会社法が改正され、最低資本金制度が廃止となり、現在では株式会社であっても1円で会社を設立することが可能となりました。
しかし、現実的には初期段階で相当な資金が必要となるため、その資金調達は起業家たちにとっての大きな悩みの種です。
そんな悩みを解決する存在として最近注目されているのがエンジェル投資家。実績のない会社にも出資してくれる、まさに天使のような存在です。
しかし世の中そううまい話ばかりではありません。
今回はエンジェル投資家から出資を受ける際のメリット・デメリット、そしてリスクや注意点について詳しく解説していきます。
このページの目次
エンジェル投資家とは、起業家に対して出資をおこなう個人投資家のことを指します。
出資額は人によって違いますが、100万円〜1,000万円程度であることが多いです。
実はGoogleやYahoo!、Facebook、Twitter、Appleなどの超有名企業も創業当初にエンジェル投資家からの資金提供を受けています。
現在では資本金が1円以上あれば会社を設立することは可能ですが、実際に起業する場合、オフィス費用や人件費、開発費など多くの資金が必要になります。
そうした資金をすべて自身の貯金や身内などに借りて用意することができれば良いですが、そう上手くはいかないのが現実です。
加えて会社を設立して間もない頃は実績や信用も無く、たとえ銀行など金融機関から融資を受けたくても断られるケースがほとんどです。
このように、起業家はまず資金調達の問題に悩まされるケースが多いのです。
エンジェル投資家は、自己資金ではどうにもならない起業家たちに対して出資を行い、資金不足という大きな悩みを解消してくれる、まさに天使のような存在なのです。
出資とは、投資家などから会社の株と引き換えに、返済義務無しで資金提供をうける資金調達方法です。
一定期間の赤字から一気に何十倍、何百倍もの成長をするようなベンチャー企業、スタートアップ企業と呼ばれる企業に向いていると言われる調達方法です。
返済義務がないというメリットの一方、経営の決定権である株式を譲渡する必要があるというデメリットもあります。
起業家にとって天使のような存在であるエンジェル投資家ですが、そもそもなぜ出資してくれるのでしょうか?
実績がない会社にお金を貸すだけでもリスクが高いのに、返済不要のお金を出してくれるのにはそれなりの理由があります。
投資家側の思惑も知らずにお金を受け取るほど恐ろしいことはありません。
もちろん理由は人によって異なるのですが、ここでは代表的な理由を紹介します。
もっとも分かりやすいエンジェル投資家の目的がこれです。
出資先の会社が成長することでその会社の株式の価値も大幅に上がるので、創業初期の出資で安く手に入れた株式を、会社が成長したあとに高く売却することで利益を得るのです。
基本的には、普通の株式投資と同じ構造だといえます。ただ普通の株式投資よりハイリスク・ハイリターンです。
まず創業当初の会社は上場をしていないため、基本的に株式を売ることができるのは、会社が上場した場合かM&Aによって買収された場合のみです。
どちらにもならなかった場合は、株式を売却することができず、実質無価値ということになってしまうので、非常にハイリスクです。
一方その分成功した場合のリターンも大きいです。
例えばFacebookやGoogleの場合には、創業初期と比較すると株式の価値が1,000倍以上になっています。100万円の出資が10億円になって返ってくるわけです。
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元起業家のエンジェル投資家に多い理由が「起業家を応援したい」というものです。
自分が苦労した経験があるからこそ、後輩の起業を応援したいと思うのは自然なことだといえます。
このようなエンジェル投資家は、出資後も経営に関する相談に乗ってくれる場合が多いです。
これも元起業家のエンジェル投資家に多い理由です。
のぞき見というと言い方は悪いかもしれませんが、出資をして一部経営に関わることで、リアルな経営の課題やその乗り越え方を学ぶことができます。
自分も起業家として活動しているエンジェル投資家の場合、そのような貴重な経験を100万円〜1,000万円でできるのならの安いと感じるようです。
そもそもエンジェル投資家は元起業家が多いということもありますが、これも元起業家のエンジェル投資家に多い理由です。
自分が起業に成功してお金を持っていたとしても、必ずしも業界からのリスペクトを得られるとは限りません。
人間、成功してお金を十分に得たあとに欲しくなるのは、地位や名誉だったりします。
創業初期に投資した企業が成功し、今のGoogleやFacebook、日本で言えばメルカリのようになることで、業界に自分の名前を残すということが目的の投資家もいます。
ここまで代表的な理由を4つほど挙げましたが、どれか一つの理由というより複数の理由で投資しているエンジェル投資家がほとんどです。
起業家支援をしながら一攫千金も狙えるから投資しよう、という具合です。
ただ理由が何であれ、必ずいえるのはエンジェル投資家は出資先の会社の成長を期待して投資しているということ。
成長しそうにない会社に投資する投資家はいません。エンジェル投資家は出資によって株主になります。
そのため出資を受けた場合、エンジェル投資家の期待に応えて企業を成長させる義務が生じるということは覚えておきましょう。
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エンジェル投資家から出資を受けた際、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
まずはメリットからご紹介していきます。
エンジェル投資家から出資された資金はあくまで投資ということになるので、銀行などからの融資と違って返済義務がありません。
返済に伴う利子なども一切支払う必要がありません。
エンジェル投資家は、投資家である前に事業で成功した一流起業家であることが多いです。
そのため、起業し会社を経営していくうえでの知識や経験など、様々なノウハウを持ち合わせているので、経営者に対しての助言や忠告など貴重なアドバイスをもらえることも多いです。
前述のとおり、エンジェル投資家は経営者としての実績がある人が多く、幅広い人脈(ネットワーク)を持っていることが考えられます。
そうした方から出資を受けた場合、その投資家が持っているネットワークを活かした人脈構築が可能となります。
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では続いて、エンジェル投資家から資金調達をした際のデメリットについて、ご紹介していきます。
エンジェル投資家も様々なタイプの投資家が存在し、経営に関してあまり口を挟まない投資家もいれば、逆に深く関与してくる投資家もいます。
あまりにも深く関与されると、起業家にとっては思い通りに事業を進めることが難しくなり、不満に感じるケースも多々あります。
エンジェル投資家自体そう簡単に見つかるものではありません。
また事業内容や取り扱う商材など、投資家の心を引きつけるような魅力あるものでない限り、現実的にエンジェル投資家を見つけることは難しく、見つけるには時間や労力が必要です。
エンジェル投資家の見つけ方については、このあと詳しく説明していきます。
時には数億円などあなたが行おうとしている事業内容にあわせ、一度に多額な資金調達が可能なベンチャーキャピタルに対し、エンジェル投資家はあくまで個人投資家となるので出資額も数百万円程度と低くなるのが一般的です。
もし多額の資金が必要である場合は、エンジェル投資家からではなくベンチャーキャピタルや銀行などからの融資を検討した方が良いでしょう。
エンジェル投資家が投資する理由でも解説しましたが、投資家は会社の成長を期待していますし、それを会社に要求する権利があります。
一度出資を受けたら、その期待に応えるべく事業成長に努める責任が生じることは必ず理解しておく必要があります。
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事業を行うにあたって出資してもらうという意味ではエンジェル投資家もベンチャーキャピタルも同じですが、中身の内容に違いがあります。
ベンチャーキャピタルは、株式公開を目指すような将来が期待される企業などに対し、会社の株式を取得して出資を行う投資会社で、出資する際は銀行などの金融機関と同じような厳しい審査があります。
一方エンジェル投資家の場合は、あくまで個人投資家となるので、ベンチャーキャピタルのような審査はないことがほとんどで、その投資家が良いと考えれば出資が決まります。
個人投資家であるエンジェル投資家は、出資する金額も低めで、一般的の出資額として100万~1,000万円程度とされています。
一方ベンチャーキャピタルの場合は、数億円・数十億円といった大きな額を出資することも可能です。
なお、ベンチャーキャピタルについては以下の記事で詳しく解説しています。
会社を設立するにあたっては多額の資金が必要となるため、起業家にとってエンジェル投資家は非常にありがたい存在です。
では、エンジェル投資を探すには、一体どのようにすれば良いのでしょうか?
続いて、エンジェル投資家の探し方についてご紹介していきます。
やや難易度が高いですが、エンジェル投資家として活動している起業家や経営者などにメールやTwitterのDMなどで直接連絡し、自分を売り込むといったやり方はエンジェル投資家を見つけるためのひとつの方法です。
まったくつてがない中で連絡しても可能性は低いため、知り合いの起業家や経営者に紹介してもらうのが理想的ではあります。
以下の記事で著名なエンジェル投資家のSNSアカウントをまとめているので、こちらもぜひ参考にしてください。
起業家交流会やセミナー、ピッチコンテストなど、起業に関連するイベント会場には起業家だけではなくエンジェル投資家も参加していることがあります。
特にピッチコンテストでは投資家や著名人などが審査員として参加しているので、絶好のアピール場です。
こうしたイベント等では、直接投資家と出会えるチャンスですので、積極的に挑戦するようにすると良いでしょう。
マッチングサイトは、資金調達が必要な起業家に対して出資をおこないたいと考える投資家とを結びつけるサイトで、起業家が簡単にエンジェル投資家を探すことができます。
このようなマッチングサイトに登録している人は、元起業家の人というよりは、一攫千金を狙った個人の投資家である場合が多いです。
なおこのようなマッチングサイトへの投資家募集の掲載は、金融商品取引法における発行開示規制に該当するリスクがあります。金融商品取引法において、資金調達の募集行為には規制がされているのです。
規制によって募集(≒情報開示)人数の制限がされており、意図せずしてこの規制に該当する募集行為をしてしまうと、規制対応が必要となってしまいます。
多くの場合、発行者である起業家が本規制を知らずに公に募集行為をしてしまい、規制対応をしない結果として行政法違反となってしまうケースがあります。
正しく金融商品取引法を理解して行えば問題はないのですが、そこまでしてエンジェル投資家から出資を受けたいのかは検討したほうが良いでしょう。
また利用する場合にも、安心して使えるマッチングサイトを吟味して使うようにしましょう。
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現在、登録済のベンチャー企業は2,600社以上、投資家数は900名以上にのぼります。
これから事業を始めようとしている起業家にとって、出資してくれるエンジェル投資家の存在は非常に心強いものがあります。
しかし、エンジェル投資家から出資を募る場合、やはり注意しておくべきことも存在しますので、注意点をしっかり覚えておくようにしてください。
前項でも紹介したことですが、エンジェル投資家は出資してくれる他、経営などについてのアドバイスも無償で行ってくれることケースもあるなど、非常にありがたい存在です。
しかしながら、なかにはアドバイスの域を超え、自分の会社のように深く経営に関与してくるエンジェル投資家もいるので注意が必要です。
したがって、出資を募る場合はその投資家に関しても調べておくと良いでしょう。なおエンジェル投資家のほとんどは第一線で活躍する人たちですので、評判などある程度のことは調べられるはずです。
“うまい話には裏がある”とは良く言ったもので、残念ながらエンジェル投資家を名乗って詐欺を働く人も存在します。
特にサイトを通じて投資家を探すマッチングサイトにおいては注意が必要で、サイトによっては管理がずさんなところも存在します。
そのため、マッチングサイトを利用してエンジェル投資家を探す際は、そのサイトの信用性に加えて、投資家のプロフィールなどもしっかりチェックする必要があります。
そもそもエンジェル投資家から出資を受けるというのは決して容易なことではありませし、すぐに見つかるほど生易しいものでもありません。
もし言葉巧みに誘ってきた場合は、疑う気持ちも忘れないようにしてください。
なお以下の記事では、詐欺ではないですが、「起業で一攫千金」などという上手い話に乗ってしまい、多くの時間や労力を搾取された事例を紹介しています。こちらもぜひ参考にしてください。
先ほども紹介したように、マッチングサイトへの投資家募集の掲載は、金融商品取引法における発行開示規制に該当するリスクがあります。
たとえ罰せられることになったとしても、マッチングサイトは責任を負ってくれません。
自分の身を守るためには、きちんと法律を理解して使用するか、あやしいマッチングサイトは利用を避けるようにしましょう。
今回は、エンジェル投資家について詳しく解説してきました。
エンジェル投資家から出資が資金調達方法として身近になってきているのはたしかですが、まだまだそれも限定的です。そもそもエンジェル投資家から出資が自分に合っているとも限りません。
お金を得るというより、強力なアドバイザーを得るというのがエンジェル投資家の本来のメリットです。
単純に資金調達をしたいのであれば手段は他にもありますので、広く選択肢をもって検討するようにしましょう。
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現在、登録済のベンチャー企業は2,600社以上、投資家数は900名以上にのぼります。
画像出典元:O-dan