約束手形に収入印紙を貼るときはいくらの印紙を貼ればよいのでしょうか?
そもそもどうして約束手形には収入印紙を貼る必要があるのでしょうか?
この記事では、約束手形の収入印紙についてのこんな疑問に答えると共に、印紙を節約する方法や印紙のあつかいについて注意すべきことを解説します。
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約束手形は、90日後、120日後などの一定の期日に代金を支払うことを約束する証書です。
約束手形を発行する人(振出人)は、手形の金額に応じた収入印紙をはらなければなりません。
収入印紙を貼るというのは、税金を納めることです。
印紙税法という法律に、一定の文書(課税文書)を作成するときは税金(印紙税)を払わなければならないと定められています。
課税文書とは、経済活動にともなう金額が記載されている文書で、例えば次のようなものがあります。
しかし、「法律で決まっているから貼る必要がある」という説明だけでは納得がいかないかもしれませんね。
「法人税も所得税も払っているのに、なぜ手形や領収書を作るときまで税金がかかるのか」という不満ももっともです。
この不満に対する答えは、とにかく国はいろいろな場面で税金を取りたがるものだ、と言うしかないかもしれません。
しかし、課税文書に関してもめごとが起きたときには国のお世話になる必要があるから、とも言えます。きちんと印紙税を納めている課税文書には、裁判での証拠能力があります。
課税文書を作成するときに印紙税を納めるのは国民の義務であると共に、それによって一定の権利が保証されるわけです。
実際には、約束手形を振り出すときに収入印紙を貼り忘れることはほとんどありませんが、貼ることが法律で決められている以上、貼らなかった場合の罰則も定められています。
課税文書に収入印紙を貼らなかった場合は、過怠税が課せられます。
過怠税は、本来支払うべき収入印紙の額の3倍です。
ただし、税務署に過怠を指摘される前に、貼り忘れを税務署に申告すると、本来支払うべき収入印紙の額の1.1倍に減額されます。
課税文書の印紙税の過怠が発覚するのは国税局や税務署が税務調査をしたときですが、約束手形の場合はその前に受取人や銀行から指摘されるので、実際に約束手形の印紙税過怠を税務署に指摘されることはほとんどありません。
約束手形の印紙税を節約する方法として、手形分割と手形の電子化があります。
手形に貼る収入印紙は手形の金額によって違うので、1件の支払いを何枚かの手形に分割することで、印紙税が節約できる場合があります。これが手形分割です。
5,010万円の手形の印紙税は2万円です。
それに対して5,000万円の印紙税は1万円で、10万円の手形の印紙税は0円(非課税)です。
したがって、5,010万円の手形の端数10万円を別の手形に分割することで、印紙税が2万円から半額の1万円に節約できます。
2,200万円の手形の印紙税は6,000円です。
それに対して2,000万円の手形の印紙税は4,000円で、200万円の手形の印紙税は400円です。
したがって、6,000円-(4,000円+400円)=600円で、手形分割によって1,600円の節税ができます。
1,500万円の手形は印紙税が4,000円です。
それに対して500万円の手形の印紙税は1,000円なので、3枚振出しても印紙税は3,000円で済みます。
したがって、1,500万円の手形を500万円の手形3枚に分割することで、印紙税が1,000円節約できます。
つまり、手形分割とは、印紙税額が変わる境目を利用した節税法なのです。
印紙税は「課税文書」にかけられる税金です。現在の印紙法ではコンピュータ上の電子化された記録は「文書」と見なされいない(国税庁の正式見解)ので、課税文書を電子化することで記載金額がいくらであっても非課税になります。
例えば、領収書や契約書をPDF(コンピュータ上の電子文書の1種)にしてメールでやりとりすることで、収入印紙を貼る必要がなくなります。
約束手形は単に手形をPDFにするだけでは機能しませんが、2008年に電子記録債権法が施行されて正式に約束手形の電子化が可能になりました。
電子手形は印紙税がかからない他に、分割、手形割引、譲渡が簡単にできる、紛失する心配がないなど、多くのメリットがあります。
電子手形は、従来の銀行に代って電子債権記録機関が、手形の振出人と受取人を仲介して手形の現金化までを管理します。
国が認定した電子債権記録機関には次ようなものがあります。
収入印紙は郵便局やコンビニ、金券ショップなどで購入できます。しかし、額面が大きい収入印紙はコンビニでは扱わず、金券ショップにもあまり出回りません。
金券ショップで購入すると額面より2~3%安くなりますが、過去には偽造印紙が出回ったことがあります。
郵便局とコンビニでは収入印紙は消費税が非課税ですが、金券ショップでは課税商品になります。
つまり金券ショップでは消費税込で購入することになり、購入した後の経理処理が異なってくるので注意が必要です。
課税文書に貼った収入印紙は、貼るだけでなく消印を押さなければなりません。消印を押して初めて「納税」が完了したことになります。
消印の仕方は、添付した印紙と台紙(手形)にまたがるように印鑑を押します。印鑑は実印でも銀行印でも認め印でもかまいません。
手書きでサインをしてもOKです。「使用済み」であることが分れば良いのです。
200円の収入印紙で良いのに1,000円の収入印紙を購入してしまった、というときは郵便局に行けば、200円の収入印紙5枚と交換してもらえます。
交換手数料は、収入印紙の額面に関わらず1枚50円です。
手形に誤った額面の収入印紙を貼って消印をしてしまったときは、税務署にその旨を申告すれば還付してもらえます。
その際は、収入印紙を貼ったままの手形と「印紙税過誤納確認申請書」を税務署に提出します。(申請書は税務署でもらえるほかに国税局のHPからダウンロードできます)
約束手形は印紙税法に定められた課税文書なので、手形の金額に応じた収入印紙を貼らなければなりません。
約束手形に貼る収入印紙の額は200円から20万円まで14段階に分かれています。
収入印紙を節約する方法に、手形分割と手形の電子化があります。
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