「上場企業の役員報酬ってどのくらい?」「一般社員と比べて、どのくらいの差があるの?」など、役員報酬について気になる人も多いでしょう。
上場企業の役員報酬額は、民間の調査機関によって明らかになっているのです。
そこで今回は、上場企業の役員報酬額が知りたいあなたのために、トップ企業がいくらの報酬を支払っているのかなどを詳しく紹介していきます。
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役員報酬とは、取締役や執行役、監査役など、法人の役員に対して支払われる報酬のことです。
役員報酬も給与と同様に、一定額が毎月支払われます。
一定額が毎月支払われるため、給与と混同しがちですが、株式会社と任意契約を結んでいる役員は、あくまで報酬という扱いです。
役員報酬は従業員の給与とは違い、法人税法や会社法などによって、ルールが厳しく定められています。
日本企業のうち、2022年10月現在で、東証に上場している企業は3,800社余りあるとしています。(参考:日本取引所グループ)
信用調査会社である「東京商工リサーチ」の調査結果によると、このうち役員報酬額が1億円以上で開示された企業は287社で、人数にして663人です。(2022年3月期決済時)
上場企業ともなると、役員報酬も高額になるということがわかります。
では実際に、有名企業はどのくらいの役員報酬が支払われているのでしょうか。
東証に上場している有名企業6社の2022年3月期の役員報酬総額を紹介します。
(※参照元:IR BANKの各企業における役員報酬ページより)
役員数 | 役員報酬総額 |
11名 | 56億6,700万円 |
【事業内容】
半導体製造装置事業および、フラットパネルディスプレイ製造装置事業を展開
役員数 | 役員報酬総額 |
44名 | 51億2,800万円 |
【事業内容】
5つのセクター「IT・エネルギー・モビリティ・インダストリー・ライフ」における、製品の開発・生産・販売・サービスなど幅広く展開
役員数 | 役員報酬総額 |
15名 | 31億5,500万円 |
【事業内容】
医薬品などの研究開発をはじめ、製造、販売、輸出入を展開
役員数 | 役員報酬総額 |
32名 | 31億1,100万円 |
【事業内容】
三菱UFJ銀行など、三菱グループの金融持株会社。傘下子会社およびグループの経営管理、ならびにそれに付帯する業務を展開
役員数 | 役員報酬総額 |
15名 | 22億5,300万円 |
【事業内容】
自動車の生産および販売
役員数 | 役員報酬総額 |
17名 | 13億5,700万円 |
【事業内容】
電気メーカーである「パナソニックグループ」の統括持株会社。家電をはじめ、空質空調・食品流通・電気設備・デバイスなどの開発、製造および販売
前述のとおり、1億円以上で開示された企業は287社で、人数にして663人とされています。
このうち、株式会社日立製作所は、18人の役員が1億円以上の報酬を得ており、人数としては上場企業のなかでも最多です。
なお、開示人数が多かった業種を順に見てみると、以下のようになっています。
こうしたことから、役員報酬が高額な傾向にある業種は、圧倒的に製造業であるということがいえるのです。
上場企業の役員報酬を見てきましたが、ではベンチャー企業の役員報酬はどうなっているのでしょうか。
ベンチャー企業の場合、シード期、アーリー期、ミドル期など、成長ステージによって役員報酬も異なってくるでしょう。
一般的に、創業したてのシード期で200〜300万円前後、アーリー期だと500万円前後、ミドル期になると1,000万円前後となっているようです。
しかしながら、新しいビジネスを展開するベンチャー企業は、急成長することが多く、数年のうちにメガベンチャーとなるケースも珍しくありません。
たとえば、メガベンチャー企業として有名な「メルカリ」ですが、取締役をはじめとする役員報酬総額は、4億3,400万円となっています。(※参照元:IR BANK |メルカリ 役員報酬の推移)
報酬総額を見ると、とても高い水準であることがわかるでしょう。
ベンチャー企業は、小・中規模の割合が比較的高いですが、近年のIT化に伴い、急成長する企業も少なくないのです。
前述のとおり、2022年3月期決算の時点で、役員報酬が1億円以上として開示した企業は287社、人数にして663人です。
とても高い水準といえる日本企業の役員報酬ですが、一般従業員の給与と比較した場合、どれだけの差があるのでしょうか。
有価証券報告書に基づき、東洋経済データ事業局が作成した「年収格差ランキング」によると、10倍以上の差がある企業は165社となっています。(2020年8月期~2021年7月期)
以下は、役員と一般従業員の給与差について、1位から10位までをランキング形式で示した表です。
順位 | 企業名 | 年収格差 (倍率) |
役員報酬 (平均) |
従業員給与 (平均) |
1 | トーシンホールディングス | 59.85倍 | 2億4,660万円 | 412万円 |
2 | ネクソン | 54.01倍 | 3億2,300万円 | 598万円 |
3 | 武田薬品工業 | 49.96倍 | 5億3,760万円 | 1,076万円 |
4 | ノエビアホールディングス | 44.19倍 | 2億4,480万円 | 554万円 |
5 | ソフトバンク | 41.89倍 | 3億4,350万円 | 820万円 |
6 | トヨタ自動車 | 40.56倍 | 3億4,800万円 | 858万円 |
7 | 住友不動産 | 39.67倍 | 2億6,537万円 | 669万円 |
8 | 東京エレクトロン | 37.52倍 | 4億4,237万円 | 1,179万円 |
9 | ユニバーサルエンターテインメント | 35.66倍 | 2億2,575万円 | 669万円 |
10 | エイベックス | 29.22倍 | 2億2,620万円 | 774万円 |
引用元:東洋経済データ事業局「年収格差ランキング」
従業員との給与差がもっとも大きかったのは、59.85倍の差が出た「株式会社トーシンホールディングス」です。
なおこの差は、2021年5月に退任した創業者「石田信文氏」の退職慰労金およそ10億円が計上されたため、一時的に上昇したものだと考えられます。
2位は、54.01倍の格差があった、パソコン向けのオンラインゲーム事業を展開する「株式会社ネクソン」です。
社内取締役3人のうち、代表取締役社長であるオーウェン・マホニー氏の役員報酬が8億8,700万円、ほか2人の取締役も1億円以上の報酬を得ています。
3位は、49.96倍の格差がある、大手製薬会社の「武田薬品工業株式会社」です。
武田薬品工業の役員報酬はとても高額で、社長兼最高経営責任者(CEO)のクリストフ・ウェバー氏は、上場企業のなかでもトップ5に入ります。
ちなみに、製薬業界における役員報酬ランキングの上位3位が、いずれも武田薬品工業の取締役です。
役員と一般従業員の給与差はこのようになっており、大企業であるほど年収格差が大きくなる傾向にあるといえるでしょう。
役員報酬総額の上位は、いずれも外国人の割合が高くなっています。
では、日本人だけを見た場合、誰がトップクラスの役員報酬を手にしているのでしょうか。
日本人でトップクラスの役員報酬を得ている大物役員10名を紹介します。
19億400万円
黒土始 氏は1922年生まれの100歳で、なんと現役の役員!
終戦後の1960年に「第一タクシー有限会社」を設立し、代表取締役社長に就任しました。
その後も「第一通産株式会社」(現:第一交通産業株式会社)の設立やM&Aの実施などを行い、拠点を全国に広げタクシー保有台数8千台を超える、全国一の企業グループへと成長させています。
2001年に同社の代表取締役会長に就任、その後は体調不良を理由に代表権のない取締役に退くも、2017年には現職復帰しています。
2022年6月、100歳の節目と同時に取締役会長を退任し、現在は同社の相談役として経営陣をまとめています。
18億8,800万円
東京大学経済部を卒業後、1983年4月にソニー株式会社に入社した吉田憲一郎 氏。
グループ会社への出向やアメリカ赴任などを経て、執行役員や代表取締役社長の座にも就いています。
2013年にはソニー株式会社 執行役 EVP CSO 兼 デピュティ CFOを務め、2018年4月に代表執行役 社長 兼 CEOに就任しました。
現在は、同社 取締役 代表執行役 会長 兼 社長 CEOとして、業界をけん引しています。
※2021年4月、ソニー株式会社からソニーグループ株式会社へと社名を変更。
16億6,500万円
河合利樹 氏は明治大学経済部卒業後の1986年4月、東京エレクトロン株式会社(TEL)へ入社しました。
欧州への駐在やビジネスユニットマネージャー、企画部長などを経験した後、2010年に執行役員 兼 ジェネラルマネージャーに就任。
2015年には代表取締役副社長 兼 COO、その1年後の2016年には代表取締役社長 兼 COOに就任し、現在にいたります。
11億7,200万円
大学卒業後に5年間の銀行勤務を経て、1958年に創業家である「鈴木修三氏」の娘婿として、同年4月に鈴木自動車工業(現スズキ)へ入社した鈴木修氏。
1978年6月、専務を経て、同社代表取締役社長に就任しました。(現社長は長男の俊宏氏が務める)
現在は、相談役に徹するかたわら、2018年に個人で設立した「公益財団法人 鈴木道雄記念財団」の理事長を務めています。
11億2,200万円
古森重隆 氏は1963年に東京大学経済学部を卒業し、富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)へ入社しました。
本部長や海外の支社長、常務などを経て、2000年に代表取締役社長に就任。
写真フィルム業界からの撤退を余儀なくされた事業低迷期から、会社の業績立て直しに成功したのは古森氏の功績です。
2008年3月期には、V字回復となる過去最高益を達成するなど、偉大な経営者として知られています。
21年間に渡り、富士フイルムの経営を率いてきた古森氏は、現在最高顧問に退いています。
9億7,600万円
1974年に東京大学経済学部卒業後、同年4月に伊藤忠商事株式会社へ入社し、繊維の営業畑を一環して歩んできた岡藤正広 氏。
常務や専務などの役員を得て、2009年には代表取締役副社長へ就任。
2010年4月から代表取締役社長となり、現在は代表取締役会長CEOとして、同社の経営をけん引しています。
9億1,700万円
早稲田大学を卒業後に保険会社を経て株式会社オン・ザ・エッヂへ。入社の翌年には執行役員副社長へ就任するというスピード出世を成し遂げた出澤剛 氏。
株式会社ライブドアに社名を変更した同社で、2007年に代表取締役社長に就任しています。
現在はZホールディングス株式会社の代表取締役Co-CEO(共同最高経営責任者)とMarketing & Sales CPOの他にもLINE株式会社(旧LINE分割準備株式会社)代表取締役社長CEOも務めています。
7億8,400万円
1979年3月、京都大学経済学部を卒業後、同年4月に三菱商事株式会社へ入社した垣内威彦 氏。
本部長などの役職を経て2013年に常務執行役員・生活産業グループCEOに就任しました。
2016年に代表取締役社長へと昇格。2022年より代表取締役会長に就任。同年6月、同社社外取締役となり現在に至ります。
6億8,500万円
1979年に慶応義塾大学法学部を卒業した豊田章男 氏は留学やアメリカの投資銀行勤務を経て27歳の時にトヨタ自動車株式会社に入社しました。
入社後、豊田家だからと特別扱いは一切しないと父(章一朗氏:6代目社長)に言い渡され、一社員として生産管理や国内営業職などを経験しました。
2001年からは次々と昇進を果たし、2009年6月、リーマンショック後の厳しい時代に、同社 取締役社長(11代目)に就任、現在に至ります。
ちなみに、「モリゾウ」という名で、レーシングドライバーなど、社長とは違った一面を持っていることでも知られています。
6億4,500万円
十時裕樹 氏は1987年3月、早稲田大学商学部を卒業後、同年4月にソニー株式会社(現:ソニーグループ株式会社)へ入社しました。
入社後、財務部やロンドンの駐在を経て、1997年にソニー銀行の立ち上げに携わり、2001年に石井茂氏と共にソニー銀行株式会社を設立させ、代表取締役に就任しました。
その後、様々な役職を経験し、2019年6月よりソニーグループ(株)の取締役 代表執行役 副社長 兼 CFOを務めています。
なお2018年6月より、株式会社リクルートホールディングスの社外取締役にも就任しています。
役員報酬は基本的に、資本金や企業規模、利益額などが大きくなるほど金額も大きくなる傾向にあります。
とくに上場企業の場合、非上場企業と比べて役員報酬も高額となる傾向にあり、一般社員との給与差も大きくなるのが現状です。
この記事で、トップクラスの役員報酬額が大体把握できたかと思います。
少しでもトップクラスに近づけていけるよう、モチベーションを高く持ち、日々頑張っていきましょう。
画像出典元:O-DAN