使わなければ0円!モバイル・プランニングが売り上げ度外視の「ゼロエンWiFi」を提供する理由

使わなければ0円!モバイル・プランニングが売り上げ度外視の「ゼロエンWiFi」を提供する理由

記事更新日: 2021/12/07

執筆: 薮田 朋子

コロナ禍で一気にリモートワークが広まり、ポケットWiFiの認知と需要も増えました。緊急事態宣言が出た2020年4月頃、レンタル会社ではポケットWiFiの在庫が供給に追いつかなくなるという前代未聞の現象も起きたそうです。

そんな時代に、「ゼロエンWiFi」という新しい仕組みの法人向けWiFiサービスが誕生しました。契約期間の縛りがなく、使用しなかった月は月額料金が無料になるというユニークな形態が特徴です。

ユーザーの懐に優しいのはうれしいものの、どのようにして運用をしているのでしょうか。その不思議にも思える仕組みに迫るべく、株式会社モバイル・プランニング代表取締役の古賀広幸氏にお話を伺いました。

プロフィール

古賀広幸

株式会社モバイル・プランニング代表取締役。1964年福岡県生まれ。九州大学教育学部卒業後、1987年に第二電電(現KDDI)に入社。KDDIからUQコミュニケーションズ株式会社に出向し、現在の格安SIMにつながる事業の立ち上げにも取り組む。その後2009年にモバイル・プランニングを設立。2015年にWiFiレンタルサービスの「NETAGE」を開始。

 

使用しなかった月は月額料金が無料になる新しいWiFiサービス
「ゼロエンWiFi」

――「ゼロエンWiFi」とは大変思い切ったサービスかと思いますが、こちらの着想やスタートした背景を教えてください。

一般的なポケットWiFiは、2年契約や3年契約など毎月固定費がかかります。またレンタルは本体を注文して届くまでに時間を要したり、返す際に手間が発生したりします。これらの不満を解消すべく、置き薬や備蓄品のようにWiFiもお客様の手元に置いていただき、使ったときだけ課金されて使わないときはお金がかからないようなサービスがあればと思い、2021年1月26日に「ゼロエンWiFi」はスタートしました。

――それではコロナ禍とは関係なく考えられていたのでしょうか。

そうですね、発想は2〜3年ほど前からあったものです。実は10年前にUSBドングルで通信をつないでいた時代にも、「使ったときだけ課金」という形態でサービスを作っていたことがありました。それから時が経ちまして、通信が5Gになったこの時代に新しく仕切り直して始めようとしたのがきっかけです。

――「ゼロエンWiFi」の使い方の特徴を教えてください。

通信を毎日しっかりと使いたいのであれば光回線やポケットWiFiの契約がおすすめですが、「ゼロエンWiFi」は滅多に使わない方向けのサービスです。

例えば急な出張で必要になったときや、災害時等での通信のバックアップなどにも便利です。レンタル業界ではよくある話ですが、企業研修でポケットWiFiを用意したいけれど直前まで数が確定せず、直前にバタバタと変更があるといった悩みも、手元にWiFiを置いておけば解決します。

また、起業したての方は特に最初は固定費をかけられないと思いますが、月額定額ではなく、使った際にだけ課金される部分は魅力に感じていただけそうです。そして企業様でも固定費がかかると通信の予算が取れなかったりしますが、置いておくだけなら費用がかかりませんので、総務担当者様にとっても通信の救済になるのではないでしょうか。

「置きWiFi」は、通信のバックアップや貸し出したいときにすぐ使える

――今までにどのような業種や業界で導入されていますか?

主に中小企業様と自治体様に導入されています。一例では、固定回線にトラブルが起きがちだから備えておきたいという企業様がご利用されています。トラブルが起きて通信が使えなくなればその時点でビジネスがストップしてしまうので、バックアップとして持っておくことで安心になりますね。

――繁忙期があり、従業員の人数が月で上下するような企業様にも需要がありそうです。

そうですね。業務委託やアルバイトを雇ってリモートで仕事をしていただくときなど、10台のWiFiをフルに貸し出す月もあれば今月は数台しか使わなかったという月もあるという場合は、使わない分の月額を払わなくて済むため便利だと思います。

リモートワークは本来、企業がネットワークを用意するのが正しいものです。まだそういった準備が整っていない会社もある中で、「自社ではきちんと貸し出しています」といったブランディングにもなるのではないでしょうか。

 

地元の久留米市に、災害時の備蓄品として端末を寄贈し社会貢献を

――2021年8月、トヨタカローラ福岡株式会社様と共同で、福岡県久留米市に災害備蓄品として「ゼロエンWiFi」の端末を寄贈されています。こちらはどういった経緯があったのでしょうか。

九州は災害が多く、毎年水害などの被害が出ています。私が久留米市の出身で、東京にいても周りの方によく実家のことを心配されており、このような状況はずっと気になっていました。そして東日本大震災のときに通信が完全に途絶えた不安な状態も経験してきたので、災害時の通信インフラは非常に重要だと感じていました。

「ゼロエンWiFi」の端末は小型で場所を取らず、備蓄品としても便利に使っていただけますので、社会貢献という意識で久留米市に端末を寄贈しました。

――これからは食料や生活用品と同じように、情報収集のための通信も備蓄しておく時代になって欲しいという思いが、地元の久留米市から発信されているのですね。

実は現在、20以上の自治体とお話を進めています。今年8月と9月、全国に約1700以上ある防災対策課などBCP(事業継続計画)関係の部署あてに、災害時のライフライン確保として「ゼロエンWiFi」の提案書をDMにて送付しました。通常、DMの反応はほぼないと思うのですが、今回は22カ所から連絡をいただきました。これはかなりの反響だと感じています。

売り上げが出ない可能性のあるサービスは、社内でも不安の声があった

――先ほど社会貢献と言われていましたが、料金を拝見しますと、最初の事務手数料で4,400円、更新料が25カ月目に2,200円。使った月は15GBを月額で3,300円。特に割高というわけではなく、一般のWiFiの料金とあまり変わらないようです。

にも関わらず、使用されていないときは売り上げが立たないという可能性を飲んでまでこの事業をされているというのは、なかなかできることではないのかと思います。

弊社では「ゼロエンWiFi」だけでなく「NETAGE」というWiFiレンタルサービスも運営しており、こちらの事業が主力になっています。その中で法人様より「固定費がかからないWiFiがあるといいな」というお声も過去にありました。

モバイル・プランニングは社名の通り、お客様からの「こんなことできないかな?」のご要望に対し、どうしたら可能になるか前向きに考えていきたいという思いをとても強く持っています。それで問題が解決できれば、お客様も私たちも、全員がハッピーになれますから。

――主力の事業でバランスが取れているからこそ、「ゼロエンWiFi」で社会貢献ができるというわけですね。

お客様にもよく、「なぜそんな金額で」と聞かれます。

通信業界はコロナ禍で、利益を伸ばすことができました。それをさらに投資で大きくすることもできますが、我々が得た利益を何かしらの形で社会に還元していきたいと考えていました。

そんなとき、災害時の通信には需要があるけれどまだ行き届いてないというところで、備蓄品としてのWiFiに着目しました。こちら自体はビジネスとして成り立たせることは難しく、どのメーカーも手を出せていません。だったら、「たとえ儲けが出なくても弊社でやってみよう」と進めることにしました。

もちろん社内でも最初は反対や不安の声もありました。ですが、売り上げが出ないことが完全なマイナスではなく、いろんな方が私たちの通信を使ってくださることでつながりも増え、さらにそこから我々の事業が展開していくという期待値もあります。

社会貢献というブランディングの意味も込めた今回のサービスですが、自治体様に関しては需要を見つけることができましたので、今後も引き続き活動を続けていき、企業様に対しても軽微な通信のバックアップや急なWiFi利用での備えとして届けられたらと考えています。

ニッチなニーズをしっかりとサポートして、通信業界を支えていきたい

――まだ行き届いていない領域での需要を見逃さないというところに、御社の想いを強く感じました。

私自身、以前はKDDIに勤めていました。大手キャリアでは大きなニーズには応えられますが、どうしても手が届かない細かすぎるニーズがたくさんあることを常々感じていたのです。どうにか、そういった小さな声にも応えたいと思ったことが創業のきっかけになりました。「全ての人々に、テクノロジーの恩恵を」と掲げるように、ニッチなニーズをサポートして、事業を成り立たせながらみなさんに貢献ができればと思っています。

――それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。

ぜひ固定費がかからないWiFiで、スタートアップや起業される皆様のお手伝いをさせていただきたいですね。また、弊社の考えに共感していただいて利用やコラボにつながれば、ひとつのお近づきになれるかなと期待しています。

そして、通信もどんどん進化をしているので、「ゼロエンWiFi」以外の事業も考えていきたいです。世の中ではSIMフリー化も進んでいるので、欲しいときだけに提供するプリペイドSIMの充実や、アフターコロナでのアウトバウンド・インバウンドへのアプローチ、eSIMでの通信など、手軽で、使いたいときにインターネットアクセスがたくさんできるという環境を、やはりちょっとニッチなニーズの視点から私たちらしく応えていきたいです。

 

薮田 朋子

この記事を書いたライター

薮田 朋子

フリーライター&編集者。女性ファッション誌から出版業界で執筆業に携わる。現在はジャンルを問わず雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広く活動。

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