TOP > イベント > イベント > Legacy Tech Conference 2020|招待制スタートアップイベントに潜入取材!
2月7日(金)に東京ミッドタウン日比谷 BASE Q ホールにて、プロトスター株式会社による「Legacy Tech Conference 2020」が開催された。
レガシー業界の改革に挑む挑戦者のためのセッション・ピッチイベントが行われた。
この記事ではピッチイベントを中心に、その模様を紹介する。
このページの目次
いまだ課題が多く残るレガシー業界。
その解決に挑む大企業・スタートアップ関係者らを招待し、挑戦を共有、世界を変える場にしようと開催されたのがこのイベントだ。
開催元のプロトスターは「挑戦者と共により良い世界を創る」をビジョンとし、この起業ログのほか、挑戦者と起業家のマッチングサービス「Startup List」や隠れ起業支援プログラム「SwingBy」などを展開している。
今回のイベントではスタートアップだけでなく、大企業の挑戦者も招き、挑戦者同士の垣根をなくしていることが最大の特徴である。
イベントは東京ミッドタウン日比谷、BASEQを貸し切り行われた。
前半には数々のセッション企画、後半にはピッチコンテストが催された。
今回のイベントの裏側について、主催したプロトスターCCO、栗島祐介氏に聞いた。
ー今回のイベント開催にはどのような思いがありましたか?
ずっとビジネス版のパリコレを作りたいと考えていました。
パリコレはファッションのグローバルトレンドを発信する場です。
そういう風にビジネスのグローバルトレンドが生まれていく場所を作りたかったのです。
現在だとそういう場はCES(ラスベガスの電子機器見本市)、深圳、シリコンバレーあたりでしょうか。
そこに東京を加えるために今回のイベントを開催しました。
今回のイベントでも次の挑戦を企てている仕掛け人を集め、トレンドを発信しています。
「東京に来れば、次のトレンドを知れる」という場所にしていきたいですね。
ーイベントを開催するうえで一番大変なことは何でしたか?
これから次のトレンドを仕掛けようとしている人、自ら未来を作ろうとしている人を探すことに苦労しました。
ーどうやって探していきましたか?
「類は友を呼ぶ」という言葉があるように仕掛けている人は仕掛けている人を知っています。
一人を見つけたら、そこから横展開して探していきました。
ー今回のイベントを今後どう生かしていきたいですか?
またイベントをやろうと計画しています。次回はよりパワーアップさせたものを12月に予定しています。
今回は不動のものが多いレガシー業界についてでした。
次回のテーマはまだ検討中です。世の中の変化に合わせたテーマにできればと考えています。
今回は直前になるまで登壇者を公開しなかったのですが、また次回も当日誰が登壇するのかわからないといったような、わくわくさせる仕組みを演出していきたいですね。
ー最後に一言。
「自分にとってこういう未来が来る」という仕掛けたい人は一緒にやりましょう。
ぜひ登壇してください。一緒にトレンドの渦を作りましょう!
今回のイベントでは、レガシー業界の課題に取り組むスタートアップによるピッチコンテストが行われた。
ここでは登壇企業全12社を紹介する。
工場や部門、担当者が違うだけで同一製品が違う価格で売れる事に違和感を感じた松原脩平氏がA1Aを立ち上げ。
開発したのがRFQクラウドだ。
RFQクラウドでは複数の供給元に一括で見積もり依頼を送ることができる。
それによって得られた比較表もRFQクラウドが自動で作成。これにより、同一製品や類似製品の比較が容易になる。
部品数の多さ、すなわち供給元の多さから、ネットワーキング効果の強さを強調。最終的には企業間取引プラットフォームとなることを目指す。
レガシー業界の一つである塗装・塗料業界。
日本の技術が大きく進歩した一方で、塗料・塗装業界のビジネススタイルはあまり変化していない。
その課題をテクノロジーで解決しようとしているのがEngoだ。
現在は塗料・塗装業界に特化したコンサルティングやウェブサイト制作に取り組むほか、塗料販売受発注管理システム 「Paintnote」を開発しようとしている。
もし開発できれば、受発注にまつわる電話応対をなくし、 塗料特有の煩雑な受発注業務でのミスを防ぐことができる。
実際に販売店・塗装店に数か月勤務し、課題を肌で感じたCEO藤井友輝氏。現場に根差したプロダクトが生まれそうだ。
現在中小企業の頭を悩ませているのは、金融インフラを銀行に依存せざるを得ないこと。
また、情報の非対称性から、投資のリスクとリターンは不透明なまま、資産が預金に集中していることが、日本で投資が促進されにくい一因といわれている。
そこでSiiiboは、簡単手軽な少人数私募債発行・投資をサポート。
資金調達を検討する企業に対し財務的な視点からアドバイスを行っているほか、投資家と中小企業をつなぐプラットフォーム「Siiibo IR」も開発中だ。
もともと縁故債と言われていた私募債。企業が少数の投資者を選ぶ形であることから、投資家と企業という関係性を超えたつながりが生まれそうだ。
創業者の千頭沙織氏が学生時代に精神的につらく悩んでいた時期があったことから開発されたアプリ「emol」。
かわいらしいキャラクター「ロク」と対話することで感情を記録し、自身のメンタルを客観的に分析することができる。
さらにこの技術を応用し従業員のメンタル分析を行うプロダクト「emol work」を開発した。
心に関するサービスのハブとなることを目指すemol。アカデミー向けのプロダクトの開発やメンタリング商品の販売も視野に入れている。
エレベーター。仕事もできず、会話もはばかれる特有の場所だからこそ、広告に目が行くのではないかと考えた羅悠鴻(ラ・ユウホン)氏が立ち上げたのが株式会社東京だ。
株式会社東京ではエレベータ―専用テレビ「東京エレビGO」を開発。
広告だけでなく、防犯カメラや掲示板としての機能も果たす。
将来的にはスマホが個人所有ではなく、人々がシェアするようになると語る羅氏。すでに東京エレビGOで多くの人が同時に情報を入手できている。私たちはもはやスマホもいらなくなるのかもしれない。
スタートアップでは難しいと言われるハードウェア業界。そんな中、2002年に創業し、着々と成長を遂げているのが光コムだ。
光コムでは自動検査センサーを開発。これによりレシピを作るだけで、全数自動検査ができるようになった。
さらに今まで人の目、脳、腕に依存していた検査に対し、センサー、AI、ロボットアームによって自動化を実現。いよいよ工場から人がいなくなる時代が到来しそうだ。
JAXA職員であり、これまで8社のスタートアップを立ち上げてきた久米村隼人氏が創業したDATAFLUCT。
出店予定の業態、および、候補地を入力するだけで売上を推定することができる「DATAFLUCT Marketing」や、⾞、家屋、駐⾞場などを検出する衛星画像検索サービス「DATAFLUCT discovery.」など既に10のプロダクトをローンチしている。
今回のプレゼンで紹介した「DATAFLUCT aline」では人口増減をリアルタイムでモニタリング、分析できる。衛星を利用することで、コンパクトシティ実現に向けて、更新頻度の高いデータがないという課題を解決する。
アパレル業界とIT業界の両方に属した経験がある深谷玲人氏。
そんな深谷氏がDeepValleyを立ち上げ、開発したのがAYATORIだ。
多くの関係者を持つアパレル業界ではミスコミュニケーションや情報の共有不足が多発していた。
AYATORIはこれを解消。
必要書類をアップロードし、メールで関係者を招待するだけで、コミュニケーションがAYATORI内で完結する。
このAYATORIを通じて製造ビッグデータを獲得。これを活用し、あやとりのように複雑なアパレル業界のブラックボックスをほぐしていく。
システム技術に興味を持つ中で多次元データベース技術「マルチバリュー」に強くひかれた和田怜氏が創業したシマント。
同社が開発したSlmount Boxはデータベース設計を必要とすることなく、さまざまな形式のデータを取り込むことに成功した。
これによりビジネス情報をすぐにデータとして収納、また検索することが可能となり、大幅に業務が効率化される。
すでに大手銀行などが実装。組織を超えてデータが連携する世界の実現を目指す。
ゲームアプリ開発に精通した谷口直嗣氏と医師である杉本真樹氏が協働で立ち上げたのがHoloeyesだ。
同社が開発した「Holoeyes XR」ではVR/MR技術によって患者のCTスキャンデータやMRIデータを3次元化した。
これにより医師はヘッドセットを装着すれば、臓器や血管、神経の位置関係を実際に体内を見ているような感覚で認識でき、手術をより正確にシミュレーションできる。
またXR上で妊婦が胎児と対面したり、移植された臓器を抱きしめることもできるようになった。医師と患者をつなぐ新たな役割を果たしていく。
これまで睡眠というテーマで取り組んできたO:。
従業員向け睡眠改善アプリ「O:SLEEP」を開発し従業員自身が睡眠時間や質を測定すると、そこからAIが理想の住民時間や起床時間を導き出せるようになった。
今回のプレゼンでは新規事業をプレゼン。マネジメントに着目した「Co:TEAM」では、メンバーの性格やコンディションなどの情報からマネージャーがメンバーとコミュニケーションをとりやすくする。
さまざまな角度から従業員の働き方を改善しようとしていることがわかる。
一橋大学にて管理会計を専攻する曽根健一郎氏。
フリーランスのエンジニアとしても活躍していた彼が、研究プロジェクトを進める中で開発したのが「GenKan」である。
「GenKan」ではIoTを活用し、実績データの取得、実際原価計算、原価分析を自動化することに成功。
製造現場の実態を見える化した。作業を変えずに導入可能なことから、世界も視野に入れている。
参加者投票で選ばれた優勝・2位・3位企業を紹介する。
3位はemolが受賞。「メンタルヘルスの課題解決に向けて今後も頑張っていく」と話した。
2位は光コムが受賞。「誠に光栄、計測を通じて日本企業に貢献したいと」とコメントした。
映えある1位はHoloeyes。「ITで命を救う医療分野に貢献できることに興奮している。ぜひこれからもご支援していただきたい」と笑顔で語った。
「官民連携」「ブロックチェーン」「5G」などをキーワードに、次のトレンドの仕掛け人が登壇。これから世界をどう変えていくのかを語った。
ここでは、全セッションの概要を紹介する。
看板事業にテクノロジーを取り入れた、クレストホールディングスCEO永井俊輔氏が登壇。
既存産業での経験があるレガシー企業がイノベーションを起こせば、一から始めるスタートアップよりも早く成長する。
そしてイノベーションを起こすためにも、既に持っているレガシーアセットに他事例からの類推フレームワークを組み合わせ、それを実現できるテクノロジーを取り入れることが重要だと語った。
今後、人口が減少していく中で生まれる様々な課題を解決するために、官民の融合がさらに進んでいくと言われている。
内閣府はOpen Innovation Challengeと題し、政府自治体が設定した課題を、スタートアップが解決する試みを行なっている。
神戸市はUrban Innovation KOBEとしてスタートアップと市の職員が協働、開発したプロダクトをスタートアップと随意契約して調達している。
つくば市はつくばイノベーションスイッチ制度として、実証実験を無償化、行政における手続きを柔軟化。実証実験の一事例目をつくば市で実現できるようにしている。
ベンチャー企業、WiseVineは行政が民間委託する際に企業に相談することで、入札公示前から一部企業が準備できてしまうことを問題視。行政課題を民間企業に通知するプラットフォームを開発した。
Mixed Reality(MR・複合現実)とは、ARを発展させた技術。
AR(拡張現実)は、ポケモンGOのように現実世界の情報に重ね合わせる形でデジタル情報を表示するものだが、MRではそれに加え、現実世界の形状(部屋の形やテーブルの位置)などをデバイスが把握し、それらにデジタル映像をぴったりと重ね合わせることができる。
さらに、利用者の動きにシンクロさせることができるため、“部屋の中央に表示させたホログラムを、部屋を歩き回りながら確認する”といったことがMRでは可能になる。
このセッションでは、MRデバイス「HoloLens(ホロレンズ)」を使ったアプリ・システム開発を行う株式会社ホロラボのCEO 中村 薫氏、実際にMR導入を試行中のトヨタ自動車 サービス技術部/試作部 主幹の栢野 浩一氏が登壇。
製造業というレガシー業界にMRという新たな技術を導入することで、実際にどのような変化が起こりつつあるかを実例を交えて紹介した。
ホームロジスティクスから深作康太氏、LayerXから福島良典氏、オプティマインドから松下健氏が登壇。
ホームロジスティクスはニトリの運送業務を行う。現在パートナーである運送会社と共に、日本のSCMをアップデートしようとしている。
深作氏には物流業者がより長く活用される業界にしたいという思いがある。家具の設置は人にしかできないことであると考えており、人にフォーカスしている姿勢が読み取れた。
この思いに対し、業務オペレーションのデジタル化という面からLayerXが、配送ルートの最適化という面からオプティマインドが協力している。
今年から始まる5G。5Gはどのような変化をもたらすかを株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 担当部長 秋永 和計氏ら最前線のプレーヤーが語った。
まず秋永氏が5Gの現状できること・課題を、5Gサービスを実際にプレリリースしているドコモならではの視点で解説。
そのうえで5G活用の一事例として、VRソフトの提供などを行うSymmetry Dimensions Inc. CEO 沼倉 正吾氏が、建築領域のデジタルツイン構築の基盤としての5G活用を紹介した。
その後、日本仮想化技術株式会社の玉置伸行氏も交えて「5Gによって何が変わるのか」をディスカッションした。
博報堂から伊藤祐介氏、Tokyo Otaku Modeから安宅基氏、Crypto Gamesから小澤孝太氏が登壇。進行は幻冬舎から設楽悠介氏。
テレビ、ラジオ領域で視聴者にはデジタルコンテンツを提供するなどしている伊藤氏は、今後のテレビ、ラジオは「個人にとって価値のあるコンテンツを提供する必要がある」とした。それにより大衆に見られることを前提とした広告収入に依存するのではなく、テレビ、ラジオ自身が持つ価値によって収益化が見込めるようになる。
「TOKYO HONYAKU QUEST」にてアニメ記事を翻訳した外国人ファンにプログラム内で使える通貨を渡しているという安宅氏は、ブロックチェーンによってアニメの制作費を世界中のファンから集められるようになると話す。これはアニメ会社の負担を減らすことにつながる。
ブロックチェーンを活用したトレーディングカードゲーム「クリプトスペルズ」を展開する小澤氏はゲームの運用をプレイヤーがやるようになっていると話す。実際に使えるリターンがゲーム内で得られることで、プレイヤーが自らイベントを開催したりしているという。
「マーケットネットワークス」をキーワードに"ものづくり"を変えようとしているスタートアップ2社、アパレル業界のシタテルCEO、製造業のアペルザが登壇。
「マーケットネットワークス」はまだ知名度が低い概念ということもあり、セッションはその概念の解説からスタート。
その後、DX(デジタルトランスフォーメーション)のあとで、なぜマーケットネットワークスが必要になるかを議論した。
多くの来場者が訪れ、かなり盛り上がった今回のイベント。
厳しい潮目に立たされているレガシー業界の未来を、垣間見ることができた。
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