会社設立後、本格的に事業が軌道に乗ってくれば、法人保険の加入を検討し始めることでしょう。しかし法人保険は多くの保険会社から様々な商品が販売されているため、はじめて保険を選ぶ際は、何をどう選んで良いのか分からなくなってしまうことがあります。
そこで今回は、法人保険を検討する際の比較すべきポイントを、詳しく解説していきます。
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冒頭でも記述したとおり、法人保険には様々な商品が販売されています。
そのため、保険選びをはじめる前に、まずあなたの会社がどのような目的があって加入するかなど、保険に加入する目的を明確にするということが重要です。
なお、法人保険に加入する目的としては、概ね下記の目的が一般的です。
経営者が死亡した場合は、会社の相続人に対して相続税がかかってきます。
その相続税は数千万円から数億円と多額になるケースが多く、相続人は資金を集めるために多くの苦労を強いられます。
法人保険は、万が一経営者が死亡した場合の事業承継対策として有効です。
台風や火災をはじめ、様々な災害事故はいつどこで起こるか全く分かりません。
そうした、何らかの事故に見舞われ、やむを得ず休業を強いられてしまうと、会社にとって大きな利益損失となります。しかし、例え災害を受けたとしても、経営者はそこからしっかり会社を立て直すことができるよう、準備しておく必要があります。
会社というのは信用が第一で、中小企業の多くは会社自体が代表(社長)の信用で成り立っていると言っても過言ではありません。そのため、経営者が死亡してしまったなどの場合、融資先や取引先などからの信用が下がり、事業継続が難しくなる場合があります。
死亡保障は、経営者に万一が起きた場合でも資金を確保することができるので、事業の継続がしやすくなります。
法人保険には将来退職金を支払うための準備として、資金の積立に活用することができます。退職金は多額の資金が必要で、それを自力で貯蓄していくのは困難です。
そこで保険を活用することで少しずつでも毎月決まった額を積み立てていけるので、経営にも支障をきたすことがありません。
福利厚生を充実させ、働きやすい職場環境を作るということは、会社に対する従業員の帰属意識が高まり、より盤石な経営基盤を築くことに繋がります。
この福利厚生保険は、レクレーションや通勤費をはじめ、従業員が入院した時の給付金や従業員が死亡した際、遺族の生活を支援する弔慰金としても使えます。
法人保険では、全額損金タイプの節税目的とした商品が販売されており、支払う保険料を全額損金(経費)として算入することができる仕組みになっているため、法人税などの負担を軽減することができます。
しかしながら、2019年2月より国税庁が各保険会社に向け「法人向け定期保険の税務取扱について見直しを検討している」との通達を出したため、各保険会社において対象となる商品の販売を現在停止している状態です。
そういった背景から税金対策といった期待はあまり持てません。
法人保険に加入する目的は、一般的にこのような内容となっています。
今後、法人保険の加入を検討する際は、まず何のために保険に加入するかなど、加入目的を明確にしてから保険を比較し、選択するようにしましょう。
法人保険の種類としては、大きく分けて「生命保険」と「損害保険」の2タイプに分類されています。
生命保険は病気やケガ、死亡など、いわゆる「人」に関する保障をする保険です。
なお生命保険の種類は「養老保険・医療保険・がん保険・長期平準定期保険・逓増定期保険」などがあり、その他退職金の原資としても使用されることがあります。
養老保険は保障と貯蓄を兼ね備えた保険で、保険期間中に死亡した場合はその遺族に死亡保険金が支払われ、保険期間満了時には死亡保険と同額の保険料が本人に支払われます。
また、養老保険は従業員の福利厚生としても活用されることも多く、さらに保険期間中であっても解約返戻金を有効利用することが可能です。ただし、便利な分保険料は高いです。
病気やケガによる「入院・手術・通院」などの費用を保障してくれるのが医療保険です。
最近の医療保険では、日帰りや一泊入院などの短期入院から、2~4ヶ月などの比較的長期間の入院まで幅広く保障してもらえるものが増えています。
また医療保険では、保険期間・保険料払込期間ともに終身だった場合、その保険料に関しては全額損金として算入することができるので、節税効果もあります。
がんと診断された時に保障してもらうといった部分では法人も個人も同じです。
しかし法人向けの場合、入院保障や解約返戻金が手厚くなるなど、法人ならではの特徴があります。さらに保険期間・保険料払込期間を「終身」と設定した場合、支払う保険料の1/2を損金として算入することができるので、保険に加入しながら財務強化対策にも活用できます。
逓増定期保険は定期保険の一種で、加入してから保険期間満了までに達すると死亡保障金額が5倍まで増加するタイプの法人保険です。
なお逓増定期保険は、加入後から早い段階で解約返戻率が100%近くまでになるという特徴を持ちますので、その特徴を活かし、財務強化対策や役員の退職金の準備としても多く活用されています。
長期平準定期保険とは、各定期保険のなかでも保険期間がもっとも長い商品で、終身保険に近い死亡保障が受けられます。ちなみに長期平準定期保険の保険期間は95歳や100歳で満期となるのが一般的です。
また長期平準定期保険は保険料が高額ですが、その分解約返戻金も高くなりますので、役員の退職金の準備としても活用されることがあります。
また、長期平準定期保険は支払った保険料の1/2を損金として算入できるため、非常に人気の法人保険です。
火災をはじめ、自然災害や従業員のケガ、さらには個人情報の漏洩など、事業を行っている以上、思いもよらない様々なリスクに直面する可能性があります。
損害保険は、そうしたリスクを補うための保険で、現在では事業に合せて様々な商品が販売されています。
火災をはじめ、何らかの事故によって会社が所有する財産に損害が生じた場合、その損害に対する補償をしてもらう保険です。
また、損害が生じたことによって休業を余儀なくされた場合の利益損失や、家賃損失などを補償してもらえるタイプの商品もあります。
お客さんに対して従業員がケガを負わせてしまった場合や、製品不良によって事故を起こしてしまったなど、第三者に対して何らかの損害責任を補償してくれるのが損害責任保険です。
損害責任保険は様々なリスクに対応した商品が用意されているので、自社に合せた選択が可能です。
貨物の輸送中などに破損や紛失させてしまった場合や、予定どおり貨物を届けることができなかった場合など、貨物に対して何らかの損害を補償してくれるのがこの保険です。
この保険は、国内外はもちろん陸海空など様々な状況に合せて選択することができるので、運送会社を経営している場合は必須でしょう。
法人向け損害保険は、災害など、事前に予測できない突発的な事態が生じたことよってイベントが中止になってしまった場合の損害補償や、最近では宇宙ビジネスをサポートする保険など、様々な事業に対応することのできる商品が多数用意されています。
また、小規模企業から大企業などまで、自社が行なう事業内容に応じて保険を組み合わせことが可能となっています。
様々な商品が販売されているなか、保険に加入する目的やその種類がある程度決まってきたら、実際どの商品にするかを比較しながらじっくり検討することが重要です。
では、どういったところを意識しながら比較していけば良いのか、比較するうえで重要なポイントを紹介していきます。
各保険会社において、最近では様々な商品が販売されています。また、同じような保障内容でも保険会社によって支払う保険料が異なる場合があるため、しっかりと保険料を比較する必要があります。
そもそも保険というのは10年、20年…と、高額な保険料を長期に渡って支払い続けることで、はじめて保障を受けることができるものです。
そのため、保険料を支払い続けても会社の資金繰りに支障をきたすことが無いよう事業計画を立てつつ、複数社の保険料を比較しながら商品を選択するようにしましょう。
解約返戻率を比較し、もっとも率の良いところを選ぶというのも重要なポイントです。解約返戻金率は、特に将来の退職金などの積立を目的とした場合、非常に重要になってくるものです。
また、この解約返戻金率というのは、各保険会社で同じ保険料・保障額であっても返戻率が異なっていることが多々あるため、何年後に何%の戻りがあるのかなど、複数社の解約返戻金率を比較する必要があります。
生命保険・損害保険など、法人保険の主となる商品内容に関しては、どこの保険会社も驚く大きな違いがあるわけではありません。
そのため、保険契約後のサポートの充実さというところも、非常に大きなポイントとなっています。どういうことかと言うと、会社は状況や環境など常に変化していくもので、経営環境に合せて保険も見直し等が必要になる場合があります。
保険会社の中には、保障内容の点検やアドバイス、保険金の支払い手続のサポートなど、そうした契約後のアフターフォローを用意しているところもあるので、契約後のサポートが充実しているかを、是非選びたいところです。
事業が軌道に乗り、経営も安定してきたら、万が一の事態から会社を守るため、経営者は法人保険の加入を検討したいものです。
しかし、法人保険はどの商品も決して安い保険料ではなく、それも10年、20年…と、長期間支払い続けていかなければならないものです。
そのため「会社にとって最適な保険は何か」また「保険料の支払いによってキャッシュフローを圧迫しないか」など、多角的に検討する必要があります。
会社にとって一番大事なことは、会社を経営し続けていくことで、保険はその事業継続の助けになるものです。
これから保険を選ぶという場合は、加入目的を明確にし比較を行いながら、会社にとってもっともプラスになる商品を選択するようにしてください。
画像出典元:Pexels
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