電子契約で収入印紙がいらないのはなぜ?印紙税が非課税になる法的根拠を解説!

電子契約で収入印紙がいらないのはなぜ?印紙税が非課税になる法的根拠を解説!

記事更新日: 2024/06/19

執筆: 佐藤杏

電子契約に収入印紙は必要ありません。

電子契約は、印紙税が課税されないだけでなく、業務効率化やコスト削減など、多くのメリットをもたらします。

この記事では、なぜ電子契約で収入印紙が不要になるのか、その法的根拠を分かりやすく解説します。

紙契約から電子契約へ移行し、業務の効率化を実現しましょう。

 

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印紙税とは?

印紙税とは、契約書や領収書など、一定の文書に課税される税金です。

印紙税の納付方法、課税対象となる文書について、わかりやすく解説します。

納付方法

印紙税の納付方法は、大きく分けて4つあります。

  • 印紙の貼付
  • 税印を押す
  • 印紙税納付計器により納付印を押す
  • 書式表示による方法

 課税文書に収入印紙を貼らないと、印紙金額の3倍に当たる金額を支払う義務が発生するため、注意しましょう。

印紙の貼付

最も一般的な方法で、収入印紙を課税文書に貼り付け、消印することで納付します。

必要な印紙を準備するだけで手軽ですが、毎回印紙を購入する必要があるほか、貼り付けミスや紛失のリスクがあります。

税印を押す

事前に印紙税を納付し、税務署に設置されている税印押なつ機で税印を押す方法です。

事前に税務署に申請する必要がありますが、大量に課税文書を作成する場合に便利です。

印紙税納付計器により納付印を押す

税務署長の承認を得て、印紙税納付計器を設置し、納付印を押す方法です。

印紙税納付計器の設置に費用がかかりますが、継続的に大量に課税文書を作成する場合に便利です。

書式表示による方法

税務署長の承認を得て、複数の課税文書に同一の書式を表示し、金銭で印紙税を納付する方法です。

書式表示の承認が必要ですが、同一種類の課税文書を継続的かつ大量に作成する場合に便利です。

課税となる文書

課税対象となる文書は、20種類に分類されており、文書の種類や契約金額、受取金額等により税額が定められています。

印紙税が課税されるおもな文書は以下のとおりです。

  • 不動産に関わる契約書(売買、交換など)
  • 請負に関する契約書(工事、運送、広告など)
  • 約束手形、為替手形
  • 金銭や物品の受取書(売上代金、家賃、保証金など)
  • 定款の原本
  • 株券、出資証券
  • 継続取引の基本契約書

 たとえば、1,000万円の工事請負契約書を作成する場合、4万円の印紙税が必要です。

詳しくは、国税庁の資料で確認する必要があります。

電子契約で印紙が不要な理由

結論:「文書」が作成されなければ印紙税は0円になる!

契約書に収入印紙を貼って印紙税を納税する義務は、印紙税法第2条および第3条に定められています。

契約書の印紙税は、取引や契約自体に課税されるのではなく「取引や契約の文書(例:契約書など)」が課税対象です。

つまり、取引や契約を行っても「文書」が作成されなければ印紙税は、0円になります!

電子契約で印紙税が0円になる文書とは?

では電子契約で、印紙税が0円になる文書とはどんなものでしょうか?

答えは、国税庁「印紙税額一覧表」に掲載されている課税対象となる契約文書の作成・締結を行った場合は印紙税0円になります。

課税対象となる契約文書の例


画像出典元:国税庁「印紙税額一覧表」

例:7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の場合

7号文書に該当する契約書を月10枚発行している場合は、紙の契約書では印紙税「40.000円」ですが、電子契約では印紙税「0円」になります。


電子契約にできる文書を、電子契約化することで収入印紙代がなくなり、コスト削減と節税に繋がります

 

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電子契約で収入印紙がいらない法的根拠

画像出典元:国税庁「印紙税の手引(3契約書)」

電子契約は、一般的に非課税文書として扱われていますが、実は「電子契約は収入印紙不要」とはっきり法律で決まっているわけではありません。

ではなぜ非課税文書として扱われているのかというと、印紙税法・国税庁・政府が「課税対象は紙の契約文書」と説明しているからです。

以下の5つの法的根拠から、「電子契約は紙の契約書ではないので収入印紙不要」と解釈できます。

理由1:印紙税法の基本通達

印紙税法の法令解釈通達で下記のような説明があります。

第7節 作成者等
第44条 (作成等の意義)法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。

引用:法令解釈通達第7節 作成者等

「課税文書となるべき用紙」と記載があり、この「用紙」=紙と解釈され、紙を利用しない電子契約は非課税文書で印紙税がかからないと判断されています。

理由2:印紙税法第2条と3条

印紙税法第2条と3条では以下のように定められています。

第2条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
第3条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

引用:第2節 文書の意義等

印紙税法の中では、「文書」=紙の書面、電子データ=「電磁的記録」と区別して使用されています。

第2条、第3条にある「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書」の中の「文書」とは、すなわち紙の書面のことを指すため、電子データである電子契約は非課税文書で印紙税を納める必要はないと解釈されています。

理由3:国税庁の電子契約に関する見解(1)

国税庁の「No.7100:課税文書に該当するかどうかの判断」で「下記3点が全て当てはまる文書が課税文書」と説明しています。

電子契約は、No.7100:課税文書に該当するかどうかの判断の3点に該当しないため印紙税不要となっています。

(1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること
(2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
(3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと

引用:「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」

 

理由4:国税庁の電子契約に関する見解(2)

国税庁は「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」で「電子データで行った契約は作成に該当しないため、印紙税は発生しない」と回答しています。

作成は紙の契約書に対して行う行為であり、電子データで行った契約は「作成に該当しない」という考え方です。

「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」に対する国税庁の回答 注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

引用:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について

 

理由5:政府の電子契約に関する見解

政府は「参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書」の中で、印紙税について「電磁的記録(電子ファイル化された契約書)は印紙税の課税対象ではない」と答えています。

五について 事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。

引用:参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書

以上の5つの根拠から、印紙が必要なのは紙の契約書であり、電子契約は非課税文書で収入印紙は不要として扱われています。

 

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全ての電子契約が印紙税0円になるわけではない

では、全ての文書を電子契約に移行でき、印紙税を0円にすることができるのでしょうか?

答えは、全ての電子契約が印紙税0円になるわけではないのです。

では、どんな場合に、印紙税0円にならないのでしょうか?

電子契約を印刷し原本にした場合

電子契約書を印刷し、原本とみなした場合は、紙の文書と同じように印紙税の課税対象となります。

単に内容を確認したり、控えとして印刷する場合は、印紙税の課税対象とはなりません。

重要なのは、印刷した文書を原本として利用するか否かです。

電子契約システムを導入すれば、法的に有効な電子データ上で契約の作成・締結・原本保存を完結できます。

電子契約に出来ない契約書の場合

一般的な契約書の多くは電子契約が可能ですが、中には電子契約ではなく「紙の契約書」しか認められていない契約書もあります。

電子契約を導入する時は「自社の契約書の種類」を確認しましょう。

電子契約では認められない契約書の例

  • 任意後見契約(任意後見契約に関する法律第3条)
  • 事業用定期借地権設定契約(借地借家法第23条第3項)
  • 定期借地権設定契約(借地借家法第22条)
  • 更新の無い定期建物賃貸借契約(借地借家法第38条第1項)
  • 取壊し予定の建物の賃貸借契約(借地借家法第39条)
  • 農地の賃貸借契約(農地法第21条) 
    など

電子契約によるコスト削減・節税の事例

では、電子契約サービスを導入したことで実際にコスト削減・節税はどのくらい実現したのか、

SaaSログが行った電子契約サービスのユーザーへの取材では、以下のような回答を得ました。

印紙代削減額は約200万円!
不動産/建設/ 設備業界(導入ツール:電子印鑑GMOサイン)
我が社では、オプション機能を利用し月額も比較的高額な料金となったが、無料で使えるオプションも充実していた。使用開始後4ヶ月ほどは無料オプションをプラスしていたがそれでも150万円ほどの経費削減ができ、とても助かった。
印紙代約20%削減
サービス/外食/レジャー業界(導入ツール:ジンジャーサイン)
基本的にはドラッグ&ドロップという操作だけで必要事項の入力が完了するので、操作に特別な知識は必要ありません。契約書の電子化により作業スピードの効率化とペーパーレスが実現できます。紙媒体の契約書では非効率でなんとかしたいと考えている会社にはオススメしたいです。
印紙代月1万円程度節約できた
IT/インターネット/通信業界(導入ツール:イースタンプ)
従来使用していた契約書のデータもまとめて取り込みつつオンラインで契約書を管理して印刷にかかる費用や手間を減らすことができるので、オンライン上で新たに契約書を作り直すことに面倒を感じている会社におすすめです。

ツールに関する良し悪しはあるものの、電子契約サービスを導入した企業の多くは、印紙代の削減ができるというメリットを感じていることがわかります。

自社に適したサービスを選び、電子契約サービスによる契約業務の効率化とコスト削減が同時に実現できれば良いでしょう。

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収入印紙が不要になること以外の電子契約のメリット

電子契約には、紙の契約書では実現できない4つのメリットがあります。

  • 業務効率化
  • 改ざん、紛失リスクが減る
  • コスト削減
  • リモート対応

 業務効率化

電子契約であれば、すべての手続きをシステム上で完結できるため、契約締結までの時間を大幅に短縮することができます。

また、紙の契約書の印刷、保管、破棄などの手間が不要になります。

さらに、電子データであれば、キーワード検索などで必要な契約書をすぐに探し出せます。

改ざん、紛失リスクが減る

電子契約では、契約するまでに関わった人物や過程を細かくログとして記録できるほか、電子署名やタイムスタンプを活用することで、契約内容の改ざんや偽造を防止できます。

また、書面契約では対策が難しい閲覧制限も、電子契約なら閲覧・編集権限を個別に設定できるので、不正アクセスを防ぐことが可能です。

更に、データを自動的にバックアップする機能があり、紛失や破損のリスクを低減できます。

コスト削減

電子契約は、契約書にかかるトータルコストを大幅に削減できます。

削減できるおもなコストは以下のとおりです。

  • 印紙税
  • 印刷代
  • 郵送代
  • 書類保管スペース
  • 紛失・破損時の再発行費用

ただし、紙の契約書を電子化する場合は電子契約サービスを用意するのが一般的です。

電子契約サービスには利用料がかかるため、利用頻度によっては割高になる可能性があるので注意が必要です。

リモート対応

インターネット環境があれば、場所や時間に関係なく契約業務ができます。

近い将来、リモートワークへの移行を検討しているなら、契約業務が円滑に進むよう電子契約の導入を進めておきましょう。

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まとめ

この記事では、電子契約で印紙税がかからない理由を法的根拠を元に説明してきました。

電子契約で締結された契約文書は、基本的に収入印紙がいらないですが、契約によっては、電子契約ができないものなどもあり、電子契約にしたから絶対に節税できるとは限りません。

また、電子契約を行う際には、取引先の理解と協力も必要です。

自社だけでなく取引先双方にとってメリットの感じられる電子契約サービスはどんなものなのか、トライアルやセミナーなどを積極的に活用し、より良いサービス導入が実現できるように精査することがポイントと言えるでしょう。

画像出典元:Shutterstock、O-DAN

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