TOP > インタビュー一覧 > さっぽろ連携中枢都市圏×スタートアップで、ニューノーマル時代のイノベーションを!「Local Innovation Challenge HOKKAIDO」担当者インタビュー
さっぽろ連携中枢都市圏の自治体と、国内外のスタートアップが協働し、地域課題や行政課題の解決に取り組むプロジェクト「Local Innovation Challenge HOKKAIDO」がいよいよスタートした。
近年、先端技術を活用し社会に新たな価値を生み出すスタートアップ企業と地方自治体が協働し、行政そのものや地域の課題を解決するプロジェクトの事例が全国でも見られるようになった。
札幌市では、人口減少・少子高齢化にあっても圏域内の活力を維持し、魅力あるまちづくりを推進することを目的に、2019年3月に関係11市町村とともに「さっぽろ連携中枢都市圏」を形成したが、こうした自治体においてもスタートアップ企業のプロダクトやサービスを活用することで、解決できる課題が多く存在していることが推測できる。
今は新型コロナウイルスの拡大で社会に大きな変化が起きているが、こんな時代だからこそ、この困難をチャンスに変えるイノベーションが生まれることで社会を豊かにできる可能性がある。
そこで、さっぽろ連携中枢都市圏とスタートアップ企業の連携を目指す取り組みをスタートさせた。
自治体や地域・社会問題の解決を共に目指していけるスタートアップ企業を募集している。
このページの目次
今回このプロジェクトに関して、STARTUP CITY SAPPORO事務局札幌市ITイノベーション課・阿部氏と、企画課(さっぽろ連携中枢都市圏担当)・森氏に今の思いを伺った。
STARTUP CITY SAPPORO事務局札幌市ITイノベーション課・阿部さん
ー お二人の業務内容やスタートアップに興味を持たれたきっかけを教えてください。
阿部:私は ITイノベーション課に所属して、今年で4年目になります。最初この部署に来て担当した仕事が、No Mapsというイベントでした。
2016年から始めたイベントで、ITなどの先端テクノロジーや斬新なアイデア、クリエイティブの力を使って札幌からどんどん新しい事業、新しい産業を生み出していこうというイベントです。
NoMapsを担当し、様々な方達と関わっていく中で、スタートアップの技術やアイデアによるまちづくりや、イノベーションによる新しい事業がたくさんあるということを知りました。
また、2010年から株式会社デジタルガレージが行っている「Open Network Lab」というスタートアップを支援するアクセラレータープログラムが2018年から札幌市でも始まり、民間ベースでスタートアップの支援という動きが始まっていく中で、これは札幌市も一緒にやるべきだという思いが私の中で出てきました。
そして、ちょうど2019年から市としてのちゃんとした政策の一つに位置付けて予算取りをしてやっていこうということで、「STARTUP CITY SAPPOROプロジェクト」という名で、 札幌市を中心に取り組みを始めたというのが流れになります。
森:私は札幌市の政策企画部という部署で近隣自治体とタッグを組みながら様々な取り組みを行う、いわゆる広域行政を担当して3年になり、そのなかでも特に、札幌市と近隣11市町村により展開する、連携中枢都市圏構想にメインで関わっています。
その一環として、本プロジェクトにも関わらせていただいています。
写真右 さっぽろ連携中枢都市圏担当・森さん
ー取り組みを開始した背景を教えてください
阿部:スタートアップや支援者とお話しをする中で、私たち行政が持っていないアイディアがたくさんあると感じました。
いわゆるイノベーションの力を使って、世界を変えていくと言う強い思いを持っている方々がいらっしゃいます。そういった方々の力を借りながら、行政が抱えている課題、地域が抱えている課題というのを解決することによって、市民の方とか道民の方に良いサービスができるんじゃないかという思いが出てきました。
札幌市と更に、さっぽろ連携中枢都市圏内の近隣11市町村と組むことによって、札幌市にはない課題が見えてくることにより、もっと普及できる効果があるのではないかという思いを持って、森と一緒に今回事業を始めさせていただきました。
森: さっぽろ連携中枢都市圏における圏域外収支は、2013年時点において、全体としてマイナス約3,500億円となっており圏域としての稼ぐ力が非常に弱いんですよね。
阿部のスタートアップと合わせて新たなイノベーションであったり、産業を誘発したりというところが、圏域が1つの経済圏としてやっていくにあたり、すごく馴染むのではないかというところもあり、始めさせていただきました。
ーどんな思いで取り組んでいますか?
阿部:こういったことをやることによって札幌・北海道でおもしろい取り組みや新しいチャレンジができるのではないかというのを、今回のスタートアップですとか、広く言えば海外のスタートアップも「札幌・北海道は面白そうだぞ、何か新しいことができるんじゃないか」と思っていただくことによって、 札幌・北海道に目を向けて来てくれたらなと思っています。
札幌のまちづくりに関しても、スタートアップの力を借りながら、札幌からイノベーションを起こしていきたいという思いで取り組んでいきたいなと思っています。
森: さっぽろ連携中枢都市圏という圏域でみたとき、20代の人口流出というのはすごく多いんですよね。
道内から札幌に人が集まっていて、そこから首都圏に出て行ってしまう。そこには、なかなか自分の力を活かせない、そういった魅力が北海道には足りないのかなというところがあるのかもしれない。
そういう観点で、阿部がやっているスタートアップの力を借りながら、人を留めるということ以上に札幌市だけではない各市町村や地域の課題もスタートアップの力をお借りして、取り入れて、解決していくというところまでやっていけたらなと思っています。
ー圏域外へ人が出てしまう理由としてはどんなことが考えられますか?
阿部:市内各大学の卒業生のうち、文系の3割、理系の5割が道外へ就職するという統計があります。
私たちが行なっているスタートアップの取り組みの一つに、高校生や大学生に対するアントレプレナーシッププログラムがあります。若い子達が地域の課題を解決するために自分たちで事業を考え、それをもとにこっちで会社を作って一緒にやってくれれば最高です。
また、道外に出ちゃったとしても、北海道に戻りたいって言ってくれる人が多くて、愛着心というのは他の都道府県よりも強いのかなと思っています。
そういった人たちが北海道に戻ってきたいと思った時に、STARTUP CITY SAPPOROという取り組みがその受け皿になれればと思っています。
今回の取り組みにおいても、道外から面白いスタートアップ企業が来てくれて、こっちに拠点を持ってくれたりすることによって、大学卒業後に面白そうな学生の受け皿となってくれる企業が北海道に増えるという循環ができてくれば嬉しいなと思っています。
森:15歳から19歳の人口、すなわち進学する年齢層が、道内から札幌市内にグッと入ってくるんですよ。しかし、その後の20歳から24歳、25歳から29歳別の人口、すなわち就職する年齢層が道外に出てしまうわけですね。
せっかく、たとえば北海道大学などでスキルとか知識だとかを蓄えてもらったのに出て行ってしまう。戻って来てくれればいいですけど、そもそもここの土地で良いことがあるからそのまま残ってみようという考えの人も出てきてもいいと思うんですよね。
そういった観点でスタートアップとより協業できたらなと思っています。
ー他の自治体との違いは何でしょうか。
阿部:今回我々は、札幌市だけではなく周りの連携中枢都市圏の都市と連携して行えることが大きいのかなと思っています。
というのも、札幌は産業構造的に三次産業が多いのですが、少し広がることによって連携中枢都市圏の都市には、たとえば、農業など一次産業を行なっている都市が多くあります。
札幌市だけでは出てこない色々な課題がたくさん出てくることにより、色々なより多くのスタートアップと関係が持てることになりますし、スタートアップの皆さんにとっても、私たち一つの窓口で色々な産業に入り込んでいけるというところが他の都市とは違うのかなと考えています。
森:そもそも、さっぽろ連携中枢都市圏は、札幌市に通勤通学している方が1割以上いるところで基本的に組んでいます。
これは1つの生活圏という見方ができ、その生活をしていくなかで、例えばその各市町村や、もう少し小さい町村とかで札幌市にはない課題とかがある。
札幌に住みながらそのスタートアップの人たちが解決できるとか、そのフィールドが広がっていくというところが、このさっぽろ連携中枢都市圏で取り組みを行っていく1つの意義ではないかと思っています。
ちなみに、圏域のアピールをさせてもらうと、 約260万人の人口で全道の約48%がいるんですよね。その約260万人を対象にしてやっていけるというところが他とは違う魅力につながるのかなと思っています。
ー求めている形はありますか?
阿部:今回募集しているテーマ・課題については、あまりガチガチに縛っているものではありません。
それにより、色々なスタートアップが広い枠組みの中で沢山応募してほしいなという思いがあります。
今回、採択するスタートアップは数社程度になってしまいますが、応募していただいたスタートアップの皆さんと今後も私たちは繋がりを持って面白いことができればなという風に思っています。
ー今回の取り組みついてのゴールは何でしょうか。
阿部:まず私たちとしては、どんなスタートアップに来ていただけるのか、色々なスタートアップと一緒にお話をしたいというのが一番にはあります。
その後、ただの受託委託の関係ではなくて、行政がきちんと並走伴走しながら一緒に課題解決をしていくという形を一緒に作らさせていただいて、最終的にはしっかりとした事業を構築したい。
そして、行政が予算を確保して、社会実装することはもちろん、他の市町村にも横展開していき、多くの方たちによりより良いサービスが広がっていくことかなと考えています。
森: 札幌市で単独でやったとしたら、札幌市内の企業が札幌市内をフィールドとして課題もそこからしか見つけられないということが出てくる可能性があります。
スタートアップが他の市町村にも目を向けていただくことで、スタートアップとしては新たなビジネスフィールドの可能性が出てくるし、各市町村にとっては行政課題なり地域課題の解決ができる可能性が出てくるという点で、ウィンウィンの関係ができればいいなと思っています。
ー今までどのようなスタートアップが札幌から生まれてきていますか?
阿部:Open Network Lab HOKKAIDOが今年で3年目になるんですけど、去年までの2年間で10社のスタートアップが卒業しています。
AI 技術を活用したサービスなどIT系やコンテンツ系のスタートアップが札幌市では多く、北海道に広げると、 農業やハンターなど、一次産業系のスタートアップも生まれてきています。
最近では、大樹町を中心に、宇宙産業が盛り上がりを見せており、 宇宙系のスタートアップも生まれつつあります。
ー今後札幌市をどのような都市にしていきたいですか?
阿部:行政はスタートアップみたいに、イノベーションや新しいことをやることに関して、中々受け入れてくれないのではないかという印象を持たれている方が多いのかなと思うんですけど、札幌市はそうではないんですよと思われる都市にしていきたいです。
スタートアップの皆さんと協働することによって、みんなが住みよい新しいサービスが社会実装されたり、行政サービスも良くなったり、 そういうことにより、市民の方々も生活しやすい街になると思っています。
そうすることによって、スタートアップの皆さんももちろんですけど、クリエイターの方ですとかエンジニアの方ですとか研究者とか、面白い方々が集まってくるのかなと思っているので、受け皿を広くしていきたい。
多様なたちが集まることによって、常に札幌や北海道では面白いことが起きているというような都市にしていきたいなと思っています。
森:今回のスタートアップの取り組みもそうですが、今までは、札幌市や小樽市、千歳市といった、行政区域だけでやってきた取り組みというのが、連携中枢都市圏という1つの生活圏なり経済圏なりができたことにより、各市町村の強みないしは特徴とか、さらには弱い部分さえも上手く活用しながらお互いの個性を尊重しつつ、生活圏・経済圏の垣根をなくしていけるようなまちになったらいいなと思っています。
ースタートアップに対して届けたいメッセージがあればお願いします
阿部:日本の国土の22%を占める広大な土地を持つ北海道で、一緒にチャレンジしましょう。
ご応募いただければ、私どもも積極的にお話しさせていただきますのでお気軽にご応募ください。 一緒にチャレンジしましょうと皆様にお伝えしたいです。
森:さっぽろ連携中枢都市圏には、バラエティに富んだ表情を持つ12の顔があるんだよというところはぜひアピールしたいなと思います。
札幌市だけで取り組んでいるわけではなく、札幌市も含めた12市町村がタッグを組んでいるんだと。
この圏域の将来像である「『住みたくなる』『投資したくなる』、『選ばれる』さっぽろ圏域」のとおり、皆様にぜひ、この「さっぽろ圏域」を選んでいただけたら嬉しいです。
ー最後にスタートアップ支援でやっていきたいことはなんですか?
阿部:スタートアップの人に行政としてどんなことをお手伝いさせてもらったらいいのかという話をしているんですけど、補助金とか助成とかももちろん大事なことですが、一緒に寄り添ってもらって、困りごとを一緒に考えたり、関係する企業や行政に一緒に回ったりということをしてほしいというお話がありました。
スタートアップの隣に寄り添って、一緒に皆さんの成長を支援していきたいなと思っています。
ーありがとうございました。
共通テーマ(連携中枢都市圏全体の課題)もしくは各自治体ごとの課題をご確認いただき、解決策をご提案ください。
エントリー後、順次、事務局にて審査を行います。審査を通過された方には面談にて取り組みの詳細をお伺いします。
自治体とのマッチングが成立しましたら、いよいよ実証実験開始です。実験期間中は事務局がハンズオンで実施をフォローいたします。
実証実験での成果をまとめ、自治体、事務局と次年度以降のサービス導入や実験の継続について確認します。
実証実験が終了していない場合は、引き続きサポートいたします。
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