事業が軌道に乗り、会社の利益が上がれば法人税も上がります。経営者であれば上がってしまう税金をいかにして節税するかを考えることでしょう。
そうした節税対策は様々なやり方がありますが、なかでも節税対策として広く知られているのが、法人保険を利用した方法です。
しかし本当に法人保険に加入することで、節税効果が得られるものなのでしょうか?
今回は法人保険における節税効果や、法人保険に入るメリットなどを詳しく解説していきます。
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株式会社など法人を設立した場合、会社の所得に応じて国に税金(法人税)を支払わなければなりません。
この法人税は「会社の利益×法人税率」で算出され、このうち会社の利益とは1年間にかかった経費を差し引いた金額で、法人税率は「法人税・法人住民税・法人事業税」この3種類で構成されています。
また、この法人税率はその会社の資本金の規模や所得総額によっても異なっており、会社の利益に対しておよそ30%程度が法人税として課税されます。
つまり、会社の利益が上がり、定められた一定の税率を超えると法人税も上がることになります。
そのため、経営者としては何とか節税しようと様々な税金対策を考え、一般的に税金対策として行われているのが、車や不動産などの購入です。車や不動産を買うことで、法人税の対象となる利益を減らすわけです。
しかし、車や不動産などを購入したとしても減価償却の対象になるなど、結局のところはキャッシュアウトフローとなるだけで、節税対策としてはあまり効率的であるとは言えません。
そこで法人保険が出てくるわけです。
と言うのも、法人保険には保険の種類によって「全額損金タイプ」や「1/2損金タイプ」、「1/3損金タイプ」など、保険料の支払いに対して損金として算入することのできる商品が存在しているからです。
仮に年間5,000万円の利益が出た場合、その利益に対して30%の法人税、1,500万円を支払わなければならないのが通常です。
しかし、そこに全額損金タイプの法人保険に加入し保険料を1,000万円支払うと、それがすべて損金(経費)として算出できます。
この場合、5,000万円の利益に対して1,000万円の損金となるので、会社の利益は4,000万円となります。
よって法人税は1,200万円になり、通常に比べて300万円を節税できるというわけです。
つまり、支払う保険料を損金として算出することのできるこうした損金タイプの保険を上手く利用することで節税に繋がる、という仕組みになっているのです。
法人保険が税金対策になる仕組みは、支払う保険料に対して一部もしくは全額損金として算出することができる、というところにあります。
ただし、単純に保険に加入しただけでは節税効果を得ることはできません。
確かに支払う保険料を損金として算出することができるため、そこだけを見れば節税効果が得られているような気がします。しかし問題なのはその後のことです。
保険というのは満期になったり解約したりした場合、解約返戻金などとして保険料の一部が返ってきますが、損金タイプの保険金が支払われると、その分が会社の益金(収入)として算入されます。
たとえば、損金で1,000万円の保険料を支払ったとします。
その後、解約返戻金などで1,000万円が会社に支給された場合は、その1,000万円が会社の益金となり、最終的に300万円の法人税が課税されてしまうということになるのです。
そのため、結局のところ法人保険に加入しただけでは単に法人税の支払い時期を遅らせた状態になるだけで、節税効果を得たとは言えないのです。
前項で説明したとおり、ただ単に法人保険に加入するだけでは節税効果を得ることはできません。
では、どうすれば節税効果を得ることができるのでしょうか?結論からいってしまえば、保険の解約返戻金を役員の退職金に充てることが、もっとも良い方法だと言えるでしょう。
通常、車や不動産など多額なものを購入した場合、その多くは減価償却の対象となり、耐用年数に応じて分散して経費計上しなくてはならず、そうなると計上できる損金も僅かな金額になってしまいます。
ところが、解約返戻金を役員退職金の原資とした場合、算定基準の範囲内「退職時の月額報酬×役員勤続年数×功績倍率」であれば、全て損金として計上することができるので、保険料・解約返戻金ともに大きな節税効果を得ることが可能となります。
つまり、法人保険で節税効果を狙う場合は、保険金が支払われた際、どのように使うか使用目的をしっかり決めておく必要があるのです。
このように、法人保険を上手に活用することで節税対策に繋がりますので、会社のキャッシュを最大限に活かすことが可能となるのです。
ただしここで注意が必要で、ここ最近国税庁では保険解約時の解約返戻金率が50%を超える商品については、保険料の全額損金算入を認めないという動きが出ています。
さらに、損金算入ができる割合に関しても解約返戻金のピーク時の返戻率に応じて決定するものとするなど、節税目的とされる法人保険に関して、損金算入できる税務処理の新ルール案が検討されています。
こうした節税を目的とした法人保険に対する新ルールがどのタイミングで反映されるかは今のところ不明ですが、おそらく近々適用されることになるでしょう。
法人保険を節税目的のためだけに利用するということも決して悪いことではありませんが、特に経営者はこういった法人保険に対する国税庁の動向を随時注視すべきでしょう。
法人保険の節税商品は保険料を経費で落とせる他、解約時の返戻金が高く設定されている場合が多く、タイミング良く解約することで合法的に会社のキャッシュを構築することができることから、中小企業を中心に絶大な人気を集めていました。
しかし、これまで各生命保険会社の行き過ぎた販売競争に国税庁が遂に動き出し、節税目的とした保険商品に対し経費算入ルールを抜本的に見直すことが告げられ、現在では各生命保険会社において節税保険の販売が中止となっています。
そのため、以前のように法人保険で節税効果を期待することに関しては、多少疑問を抱かざるを得ません。
前述のとおり、以前では節税対策として有効的だった法人保険も、国税庁の動向によって現在ではあまり期待できません。
おそらくこの先も経費算入のルールが厳しくなる可能性が高く、節税対策としての期待は持てないものだと思われます。
しかしながら、ここで忘れてはいけないのは、法人保険というのは節税対策のためだけに存在しているものではないということです。
本来、保険というのは会社経営をより安定したものにしていくためには非常に効果的なものであり、節税対策以外にメリットはあります。
特に経営者の信用で成り立っているような中小企業では、経営者に万一のことが起きると会社自体に大きな混乱が生じると同時に、金融機関から融資を受けている場合は一括返済を求められてしまう場合もあるなど、残された社員たちが非常に苦労することになります。
こうした金銭的な問題も難なくカバーできる程のキャッシュが会社にプールしていれば良いですが、そうでない場合は会社が倒産してしまう可能性もあります。
経営者に万が一の事が起きた場合は大きな資金が必要になる場合が多いですので、保険金があればそうした場合でも非常に安心です。
会社を経営していくなかで、資金繰りが苦しくなったり、自然災害に見舞われてしまったりなど、会社にとってマイナスな事態がいつ起きるか分かりません。
そうした会社の緊急時にも保険に加入していれば受取保険金や解約返戻金などによってまとまった資金確保ができるため、危機を回避することが可能です。
また、保険の支払う期間や商品などによっては、最終的に支払った保険料よりも多く貰えたりする保険もあるので、そう考えると普通に銀行へ預金しておくよりもずっとお得です。
つまり、法人保険は確実な資産運用をしていくうえで最適な活用方法であると言えるのです。
このように、法人保険に加入するメリットとして2つほど挙げましたが、もちろん他にも退職金の準備だったり福利厚生の利用だったりなど、節税対策以外のところでメリットはたくさんあります。
要するに法人保険の本領は、会社にとって不利益な事態が生じた場合でも継続して事業を遂行していけるよう備えておくためのもので「安心を買う」といったところにあります。
万が一の事態にこうした備えをしておくことは、日々の業務においても良い影響を与えてくれでしょう。まさに、法人保険は「備えあれば憂いなし」なのです。
今回は法人保険の節税効果について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
かつては法人を対象に節税を目的とした商品が話題を呼び、各保険会社の間でも顧客の争奪戦が激しく行われるほど人気を博していました。
しかし最近では国税庁が動き出したこともあり、以前のような大幅な節税効果が期待できる商品は販売されておりません。
そのため、節税効果をメインに法人保険に加入するという考えは、率直に言っておすすめすることはできません。
しかし、法人保険を節税目的以外の「安心」というところに視点を置いて考えてみたとき、万が一会社にピンチが生じた際の危機回避に重大な効果を発揮してくれるなど、非常に心強いものです。
したがって、法人保険の加入を検討する際は節税目的とするのではなく、万が一に備えた「安心」を目的とすることが、法人保険のもっとも適切な利用方法だと言えるでしょう。
画像出典元:O-DAN
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