東京証券取引所を有し、古くから金融の街として知られる兜町・茅場町。
しかしインターネットの発達により、現在では多くの証券会社が街から移転してしまっている。
そんな中、兜町・茅場町エリアの復活に燃えているのが平和不動産だ。
ベンチャー企業支援にも取り組んでおり、FinGATE等のワーキングスペースを開発した。
なぜ兜町・茅場町に力を入れているのか、開発推進部、主任の荒大樹さんに取材した。
プロフィール
荒 大樹
ー早速ですが、なぜ兜町・茅場町の再開発に力を入れているのでしょうか。
兜町・茅場町は東京取引証券所や、多くの証券会社が存在する金融の街でした。
しかし、証券取引の電子化が進んだことで、多くの企業が街から移転し、賑わいが減ってきてしまったというのが課題です。
現在、東京都は、兜町地区から大手町地区を活用し、東京をアジアナンバーワンの金融都市にすることを目的とした、「国際金融都市・東京」構想に力を入れています。
当社は、兜町・茅場町エリアの再活性化を通じて、本構想の一翼を担っていきたいと考えております。
▲「国際金融都市・東京」構想の図。兜町・茅場町を含めた金融拠点が連携を組む。
(出典:平和不動産サイト)
兜町・茅場町の再活性化プロジェクトのコンセプトは、「人が集い、投資と成長がうまれる街づくり」です。
その具体的な施策のひとつとして、「資産運用を中心とした金融系ベンチャー企業の起業・発展への貢献」を推進しており、現在、本エリアに金融系ベンチャー企業の誘致を進めております。
本エリアは、スタートアップのオフィス環境として利点があります。
1つめは、スタートアップに人気な渋谷や大手町、六本木等のエリアと比較して、オフィス賃料が相対的に手ごろであるということです。
数名規模で入居も可能な中小規模物件も多い本エリアは、スタートアップにとって、大きなメリットになります。
2つめは、交通アクセスにも恵まれていることです。
地下鉄5路線を利用できるほか、東京駅まではタクシーで5分、羽田空港、成田空港までも1本で行け、大企業や金融機関が多く入居する大手町エリアにも近いこのエリアは、スタートアップ、特にFintech等の金融系ベンチャー企業にとって、適したオフィス立地であると考えております。
ーなぜそこまで金融に特化しているのでしょうか。
大手金融機関や金融関連団体が、近隣の大手町・日本橋エリアに集積しているほか、日本のマーケットの中心である東京証券取引所や、証券関連団体が本エリアに拠点を構えるなど、金融関連事業者が集中しているエリアであること。
また、当社が、全国の証券取引所の不動産を保有・運営している不動産会社であり、証券・金融関連団体と長年にわたって交流してきたネットワークを保有している強みがあることなどが、その理由となります。
当社は上記メリットを活用し、ほかの地域との連携を図りながら、資産運用を中心とした金融系ベンチャー企業の発展に貢献していきたいと考えております。
現在、国内で資産運用会社を立ち上げるには、いくつかの参入障壁があります。
業規制の複雑さや、税率の高さに加え、コンプライアンス・リスク管理業務、財産管理・報告書作成・文章管理・データ管理などのミドルバックオフィス業務に精通した人材の少なさや、これら業務の外部委託時のコスト高などです。
このような課題を解決し、資産運用ビジネスの参入障壁を下げることで、国内外から優れた運用者や高度金融人材を呼び込むことは、国内の運用手段の多様化や運用パフォーマンスの向上に寄与するものと考えており、上記課題解決にテクノロジーの力を持ってチャレンジするようなFintech企業や、新たな資産運用ビジネスのプレイヤーの起業・成長支援等を、本エリアの開発を通じて行っていきたいと考えております。
▲FinGATE KAYABA。モダンで落ち着いた雰囲気だ。
ー平和不動産ではFinGATEというスタートアップ向けのワーキングスペースも運営していますよね。今、どのくらいの企業が利用しているのでしょうか?
現在FinGATEは3施設あり、計31区画あるのですが、約30社が利用しています。
ベンチャーだけでなく(一社)FinTech協会、(一社)東京国際金融機構などの業界団体も利用しています。
入居希望社も多く、本年4月には新規施設を整備予定です。
ー区画とおっしゃっていますが、会社ごとに個室があるのはあまりない設計ですね。
コワーキングスペース等のようなオープンな場は、交流を促すには適していますが、本施設は金融事業者向けということもあって、セキュリティに配慮した個室が中心となります。
ーKABUTO ONEという高層ビルも建設していますが、こちらはどのような場所なのでしょうか。
中~上層階は、一般的なオフィス床、低層階は、金融貢献事業として500名規模のホールや、ライブラリーラウンジなどを整備し、この街を訪れる投資家と企業が対話・交流できる場を提供いたします。
ーオフィス運営以外に行っているベンチャー支援事業はありますか?
オフィス等のインフラ提供以外には、「ビジネスマッチング支援」「ミドルバックサポートサービス」を行っております。
ビジネスマッチング支援に関しては、人やコミュニティの紹介が主たるものになります。
例えば、FinGATE KAYABAのイベントスペースは月20回程度の稼働をしておりますが、その大半は、Fintechや資産運用、エンジニア、スタートアップ等に関連するイベントになっております。
これらのイベントは、当社が企業やコミュニティの勉強会・ミートアップ・セミナーなどの活動に対し、協賛という形でイベントスペースを提供することで開催されており、入居しているスタートアップ企業の方々は本イベントに参加することが可能です。
他には、入居企業の成長に貢献するという意味で、三菱UFJ銀行のアクセラレータプログラムの運営拠点を、2017年に兜町に誘致しております。
実際、FinGATE入居企業のうち数社は、本プログラムに参加するなどしており、街としてスタートアップの成長に貢献できているのではと考えております。
本施設は、2019年12月に施設拡張のうえ、オープンイノベーション拠点「MUFG SPARK」としてリニューアルオープンしており、兜町・茅場町エリアで更にイノベーションが生まれることを期待しております。
ミドルバックサポートサービスに関しては、当社が、資産運用会社やスタートアップ企業の運営に必要なミドルバックサービスを提供する企業とアライアンスを組むことで、FinGATEの入居企業は、割安で提携先企業のサービスを利用できる仕組みを提供しております。
ー最終的な目標を教えてください。
兜町・茅場町エリアをブランド化していきたいです。
「金11融・証券の街」と言われた昔とは違い、現在、兜町・茅場町エリアに確固たるイメージを持たれている方は少ないと思います。
これを「兜町・茅場町といえば「資産運用、Fintech」などと思ってもらえるような街にしたいですね。
そのためにも、もっと街に人を呼び込んでいきたいと考えています。
今のFinGATEには30社ほどが入居されていますが、これを50社、100社と伸ばしていきたいです。
切磋琢磨できる人が集い、情報共有できるようなコミュニティが生まれることで、人が集い、更に情報が集まっていく。
そのような循環を作ることによって、この街で金融エコシステムを形成していきたいですね。
山口出身。一橋大学商学部に所属。記者・インタビュアーを目指している。
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