株主名簿管理人とは、どのような意味なのでしょうか。また、名義書換代理人とはどのような違いがあるのでしょうか。
株主名簿管理人の用語解説とその役割、株主名簿管理人を設置する場合の手順について解説します。
このページの目次
「株主名簿管理人」について、ここでは用語についての解説や「名義書換代理人」との違いなどについて見ていきましょう。
株主名簿管理人とは、会社法という法律が定義している法律用語になります。
会社法123条では、株主名簿管理人について、「株式会社に代わって株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者をいう」と定義しています。
株式会社は、株式を発行します。株主はその発行された株式を購入することで、株式会社に対する出資者としての地位と権利を取得します。
株主の権利としては、配当金を受け取る権利や株主総会における議決権を行使する権利などがあります。
株主の権利は、株式会社という法人を運営する上で極めて重要な部分になりますので、株主が誰なのかを常に確定させておく必要があります。
そのため、会社法では、株式会社は株主名簿を作成しなければならず(121条)、株主名簿を本店に備え置かなければならない(125条)と定めています。
この株主名簿の作成や管理、備え置きなどの事務行為は、会社自身が行う場合もあるのですが、この事務行為を委託することもでき、事務行為を委託された者を株主名簿管理人というのです。
「株主名簿管理人」という言葉と同じような意味を持つ言葉として「名義書換代理人」という言葉があります。
この2つの言葉の違いはどこにあるのでしょうか。
名義書換代理人も、法律用語です。
名義書換代理人は、旧商法に定められた制度で、株式の名義書換に関する代理人のことをいいます。
旧商法は、株式会社などについての規定もあったのですが、平成18年4月に新たに会社法が施行され、旧商法のうち会社編の部分がごっそり新会社法として適用されることになりました。
この法律改正に伴い、旧商法で「名義書換代理人」とされていた用語は「株主名簿管理人」に置き換えられたのです。
ですので、実務的には、株主名簿管理人と名義書換代理人とは、同じ意味でとらえておいてほぼ間違いはありません。
株主名簿管理人を置く場合、定款でその旨定める必要があります。
ですが、旧商法がまだ適用されている頃に作られた古い定款の場合、株主名簿管理人ではなく名義書換代理人と定款に記載され、そのまま変更されずに記載存続している場合があります。
この場合は、どのようにすればいいのでしょうか。
会社法が施行されるとき、旧商法をはじめとして、有限会社に関する法律など、さまざまな法律を一体化させました。
それらの法律を一体化させるにあたっての各種法律の整備に関する法律も定められ、この法律を「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(整備法)といいます。
整備法(80条)によると、株式会社の定款に「名義書換代理人を置く」旨の定めがある場合は、「株主名簿管理人を置く」旨の定めがあるものとみなす、とされていますし、株式会社が「現に置いている名義書換代理人」は、新会社法施行日以後は、「株式会社が委託した株主名簿管理人」とみなす、としています。
もし古い定款で名義書換代理人と記載されている場合は、株主名簿管理人と同じ意味として取り扱って問題ありませんし、定款を変更する場合は、新たな会社法にのっとり名義書換代理人は株主名簿管理人に用語変更をしておくといいでしょう。
株主名簿管理人には、どのような役割があるのでしょうか。
また、株主名簿管理人が必要な会社とそうでない会社にはどのような違いがあるのでしょうか。
株主名簿管理人は、株式会社に代わって株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者のことです。
通常、会社は、自社の株主名簿について管理していなければなりません。
誰が株主なのかを確定させるために株主名簿を作成しなければなりませんし、株主名簿を備え置かなければなりません。
株式会社の株券が譲渡された場合、株主が交代することになります。
新しい株主は、株券の譲渡があったことを第三者に証明するためには、自身の氏名、住所を株主名簿に記載されている必要があります。
ですので、株式会社は、新たな株主から株主名簿に記載する旨の請求があった場合は、株主名簿に新たな株主を記載する義務があります。
株式に関する事務には、株主名簿の作成や備え置きのほかにも、株主交代による株主名義の変更などがあります。
株式会社は、これらの株主名簿に関する事務を代行業者に委託することが可能で、委託される者が株主名簿管理人となるのです。
なお、株式会社が株主名簿管理人を定める場合は、必ずその旨定款に定めておく必要があります。
株式会社には、株式を公開している公開会社(上場会社)と株式が非公開になっている非公開会社(非上場会社)とがあります。
公開会社の場合、株式は上場され、証券取引所において自由に売買されます。
そのため、株主も頻繁に変わることになり、名義変更や株主名簿の変更作業も頻繁に生じることになります。
ですので、株式公開会社は、証券取引所の規定によって、株主名簿管理人を選任し株主名簿に関する事務作業を委託することが義務付けられているのです。
非公開の株式会社の場合、株主は経営者やその親族、近親者であることが多く、またそれほど頻繁に株式譲渡がされるわけではありません。
ですので、株主名簿に関する事務作業も頻繁に生じるわけではありませんので、株主名簿管理人を置かず、自社内で事務作業をしているところも多くあります。
特に中小零細企業など、上場を視野に入れているわけではない会社の場合、株式が譲渡されること自体がまれなことですので、株主名簿も何年も同じであることが多く、株主名簿管理人を定める必要すらないというところも多くあります。
ただし、もし上場を視野に入れてということになりますと、株主名簿管理人も含めて、定款を整備していくところから始めていく必要があります。
実際に株主名簿管理人を設置する場合、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。
株主名簿管理人を設置する場合、まず定款を確認し、株主名簿管理人を設置することができる状態になっているかを確認します。
定款には、株式の譲渡制限に関する規定や株式名簿管理人に委託する規定などがあり、そこに変更や追加が必要かを確認します。
株式に譲渡制限があると株式を自由に譲渡することができません。
また、株主名簿管理人の設置に関する旨の定めがないと株主名簿管理人を設置することができません。
ですので、まずは定款を確認し、変更、追加などの必要な箇所を確認し、株主名簿管理人を設置できる定款内容に変更します。
株主名簿管理人を設置するためには、株主名簿管理人に該当する株式事務代行機関と契約を締結する必要があります。
株式事務代行機関が株主名簿管理人となり、以降の株主名簿に関する事務を代行してくれます。
場合によっては、定款の変更などのサポートもしてくれるでしょう。
上場を目指す会社の場合は、上場する証券取引所が承認している株式事務代行機関と契約する必要がありますので、どの株式事務代行機関が承認されているのか証券取引所にあらかじめ確認しておく必要があります。
株式名簿管理人には、信託銀行や証券代行会社などがありますが、どのような機関が株主名簿管理人となれるのでしょうか。
株式名簿管理人は、株式の事務に関する代行機関になるのですが、この機関には信託銀行や証券代行会社などが該当します。
上場会社の場合、上場を申請する段階で、株式事務代行機関を設置することが義務付けられています。
また、株式事務代行機関は、証券取引所が承認している機関である必要があり、その株式事務代行機関と委託契約している、または株式事務を受託する旨の内諾を得ている必要があります。
株式事務代行機関は、株主名簿作成、議決権や配当などの株主に付与される各種の権利の処理の事務を代行します。
現在、東京証券取引所が承認している株式事務代行機関は以下の4つになります。(2017年4月1日現在)
・信託銀行
・東京証券代行株式会社
・日本証券代行株式会社
・株式会社アイ・アールジャパン
株主名簿管理人は、株主名簿に関する事務を代行しています。
ですので、配当金の振り込みに関することや、株式の取得日など、株主名簿管理人に確認の必要が生じることがあります。
また、株主名簿管理人に株式に関する証明書の発行を依頼する必要がある場合があります。
このようなとき、株主名簿管理人はどのように確認するのでしょうか。
会社四季報は、上場会社に関する基本情報や株価データが掲載されているハンドブックです。
会社四季報で、株式事務代行機関を確認することができ、この株式事務代行機関が株主名簿管理人に該当します。
株式を購入する証券会社でも株主名簿管理人を確認することができます。
直接証券会社に問い合わせてもいいでしょうし、サイトから確認することができるようになっている証券会社もあります。
自身が取引している証券会社があるのであれば、まずはそこから株主名簿管理人が確認できるかどうか確認してみましょう。
株主名簿管理人について、記載してきました。
株主名簿管理人は、法律で定義された法律用語です。
また、上場会社では、株主名簿に関する事務作業を代行する機関として株式事務代行機関を設置しており、この株式事務代行機関が会社法で言う株主名簿管理人に該当することになります。
株主名簿管理人と同じ意味を持つ言葉に名義書換代理人という言葉がありますが、こちらも同じく法律用語で、古い時代の商法で定義されている言葉で、現在では株主名簿管理人が一般的に使われています。
画像出典元:Pixabay
取締役会を設置するときの手順と変更登記手続きを徹底解説!
一人会社の株主総会は省略できる?議事録のひな形を紹介!
株主総会は何株から参加できる?参加条件から楽しみ方まで詳しく紹介
株主総会で人気のお土産を紹介!参加方法と今後の動向も考察
株主総会における委任状|意義や取り扱いを解説【例文のひな型付き】
取締役会で何を決める?決議事項と決議方法、注意点を詳しく解説
【入門者向け】株主総会とはどういうもの?分かりやすく1から解説!
株主総会を開催する際の決議事項とその種類、決議方法まで徹底解説!
株主総会の招集通知はいつ・どのように送る?必須事項を徹底解説
株主総会の特別決議とは?要件や決議内容、普通決議との違いを解説