表計算ソフトといえばエクセル。このように言われるほどエクセルが主流でしたが、近年ではスプレッドシートを使用する人が増えてきました。
スプレッドシートはエクセルと同じ表計算ソフトで、基本的な機能も同じですが、特徴に大きな違いがあります。
そこで今回は、スプレッドシートとエクセルの違いや特徴、さらには使いにくい点や双方の互換性についても詳しく解説していきます。
このページの目次
スプレッドシートは、Google社が無料で提供しているクラウド型の表計算ソフトです。
クラウド上で動作するため、インターネット環境さえあれば、場所や端末に依存することなく、いつでもどこでも自由に利用できる。といった特徴を持ちます。
また、スプレッドシートならではの便利な機能も搭載されているので、どのようなことができるのか知っておくと良いでしょう。
スプレッドシートはエクセルと同様な表計算をオンライン上でおこなえるツールです。
そのため、ひとつのシートを複数のユーザーで共有しながらリアルタイムで同時編集することができます。
また、同時編集は最大50人まで、閲覧だけなら最大200人まで共有することができ、誰がどこのセルを編集しているのかなど、作業状況も一目で確認することが可能です。
複数人でひとつのシートを編集し合えるというところが、スプレッドシートの大きな特徴です。
スプレッドシートは自動保存がデフォルトとなっており、変更を加えた時点で勝手に保存されます。
そのため、「苦労しながら時間をかけて作成したのに、保存しないまま閉じてしまった…」といったうっかりミス。停電や故障などが原因で「保存しないまま途中で終了してしまった」といった予期せぬ事態による強制終了。こうした事態も自動保存であれば問題ありません。また、スプレッドシートは世代バックアップがされているため、好きな時点にさかのぼって再編集することも可能です。その都度自動保存がおこなわれ、好きな時点に戻れる。これはクラウドシステムであるスプレッドシートならではの機能です。
スプレッドシートはPCだけでなく、スマホやタブレットを使って閲覧したり、直接編集したりすることもできます。そのため、外出先や移動中であっても、インターネット環境さえ整っていれば、いつでもどこでも編集し、メンバーと共有することが可能です。場所や端末に依存することなく、いつでもどこでもすぐに使うことができる。これは作業効率化を図るうえで非常に重要なポイントといえるでしょう。
表計算ソフトとして優秀なスプレッドシートですが、やはりデメリットも存在します。ここではスプレッドシートのデメリットについて紹介しますので、導入する前にしっかりと覚えておいてください。
前述のとおり、スプレッドシートを使うには、基本的にインターネット回線が必要です。そのため、インターネットが繋がっていない状態だと編集作業をすることができません。つまり、何らかの通信障害が発生してしまうと、復旧するまで作業を中断せざるを得なくなるということ。実際、2020年12月14日にGoogle大規模障害が発生し、一部のサービスが約45分間、利用できなくなったといった問題も生じています。また、処理スピードが遅くなるなど、利用しているサーバーのアクセス状況によって動作が不安定になることもあります。
スプレッドシートを使用する際はインターネットを介します。インターネットを介すということは、それだけサイバー攻撃を受ける可能性も出てくるということ。また、サイバー攻撃以外にも、共有用のURLを別の誰かに誤送信してしまうなど人為的なミスによる情報漏洩。こうしたリスクも考えられます。とくにスプレッドシートは進捗管理や顧客管理に活用されるケースが多く、機密性の高い内容も多く含まれます。
これはスプレッドシートに限らず、インターネットを介して使用するクラウド型は、セキュリティに関するリスクが伴います。使用する際はセキュリティに関するリスクを十分理解し、そのうえで対策を徹底することが重要です。
エクセルもスプレッドシートも同じ表計算ソフトですが、スプレッドシートでしかない独自の関数もいくつか存在します。この章では、スプレッドシートでしかない関数のうち、代表的な関数2つを紹介します。
ARRAYFORMULAは、配列数式から返された値を複数のセル(行・列)に適用、表示させることができる関数で、スプレッドシートのなかでも最も代表的な関数です。
たとえば、「10人が試験を受け、そのうち90点以上であれば合格。それ以下なら不合格」とした条件で作成する場合、数式は
「=ArrayFormula( IF(B2:B11>=90,"合格","不合格"))」
となります。
これで対象範囲のセル(B2~B11)すべての値を返すことができます。
エクセルの場合、対象範囲すべてに数式を入れる必要があり、行数が100、500、1000と増えていくにつれ作業が面倒で、数式の入れ忘れなどのミスも発生しやすくなります。
この関数は、ひとつのセルに数式を入力するだけですべて適用してくれるため、ミスなく効率的に作業をすることができる非常に便利な関数です。
IMAGE関数は、セル内に画像を挿入するための関数です。セルに画像を挿入することはエクセルでもできますが、その場合画像データを貼り付ける必要があります。
しかし、スプレッドシートのIMAGE関数は、画像データのURLを貼り付けることで、自動的に画像を表示させてくれるのです。また、数式に高さや幅を指定することで、任意の画像サイズに変更することも可能です。わざわざ画像を保存してから貼り付ける必要がないので、非常に便利です。
ただし、画像を表示できるのは、インターネット上で公開されているものに限ります。
スプレッドシートはエクセルとほぼ同じなので、特別使いづらいといったところはありません。ただ、強いて言うなら、下記の2点が使いづらさに該当するところでしょう。
スプレッドシートは便利で高機能な表計算ツールですが、図形描画に関しては使いにくいといった声も少なくありません。そもそもスプレッドシートにある作図機能は、あくまで簡易的なものなので、エクセルのように凝った図形描画には向きません。
また、直接シートに描画できるわけではなく、図形描画ツールで作成してからシートに反映させるといった手間。さらに、作成した図形はビットマップデータとして挿入されるため、拡大時の粗さが目立つ。
こうした要因などから、とくにエクセルに使い慣れている人からすると、使いづらいと感じるかもしれません。
パソコン側で処理されるエクセルに対し、スプレッドシートはサーバー上でプログラムが処理されます。そのため、関数の計算やデータ処理など、一つひとつの動作が遅くなる場合があります。また、データが大きくなればなるほど処理にかかるスピードも遅くなりがちです。そのため、膨大なデータを扱う場合、処理スピードに若干のストレスを感じる人もいるでしょう。
表計算ソフトとしてマイクロソフト社が有償で提供しているのがエクセルです。
エクセルは、パソコンなどのデバイスに直接ソフトをインストールして使用するため、インターネット回線を必要としません。
そのため、クラウド型とは違ってウェブ環境に左右されることなく、常に安定した作業がおこなえるのが特徴です。
また、エクセルはビジネスの現場で当たり前のように使用されている主流ソフトなので、ファイルを共有する際も困ることはないでしょう。
なお、エクセルでは下記の3つが代表的な機能となっています。
表計算機能はエクセルの代表的な機能です。合計や平均値、最大値・最小値など、求めたい数値に対して計算式や関数を用いることで自動計算し、答えを算出します。
また、罫線の種類やセルの配色も豊富に用意されているので、見栄えの良い美しい表を簡単に作成することもできます。さらにオートフィルタ機能を使えば、大量のデータから条件に合うものだけを抽出することができます。
マクロの記録機能は、エクセル内でおこなう操作を自動化するための機能です。
通常、マクロはVBA(Visual Basic for Applications)を用いてプログラミングする必要がありますが、エクセルにはマクロの記録といった機能があります。
このマクロの記録は、画面上で人が実際におこなった作業手順を覚え、マクロを作成します。そのため、VBAやプログラミングの知識がなくてもマクロを実行することが可能です。
ただし、マクロの記録はあくまで単純操作を繰り返し行っている場合に有効な機能で、複雑な操作を自動化するには、VBAを使ってプログラミングする必要があります。
エクセルは表計算機能に加え、グラフ作成機能も充実しています。会議やプレゼンなど何らかの資料を作成する際、グラフを用いながら作成することも少なくないでしょう。
エクセルに搭載されているグラフ作成機能は、円グラフをはじめ棒グラフや折れ線グラフ、面グラフなど、さまざまなグラフを作成できるようになっているので、ビジネスの現場でも大いに活躍してくれます。
エクセルにはエクセルにしかない独自の関数もいくつか存在します。ここではエクセル独自の関数を2つ紹介しますので、覚えておくと良いでしょう。
PHONETIC関数は、セル内に入力した文字列に対し、フリガナを表示させる関数です。
たとえば、セルB2に"神奈川県"と入力した場合、
=PHONETIC(B2)
とすることで"カナガワケン"と表示されます。また、すでに入力してある文字列に対しても適用させることができるので、フリガナとして手で入力する手間が省けて便利です。
ASC関数は、文字列に含まれる全角文字を半角に変換するための関数です。それとは逆に、半角文字を全角に変換するための関数がJIS関数です。
とくに住所や電話番号に関しては全角と半角が混在しやすいため、これらの関数を使って全角・半角どちらかに統一させたいといったときに便利です。
表計算ソフトとして多くの人に使用され、非常に有名なエクセルですが、エクセルではできないことやデメリットも当然いくつかあります。では、どのような点がデメリットとなるのか、エクセルのデメリットを2つ紹介します。
エクセルには共有ブック機能というものがあり、その機能を使うと同時にファイルを編集することが可能です。
しかし、スプレッドシートのように、編集しているユーザーの作業状況が確認できなかったりタイムラグが生じたり、さらにはデータが破損するといったリスクもあります。
こうした問題やリスクを考慮すると、複数人での同時編集は、基本的にできないものと考えておくべきでしょう。
ひとつのワークシートにつき、行数と列数、それぞれに最大数が決められており、最大行数は1,048,576行、最大列数は16,384列です。それを超える場合はワークシートを分けなければなりません。
また、、限界を超えるほどの膨大なデータを処理する場合、動作が著しく重くなります。
別のワークシートに分けることで管理も煩雑になりかねないため、エクセルで膨大なデータを扱うといった場合、ストレスを感じるかもしれません。
続いてエクセルの使いづらい点です。使いづらいという感覚には個人差があるため、一概には言えません。しかし、下記に挙げる2点は広く言われていることで、実際に筆者も感じるところでもあります。
エクセルには、セル内の書式を自動変換してくれる機能があります。
たとえば「1/1」と入力すると「1月1日」と変換され、
「08012345678」と入力すれば「8012345678」と、変換されます。
自動変換は場面によって便利な機能ですが、意図したとおりに入力されないのは逆にイライラするものです。
なお、書式の自動変換は、文字の先頭にシングルクォーテーションを入力したり、セルの書式設定で文字列に変更したりすることで解決しますが、その都度おこなわなければならないのは、やはり面倒です。
エクセルは誰でも簡単に編集することができますが、「いつ・誰が・どの端末」で編集したのか履歴を追うことができません。そのため、ワークシートが正常に動作しないなど、予期せぬトラブルが発生した場合、その原因を特定するのが困難です。
とくにIF関数で細かく条件を分岐させている場合は数式も煩雑化しているため、不具合が起きた場合は専門知識のある人でないと対処が難しくなります。誰でも容易に編集できるということは、それだけうっかり数字を変えてしまったり消してしまったりする可能性も高いということなのです。
もともとエクセルを使っていたが、便宜上の理由からスプレッドシートに移行したい。その逆で、スプレッドシートからエクセルに移行したい。業務効率化を図るうえで、シートの移行を考えるケースも少なくないでしょう。ただ、シートを移すにしても、双方に互換性はあるのかどうか。というところが気になるところです。
結論をいうと、スプレッドシートとエクセルには一定の互換性があります。そのため、どちらかのシートにファイルを移行させても問題なく編集することができます。もちろん、関数のほとんどが共通しているものなので、そのまま問題なく変換されます。
ただし、移行する際に注意すべき点があります。それがレイアウト崩れです。とくに、下記で挙げる4点については崩れやすいので、変更後はしっかりと確認し、必要に応じて修正を加えるようにしてください。
さて、ここまでスプレッドシートとエクセルの違いなどについて解説してきましたが、結局どちらの方が良いのか?これに関しては、まさに一長一短。正直なところ甲乙つけがたいところではあります。
ただし、拠点を選ばず複数人が同時編集できるといった点や、常に最新の状態を自動保存してくれる点。こうした点を考慮すると、スプレッドシートの方が今の働き方にマッチしており、効率的な作業ができるでしょう。
ただし、エクセルにも優れている点が多くあるため、用途に応じて両方を使い分ける。業務効率化を図るうえで、両方使いがもっとも有効的であると言えるでしょう。
画像出典元:O-DAN / photo A
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