会社の部署や職種の1つである「法務」。しかし、その役割をちゃんと理解している人はどのくらいいるのでしょうか?
法務は簡単に言えば、「法律」に携わる事務や業務、職務のことを指します。
この記事では、法務の役割や仕事内容、法務に就くため必要な資格やスキルなどについてご紹介します。
これを読めば、社内における法務の機能を理解でき、自身が法務に就いたときもその役割を理解しながら働くことができます。
このページの目次
そもそも「法務」とは、どういった意味を持つ言葉なのでしょうか。法務について効率よく理解するためにも、まずは法務の意味や種類についてご紹介します。
法務は、簡単に言うと「法律」に携わる事務や業務、職務のことを指します。
今回は取り上げるのは、そんな法務業務の中でも企業の中で行われる法務業務についてです。以下のような言葉が出てきますので、あらかじめ押さえておきましょう。
基本的に、企業法務はその会社の法務部で行われます。
企業法務のほかにも、法務には様々な種類があります。今回は深く掘り下げませんが、「法務」そのものの理解を深めるためにもチェックしておきましょう。
国際法務 | 複数の国にまたがって行われる法律関係の業務 |
海外法務 | 日本から見て「海外」で行われる法律関係の業務 |
渉外法務 | 外国人を対象にして行われる法律関係の業務 |
会社内で法律に関わる業務を扱う「法務部」。法務部は会社において、「法律」を取り扱い2つの役割を担います。
続いては、この法務部が持つ役割について詳しく見ていきましょう。
まず、法務部は企業活動のアクセル的役割を果たします。言うまでもなく、企業活動の目標は利益を上げること。
法務部は「法律」を駆使して、より会社の経済活動が活発になるようサポートするのです。
もう1つ、法務部には企業活動のブレーキ的役割もあります。例えその企業が多くの利益を出していたとしても、法律違反をしてしまっては元も子もありません。
法務部には、会社が法律を順守しているか確認したり、法律周りの手続きをサポートしたりすることで、企業が法的トラブルに巻き込まれないよう守る役割もあるのです。
法務部の役割を踏まえつつ、続いては法務部の具体的な仕事内容について解説します。
会社の利益を促進しつつリスクヘッジを行うため、法務部は以下のような業務に携わっています。
法務部の行う大きな業務の1つに、「契約・取引」にまつわる業務が挙げられます。
企業は他社と取引する際に契約を交わしますが、そこで必要になるのが「契約書」です。
法務部はこの契約書を作成したり、法的な問題がないか、トラブルに繋がるような内容になっていないかなどを確認・審査したりします。
このチェック業務は「リーガルチェック」と呼ばれており、民法や商法、借地借家法など様々な契約法を踏まえて行われます。
各会社には、社内規定やコンプライアンスが設けられています。この社内規定やコンプライアンスを周知・徹底させることも、法務部の業務です。
これらの決まりは会社の信頼度を上げたり、より働きやすい環境を作ったりするために大きな役割を果たします。
社員向けの研修や相談窓口、各役職者に向けた案内、社内規定の明文化など、その切り口も様々です。
紛争や訴訟など、法的知識を生かして法律関係のトラブルに対応するのも法務部の大切な仕事です。
とはいえ、トラブルは訴訟へ発展する前に防ぐのが1番ですし、B to C企業などの場合は法務部の中にカスタマーセンター等が置かれることもあります。
そういった意味では、顧客の相談対応やサポート業務も法務部の業務と捉えられるでしょう。
新人の社員はもちろん、その会社に長く在籍していたとしても法律に詳しいとは限りません。
だからこそ、法務部は仕事の一環として法律に詳しくない社員の法務相談に乗ることもあります。
部署や会社によって求められる法律知識は異なるため、より専門的な知識が必要です。
日本や世界における法制度は、少しずつ変化を遂げています。そういった法制度の変化を調査し、社内に周知するのも法務部の業務です。
正しいリサーチ能力はもちろん、法制度を分かりやすく確実に社内へ周知することが大切になってきます。
法務部では子会社の設立、株式の発行・分割などの経営によって発生する法的手続きも行われます。
これらは会社経営の中でも特に法的な知識が求められるため、必要に応じて社員だけでなく税理士や経営陣とも連絡を取り合います。
法的手続きという意味では、会社法に則して株主総会や取締役会を開催するのも法務部の役割です。
上記のような仕事を行う「法務」ですが、法務の仕事に就くためにはどういった能力が必要なのでしょうか。
ここで、法務の仕事に必要なスキルや資格についてご紹介します。
まずは、法務の仕事に必要なスキルについて簡単にまとめてみました。
法務の仕事には法務相談なども含まれるため、法律の知識だけでなくその業界にまつわる深い知識も必要です。
また、海外の企業と取引を行ったり、契約書を交わしたりする機会があることから、英語力も重要になってきます。
株主総会や取締役会など、多方面の関係者と連絡を取り合う仕事では、じゅうぶんなコミュニケーションスキルも必要になるでしょう。
いっぽう、法務の仕事において絶対必要な資格というものはありません。しかし、取得していることで仕事の役に立つ資格はあります。
そこで、以下に法務の仕事で役に立つ資格をまとめました。何かしらの形で法務の仕事に携わりたい方は、ぜひ取得を検討してみてください!
ビジネス実務法務検定 | ビジネスにおいて必要な知識を習得できる検定。 1~3級まであるが、資格のアピールを考えるのであれば2級以上の取得がおすすめ。(民間資格) |
ビジネスコンプライアンス検定 | 企業活動を行うにあたり、適切なコンプライアンス意識を持っているか評価される検定。 BASICWEBテスト・初級・上級の3種類用意されているが、法務業務であれば上級の取得が望ましい。(民間資格) |
行政書士 | 官公庁への許認可を申請する書類の作成・提出手続きの代理などが認められる資格。(国家資格) |
司法書士 | 不動産・商業の登記や裁判所・検察庁などに提出する書類の作成などを、依頼のもと行える資格。(国家資格) |
これまでのお話で感じた方もいるかもしれませんが、法務の仕事には絶対必要な資格はありません。そのため、未経験者でも法務の業務に就くチャンスはあります。
とはいえ、法務部は法律という専門知識を扱う部署です。そのため一般的には、大学や大学院で法律を学んだ人や、司法試験に向けた勉強をしていた人など、何かしら法律の知識に触れていた方が所属することが多くなっています。
しかし、未経験・かつ法関係の大学等を出ていない社員を法務部へ所属させ、実務の中で力をつけさせる会社ももちろんあります。
もしそういった形で法務を目指したいのであれば、「ビジネス実務法務検定」2級以上を取得するのがおすすめです。
民間資格のため受験しやすく、法務以外の業務にも役立つ知識を得ることができますよ。
法務業務に必要なスキルや、あると便利な資格を踏まえて、法務の仕事に向いている人について解説します。
自分が法務の仕事に向いていそうかどうか、考える材料の1つにしてみてください。
前提のような部分にはなってきますが、その業界や法律のじゅうぶんな知識を持っている人は法務業務に向いています。
法律知識については大学時代の勉強や資格から得ることが多いですが、業界の知識は所属する部署や継続年数によって変わってくる部分です。
そのため一度、自分がどういった業界知識を持っているのか、整理する時間を取ってみてもいいかもしれません。
法務業務の場合、様々な立場の人と連絡を取り合いながら仕事することもあります。そのため、複数の状況やその進捗に気を配りながらコミュニケーションが取れる人の方が向いていると言えるでしょう。
先ほど「未経験の方でも法務業務に携わるチャンスはある」とお話ししましたが、中小企業などの場合、法律知識よりこういった「マネジメント能力」「コミュニケーション能力」を買われて法務に就くケースもあるそうです。
では反対に、法務の仕事に向かない人にはどういった特徴があるのでしょうか。以下へまとめました。
法務は法律を扱う仕事のため、事務作業や文章を扱うことが苦手な方は業務遂行が難しくなる可能性があります。
また、法務は複数の状況を踏まえて業務を進めることが多いため、1つの状況に集中したい方や自分のペースで仕事をしたい方はあまり向いていません。
自分の特性と業務内容を踏まえて、法務業務へ携わるかどうか検討するのがおすすめです。
法務部は「法律」という専門的な知識を駆使する部署です。そのため、どのくらい給料をもらえるのか、気になる方もいらっしゃるはず。
そこで、最後に法務部の平均年収について調査してみました!
20代 | 350~450万円程度 |
30代 | 570万円程度 |
40代~ | 750万円程度 |
20代法務部の年収は、おおよそ350~450万円程度と言われています。ただし、より早い時期から法務部で働いており、継続年数が長い場合は500万円以上の年収になることもあるようです。
それほど、法務職において経験してきたスキルや継続年数は年収と大きく関わっています。
30代法務部の平均年収は、おおよそ570万円程度です。このくらいの年齢になると、通常業務だけでなくリーダー職や管理業務に携わる人も出てきます。
そうなると重要なのが、法務部内における役職。年収を上げたい方は、法務部内でのキャリアアップを視野に入れながら働く必要があります。
また、弁護士資格を取得している場合には人によって年収1000万円を超えることも。
40代、そして50代へ差しかかってくると、平均年収はおおよそ750万円程度まで上昇していきます。
キャリアと共に収入が上がるため、部長の場合おおよそ年収1300万円を稼ぐようなイメージを持ってみてください。
この頃までに専門的な法務知識や豊富な業務経験を積むことで、年収1000万円以上を目指すことが可能になります。
法務業務の場合、日本企業より外資系企業の方がより平均年収が上がる傾向にあるそうです。
法律を扱う法務業務では、外資系企業の方がより外国企業とのやり取りが増えます。
その分英語力やコミュニケーション能力などにおいて優秀な人材を求めており、多少報酬を上げてでも価値の高い人材を確保したいと考えているのです。
最初から外資系企業に就職するのは不安…という方は、日本企業で経験を積んだあと、外資系企業の法務に挑戦する方法も検討してみてはいかがでしょうか。
法務業務や法務部の役割、法務部に向いている人や平均年収などについて見ていきました。
会社の経済活動を促進しつつ、法的リスクから会社を守るサポートをする法務職。
未経験の場合でも、早期から携わることで専門的な知識を身につけつつ、キャリアアップできる可能性を持っています。
今回の記事を読んで法務の仕事が気になった方は、ぜひキャリア設計の中へ取り入れてみてはいかがでしょうか。
画像出典元:o-dan