近年の社会情勢の変化やインターネットの普及から、従来のような属人的な営業活動では十分な成果を上げることは難しくなっています。
現在、効率的な営業活動ができていないと感じる企業は、顧客管理から営業活動・カスタマーサポートまでを包括的に管理できるSalesforce(セールスフォース)の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Salesforceとは、世界シェアNO.1と言われるCRMツールです。
これを導入することで、自社が持つあらゆる情報を一元的に管理・共有・分析することが可能になります。顧客一人一人とのエンゲージメントが高まり、チーム、ひいては事業全体のパフォーマンス向上が期待できます。
本記事では、イラストでわかるSalesforceの基本スペックを紹介。特徴や導入によるメリット・デメリット、さらには導入効果を上げるためのポイントを紹介します。
現在自社で保有する顧客情報を十分に生かし、効率的な経営戦略を展開しましょう。
このページの目次
Salesforceの基本情報は、上記イラストで大体は理解していただけたと思います。
ここからは、更に詳しく解説していきます!
顧客管理・営業支援を効率化したい企業にとって、有力な選択肢の一つとなるのが「Salesforce」です。
「顧客とのエンゲージメントを高め、営業能力を底上げしてくれる」などと言われますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。Salesforceの概要について紹介します。
Salesforceとは、あらゆるフェーズの顧客管理や営業支援を行う、クラウド型の総合プラットフォームです。
広く一般に「CRM (Customer Relationship Management:顧客関係管理)ツール」として認識されていますが、「SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)ツール」としての役割も持っています。
Salesforceを導入することにより、顧客管理・営業に関わる以下のことが可能となります。
なお、Salesforceはクラウド型のため、サーバー構築や管理のための手間・コストが掛かりません。
関係社員はどのデバイスからでも必要な顧客データにアクセスでき、スキマ時間で情報を更新・確認することも容易です。
バージョンアップやセキュリティー対策も自動で行われ、業務プロセスが一気に効率化します。
Salesforceを提供するのは、アメリカ・カリフォルニアに本社を置く「セールスフォースドットコム」。1999年に創設されたこの会社は、SaaS型の本格的なクラウドコンピューティング・サービスの先駆けと言われています。
日本法人が発足したのは2000年4月で、現在までにさまざまな国内大手企業がSalesforceを活用しています。
中でも注目を集めたのは、2007年に民営化した「日本郵政グループ」です。
日本郵政グループの顧客管理システムについては、日本オラクルのSaaS型アプリケーション「Siebel CRM On Demand」を担いだNECと、Salesforceを担いだNTTデータが競っていました。
結果、最終的に競り勝ったのは、Salesforceを擁したNTTデータです。これにより、日本国内におけるSalesforceの存在感はますます高まったといわれます。
「International Data Corporation(IDC)」が発表した「Worldwide Semiannual Software Tracker(2020)」によると、SalesforceはCRMの世界市場シェアNO1。これは7年連続の快挙で、現在の顧客企業数は全世界で15万社を超えています。
Salesforceの顧客は、中堅・中小企業から「FORTUNE 500」に名を連ねる大企業まで幅広くそろっています。
アメリカ・ヨーロッパ・アジアなどあらゆる市場でシェアNO1を獲得していますが、これにはどのような理由があるのでしょうか。
Salesforceが世界的に支持される主な理由について3つ紹介します。
Salesforceは、自社のニーズや業務形態に合わせて必要なツールのみをピックアップして使うことが可能です。
選択できるツールは「マーケティング」「営業支援」「Eコマース」「カスタマーサービス」などに関連するもので、組み合わせの決まりはありません。
例えば、最もベーシックなCRM・SFAプラットフォームといわれる「Sales Cloud」にマーケティングを効率化する「Marketing Cloud」を合わせたり、Eコマースをカスタマイズできる「Commerce Cloud」を組み合わせたりすることが可能です。
「顧客のあらゆるフェーズをフルカバーしたい」という企業も「顧客管理と営業支援を徹底させたい」という企業も、自社に最適なシステムを導入できます。
また、UIのカスタマイズ性が高いのもSalesforceの魅力です。
Salesforceの管理画面・入力画面、ページレイアウトなどは、各ユーザーで設定できます。データベース項目なども自由に手を加えられるため、従来のパッケージ製品と比較すると遙かに自由度が高いと言えるでしょう。
「AppExchange」というSalesforce専用ページには、Salesforceと連携できるさまざまなアプリが掲載されています。ここから自社のニーズに必要なものを足していけば、マーケティングや営業支援などをより一層自社向けに最適化できるでしょう。
Salesforceと連携可能な外部ツ-ルのカテゴリとしては、以下のようなものがあります。
例えば、Web会議システム「Zoom」、会計ソフト「freee」、名刺管理システム「Sansan」などは全てSalesforceと連携可能です。
「App Cloud」を活用すれば、業務用アプリケーションの開発も可能です。
「App Cloud」に含まれる機能としては、以下のようなものがあります。
これらの開発クラウドプラットフォーム(PaaS:Platform as a Service)なら、アプリケーション開発に必要な環境はすでに整っています。
開発者はミドルウェアの運用管理を行なうことなく、必要な機能を使用中のアプリケーションに自由に組み込むことが可能です。
ここからは、Salesforceのプラットフォームで組み合わせて使える製品を紹介します。
マーケティングからEコマースまでさまざまな製品があるので、自社のニーズに合うものを見つけましょう。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
Salesforceの主要サービスともいえる、顧客管理(CRM)+営業支援(SFA)システムです。
見込み顧客をそれぞれの段階に合わせて適切に管理し、効率的かつ有益な営業アプローチを可能にします。
主な機能としては、以下のものがあります。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
顧客ごとに最適なカスタマーケアを提供するための、カスタマーサービス用プラットフォームです。「対話」「AI」「モバイル」など、さまざまな次元でカスタマーをケアする機能を実装しています。
特に注目すべきは、オペレーターが必要とする情報を一元的に管理する「Lightning Console」です。
この機能を使えば、オペレーターは顧客のプロファイル、購入履歴、取引先情報を1ヵ所に表示できます。
顧客の求める正しい回答をすばやく提示し、高い水準のカスタマーソリューションを実現することが可能です。
このほかの主な機能としては、以下のものがあります。
また、「オムニチャネル」を使えば、管理者はオペレーターの管理やルーティング、優先順位に基づいた作業割り当てなどもスムーズに行えます。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
顧客とのパーソナルなコミュニケーションを実現できるMAツールです。一般的には「BtoC」向けのツールとして認識されており、より広範囲な顧客へのアプローチを可能にします。
営業部門・マーケティング部門でシームレスに活用できますが、どちらかというとマーケティング寄りのツールです。個々のつながりを掘り下げる商談シーンよりも、広範囲の顧客にアプローチする集客シーンで存在感を発揮します。
大規模送信が可能なメールシステムやターゲットを絞ったデータ配信が可能で、膨大な数の顧客にも対応します。顧客それぞれに対し理想的な「One to Oneマーケティング」を実施できるでしょう。
Marketing Cloudでできることには、以下のようなものがあります。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
クラウド型のECプラットフォームです。Webサイト、スマートフォン、ソーシャルチャネルなどの顧客体験を顧客情報と連携させ、個々に最適化されたカスタマーエクスペリエンスを提供。顧客との信頼関係を着実に築き、ECを強化します。
また、Commerce Cloudのプラットフォームのみで商品の受注・入金管理・カスタマーサポートが可能な点も見逃せません。
顧客のあらゆる行動はデータ化されて蓄積され、顧客の購買行動を踏まえた提案やアプローチを行えます。
Commerce Cloudでできることには、以下のようなものがあります。
また、オンラインストアのテンプレートも豊富で、さまざまな機能を備えたオンラインストアを素早く構築することも可能です。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
CRMのデータ解析ツールです。もともとあった「Einstein Analytics」に代わる機能で、2020年4月にリリースされました。
Salesforce とネイティブに接続可能なため、Salesforce内に格納されているデータをそのまま反映できます。
AIによって解釈された現状、今後の予測、取るべき活動などは、そのままSales CloudやService Cloud内で活用可能です。
Tableau CRMでできることには、以下のようなものがあります。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
自社のニーズに合わせて、スムーズなアプリ開発を助けてくれる開発プラットフォームです。これを活用することで、Salesforceで動作するアプリケーションの構築・実行・管理を行えます。
大きな特徴は、Salesforceに組み込み済みのテクノロジーやサービスを活用できること。ユーザ認証、画面編集、データベース、ワークフロー、レポート・ダッシュボードなどは標準機能で提供されています。
また、アプリ開発に複雑なプログラミングスキルが不要な点もメリットです。クリック一つでアプリケーションを開発できる「スキーマビルダー」「アプリケーションビルダー」「プロセスビルダー」を活用すれば、IT部門の力を借りることなく必要なアプリケーションを開発できます。
作成したアプリケーションはSalesforceの他のシステムとシームレスに連携できるので、データの取得や編集が容易です。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
BtoB向けのマーケティングオートメーションツールです。
BtoCにも使えますが、高額な商材を扱うビジネスに適しています。顧客と密にコミュニケーションを取りながらすすめる「商談型」のビジネススタイルと相性がよいでしょう。
また、Pardotの特徴のうち特に注目されるのが、「エンゲージメントスタジオ(Engagement studio)」です。これは顧客の反応を見ながら最適なアプローチを行えるシステムで、カスタマージャーニーの構築やパフォーマンスの測定を同じ画面内で行えます。
このほかメールマーケティング機能も充実しており、多彩なテンプレートから見栄えのよいHTMLメールを簡単に作成できます。
Pardotでできることには、以下のようなものがあります。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
互いに連携しているWebサイト・ポータル・アプリケーションをスピーディに構築するサービスです。
これを活用することで、Salesforce内のCRM/SFAデータをパートナー企業や顧客と共有できます。パートナー企業とオープンなチャネルを作成したり、顧客向けにパーソナライズされたコンテンツを素早く提供したりする上で有益です。
Experience Cloudでできることには以下のようなものがあります。
画像出典元:「セールスフォース・ドットコム」公式HP
Salesforce内の課題解決のためのプラットフォームが「Salesforce Einstein」。マーケティング・営業・Eコマース・カスタマーサポートといったあらゆる業務にAIを適用し、業務を効率化してくれます。
Salesforce Einsteinのメリットはさまざまありますが、見込み顧客のスコアリングが容易になる点は見逃せません。
Salesforce Einsteinは、複雑な顧客情報を一定のアルゴリズムでスコアリングし、粒のそろったデータを提供します。これにより、ともすれば属人的になりがちなスコアリングの精度が上がり、より効率的なマーケティング活動・営業活動を行えるようになります。
このほか、顧客離反やライフタイムバリューなどの営業成果を予測したり、AIで解決困難な課題にはレコメンデーションを行なったりも可能です。
Salesforce Einsteinの機能としては、以下のようなものがあります。
Salesforceの多彩な機能は、自社のマーケティング活動や営業活動・カスタマーサポートなどを大幅に効率化します。
Salesforceを導入することで具体的にどのような効果が期待できるのか見ていきましょう。
Salesforceのプラットフォームを活用すれば、顧客に関するあらゆるデータを部門の壁なく共有できます。
顧客の満足度を高めるためには、あらゆるフェーズに最適な提案・サポートが行なわれなければなりません。
しかし、マーケティング・営業・サポート部門で顧客情報が共有されていない場合、最適なタイミングでのアプローチや適切なフォローが難しくなります。顧客とのエンゲージメントを築くのが難しく、営業チャンスを逃すこともあるでしょう。
Salesforceで顧客管理を一元化すれば、あらゆるフェーズに最適な提案・サポートを行えます。営業やサポートの精度が上がり、顧客満足度の上昇につながります。
Salesforceを導入すれば、案件情報や進捗情報を全てデータ化して管理できます。正確な予測数値を立てやすく、データに基づく合理的な経営判断が可能です。
一般に、営業にまつわるデータ・進捗管理は属人化しやすいといわれます。日本の営業スタイルは「個人活動」という意識が強く、個々に与えられる裁量が大きいためです。
しかし営業スタイルが変化している昨今、この方法では効果が上がりにくいのが現実です。
Salesforceの導入で全営業社員のデータ・進捗状況を可視化できれば、各人の状況がつぶさに分かります。上司や責任者は個々の営業活動とその後の結果を予測しながら、適切な指示や提案を与えることができるでしょう。
これが個々のアプローチの質を高め、効率的な営業を可能にするのです。
事業を展開する上で、自社の現状を適切に把握したり予測を立てたりすることは非常に重要です。しかし、十分なデータや資料がそろっていない場合、事業の将来予測には「希望」「勘」「思い込み」などが入ってしまいます。
Salesforceを導入すれば、顧客情報から営業の進捗状況まで、膨大なデータがそろいます。それを分析するツールもそろっているため、あらゆる確度からの事業予測・売上予測などが可能です。
経営陣は大きな判断を迫られたとき、極めて精度の高い予測を元に適切かつ現実的な判断を下せるようになります。
企業全体の業務を効率化できるSalesforceですが、企業によっては「使いにくい」と感じることもあるようです。
Salesforceを使う上で、デメリットとなり得るポイントを紹介します。
1. 費用対効果を実感しにくい
2. 使いこなすのが難しい
詳しくみていきましょう。
Salesforceの月額料金は、製品の組み合わせ次第。たくさんの機能を組み合わせれば、コストの負担は大きくなります。なかなか導入効果を実感できない場合、毎月のコストを割高に感じてしまうかもしれません。
しかし、実際のところ、Salesforceを導入しても、即日業務が効率化するわけではありません。また、正確な事業予測やデータ検証を行ないたいと考えても、データが蓄積されるまでには時間がかかります。
Salesforce導入後はいきなり大きな目標クリアを目指すのではなく、「業務効率化できたか」「各部門がシームレスにつながっているか」などの細部に目をやるのがベターです。Salesforceの成果を実感するまでには、時間が掛かると承知しておきましょう。
Salesforceを導入して軌道に乗るまでは、慣れない入力作業に苦労する社員が散見されます。特に営業担当で自己流にデータ管理や進捗管理を行なってきた社員は、Salesforce導入後に業務負担が大きくなったと感じるかもしれません。
Salesforceを導入したばかりの段階だと、成果は見えないのに業務ばかりが増えたような感覚に陥ります。そのまま放置すると、必要項目の入力が適当になったり入力せずに放置したりする社員が現われる可能性もあるでしょう。
Salesforceを導入する際は、しっかりと事前研修を行なうのがベターです。
なお、Salesforceには14日間の無料のお試し期間が付いています。この期間中に自社とSalesforceとの相性を確認しましょう。
Salesforceをただ漠然と導入しても、効果を実感するのは難しいかもしれません。
Salesforceを導入するときは、どのような点に注意すればよいのでしょうか。Salesforceの導入を無駄にしないためのポイントを紹介します。
Salesforceを導入する際は、「どんな課題を解決したいのか」「何のために導入するのか」を社内でクリアにしておきましょう。ここがあいまいだと、バリエーション豊富なSalesforceの製品のうち、どれを選ぶべきか分からなくなります。
主に顧客管理・営業支援がメインなら「Sales Cloud」「Marketing Cloud」が必須ですし、カスタマーサポートメインなら「Service Cloud」が必要です。一方AI機能を取り入れたいなら「Salesforce Einstein」があるとよいでしょう。
どの製品なら自社のニーズにマッチしているのかを適切に判断することが大切です。
Salesforceの導入から定着までには、1~6カ月程度掛かるといわれます。導入計画が適当だと、運用がスムーズにいきません。関係社員がSalesforceを効率的に活用できるよう、初動の段階を適切に取り計らいましょう。
導入計画のプロセスとしては、次の流れを参考にしてみてください。
Salesforceを導入しても、定着化するまでは時間がかかります。導入後は随時アンケートをとったり研修を行なったりして、しっかりとフォローアップに努めてください。
Salesforceの効率的な導入を目指すのなら、Salesforceの認定や資格を受けたベンダーを利用しましょう。
「セールスフォースドットコム」社は、適切なサポートを提供するベンダーについて「コンサルティングパートナー」として紹介しています。
こうした企業はSalesforceの認定資格者が多く、企業ごとに適切な提案やサポートを行なってくれます。
認定担当者の数やエリアで検索して、最適なベンダーを見つけましょう。
Salesforceは「企業経営の安定化」「業務効率化」「事業成長の促進」を後押ししてくれるツールです。業務の中心にSalesforceを配置することで、企業は顧客とのエンゲージメントを高めるとともに、社員同士の密なつながりもサポートできるようになるでしょう。
ただし、ただ漠然とSalesforceを導入しただけでは効果を実感するのは困難です。まずはさまざまあるSalesforceの製品の特徴を理解し、自社に必要なものは何かを絞り出しましょう。
導入目的や計画を適切に立て、Salesforceの効果を最大限に引き出してください。
画像出典元:Pexels