入山教授にきく、イノベーションを起こす「H型人材」になる実践方法

入山教授にきく、イノベーションを起こす「H型人材」になる実践方法

早稲田大学大学院/早稲田大学ビジネススクール教授 入山章栄氏

記事更新日: 1970/01/01

執筆: 下郷るん

プロフィール

入山 章栄氏

早稲田大学大学院/早稲田大学ビジネススクール教授。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。13年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。19年より現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表。著書に「世界標準の経営理論」「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」などがある。

早稲田大学大学院/早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏が、今話題になっている経済ニュースへの見解を広げる『テレ東経済News Academy』
テレビ東京の総合ニュースサイト「テレ東NEWS」で公開されている(詳細は最終章で説明)。

起業ログ編集部は、撮影が行われているテレビ東京のスタジオに潜入。
日本の経営学の第一人者である入山教授への独自インタビューが実現した。

この記事では、これから日本企業で求められるイノベーション人材とはどのような人材なのかを伺った内容をまとめている。

すぐに実践できる内容が含まれているため、
どのようにイノベーションを起こせるのか悩んでいる方、またこれからどのような人材になればいいのか関心のある学生の皆さんの参考にしていただきたい。

 

イノベーションを起こす人材とは

そもそもイノベーションとは何なのか?
そしてイノベーション起こす人材とはどのような人物なのか?

まずはアカデミックに提唱されている理論を、入山教授の著書に基づいてまとめていく。

イノベーションの源泉

イノベーションの源泉とは、「既存の知と、別の既存の知の、新しい組み合わせ」にある。

つまり、新しいものは何もないところから生まれるのではなく、既存の何かと別の既存の何かを組み合わせたりつなげたりすることで生まれているのである。

有名な例として、Apple社がそれまでの携帯電話にメール機能やカメラ機能を付け加えたこと(=結合したこと)で生み出したスマートフォンは、現在世界の2人に1人が利用している。

知と知の組み合わせから新しい概念や製品が生み出される

イノベーションを起こす人材とは

イノベーションを起こすために知と知の結合が必要であるならば、イノベーション人材とは、「知と知の結合ができる人」もしくは「知と知の結合を促進する人」となる。

入山教授は後者の「知と知の結合を促進する人」について、「H型人材」という概念を提唱している。

H型人材は、社会科学で1970年代頃から提唱されている「バウンダリー・スパナー(baundary spanner)」と同じ意味をもつ。
バウンダリー・スパナーとは、企業、組織、地域などの境界を超えて、情報を翻訳しながら伝達し、関係の調整や対立の解消をする役割をもつ人のことだ。

例えば、下の図でXがH型人材であり、Xの元には、AとBの2つの組織の情報が効率的にそして豊富に入ってくる。
つまり、H型人材とは、①異なるプレーヤーをつなぎ、②自身のメリットだけでなく、組織全体のベネフィットを追求する人のことである。


中央のXがH型人材となり、組織AとBをつなげる
組織とは、企業、分野、業界、部門など多岐にわたる

H型人材の可能性

ではなぜ、H型人材がイノベーションに必要なのか?

それは、日本企業の閉鎖的な特徴に関係している。
日本企業は従来、職人気質で1つの分野に精通する人ばかりを重宝してきた。
その結果、同質化が進み、異なる企業や業界の動向が全くわからない状況に陥ってしまった。

この状態でいざイノベーションを起こすために知と知の結合をしようとしても、他の組織との言語や価値観の違いによって、情報がうまく伝達されないのだ。

例えば、大企業とスタートアップのオープンイノベーション

オープンイノベーションの有効性は広く認知されており、多くの大企業がスタートアップとの協業を試んでいるが、多くが失敗に終わっている。
その原因として、社内で話す言語が異なることや、意思決定のスピードが異なることなどがあり、お互いを理解できずにその関係が破綻してしまうのである。

そこで役割を発揮するのが、H型人材である。

Xが組織Aと組織Bを仲介し、繋ぎ合わせる

H型人材は、複数の組織を行き来して、様々な人とのつながりがある。
もし、H型人材であるXがAとBの組織と繋がっていた場合、Xはその結合点となって、情報交換を促進することができる。
そして、言語や価値観を翻訳することで、より活発に情報が行き来する。
よって、知と知が結合されやすくなり、新しい価値を生むのだ。

 

H型人材になって周囲をつなぐためには

ここまで、複数の組織とつながりを持ち、組織間の介入者となるH型人材が、日本企業に必要不可欠となる背景はわかった。

それでは、どうしたらH型人材になることができるのか?
また、H型人材になったあと、どのようにして周囲を巻き込んでいくのか?

この問いに、入山教授が答えてくださった。

好奇心を持つことが第一歩

最初に伺ったのは、H型人材になる方法である。
入山教授によると、「好奇心に従って積極的に動くこと」が重要だという。

−入山先生ご自身がH型人材を体現されていますよね。
どのようにつながりを広めていったのでしょうか?

 

H型人材は結果論で、自分の興味あるところに突き進んでいて気がついたらこうなっていました。

とにかく色々なことに好奇心をもつ。そして実際に動いてみる
それが一番重要だと思います。
そのためには、日頃から興味の受け皿を広げて置いて、新しいことに対して否定から入らずにまずはやってみる
この姿勢をつくることが最初の一歩ではないでしょうか。

つながりを持ったあとの2つのコツ

−「つながりを持とう」という意識ではなく、自分の興味関心を深めていった結果として、気がついたらH型人材になっていたということですね。

ただ、そうしてご自身が複数の組織とつながることができたとしても、そこから人を巻き込んで組織同士を繋いでいくのが難しそうです。
例えば、入山先生と大学生の私で同じつながりを持っていた場合も、入山先生の話を聞く人が多いのではないでしょうか?

つまり、社会的な地位によっても巻き込み力は変わってくるのではないかと・・・

 

大事なことは地位や上下関係ではありません。

周囲を巻き込んでいくためには2つのコツがあると思っています。

1つ目は、徹底的に他者視点であることです。
何かを始めるときに、「自分が〇〇したいから巻き込もう」ではなく、「相手にプラスなことがあるのか」を考える必要があります。
人間は合理性を求めるので、何かをやるには自分にプラスなことがなくては動かないのですよね。
これはビジネスの世界でも同じだと思います。
ですので、いつも何かを始めるときには、初めにみんながハッピーになる仕組みをつくって、「あなたにこんな得なことがあるのですが協力してくれませんか」という風に提案しています。

2つ目は、「助けてもいい」という信頼関係をつくっておくことです。
日頃の行動や関係性などによって、正直「この人はあまり助けたいと思えないな」ということありますよね。
逆に「この人とだったら一緒にやりたい」「まあこの人だったら助けてあげてもいいか」と思ってもらえるようになることが大切です。
そのためには、1つ目の「他者視点で相手の得になることを考える」のも重要になってくるわけです。
私はこのような人のことを「戦略的いい人」と呼んでいます。
偽善者ではないけれど、何かあったときに助けてもらえる人になっておくことって重要ですよね。

未来を担う若者へ

ここまで、今後日本に必要とされるH型人材について具体的なお話を伺ってきた。
最後に、これからの未来を担う若者に向けて一言をいただいた。

やりたいことなんてなくていい。楽しむのがいちばん

−今回のインタビューで興味関心のあるものを深めていく、というのがキーワードだと学びました。
一方で、現代の若者には「何をしたいのかわからない」という傾向が強いですが、そういった人にはなんとアドバイスしていますか?

 

やりたいことなんてなくていいんじゃないですか。そのうち見つかるかもしれないし。

少しアカデミックな内容になりますが、人はビジョン型とバリュー型に分かれていると思っています。
ビジョン型は、目標や自分のやりたいことを持っている人
テスラのイーロン・マスクのような目標を持って社会を変えていきたいと思っている人です。
一方で、バリュー型は、自分の大事にしたいことや価値観を持っている人

若いうちって、なかなかビジョンなんてないですよね。僕もなかったです。
でも何となく自分の大事にしたいものとかは持っていますよね。
そういう「いい感じでやっていきたい」と思うのです。

ただ何が自分にとって「いい感じ」なのか。
どんな会社で、どんな人と働くのが「いい感じ」なのか。
これを捉えておく必要があると思います。

これはつまり、何に「共感できるか」ということですよね。
共感性が強いところに人は集まって、弱いところは淘汰されていく。
これからは共感でしか人を繋ぎとめられないと思うのです。

 

−私も現在大学生で、たしかに共感できることには興味を持ちますが、共感できないことは初めから関わりを持たないことが多いです。
それに対して上の方から理解されないことが多いので、「いい感じで良い」という入山先生のお言葉に正直驚いています。
ここまで有意義なお話を伺い、これから働く上で重要なことを様々学ばせていただきました。
最後に、若者に向けて一言お願いします!

 

これからは楽しい時代です。
組織にとらわれない個の時代がやってきて、つまらないことはデジタルに任せちゃえば良いんです。

なので、楽しんで生きていく
人間の究極の目標はやはり、健康と幸せですよね。
幸せに感じるのは、やりたいことやって、好きな人と暮らすのが1番じゃないですかね。
今はこれを追究しやすくなっていってる。

これからもっと楽しい時代になると思います!

 

Youtubeで経済ニュースをアカデミックに読み解く!

最後に、今回潜入させていただいた入山教授のYoutube番組を紹介する。

−入山先生は過去にWBS(テレ東のニュース番組)にもご出演されていました。今回はYoutube出演ということで、何か違いはありましたか?

 

とにかく面白かったです!

テレビはどうしても尺の問題があり、話したいこと全てを話すことはできません。
それに比べ、Youtubeはじっくり解説をすることができるので、経営学でどう課題を解決できるのか、見ている方のきっかけになれば良いと考えています。

あとは、やはりたくさん話すことができる分、話し手のキャラが出ますね。
豊島さんも地上波では流せないことばかり言っていましたし、とにかく楽しかったです。

 

『テレ東経済News Academy』は、テレビ東京の総合ニュースサイト「テレ東NEWS」で公開される(隔週配信予定)

日本の経営学の第一人者である入山教授が、アカデミックな視点で経済ニュースに切り込み、徹底的に深掘りをする。
コンテンツは20分ほどだが、内容が非常に濃く見応えのあるものとなっている。
さらに、テレ東の名物報道記者・豊島晋作氏がファシリテーターを務めており、地上波では放送されない突っ込んだやりとりも見逃せない。

12月19日に、第1弾「平成の失われた30年 入山教授が最大の理由に挙げる「経路依存性」とは?」の公開がスタートした。
コロナ流行により、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進むと予測されている。
それに対し、入山教授は「ウソ」と主張。
機能が複雑に絡み合っている現代において、部分的な変革は意味を為さないという「経路依存性」の問題を挙げる。
では企業がDX化を進め、生き残っていくためにはどうしたら良いのか?
ぜひ、視聴して答えを見つけていただきたい。

 

まとめ

今回は、日本の経営学の第一人者である入山教授に、今後求められるイノベーション人材について伺った。

インタビューの内容をまとめる。

インタビューのまとめ

・イノベーションは、既存の知と知の組み合わせから生まれる
・イノベーション人材は、異なる組織間をつなげる「H型人材」
・H型人材になるためには、自分の興味の幅を広げ、とにかく行動する
・H型人材として活躍するためには・・・
  ・他者視点に立ち、相手のメリットを考える   
  ・「助けてあげても良い」と思われる「戦略的いい人」になる
・やりたいことなんて無理に作らなくて良い。共感できるかどうかが選択の基準
・自分の共感性に素直に、幸せを求める

筆者自身、現在大学4年生で来年度から社会人になる。
H型人材としてイノベーションを促すために心がけることがわかったので、今日から実践してみようと思う。

読者の皆さんもぜひ参考にしていただきたい。

 

入山教授のYoutube番組『入山教授の経済News Academy 』もお見逃しなく!

配信はこちらから:「テレ東NEWS」(https://www.youtube.com/c/tvtokyonews

 

画像出典元:テレ東NEWS

下郷るん

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