ハインリッヒの法則とは?災害防止の活用例、ヒヤリ・ハット事例を紹介

ハインリッヒの法則とは?災害防止の活用例、ヒヤリ・ハット事例を紹介

記事更新日: 2020/07/03

執筆: 編集部

「ハインリッヒの法則」とは、労働災害の安全対策、災害防止対策を説明する際によく持ち出される法則です。

別名「ヒヤリ・ハットの法則」ともいわれます。

では、ハインリッヒの法則とは一体どういったものなのでしょうか。ヒヤリ・ハットの事例とともに、その内容の詳細と、どのように広まったのか、ハインリッヒの法則を元に日本で行われている災害防止活動についても解説します。

また、労働災害に関する研究であるバードの法則や、甚大な事故を未然に防ぐドミノ理論も紹介していきます。

ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)とは?

ハインリッヒの法則は、よく「1:29:300の法則」ともいわれます。

ハインリッヒの法則は、アメリカのハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが論文で提唱した法則です。

どのような内容なのでしょうか。

ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが提唱

ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒは、アメリカの損害保険会社で技術・調査部の副部長をしていました。

安全技師であった彼が論文で発表した法則が、彼の名前をとってハインリッヒの法則といわれているものです。

彼によると

「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件の重い災害があったとすると、29回の軽傷があり、ケガや傷害のない事故が300回起きている」

というものです。

このことから別名「1:29:300の法則」と言われたりするのです。

もちろん、この事故の比率については、職業によって違うともハインリッヒはいいます。

建設現場にいる作業員と会社の中にいる事務員では、危険度も傷害にあう確率も違います。

ですが、この法則は、重大な事故が起きる前には、軽傷の事故が起きており、軽傷な事故の前にはケガや傷害のない事故が起きているという法則を言うもので、現在でも労働安全対策の場では常に持ち出される法則なのです。

ヒヤリ・ハットの法則

ハインリッヒの法則によると、1回の重い災害の前に29回の軽傷があり、29回の軽傷の前にケガや傷害のない事故が300回起きている、とされています。

ケガや傷害のない300回の事故は、「ヒヤリ」としたり「ハッと」したりするような事故を指します。

このことからハインリッヒの法則を別名「ヒヤリ・ハットの法則」と言ったりもします。

ヒヤリ・ハットの法則は安全対策や災害対策の教科書では常に登場するぐらい有名ですので、こちらの名称を聞いたことがあるという方も多いかもしれません。

安全対策においては、ヒヤリ・ハット等の事例や情報をできるだけ多く把握し、その対応策を講ずることが必要であるとされているのです。

不安全行動と不安全状態

ハインリッヒによると、ヒヤリ・ハットする事例の背景にはさらに多くの「不安全行動」と「不安全状態」が存在するといいます。

不安全行動

不安全行動とは、労働者本人や関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的にすることをいいます。

たとえば、「これくらい大丈夫だろう」という思いから面倒な安全対策をしなかったりする行動があげられます。

また「長年の経験があるから大丈夫」という思いから危険な行動をしてしまうこともあります。

不安全状態

不安全状態とは、物や機械の状態が、事故が発生しうる状態になっていることをいいます。

ハインリッヒによると、人間の不安全行動や物や機械の不安全状態こそが事故や災害に繋がるので、不安全行動や不安全状態をなくせば、事故や災害もなくせるとしています。

ハインリッヒの法則はどのように広まったのか?

現在では世界中で知られるハインリッヒの法則ですが、どのような形で広まったのでしょうか。

災害防止のバイブルとして

ハインリッヒの法則は、1930年に発表されました。

その後、ハインリッヒの法則は「災害防止のバイブル」として様々な論文や著作で引用されていき、世間に広まっていきます。

ハインリッヒの法則は、別名に「1:29:300の法則」や「ヒヤリ・ハットの法則」という分かりやすく一般にも受け入れられやすい名称があり、これも世界中へ広まっていくのに役に立っています。

日本での広がり

ハインリッヒの法則は、日本国内でも邦訳が紹介され広まることになります。

1951年に、三村起一監修『災害防止の科学的研究』日本安全衛生協会、1956年に、ハインリッヒ研究会編訳『ハインリッヒの事故防止』として、ハインリッヒの著作が邦訳されています。

また、ヒヤリ・ハットの事例は、厚生労働省の安全対策事例にも取り入れられることで、労働災害の現場や安全対策等の教科書でもよく活用されるようになります。

日本では、今やハインリッヒの法則というより、「ヒヤリ・ハット」という言葉の方が有名になっています。

ハインリッヒの法則による「災害の防止」とは?

では、実際にはハインリッヒの法則を用いてどのような災害防止対策が取られているのでしょうか。

ヒヤリ・ハット活動

ヒヤリ・ハット活動は、業務中や作業中にヒヤリとしたりハッとしたりしたことを報告する活動です。

会社で、従業員からヒヤリ・ハットした事例を報告する制度を設けることで、災害が発生する前に対策を打つことができます。

ヒヤリ・ハットの事例として、次のような報告があげられています。

・大型トラックのパワーゲートから落ちそうになった

・フォークリフトで工場内中2階にダンボール箱を荷上げする作業の際に落ちそうになった

・電源スイッチを切り忘れた状況で小型アーク溶接機の端子部に触れようとした

・狭い道でトラックの後退を誘導中、電柱との間に挟まれそうになった

・冷蔵庫内で運搬作業中、床に堆積していた霜で滑り転倒しそうになった

ヒヤリ・ハットの事例の報告があった場合、なぜそのような状況になったのかを考え、取れる対策を取っていきます。

そうすることでその先にある大きな災害を防ぐことができるのです。

危険予知活動

危険予知活動とは、作業前にその現場や作業にどのような危険が潜んでいるのか、その危険によりどのような災害が発生しそうなのかをあらかじめ話し合いをする活動です。

事前にその作業で予見できる危険について話し合いを行うことで、危険に対する意識が高まり災害を防止しようとするものです。

たとえば、脚立を使って窓ふきを行う作業をするとします。

では、そこにはどのような危険が潜んでいるのでしょうか。また、その危険からどのような災害が予見できるでしょうか。

1. 脚立から離れた窓を拭こうと身を乗り出した際に脚立がぐらついてよろけて落ちる

2. 脚立から降りる際に、地面においてあるバケツに足を引っ掛けて転ぶ

危険予知活動をしておくことで、未然に危険を察知することができ、災害を防ぐことができます。

安全当番制度

安全当番制度とは、職場内の安全パトロールや安全ミーティングの進行役を、決まった人だけがやるのではなく、当番制にして全従業員に担当させる制度です。

自らが安全パトロール役になったり、安全ミーティングの進行役になることで、安全に対する意識が高まり、危険な行動を避けるようになります。

また、自分自身の意識が高まることにより他者への危険も気づきやすくなります。

安全当番制度は、従業員自身の安全意識を高める制度なのです。

これまでに発生したヒヤリ・ハットの事例

ヒヤリ・ハットは、作業現場では常に起きている現象です。

では、これまでにどのようなヒヤリ・ハットが発生したのでしょうか。

厚生労働省の職場のあんぜんサイトでは、たくさんの事例が紹介されています。

ここではその中からいくつかの事例を紹介します。

墜落、転落の事例

〇2階の窓から冷蔵庫を吊り下ろしていたところ、窓の柵が外れて墜落しそうになった

〇トラック荷台上で鋼材に掛けていたシートを剥がす作業中、雨で濡れた鋼材の上で足が滑り転倒しそうになった

〇暗がりの中で写真撮影のため後ろに下がった時、階段に気づかず転落しそうになった

〇剪定作業中安全帯を掛け替えた時、枝が折れ墜落しそうになった

〇庭木の剪定作業中、脚立の足が滑り脚立から落ちそうになった

〇足場の組立工事で足場上を歩行中、足場板のツメが破損して板が傾き、バランスを崩して転落しそうになった

〇作業台清掃中、水のホースが躍ってバランスを崩し、踏み台から落ちそうになった

〇台車上での作業中、台車から踏み台代わりにしていた作業用椅子に降りようとしたところ、踏み台が不安定で転落しそうになった

〇脚立に乗ってレンチでボルトの増し締めをしている時、レンチが外れてバランスを崩し、脚立から転落しそうになった

〇生コン車のホッパー部分を清掃中、足を滑らせステップから転落しそうになった

 

飛来、落下の事例

〇丸太杭の打ち込み作業中、大ハンマーを振り下ろした時に大ハンマーの頭部が抜けて飛んでぶつかりそうになった

〇バックホーでコンクリート製U字溝を吊り上げて動かした時、既に移動したU字溝に接触し、近くにいた作業員の足元に落下した

〇鋼材の吊上げ作業において、吊上げた鋼材のバランスが悪く、マグネットから外れて落ちそうになった

〇ガウジング飛沫が他の作業者の顔に当たりそうになった

〇グラインダーで鋼板の面取りを行おうとしたところ、鋼板が足元へ落下した

〇ボール盤で加工中、「キリ粉」が飛散し眼に入りそうになる

〇ホイール・ローダーのタイヤによる石はね

〇2階足場から1階通路への工具類の落下

〇二階から工具を落とし、下の作業者に当たりそうになった

〇ホワイトボードが足元に落下

 

はさまれ、巻き込まれ

〇サスペンションを上げた状態のトラックの下で作業中、車両の電源を入れたため、サスペンションと床面にはさまれかけた

〇フォークリフトのフォーク(爪)の幅を変更している時、フォークが急に下降し、地面との間に手をはさみそうになった

〇ボール盤での穴あけ作業中、手袋が巻き込まれそうになった

〇樹脂の混練作業中、ゴム手袋をはめた状態で手を樹脂混練機の投入口に入れ、スクリューに巻き込まれそうになった

〇作業員二人でクレーンを用いてケーシングの吊上げ作業中、吊上げ開始のタイミングが合わず、手の指をはさまれそうになった

〇樹脂粉末のプレス成型作業で、プレスが下降中にプレス台に手を入れて、はさまれそうになった

〇製麺機の清掃中、カット箇所に指が挟まれそうになった

〇箱詰機を使用中、詰まった製品を取り除こうとしたところ、手が挟まれそうになった

〇マンホールの蓋を持ち上げようとしたところ、地面と蓋の間に指をはさみそうになった

〇インパクトドライバーを使用中、手袋をはめた手がドリルに巻き込まれそうになった

 

労働災害に関する研究:バードの法則

よくハインリッヒの法則と対比して用いられる法則にバードの法則があります。

バードの法則は、どのようなものなのでしょうか。また、ハインリッヒの法則とはどこが違うのでしょうか。

バードの法則は、1:10:30:600

バードの法則は、「Frank E.Bird Jr.」による分析結果から導き出された法則です。

バードは、アメリカの21業種297社175万件のデータを分析しました。

そこから導き出されたのは、ニアミスが600、物損事故が30、軽傷事故が10、重大事故が1、の比が成り立つということです。

この比率が「1:10:30:600」です。

バードの法則では、ヒヤリ・ハットの事故は600になります。

ただし、その前の30についても人体に傷害のない物損事故ですので、ヒヤリ・ハットと言えるかもしれません。

あわせた630件の事故が危険要因で、原因と背後にある状況を分析把握し、対策につなげていくことが、バードの法則では重要とされています。

甚大な事故を未然に防ぐ:ドミノ理論

事故を未然に防ぐ理論としてドミノ理論があります。

どのような理論なのでしょうか。またハインリッヒの法則とはどのような関係を持つのでしょうか。

ドミノ理論とは

ドミノ理論は、冷戦時代のアメリカの外交指導者が考えた理論です。

「ある一国が共産主義化すればドミノのように隣接する国々も共産主義化する」という理論です。

これを一般化すると「一度ある事件が起これば、次々と連鎖的にある事件が起こる」ということになります。

そこからAが起こればBが起こり、Bが起こればCが起こるという連鎖する理論にドミノ理論がよく使われるようになりました。

ハインリッヒの法則とドミノ理論

ハインリッヒの法則は、1の重大事故の前には、29の軽微な事故があり、29の軽微な事故の前には、ヒヤリ・ハットの事故が300あるという法則です。

ドミノ理論は、連鎖していく理論です。

ハインリッヒの法則にドミノ理論を取り入れることで、前の段階で連鎖を止めることで事故災害が防げるという事故防止対策としての考え方がドミノ理論です。

まとめ

ハインリッヒの法則は、労働災害を防ぐための大切な考え方です。

ハインリッヒの法則以外にもバードの法則など、比率については、様々な説が新たに登場しています。

ですが、その根本にある考え方は重要で、重大な事故はその前段階にあるヒヤリ・ハットから来ているということです。

いかにヒヤリ・ハットがあったときに報告や対策をしておくのか、このあたりが重大な事故を防ぐためにも大切なことになるのです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

画像出典元:Pixabay

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