法人保険に加入することは、会社の経営をより安定したものにしてくためには非常に有効的な手段であると言えます。
しかし、はじめて保険の加入を検討する場合、法人保険というのはどういったものなのかイマイチ良く分からないといったことが多々あります。
そこで今回は、法人保険に加入する目的やメリット・デメリットまで、法人保険についてわかりやすく解説していきます。
このページの目次
まず法人保険とはどういったものなのか?というところですが、法人保険は法人、つまりは企業が契約するために作られた生命保険のことを言います。
この法人保険は、一般向けの生命保険とは異なり経営者や従業員に対する死亡保障をはじめ、退職金の積立や福利厚生、法人税対策など、会社経営に関して企業ならではの様々なサポートが受けられる保険です。
ちなみに法人保険という名称ですが、具体的にはそうした名称での商品は存在しておらず、あくまで生命保険を法人が契約するものであることから、法人保険と呼ばれているのです。
万が一の時の保障に加え、経営に対する様々なサポートが受けられる法人保険ですが、会社としてはどういった目的で保険に加入するものなのでしょうか。
次に法人保険に加入する主な目的をご紹介していきます。
企業ならではの様々な保障が受けられる法人保険では、加入する目的もその会社によって様々です。なお、会社が法人保険に加入する主な目的としては、概ね下記のとおりです。
万が一経営者が死亡してしまった場合、その会社を相続する人(相続人)に対して相続税の負担が生じ、その相続税は数千万から数億円にも上るケースがあります。
そうした場合、自社株や会社の資産を売却するなどして、現金を集めることになってしまいます。
しかし事業承継のための法人保険に加入することで、まとまった現金が後継者に入るため、そうした相続税の負担が軽減されます。よって事業承継がスムーズにおこなえるのです。
現在は何事もなく順調にいっている場合でも、会社を運営していくうえで、自然災害や取引先の倒産など、いつどこで不測の事態が起こるか分かりません。
このような、いざという時のために役立つのが解約返戻金のある法人保険です。
なお、こういった法人保険は大抵10年ほど掛ければ100%戻ってくるので、事業保障の対策としては安心です。
経営者であれば、いかなる損害から会社を守るといった責任が常に生じますので、こうした緊急時の予備資金の確保は非常に重要です。
法人保険の加入でもっとも多いのが経営者に対する保障です。
経営者に万が一のことがあると、金融機関や取引先からの信用が下がってしまい融資の打ち切りや取引先からの契約解除など、会社に混乱を来す場合があります。
そうなると、従業員の給与が支払えなくなるなど経営状態が悪化し、最悪の場合は会社が倒産してしまう恐れも考えられます。
しかし、経営者の保障に加入しておくことで、保険金を会社の経費に充てることができるので、そういった会社の危機を回避する時に役立ちます。
法人保険のなかには、解約返戻金を積み立てていくことができる商品があり、その保険を解約して将来の退職金として利用することができます。
また、退職金の準備のほか、怪我や病気など別な保障も受けられる可能があるので、退職金を準備する方法としては魅力的です。
ただし、保険を解約するタイミングが早すぎると逆に損をする場合もあるので、損することが無いようしっかり確認し、良く検討したうえで加入するようにしましよう。
会社設立後、経営状態も上向いてきて利益も十分見込める状態へと成長してきたら、福利厚生に関しても考えていきたいところです。
福利厚生では、通勤・住宅関連や社員旅行などのレクレーション、職場環境関連など様々な目的がありますが、法人保険にはそうした福利厚生を目的とした商品も用意されています。
なお保険料の支払い関しては、会社側が負担するケースもしくは社員が負担するケースと会社によって異なりますが、いずれにしても福利厚生を充実させることで、働きやすい職場となりますので、ぜひ活用していただきたい法人保険のひとつです。
会社の利益が上がると、その所得に応じて法人税もかかってきます。
法人税の節税対策としてよくおこなわれるのが、車などを購入して損金を増やし、利益を減らして法人税を抑える。といったところが大半です。
しかし、車を購入したとしても経費と認められるのはあくまで減価償却分ですから、税金対策としては正直効果が低いので、そこで法人保険を利用されたりします。
法人保険では保険料として支払った金額すべて、もしくは半分が損金として認められるので、何かを購入するといったことより、節税効果は高いのです。
しかも、法人保険を解約すれば解約返戻金として多くのお金が戻ってきますので、法人保険による税金対策としては非常に有利です。
会社を経営していくなかで、不利益を与える様々なリスクなどから会社を守るため、経営者は保険に加入することを検討します。
会社が保険に加入する目的はおおむね前述のとおりですが、法人保険に加入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
続いて、法人保険の加入することで得られるメリットをご紹介します。
前項で記述したとおり、法人は利益が上がれば法人税も高くなります。多くの会社は節税対策として、社員旅行や備品の購入などで損金を増やし、少しでも経費を多く計上します。
そうすることによって法人税を減らすことができますが、旅行や備品の購入などは経費(損金)として認められる範囲が少ないのです。
一方法人保険は、掛金すべてを経費(損金)として処理することができ、さらに損金も大きく設定することも可能なので、より法人税を軽減することができます。
会社が軌道に乗り利益が上がってきたら法人税も上がりますので、そうした場合に法人保険に加入することで節税対策に繋がります。
しかも解約すれば解約返戻金として現金が戻ってくるので、会社としては非常にありがたいでしょう。
解約返戻金の設定がある法人保険の多くは「契約者貸付制度」というものがあり、解約返戻金を担保としてお金を借りることができます。
なお生命保険会社によって借りられる金額が異なりますが、一般的に解約返戻金額の70~90%の範囲内で借入することが可能です。
ちなみに、この契約者貸付制度は解約返戻金が原資となっているので、基本的に借入する際の審査はありません。
そのため、何らかの事情で急にお金が必要になった時などの資金調達の方法としては非常に有効的です。
ただし、契約者貸付制度はあくまでお金を借りるということなので、その後しっかり返済する必要がありますのでご注意ください。
前述のとおり、法人保険は保険料を経費として計上することができることから、法人税の負担を軽減し節税に繋がります。
また、当然ですが生命保険に加入しているわけですから、もしもの時にはしっかりと保障してもらえます。
そして、法人保険には万が一の保障以外にも福利厚生や資金の積立などもできるので、健全な経営をおこなう上では大きなメリットになります。
会社を経営していれば急に資金が必要になる場合もあります。そうした資金調達が必要な場合でも、法人保険を解約し解約返戻金を利用することができます。
この法人保険では一般的に、全額解約するかもしくは一部解約するかどちらか選べるようになっているので、緊急時に資金が必要となった時でも迅速に対応することができるので非常に心強いです。
万が一の時の保障として、基本的にはメリットの方が多い法人保険ですが、法人保険に加入することで少なからずデメリットも存在しますので、デメリットの方もしっかりと知っておきましょう。
保険は手厚く掛ければ掛けるほど万が一の時の安心は増えます。
しかし、それと同時に保険料を支払わなければならず、いろいろな商品を付ければそれだけ現金が減ることになりますので、結果的にキャッシュフローが悪くなります。
せっかく安心のために加入する保険が、返って資金繰りが苦しくなってしまう状態に陥ってしまうことがあります。
法人保険は、そうしたキャッシュフローを考慮したうえで加入すべきです。
法人保険では、加入している保険を解約することで解約返戻金として現金を受ける取ることができるようになります。
しかし解約返戻金というのは、加入してから少なくても十年以上が経過しないと100%以上に達することはありません。
解約して現金を受けるとるタイミングは解約返戻金率が100%以上に達した時点で受けとることが望ましいですが、解約のタイミングを誤り、少しでも早い時期に解約してしまうと、支払ってきた総額よりも解約返戻金が大きく減額してしまう恐れがあります。
解約返戻金が減額してしまうことはデメリットにしかなりませんので、何らかの事情で早期解約がやむを得ないという以外は、100%以上に達してから解約するようにしましょう。
法人保険に加入することで保険料をすべて経費(損金)とし、法人税に対する節税が可能となります。
しかし、保険を解約し解約返戻金が支払われた場合、それが収益として帳簿に記載されることになります。
収益が発生すると法人税として当然課税されることになりますので、結局のところ保険を解約するだけだと、課税を繰り延べしているだけになってしまいます。
そのため、解約返戻金を役員の退職金や設備投資などに充て、損金として計上するなど解約返戻金をもらう時は課税の対象にならないよう、事前に支出計画を立てる必要があります。
先頃、国税庁が各生命保険会社に対して、ピーク時の解約返戻率が50%を超える定期保険・第三分野保険を対象に節税目的で加入することがないよう、保険料を経費として計上できる割合を制限するという意向が伝えられました。
ちなみに、国税庁が問題としている保険は、役員の退職金の支払いや経営者の死亡時など事業承継の資金対策として備えるための定期型保険です。
こうした法人向け定期型保険では、月々10万円近くの保険料を支払うケースが多く、毎月支払うそうした保険料もすべて経費として処理できます。
そのうえ、解約返戻金を退職金などに充てれば課税されることもなく、節税効果が非常に高くなるわけです。
国税庁ではこうした節税を目的とした法人保険を抑制するため、以前にも経費として計上できる条件を定めてきました。
しかし、国税庁が定めた条件をすり抜けるかのように日本生命の「プラチナフェニックス」という節税保険が登場。各生命保険会社もそれに続くように次々節税保険に参入したのです。
国税庁はこうした法人保険は本来の保障よりも節税目的が強いとして非常に問題視しています。
そのため、現在ではほとんどの生命保険会社で、こうした節税目的とされる保険の販売を停止しています。
よって、今後節税目的で法人保険を加入するといった場合は、これまでのような損金が認められないケースも十分考えられますので、加入の際は慎重に検討する必要があります。
今回は法人保険とは何か、加入する目的やメリット・デメリットなどを解説してきました。
法人保険は一般的に、会社を設立してから事業が軌道に乗ってきたタイミングで加入を検討するもので、ここで見てきたように、法人保険にもさまざまな活用方法があります。
なお、節税目的として法人保険に加入するといった考えも決して悪いとは言いませんが、やはり保険本来の特徴を十分に理解し、合理的な使い方を心がけたいところです。
いずれにせよ、法人保険は会社を有益にするためのものですので、様々な観点からじっくり検討し、会社にとってプラスとなるよう最適な保険を選ぶようにしましょう。
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