo株式会社で取り組んでいる課題と、事業概要を教えてください。
ugo株式会社では、アバターロボット「ugo」と様々なロボットを活用した業務DXフレームワーク「ugo Platform」の開発をメインに行っています。
ugoは人手不足の課題を解消するロボットで、現場での自動巡回を行うことで点検業務のリモート化・自動化を行うことができます。
業務DXフレームワークのugo Platformでは、直感的なUIによるロボットの操作、自動化の細かい設定などを行うことができ、業務DX推進の手助けを行います。
また、ugoは遠隔操作が可能なので、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染対策としても有効で、リモートワークの敷居をZoomなどのサービスがブレイクスルーしたように、現場業務のリモート化をテクノロジーで推進していきたいと考えています。
ー ugoはただのロボットではなく顔がついていますが、どのような意図があるのでしょうか。
ugoは最初は顔、表情が無いものでした。
腕だけだと怖さを感じてしまう、というのもありますが、ugoの特性として、現場での見回りなど従業員との距離感が近いので、親近感が重要になってくるんです。
例えば、頑張っている表情などを見せると応援したくなる気持ちが湧きます。
そのように愛着を持ってもらえると、ugoとしては働きやすさにつながり、また従業員や現場の雰囲気に対しても良い影響が生まれると考え、顔と表情をつけました。
ー 実際のユースケースについて教えてください。
現在は、オフィスビルでの警備ロボットとして利用されていたり、発電所やデータセンターなどにある設備の点検業務に用いられています。
また、感染症対策という面では、高齢者が多く感染症対策にシビアになっている有料老人ホームでの介護士の補助としても利用されています。
他にも、現在は社会を支えるインフラサービスにフォーカスしており、電気や交通などを下支えするような業務を行っていきたいと考えています。
ー 株式会社ミラではIoTデバイスの開発を行っていますが、ロボット事業を始めた理由はなんでしょうか。
ミラでプロダクト開発をしていく中で、自社で提供している製品も含め、あらゆるデバイスがネットワークにつながっていき便利になっていくのを間近で感じていました。
しかし、ほとんどのデバイスは据え置き型で、デバイス同士のアクセスは人間が介在しないといけないことが多いんです。
例えば、洗濯機は洗濯物を入れる前工程と、取り出す後工程があり、洗濯がいかに自動化されても人間が介在しないといけないですよね。
そのような場合に自走できるロボットを投入すれば、動かないデバイス同士をつなぐ役割ができ、人間の介在を減らすことが可能になると考えてロボット事業を始めました。
ー アバターロボットで社会にどのようなインパクトを与えたいですか?どんな世界、どんな未来を描いていますか?
アバターロボットによる働き手不足の解決ができたらと思っています。
日本はこれから益々人口が減っていき、高齢者が増えていくとされていますので、人間の能力を拡張し、少人数で業務を行えるような技術が必要になってくると考えているんです。
例えば、狭さや気圧など人間では進むのが困難な環境において、遠隔操作ロボットを用いることで人間本来の能力から拡張した形で作業を行うことができます。
また、日本は移民の受け入れをあまり行っておらず、働き手不足になる未来が待っています。その中で、遠隔操作で海外からの就業が可能になることは生産性の向上につながります。
ー 拡大する市場の中でどのようなポジションを狙っていますか?
日本では、Society5.0の推進に向けてスマートシティなど現実空間の要素を有機的につなげていき、新しい価値を生み出すことが求められています。
その実現のためには、ロボットやIoTデバイスなどさまざまシステム、サービスを連携し、オーケストレーションを進めていく必要があるんです。
そこで私たちは、ugoやugo Platformを提供することでそのような取り組みの手助けを行っていき、これからの社会のインフラになっていけたらと考えています。
ー 起業して特に大変だったことをお伺いできますか。
アバターロボットは分野としてまだまだ新しいので、プロダクトとして理解されるのが難しい点があります。
これは新規分野全般にいえますが、投資や商品購入などにおいて日本は新しいものに慎重になりがちな傾向があるので、いかに目に見える形で成果を出し、社会実装を進めていくかを突き詰めるのが大変でした。
ここは会社としてすごく意識している部分で、社会実装ファーストといいますか、ロボットを開発しても面白いね、すごいね、で終わらせずに、社会にどう実装できて、どのような価値を提供できるのかを明確化し、一つの製品として完成させることが重要だと考えています。
また、先程お話した通り株式会社ミラを立ち上げた際はハードウェアについての知識が少なく、開発にあたってかなり勉強をしました。そのときの知識や経験は、ugo株式会社でも活きていると感じています。
ー ソフトウェアとハードウェアで開発の難しさに違いなどはあるのでしょうか。
大きな違いとして、メンテナンス、アップデートの難しさがあります。
ソフトウェアはサーバー上で一括で操作を行えるのに対し、ハードウェアは一個一個対応しなくてはならず、問題があった際の対処などは難しい部分です。
また、開発プロセスも大きく異なっています。ソフトウェアの開発方法はアジャイル型が増えていると思いますが、ハードウェアは実際の物があるので、つくった後から仕様変更することが難しい。
なのでウォーターフォール型を取ることが多く、段階を慎重に踏んでいき、各工程で仕様を細かく定めて開発を行っていきます。
しかし、ソフトウェア開発を行っていたからこその意識もあります。ハードウェアはこれまで消費物として扱われることが多く、基本的に購入後は価値が下がっていくものでした。
しかし、環境負荷などを考慮すると、ソフトウェアがアップデートを重ねるように、ハードウェアも価値を上げていくアップサイクルの形式を取らないといけません。
現代は大量生産大量消費の傾向から、多品種少量生産や所有しない時代に移り変わってきているので、このような開発意識を持って問題解決にアクセスしていこうと考えています。
ー 2015年5月に社名を変更していますが、どのような経緯と意図があったのでしょうか。
プロダクト自体が有名になってくれたこともあり、「ugo」というワードが浸透していったので、ブランド統一する形でMira Robotics株式会社からugo株式会社へ社名を変更しました。
ugo(ユーゴー)という名前には、自分達のプロダクトを通して世界のいろいろなものを「融合」していきたい、という会社のスタンスも表しています。
ー 組織風土、採用について伺えますか。
先ほどもお話ししましたが、会社として「社会実装ファースト」を一番重視しています。
ロボット開発は大学などで行う研究型のロボットが多く、閉じられた環境で決められた前提条件に沿って開発されることが多いので、そのままだと社会で使える技術にならないんです。
他にも、技術だけにこだわってしまい、この技術が良いから使ってもらえるプロダクトに違いない、というようなプロダクトアウトの発想になってしまうようなケースも多いですが、私たちは現場の声を聞き、リアルな課題を解決できるプロダクトを実装することを重視しています。
そのために、コスト感であったり、機能、使いやすさ、デザインにおいても全ての軸を見た上で開発を行うよう意識しています。
採用状況については、現在ロボットの改善、量産をしているので、その部分を担当していただくメカデザインエンジニア、そしてプラットフォームについてもugoや他のロボットと連携したりサービスの幅を広げているので、プラットフォームのエンジニア、また、ロボットを現場に導入していく際の現場対応を行い、現場のフィードバックをエンジニアに返すような、フィールドサポートのエンジニアを募集しています。
年齢層は気にしておらず、ugoに興味を持っていただいて、社会実装を意識してお客様に価値を届けられる方はどなたでも歓迎しています。
また、まだ社員が25名ほどなのでアイデアのディスカッションは頻繁に行います。建設的に議論でき、そのようなカルチャーが好きな方はぜひ応募していただきたいです。
ー グローバル展開についてはどのようにお考えですか。
世界的に見ると日本は少子高齢化の先進国でさまざまな問題を抱えていますが、これが中国、ヨーロッパの人口規模で起きてしまうと、日本の何倍もの規模でも問題が生じてきます。
そのようなことは遠くない未来で待っているので、日本が社会課題先進国であることを逆に利用して、そこで培ったノウハウ、技術を今後海外で展開していくことはすごく意味のあることだと考えています。
まずは日本で知見を貯めていき、その後中国やヨーロッパなどの人手不足になる国で展開していこうと考えています。
また、日本は元々世界トップのものづくり大国でしたが、海外の勢力が伸びている現状があるので、日本のものづくりを変えないといけないと感じています。
具体的には、先ほども話しましたが使い捨てではなく、アップサイクル型のプロダクト、つまり減価償却型ではなく、増価蓄積型のビジネスモデルを構築していくことが重要です。
地球環境や資源問題は世界的な課題ですので、その部分を解決していくことで再度世界的にものづくり大国として誇れるような日本を目指していきます。
ー 学生時代はどのように過ごされましたか。
小さい頃からものづくりが好きでした。大学に入学した当初はコンピューターを使った音楽制作をしていて、そこからプログラミングによる映像表現に興味を持ち、映像制作も行っていました。
当時Flashクリエイターによるインタラクションデザインやアニメーションというのが流行っていたのですが、それに音楽をつけて一つのコンテンツにしたり、CG制作を行ったりと幅広く「ものづくり」を行っていく中で、つくることをエンジニアリングしていく部分に興味を持ったんです。
例えば、つくったものやシステムを他のいろいろなものと連携させることを考えると、ソフトウェアエンジニアリングの学問が必要になってきます。
大学ではソフトウェアエンジニアリングや、仲間とチームでものづくりするときの課題を考え、どのように対処するかなどの勉強をしていました。
また、学生時代はインドなどでオフショア開発が流行り始めた時期で、ソフトウェアエンジニアリングについても専門で取り組んでいるような企業が増えていて、自分もすごく興味があったので実際にインドのソフトウェア開発企業に2ヶ月間インターンに行きました。
学生のうちに、最前線でのソフトウェア開発のプロセスや、ソフトウェアエンジニアリングを学べたことは非常に大きな経験であったと思います。
ー 休日の過ごし方、リフレッシュ方法を伺えますか。
休日は、プログラミングしたりビジネスのことを考えたりすることが多いのですが、仕事としてではなく、楽しんで行っています。
しかし、そのようなことばかりしていると頭が偏ってしまうので、リフレッシュのためにテニスをしたり、最近はジョギングすることが多いです。
他にも、ドライブが好きなのでふらっと出かけることもあります。
ー プレシード期からシード期のスタートアップへメッセージをいただけますか。
なにより大事なのは人と会うことだと思います。
資金調達、採用だけでなく、とにかくいろいろな人に会って自分の考え、やりたいことを共有し、中身のブラッシュアップを行うことで視野が広がり会社の成長につながります。
初めはプロダクトづくりにフォーカスしすぎてしまうことが多いので、人と話し、さまざまな視点から会社、プロダクトを見直すことが重要だと考えています。
ー これまで、ご自身や事業の成長に寄与したものは何かありましたか。
ピッチへの登壇経験は、外部にものごとを伝える段階で自身の考えを明確化、言語化できるので良かったと思います。
登壇という形での露出は採用につながることもありますし、場数を踏んでいくとどんどん上達していきますので、早めから参加したのは良かったです。
また、モンスター・ラボでの経験は大きいと思います。立ち上げ時は、社員5人ほどで狭い部屋でひたすら開発するようなことも経験しましたし、チームができて、ビジネスが大きくなっていく過程や、売上管理なども経験し、事業の成長を間近で体験できたことは現在も活きていると感じています。
あとは、初めの頃にアクセラレーションプログラムに参加しており、そこでブランディングについてしっかり教えていただいたことは大きかったです。
やはりプロダクトのみ開発していても知られていないと購入されませんので、PR、ブランディングはプロダクトと同じくらい大事だと考えています。
アクセラレーションプログラムでの経験からugoのキャラクターであったり、会社全体のブランドを上手く形成することができたので、現在さまざまなメディアで取り上げていただいたりしているのだと思います。
ー 最後に、読者へ一言お願いいたします。
私たちはロボットとロボットを活用したさまざまなサービスを提供しています。
新しいテクノロジーで社会を変えていく、もしくはこれからの未来をつくっていくという部分に共感していただけた方は、お問合せやご応募いただけたら嬉しいです。
ugo株式会社
東京国際工科専門職大学 IoT専攻3年生。
高校生時より、大手旅行メディアにてライターを努めた後、NPO法人にて教育系メディアの立ち上げに携わる。
その後、AI系メディアのブランディングチームやフリーランスにてWebライター、SEOマーケターとして活動中。
得意領域はITとおでかけ。
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