代表取締役 松尾 幸治
2021年の1月6日に「株式会社リチカ」に社名変更したばかりのカクテルメイク株式会社。
「オフラインの体験に近い、リッチなオンラインコミュニケーションで世の中を豊かにする」
そう語るのは株式会社リチカ代表取締役の松尾 幸治氏。
新たに「リッチコミュニケーションカンパニー」としてリブランディングした背景や創業当時から現在までのストーリーについて松尾氏に伺った。
プロフィール
松尾 幸治/ 代表取締役
このページの目次
実は、会社を作ったのはたまたまだったんですよね。
私はもともと動画ベンチャーの取締役をやっていました。その会社は、現在ベルフェイス株式会社の社長が立ち上げた会社で、「社長. tv」という中小企業経営者を動画で取材する広告メディアを展開していたんです。そこで、動画制作や営業支援の責任者として仕事していました。
特に印象的なのは、日本全国5000社の中小企業の社長に2年間で取材したことです。そしてその取材で撮影した動画すべてを3分くらいに編集して公開していました。
ですが、事業が急成長する裏側で、色々と失敗してしまい、オーナー変更のタイミングで会社を出ることにしました。
とても話しにくいのですが、取締役だったということもあって25歳という年齢のわりには収入がかなりあったんです。もちろん、色んな求人を見ていて再就職も考えてはいたものの、収入的にどの企業に就職しても翌年の住民税を支払えそうにありませんでした。
そこで、「どうせ金銭的に厳しくなるならいっそ起業して挑戦してみよう」と思ったんです (笑)。
まあ、いきなり所属していた組織から出て環境が変わったため、思い切って起業する良いきっかけでもあったんだと思います。もしも当時、ちゃんと転職活動する時間があったなら、起業していなかったかもしれないですね。
実は最初からリチカ クラウドスタジオのようなサービスを作ろうと思っていたわけではないんです。私自身が、急に独立することになったので「何をしようか?」というところから始まりました。
過去の経験からクリエイティブの領域は得意で、システムや動画の知見があったので、最初は動画制作会社の立ち位置からスタートしました。
そこでは色んなシステムの開発をしていたので、割と仕事はもらえていました。
例えばスマートロックを活用した無人内覧サービスの立ち上げや、少年マガジンのYoutubeチャンネルの運用、企業のプロモーションビデオの制作など幅広い業種に関わる開発をしていました。
そうです。普通にやると動画の制作事業は、社内にノウハウなどの資産が溜まりにくい構造になっているんです。 創業2年目くらいから、自社サービスを作って仕事をしていく中で、資産がたまるようにしたいと思うようになりまして。
売上は受託事業で立っていたので、その余剰をサービス開発の資金に回し、様々なプロダクトを作ってみることにしました。エンジニアに相談して、軽いものから重いものまで1年半で20サービスくらい作りました。
はい (笑)。
でも最終的には、自分たちが課題に感じていたことを解決するサービスに落ち着きました。 その課題というのが、「動画制作は肉体労働」ということでした。 動画制作というのは、企画をすり合わせて大人数で撮影して編集して、何十回も修正の作業をして…というように、労働集約的な職人産業みたいな感じなんです。
さらに、今までは動画を作って納品して企業が使ってくれたらその一本でしばらくは色んな人に届く状態を維持できたのに、最近は動画が普及してしまったことで、3日後には忘れらてしまうような状況です。 そのため、依頼した企業側は動画一つあたりの制作コストをかけられなくなりますよね。
同様に、作り手も安い金額でたくさん作らなくてはいけないので大変です。 そこで、この動画制作の手間とコストを解消できるシステムがあれば良いなと思い、テストで作ったサービスがリチカ クラウドスタジオなんです。
そうですね。リリースしたらありがたいことに、週200件もの問合せをもらいました。今までとは全く違う明らかな好反応いただき、大手企業の方からも問い合わせをいただいたので、このサービスはかなりポテンシャルがあると確信しました。
しかし、当時は受託事業もしながらのサービス開発だったこともあってどうしてもリソースが足りず、200件のうち30件しか受注できませんでした。そこで生半可な気持ちでこの事業をしてはいけないと感じ、2~3年前に事業はリチカ クラウドスタジオ一本にしました。
あるテック系のメディアで取り上げてもらった際に、記事経由でサービスを知っていただいけたことですね。あとはその記事と同時にPRタイムズさんからプレスリリースも一緒に出したのでそれらを合わせたことで好反応をいただけたのだと思います。
私たちの会社の組織そのものが変わって、ビジネスの考え方を180度変えなくてはならなかった点が大変でした。
従来の形態である制作会社では、何かを作って納品して終わりというように終わりのタイミングがあります。
一方、インターネットのクラウドサービスでは、納品ではなくて導入してもらってからがスタート。定額制でお金をもらうという構造になっています。
従って、社員も私も今までは「どうやって売ってどうやって納品するか?」をゴールとして考えていたのですが、新たなビジネスでは「導入してもらってからどうやって中長期で使い続けてもらうか?」という発想の転換をすること、そして社内全体でその考えに合わせていくというのが大変でした。
ただ、その思考でビジネスをしないと売上が成り立たない構造だったこともあり、自然に思考は変わっていきました。
自社のバリューの一つでもある、「現物主義」を大事にしています。
やはり、コミュニケーションを円滑に進める中でモノがないと伝わらないことはたくさんあると思います。
例えば、今ここで「弊社のこんな動画を御社に使いませんか?」と言葉だけで説明するよりも、まず出来上がったものを見せて「これ使えませんか?」と言った方がコミュニケーションのステップが何段階も飛ばせるんです。せっかくクリエイティブの会社で作ることができるのだから、「作って見せた方がわかるでしょ!」という発想が、コアなアイデンティティとして存在していますね。
一番最初、そうでもしないとサービスが売れなかったからでしょうね。
そもそも実績があったわけでもないし、いろんな会社と比較してもらって受注してもらうには企画書を作るのではなく、最初からモノを作ってしまって提示した方が受注率が高かったんです。
その経験がきっかけになっているのだと思います。
これからは、動画にまつわる事業にとらわれず、「リッチコミュニケーションカンパニー」として情報発信者と受け手のコミュニケーションをより豊かにしていきたいと考えています。
最近では、動画に文字を入れるだけでAIが自動でナレーションしてくれるものや、喋るだけで自動的に動画に字幕が出るもの、ユーチューブの動画を活用して記事コンテンツを作れる機能などを開発中です。
このように今後は、テキストから動画・画像までコミュニケーションに関わる事業全般をやっていきたいと考えています。
さらに制作産業は職人産業なので、クリエイターが良いものを作るためには時間もコストもかかり、結果的に提供できる数がどうしても少なくなってしまいます。
それをテクノロジーの力で解決し、広く届けていくというお手伝いがしたい。そういう想いで現在、色々なプロダクトを作成中です。
そうですね。
「うちの会社ってなんなんだろう?」「今後どうしたいのか?」と考える中で「リッチコミュニケーションカンパニー」と再定義した方が良いという結論に至りました。
会社のミッションも「Switch to The Rich. 想いが届く、で世界を豊かに。」というものを掲げています。
リチカという名前には、情報やコミュニケーションを「リッチ化」するという意味があります。そのサービスの方向性と会社の方向性が一致したので、改めて株式会社リチカに思い切って社名変更して、自分たちの提供したい価値を提供しようということになりました。
「オフラインの体験に近いオンラインコミュニケーション」が私たちの定義する「リッチコミュニケーション」です。
DX (デジタルトランスフォーメーション) という言葉が流行っているように、様々なものがデジタル化している中で、今まで直接行っていたコミュニケーションの大半もオンラインになってきています。
いろんなものがデジタル化するのは素敵だと思いますが、オフラインでのみ体感できる「人間らしさ」という質感は無くなってしまうと思います。実際、表情の一つもチャットやオンラインだと伝わりにくいですよね。そうしたオフラインの感覚的な部分をオンラインでも伝えることが「リッチコミュニケーション」に繋がると思います。
例えば、弊社のオンライン名刺ではQRコードで自己紹介の動画が流れるようになっています。
他にも、問合せをもらったらお礼のメールとして、GIF画像が流れるようになっていて、ペコっとお辞儀している動画が流れます。
デジタルの淡白さに温かさが差し込まれるようなコミュニケーションが実現できたら良いなと思っています。
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