あなたが労働者の場合、仕事中に怪我をしてしまったり病気になってしまった時どうしますか?
その治療費や入院費などを自分で負担するのはちょっと待ってください!
雇用されている労働者ならこんな時、労災保険を利用できます。
今回は労災保険とはどのようなものか解説し、その種類や給付額、更に注意点などを解説していきます!
このページの目次
労災保険とは、社会保険制度の1つです。国民健康保険等で誰でもご存じの医療保険や介護保険などと並ぶ社会保険の一種になります。
事業者が人を雇う場合にはまず『労働保険』に入る義務があります。『労働保険』とは、<雇用保険>と<労災保険>の2つです。
雇用保険の場合には、時間給で働くパートタイマーや一定時間内で働くアルバイト以外、つまり正社員等の従業員を会社(事業主)は加入させなくてはなりません。
これに対して労災保険の場合には、パートタイマー、アルバイトを含む労働者(従業員)全員を加入させる義務が会社(事業者)にはあるのです。
労災保険の正式名称は『労働者災害補償保険』です。
就業時間内や通勤途上での事故や災害で負ってしまった怪我や、仕事が原因となってしまった疾病のこと。
労災保険はこのような労災に遭遇してしまった労働者への補償を行います。
労働保険における保険料の負担は、雇用保険では会社と労働者の労使双方が負担します。そのためサラリーマンであれば、毎月の給与明細で失業保険料を含む雇用保険料が天引きされています。
一方、労災保険における保険料は全額会社側(事業主側)が負担する義務があります。
ですから雇用されている労働者側は保険料を支払う必要はありません。
正社員でなく非正規雇用、アルバイトであっても雇用する側である会社(事業主)は必ず労災保険に加入しなくてはならないのです。
労災保険は雇用される側である労働者が加入するものではありません。ざっくり言えば労働者の意思で労災保険に加入するor加入しないを決められる種類の保険ではないということです。
労災保険は正規雇用・非正規雇用に関係なく、その事業所(会社)に雇われている労働者全員に適用される保険です。例えひとりでも労働者を雇っている会社(事業所)は労災保険の適用事業所となります。
労災保険の場合、加入しなければならないのは補償を受ける労働者ではなく労働者を雇用している事業所(会社)ということです。どのような形態の労働者であれ雇用している事業所(会社)は、強制的に労災保険に加入し既定の保険料を支払う義務があります。
ただし以下の事業の場合には、例外的に労災保険適用外となります。
結論から言えば、労災保険には労働者(従業員)の加入に関する要件は存在しません。
つまり雇用形態に関係なく、正社員から派遣労働者、アルバイトに至るまであらゆる雇用されている労働者は全員が労災保険の適用を受ける対象となるわけです。
例え短期のアルバイトや日雇い労働者であったとしても、仕事中や通勤途中に災害に遭って怪我など負った場合には労災保険の適用対象になります。
労災保険の補償内容を分ける区分としては、その労働災害の原因や事由によって大きく2つに分けられます。
労災の主なものとして業務上災害があります。業務上災害とは『業務起因性を持つ災害によって負傷もしくは死亡したり疾病にかかること』です。
つまり仕事が原因となって怪我や病気が引き起こされたり、死亡に繋がった場合の労災はこの業務上災害となります。
仕事中に発生する業務上災害以外の労災として、通勤災害があります。通勤災害は、労働者が会社(事業所)と自宅の通勤の行き帰りに災害に遭遇。怪我を負ったりそれがもとで疾病に罹ったりするケースです。
ただし、通勤災害には細かい基準が定められており原則としてストレートな通勤経路から逸れた行動中の災害は、労災として認定されないこともあります。
例を挙げると、会社の帰りに定期を使っている自宅最寄りの駅ではなく、ルートから外れた駅で降りてショッピング中に災害に遭い怪我を負った場合など。このようなケースでは通勤災害としての適用は難しくなります。
労災保険は、労働災害全般に渡ってキメ細かいケアの補償が用意されています。
などが主な補償内容として挙げられます。
労災保険の種類は大まかに分けると、以下の図表のようになります。
業務上災害または通勤災害による怪我や疾病の治療費、療養費が給付されます。
原則的には労災病院や労災指定医療機関での現物給付となります。
業務上災害もしくは通勤災害による怪我や疾病が治った時、身体に一定の障害が残ってしまった場合に給付されます。
障害の程度によって第1級~第14級まで等級が分かれ、それに応じて給付額も異なってきます。
第1級~第7級までは「障害補償年金」が給付され、第8級~第14級までは「障害補償一時金」が給付されます。
業務上災害または通勤災害による怪我や疾病のおかげで働くことができず、労働対価としての賃金が受けられない時に給付されます。
休業4日目から給付が開始されます。
労災に遭遇して怪我をしたり疾病にかかった労働者が死亡した際に、遺族に対して給付されます。
『遺族補償年金』と『遺族補償一時金』の2種類があります。
業務上災害や通勤災害による怪我や疾病の治療(療養)を開始して1年6か月が経過しても怪我や病気が治っていない、もしくは障害の等級に該当するケースで給付されます。
障害の等級は1級から3級まであり、それぞれの等級に応じて算定基礎日額×日数の金額が給付されるのです。
算定基礎日額とは、「傷病が発生した日の直前1年間に支払われた特別給与の合計を365で割った額」になります。
傷病年金もしくは障害年金の受給者のうちで、傷病等級・障害等級が第1級、もしくは第2級の「精神神経・胸腹部臓器の障害」を有している人や、現在介護を受けている場合に給付されます。
「常時介護が必要な障害」と「随時介護が必要な障害」に分けられ、それに応じて給付金額も変わってきます。
一次健康診断の結果、
以上のすべての検査項目において「異常の初見」があると診断された場合に、二次健康診断の受診料が給付されます。
業務上災害もしくは通勤災害による怪我や病気で死亡した労働者の葬祭を行う際に、葬祭を執り行う人に対して給付されます。
基本額が315,000円と決まっていて、これに給付基礎日額30日分または60日分のいずれかが加算された金額が葬祭料として給付されることになります。
遺族年金や障害年金等の公的年金と同時に労災保険の給付を受けるケースでは注意が必要です。この場合には「併給調整」が行われます。
なぜ併給調整が行われるかといえば、労災保険と公的年金から受け取る年金の合計額が、被災前の賃金より高くなってしまうケースを防ぐためです。
どのような労災保険の年金と公的年金の組み合わせになるかで、この併給調整の割合は異なってきますが、基本的に額面の8割以上は支給されるケースがほとんどのようです。
労災保険の給付は過去にさかのぼっても請求可能ですが、「期限付きである」ということを頭に入れておく必要があります。
療養補償給付なら治療費が確立した翌日から2年まで、休業補償給付なら休んだ日の翌日から2年までで、それを過ぎると請求できなくなります。
基本的にこんな感じで2年を過ぎると請求する権利を失効してしまうものが多いので注意が必要です。尚、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付・遺族給付の請求期限は、傷病が治った翌日から5年となっています。
いずれにしてもそれぞれの給付を請求する権利が有効な期限を、しっかり調べて把握しておきましょう。
業務上災害にしろ通勤災害にしろ、労災は誰しも思いもかけないタイミングで襲ってくるものです。
身に降りかかる想定外の災害に対して、心強い味方となってくれるのが労災保険ということがわかりました。
労災保険を常日頃からよく知っておけば、いざという時に落ち着いて対処できることでしょう。
画像出典元:O-DAN
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