「領収書に収入印紙を貼らないといけないのは何故?」
「収入印紙代を節約する方法があるってホント?」
今回はそんな素朴な疑問にお答えします。
記事内容はこちら
・収入印紙が義務付けられている理由
・収入印紙が必要な文書
・記載金額ごとの収入印紙代
・収入印紙の買い方
・貼り忘れた時のペナルティ
・消費増税の影響
この記事を読んで収入印紙に関するルールを押さえておけば、二重課税・過怠税予防に役立ちます。なぜなら、収入印紙は消費税と関わりがあるからです。
収入印紙への知識を深めて、コスト削減につなげましょう!
このページの目次
収入印紙と聞いてイメージするのは「5万円以上の領収書に貼るもの」ですよね。領収書に収入印紙を貼らないといけないのは、お金に関わる書類(課税文書)を扱う際には、印紙税を納付する義務があるからです。
課税文書には20種類あり、飲食店の領収書などは第17号文書に該当します。領収書に収入印紙を貼って消印をすれば、印紙税の支払いが完了。消印のある収入印紙は納税した証拠です。
しかし、全ての課税文書に収入印紙が必要なわけではなく、国の定めたルールに従って納税額が変わります。領収書だと、5万円未満なら収入印紙は必要なし、5万円以上100万円以下は200円の収入印紙が必要です。
収入印紙は、国が租税や手数料を徴収するために作った証票。国に直接お金を支払って印紙税を納付する代わりに、収入印紙を購入して納税する仕組みです。
収入印紙は印紙税の支払い以外に、各種手数料や登録免許税にも使用されており、収入印紙代として支払ったお金は国庫収入となります。
平成28年度 | 1兆791億4706万円 |
平成29年度 | 1兆515億1966万8千円 |
平成30年度 | 1兆729億882万1千円 |
1年間の印紙収入による国庫歳入額は1兆円以上!
普段、何気なく貼っている収入印紙ですが、国を支える重要な財源として活躍しています。
印紙税納付のために収入印紙が必要なのは理解できても、「文書を作成しただけで何故納税しなくてはいけないのか?」という疑問を抱える人が多いと思います。
納税義務が生じる理由は、「金銭の取引が行われている=経済的利益がある」と判断されるからです。分かりやすく言うと、儲けたのなら税金を納めなさいよ!ということです。
政府の見解として、平成17年の小泉総一郎元内閣総理大臣の答弁書を紹介します。
経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める印紙税の性格を踏まえ、課税文書ごとにその文書の作成の基因となる経済取引の内容やその文書の作成実態等が異なる点を考慮していることによる。
つまり、課税文書の作成が必要となる経済取引が課税対象になっているということです。
ちなみに、「どうして課税対象になる領収書は5万円以上なの?」という疑問の答えはこちら。
記載金額が一定の金額(現行三万円。以下「免税点」という。)に満たないものは非課税とされているが、これは、金銭等の受取書は課税文書の中でも作成数が多いことから納税事務を簡素化することのほか、少額の金銭等の受取書を作成することが多いと考えられる中小企業の負担に配慮して講じられたもの
引用:参議院「印紙税に関する質問に対する答弁書」
※平成17年当時は三万円以下非課税でしたが、平成26年4月1日以降は五万円以下非課税に変更されました
納税事務を簡素化するため、少額取引の多い中小企業の負担軽減のために一定額以下は非課税となっています。
印紙税法の背景が理解できたら、次は収入印紙の実践的な使い方を学んでいきましょう。
収入印紙が必要な文書を「課税文書」と言います。課税文書は、印紙税法の印紙税額一覧表に掲載されている文書で、印紙税の支払い義務が生じるのが特徴。契約書、手形、領収書など20種類に分類されています。
これらの課税文書の中で馴染みの深いものが、第17号文書の売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書(領収書など)です。
ここでの「受取書」とは、受領事実を証明するために作成し、その支払い者に交付する証拠証書のことです。
具体的には「受領書」「領収証」「レシート」「預り書」だけでなく、受取事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」「相済」「了」などと記入したもの、お買上票などでその作成の目的が金銭または有価証券の受け取り事実を証明するもの、があります。
収入印紙代は文書の号数ごとにルールが異なります。例えば第1号文書は、1万円以上10万円以下で200円の収入印紙が必要。第17号文書(領収書など)だと、5万円以上100万円以下で200円の収入印紙が必要です。
また、収入印紙代金は、記載金額によって税額が変わります。第17号文書(領収書など)の収入印紙代は以下の通りです。
※5,000万円を超える場合は、国税庁の資料で確認してください。
参考:国税庁「契約書や領収書と印紙税」
第17号文書(領収書など)の場合は、要不要の区切りとなるラインは5万円。でも、5万円以上でも、電子文書なら収入印紙は必要ありません。次は電子文書について説明します。
収入印紙は郵便切手のような形状で、紙媒体に貼って使います。そのため、電子文書には貼付できません。では、電子文書の場合はどのように納税すれば良いのでしょう?
国税庁のホームページのQ&Aでは、以下の解答がありました。
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。
課税物件となるのは用紙等で作成した文書のため、電子文書での取引に関しては収入印紙はなしでOK。つまり、電子契約に切り替えれば、印紙税のコスト削減が可能です。
冒頭で、印紙収入による国庫歳入額が1兆円を超えると説明しましたが、ピーク時は今の倍の2兆円でした。株価や経済活動は回復しているのに印紙収入が増えないのは、電子文書が増えたせいだと言われています。
収入印紙の種類は、200円~1,000,000円の19種類です。
・200円・300円・400円・500円・600円・1,000円・2,000円・3,000円・4,000円・5,000円・6,000円・8,000円・10,000円・20,000円・30,000円・40,000円・50,000円・60,000円・100,000円
200円の収入印紙が多く流通していますが、郵便局と法務局では19種類全ての収入印紙が揃っています。
ほとんどの郵便局は月曜日~金曜日9:00~17:00が営業時間で、土日・祝日は空いていません。しかし、ゆうゆう窓口のある郵便局なら24時間購入可能です。
法務局の開庁日は月曜日~金曜日のみで、土日・祝日・年末年始はお休みです。開庁時間は8:30~17:15のところが多いでしょう。
また、各地にあるコンビニエンスストアでも収入印紙が手に入ります。200円のみの販売となりますが、nanacoカードでの支払いで1%ポイント還元などお得な購入方法があるのが魅力。
他に、ごく一部の市役所や区役所でも収入印紙の販売を行っています。
「家から出たくないけど収入印紙が欲しい…」そんな方は、AmazonやYahoo!ショッピングを使いましょう。いつも確実にあるわけではありませんが、タイミングが合えば200円10枚セットの収入印紙が販売されていて、Tポイントも使えます。
デメリットは、2,000円分の収入印紙が2,241円程度と割高なこと、手元に届くまでに時間がかかることです。
また、ヤフオクや金券ショップでも収入印紙が販売されていることがあります。1~10%割引で購入できるので、安く手に入れたい方は売りに出されていないかチェックしてみてください。
収入印紙を貼り忘れてしまった場合は、印紙税法に違反したとみなされ過怠税が課せられます。ただし、自己申告した場合と、調査で発覚した場合には過怠税の額が違います。
収入印紙を貼り付けずに得意先に交付してしまった場合でも、自己申告すれば過怠税は印紙税額の10%で済みます。元々支払う予定の印紙税の1.1倍の額を納税すれば良いということです。
貼付し忘れたままで、印紙税についての調査でミスが発覚した時は、予定していた印紙代の3倍の支払い義務が生じます。
注意が必要なのは、消印忘れも過怠税対象になる点です。消印されていない印紙の額面に相当する過怠税が徴収され、当初の2倍の金額を支払わねばなりません。
消印は収入印紙の再利用を防ぐためなので、シャチハタや日付印、屋号が入った角印、ボールペンでの署名でもOKです。消印の必須ルールは、印紙と文書にまたがるように印を付けること。
・鉛筆やシャープペンなど消せるもので書いた印
・斜線や二重線など線を引いただけの印
・丸印の中に「印」と書く丸印記号
消印として認められない印を使うと無効となるので注意してください。
収入印紙と消費税は、課税文書の種類によって関係の有無が変わってきます。
・第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)
・第2号文書(請負に関する契約書)
・第17号文書(金銭または有価証券の受取書)
これら3つの課税文書では、
・記載金額を消費税額等と区分して記載している場合
・税込み価格および税抜価格が記載されていて、取引で課されるべき消費税額等が明らかな場合
には、記載金額に消費税額等を含めないこととしています。
最も身近な存在である「第17号文書(金銭または有価証券の受取書)=領収書」も対象になっているので、消費税との関連性を知っておいたほうが良いですよ。
・請負金額 1,100万円(税抜価格 1,000万円 消費税額等 100万円)
・請負金額 1,100万円(税抜価格 1,000万円)
・請負金額 1,100万円(うち消費税額等 100万円)
・請負金額 1,000万円 消費税額等 100万円 合計 1,100万円
これを商品代金5万円前後の事例で考えてみましょう。税抜価格49,000円の商品だと、領収書の書き方によって収入印紙の必要性の有無が変わってきます。
・商品代金 53,900円(税抜価格 49,000円 消費税額等 4,900円)
・商品代金 53,900円(税抜価格 49,000円)
・商品代金 53,900円(うち消費税額等 4,900円)
・商品代金 49,000円 消費税額等 4,900円 合計 53,900円
・商品代金 53,900円
・商品代金 53,900円(消費税額等10%含む)
・商品代金 53,900円(税込)
参考:国税庁「消費税等の額が区分記載された契約書等の記載金額」
印紙税と消費税の二重課税を予防したいのなら、消費税額を分けて記載し税額を明確にしてください。
収入印紙代は記載金額に比例して高くなるので、5万円以上の場合でも消費税額を分けて記載したほうが収入印紙代を節約できます。
消費税を区分して記載せず税込価格が課税対象となっている場合には、消費増税に伴って印紙代が増えているかもしれません。
・本体価格 46,000円 消費税率8% 3,680円 合計 49,680円
→領収書に「商品代金49,680円」と記載(収入印紙不要)
・本体価格 46,000円 消費税率10% 4,600円 合計 50,600円
→領収書に「商品代金50,600円」と記載(収入印紙が必要)
税込価格で領収書金額を記載していると、本体価格は46,000円のままでも、消費税込みの合計金額が増税前後で5万円未満→5万円以上となり、「収入印紙不要→収入印紙が必要」といった変化があります。
そのため、消費税額を分けて記載したほうが、消費増税の影響を受けにくいと言えるでしょう。しかし、消費増税に伴い、記載した消費税額の変更を行う時には課税対象となるので注意しなくてはいけません。
消費増税は、継続して行うサービスに関する請負契約書(第2号文書)に大きな影響を与えます。消費増税によって、過去の契約内容の見直し・変更が必要になるからです。
よくあるのが、請負契約書に記載されている請負金額は同じでも消費税額だけ変更が必要となる場面。
消費税額の書き換えは、印紙税法上の「課税文書の作成」に該当してしまうため注意してください。消費増税によって消費税額の変更をしただけでも収入印紙を貼らなくてはいけません。
先に紹介したように、「消費税額を別途記載すれば、収入印紙代の判断基準となる記載金額には含まない」ではあるものの、別途記載した消費税額の変更は『契約金額と密接に関連する事項』と判断されるからです。
ここで重要なのが、増税前後の消費税額の差。変更前と変更後の消費税額差が1万円未満なら収入印紙は必要なし、1万円以上の場合は200円の収入印紙が必要です。(第2号文書は1万円以上で課税対象となるため)
請負金額50万円(うち消費税額4万円)と記載したケース
・消費税率8%=4万円
・消費税率10%=5万円
消費税額の差額5万円-4万円=1万円(収入印紙が必要)
消費税率8%→10%の変更で考えると、請負金額50万円以上のケースでは消費税額の差額が1万円を超えるため、200円の収入印紙の貼付が必要。請負金額50万円未満なら、消費税差額が1万円未満となり収入印紙は必要ありません。
「消費税額だけの変更なら収入印紙は必要ないだろう…」と思って収入印紙を貼り忘れると、過怠税を課せられてしまうので気を付けてください。
収入印紙には細かな決まりがあるので、節税効果を最大にするために正しい知識を持つことが大切です。
収入印紙の取り扱いでうっかりミスをすると、印紙税法違反とみなされてペナルティが課せられてしまいます。印紙税の納付額を最小にしてコスト削減できるよう、今回紹介した内容を活かしてくださいね。
画像出典元:o-dan