エンジニアの自分が悔しいと思った経験をバネに、STANDSを起業へ

エンジニアの自分が悔しいと思った経験をバネに、STANDSを起業へ

株式会社STANDS 代表取締役 露木諒氏

記事更新日: 2022/04/18

執筆: Eriko Nonaka

開発はエンジニアでないとできない……

コーディングにそんな苦手意識を持っている人は今でも少なくないだろう。

一方、最近では、VBAの自動プログラミングをドラック&ドロップなどの簡単なカーソル操作だけで実現できるRPAや、コーディングをしなくてもアプリケーションの作成ができる「ノーコード」を売りにしたサービスが台頭してきている。

皆さんおなじみのWordPressもノーコードサービスの一つだ。

「テクノロジーで愛されるプロダクトを増やす」を掲げるSTANDSも、ノーコードサービスを提供するスタートアップの一つ

エンジニアでなくても、タグを1行追加するだけで自社開発のサービスを、よりユーザーに分かりやすい形で提供できる、それが同社の提供する「Onboarding(オンボーディング)」だ。

追加開発を行わなくても、Onboardingを活用することで現行サービスをユーザーフレンドリーにできる。

代表取締役の露木諒(つゆき・りょう)氏はエンジニアのバックグラウンド。彼はどんな思いで、このノーコードサービスの開発に至ったのか。

手触り感のある分野で起業せよ

ー これまでのキャリアと創業に至るまでをお伺いできますか。

2010年に、今の事業と同じくBtoB向けのSaaSを提供している企業へ新卒入社しました。

IP(知的財産権)を持っているメディアやクリエイティブ・スタジオに対して、自社が開発しているシステムを組み込むと、オリジナルのOTT(Over The Top/動画等配信サイト)が作れるというものでした。

私は、エンジニアとしてフロントエンドもバックエンドも担当する形でキャリアを開始しました。

その後、事業開発側、セールス等のビジネスサイドへシフトしていきました。在籍中にMBAを取得するなど、会社員である間に出来ることにも挑戦していましたね。

2018年にSTANDSを創業しました。

学生時代から起業をしたいという志向性は持っていたタイプです。

起業に向けた勉強を兼ねて、ある程度落ち着いたシリーズAからBフェーズのスタートアップで、裁量権を広く持ち、短い期間で多くのスキルセットを得ようと考えた結果が1社目でした。

私は元同僚の藤原と共同創業しているのですが、彼も起業志向のある人。

お互いのタイミングが合致したこともあり、二人で事業を始めてみよう、ということになりました。

事業の中身には一旦はこだわらず、まずは創業、法人化をしてみた形です。現在の事業も2期目より開始したものです。

私は、中学生の頃から陸上競技をしていたのですが、当時は結構な情熱をかけて没頭していました。

大人になり、仕事をすることになった時、事業についても同じくらいの熱量で臨みたいと考えていました。

そして、それが発揮しやすいのは、従業員ではなく創業者や代表というポジションなのではないかと思い、起業しようと考えました。陸上競技は、自らの身体に向き合って、自分を高めていくスポーツ。事業も同じようなものだと捉えています。

ー 実際に起業してみて大変だったことはありますか。

当初は、事業の試行錯誤に一番時間を費やしましたね。

序盤はアイデアが固まっていなかったので、受託開発やコンサルティングも織り交ぜて足元の資金を稼いだり、クライアントの課題把握をしつつ、事業の種を試行錯誤しながら作っていました。

この頃は忙しすぎて藤原とも話す時間がもてないほどでした。

その結果「自分達は果たしてなにをやっているのだろう」「相方はいま何をしているのだろう」という状況に

一度きちんと向き合って話をしたほうがいいと感じ、二人の時間を取ってアイデアを出していきました。

ブロックチェーンだとか、PropTech(不動産テック)だとか、その時話題に上がっているもの、マーケットバリューがありそうなもの、自分たちがやりたいものなど、色々と考えては潰し、という状態でした。

やっていく中で気づいたのは、その事業が、自分たちとFounder Market Fitしているかどうかという観点。

考えてみれば当然なのですが、不動産テックの事業を考えていたものの、私たちは不動産のキャリアがあるわけではなく、その業界の中でやってきた人たちが事業開発をすれば数倍のスピードでやっていけるものを、本当に自分達がやる必要があるのか、と自問自答していきました。

また、課題解決重視のペインキラーとして事業をつくるべきなのか、売上重視で事業をつくるべきなのかも議題になりました。

例えば、ビジネスアイデアとしては、カスタマーペインの観点からは家を探している個人向けに仲介料を免除するものが浮かぶわけですが、売上を立てていくという経営観点からは、仲介業を儲けさせる、最近よく出てきている業界特化型SaaS、いわゆるVertical SaaSになるでしょう、と発想が変わっていく。

そこで最初に立ち戻ると、そもそも、その事業って本当に自分達がやりたいことなのか、と疑問が湧くわけです。

自分たちに、これをこう変えたいというWillがあるわけではないから、事業の形が変わっていくのだろうと。

では、なぜ私たちは「Onboarding」というサービスをやろうという結論になったのかという話ですが、色々と周回した結果、自分達にとって手触り感のある業界や経験に基づいた課題に対して向き合おうという結論に辿り着いたからです。

藤原も私も、前職の経験から、SaaS導入企業のUI/UXにおけるペインは見えていました。

当時の自分たちや当時のクライアントが欲しかったものを想像するのは、他の業界で考えるよりずっとスムーズだったんですね。

互いに事業アイデアに腹落ちし、これでいこうと合意したのが2019年の夏頃。そこまでいけば、あとはMVP(Minimum Viable Product)の構築とユーザーインタビューという、一般的な事業開発のプロセスに乗せることができて、今の状態までやってきた、というのがここまでの状況です。

ー 資金調達についてのお話をお伺いできますか。

ちょうど、2022年2月にプレシリーズAをクローズさせていただきました。

実務を進めながら、調達もしないといけないというのは結構つらかったですね。実務と調達というのは、使う頭が違ってくるのです。

実務であれば、直近のトラクションに向き合う。

一方で、調達は中長期的な事業計画やビジョンを求められ、それを言語化や数値化する必要がある。その切り替えがなかなか大変でした。

また、最初の調達であったこともあり、スタートアップの資金調達にかかる平均期間と比べてみると時間がかかったほうなのかもしれません。慣れないうちは、VC(ベンチャーキャピタル)に断られても、何がダメだったのかもわからない。

ですので、一緒にアクセラレーターに参加していた人や、すでに資金調達に成功した人に相談していました。

プロセスを辿りながらリアルタイムで勉強をしつつ、VCとの目線を合わせていった形です。

そもそも、プレシリーズAまで自己資金のみで経営してきている企業はそんなにいないのではないかと思います。

一般的なプロセスで言えば、シード出資に対応しているファンドに投資してもらい、シリーズAは、前の投資家に続いて投資してもらったり、そこからの紹介で投資家を増やしていくパターンが多いのかなと。

私たちはシード期にVCからの投資を入れていないため、とっかかりを探すのに苦労しました。ここでも様々な方に相談し、助言に助けられました。あとはピッチイベントで知り合った方々にも助けていただいています。

ー 組織風土についてお伺いできますか。

ミッションは「テクノロジーで愛されるプロダクトを増やす」です。

私自身エンジニアとしてのキャリアスタートですが、エンジニア達が魂を込めて開発したものがユーザーにあまり使われていない、使いにくいと言われてしまう局面を見てきました。

自分が設計したUI/UXが良くなかったということが原因で、機能や性能はいいのにコンペで負けるという経験もありました。UI/UXが原因でサービスが使われないというのはすごく悔しいと思っていましたし、機会損失しているとも感じていました。

そういった原体験もあり、せっかく良いサービスでもあっても、UI/UXの問題で価値が伝わらず売れない、使われない、そんな課題をなくしていきたいと考えました。

エンジニアはどこの企業でも忙しいので追加開発をお願いするのは難しいですが、開発をタグ1行でUX改善できるのであれば、そもそもの開発工数が削減できますし、非エンジニア領域の方でもサービスのUI/UXの改善ができます。

せっかく作ったものなのだから、ユーザーから愛されるサービスにする手助けができたらなと。

特にエンジニアの方には、このミッションに共感してもらえると思っています。共鳴してもらえると話が早いし、お互いにとっていい場が作れるのかなと。

現在エンジニアが4名で、そもそも社員自体が7名程度という組織なのですが、これから拡大していくにあたって技術選定の余地もめちゃくちゃありますし、これから色んなことを試したいという人には、格好の機会だと思っています。風土的に穏やかでダイバーシティに理解がある人が多いです。

落ち着いていて、地に足がついた開発体制が組みやすい、心理的安全性のある風土というのも特徴かなと思っています。VPoEはまだいなくて、僕とエンジニアリングマネジャーが採用をしています。僕自身プレイングマネジャーとして開発にも関わっており、開発と経営が近いのも特徴です。

ー グローバル進出については?

検討中ではありますが、国内大手へのセールスが一巡し、PMF(プロダクトマーケットフィット)を終えた後のフェーズで検討していければと思っています。

海外にも先行事例はあるのですが、逆にそれは日本以外にも市場があるという意味にも捉えています。「機が熟したら」ですね。

陸上競技での情熱と経験を元に、起業へ

ー 学生時代の話

自由にやらせてくれる家庭で育ち、高校もとても自由な校風の都立に通っていました。大学は、慶応大学のSFCへ。部活は陸上競技をずっとやっていました。

慶応大学には体育会競走部という組織があるのですが、そこで副将をやって競技とともに、70名規模の組織をまとめる立場にいました。伝統的に、体育会は学ランを着るという文化がありまして……。

高校は私服だったのに、大学に入ってから学ランを着るっていう(笑)。陸上競技から学んだことは少なくありません。私の種目は走り高跳びだったのですが、個人の成績を伸ばすということと、チームの総合成績を上げてインカレなどの公式戦で他大学と競って勝つというチームプレイの側面と、両軸がありました。

そのためにも、どのように練習メニューを決めるのか、どういう組織にするのかを、監督もコーチもいない中で試行錯誤し、随分学ばせていただきました。それはまるで会社の縮図のようで、今の経営にも活きているなと思っています。

慶応大学の体育会系の生徒は、官公庁、商社、電博など伝統的大手企業へのパイプが強くて、就職率がとてもいいんですよ。広告代理店などもかっこいいなと感じてはいたのですが、起業家の本を読み「自分にはこちらの方が情熱を持てるのではないか」と思い、起業に必要なスキルを身に着けようと決意しました。

私が学生の頃は、フリーランスという概念はまだほとんど浸透していなかったし、まずは社会人として勉強もしたいと考えており、エンジニアとして新卒入社しました。

エンジニア職をやろうと思ったのは、1社目の社長がエンジニアのバックグラウンドを持っていたことがきっかけです。開発のバックグラウンドを持ち、経営もやっているのって最強だな、と身をもって感じました。

元々、ものづくりが好きだということもあり、相性の良い職種だったと思っています。

ー 週末は何をされていますか。

筋トレやランニングをしています。あとは、子どもが二人いるので彼らと遊ぶことが多いです。

私自身が親に自由にやらせてもらった結果、今に辿り着いたという経緯もあるので、子供達にも自分の背中を見せつつ自由に育ってもらえればと思っています。僕の父親も会社員から起業をしたのですが、とても生き生きしていますし、かっこいいなと感じていますよ。

ー シード期のスタートアップに向けて一言

私たちのように、外部から資金調達する前にこんなにも検証に時間をかけるスタートアップは珍しいかもしれません。もし同じようにしようと思われる方がいらっしゃったら、ぜひまずは外部の方の意見を参考にしてほしいです。

一人で起業する方もいると思うのですが、日々のプロダクト開発や売上づくりのためにゆっくり考える時間がなかなか持てません。こういった状況において、外部のメンターとお話しすると目が覚めることがあるんですよ。

なので、時間を捻出し、計画的に壁打ちのタイミングを設定しておくのが良いですね。そして、自分たちのやろうとしている事業領域の先輩にリアルな話を聞いたり、アクセラレーターなどのアドバイスをいただいたりしながら、様々な観点で考えられるようにしておくと良いと思います。

ー 日本発のグローバル企業を目指すスタートアップとしての意気込み

叶えたい思い、出したいバリューを自分達なりの表現で叶えていくことができる、とてつもなく楽しいプロセスだと感じています。

投資してくださったみなさんや、会社のメンバーと一緒に船に乗るという体験は、人生の中でも忘れられない経験になるはずです。

僕らも日本を背負って立つスタートアップの一つになりたいと考えていますので、少しでも関心があれば、ぜひ飛び込んで頂きたいと思っております。

株式会社STANDS

・社名:株式会社STANDS
・住所:東京都中央区八重洲1丁目2−16 TGビルディング本館 8階 xBridge-Tokyo内
・代表者名:露木 諒
・会社URL:https://www.stands.ai/
・採用ページURL:https://recruit.onboarding-app.io/
・連絡先:info@stands.ai
Eriko Nonaka

この記事を書いたライター

Eriko Nonaka

銀行、通信企業での新規事業担当を経て独立。スタートアップのファイナンスやコミュニティの運営に長く携わる。自身でメディア運営をしていることがきっかけでライター活動も行なっている。

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