シリコンバレーで起業したい、シリコンバレーのスタートアップに投資をしたい、と考える起業家・投資家の方が実際にシリコンバレーはどんなところなのか、を知る機会はあまり多くありません。
今回のイベントではシリコンバレーに1ヶ月間滞在し、そこで感じたリアルや日本との違いなどをHoloAsh代表の岸慶紀さんが話してくださいました。
後半ではシリコンバレーでの経験が豊富な、元米国トップアクセラのAlchemist運営をしていたYu Azukizawaさんと、グローバル展開のコンサルティングを手掛けるAyaka Matsuiさんを招き、シリコンバレーの真実を深掘っていただきました。
開催日:2018年9月12日
開催場所:Clip日本橋
【出演者】
栗島祐介 (プロトスター株式会社COO)
岸慶紀さん (Holo AshdCEO)
【ゲスト】
Yu Azukizawa(元米国トップアクセラのAlchemist運営、現Value Architects)
Ayaka Matsui(グローバル展開のコンサルティング)
Holo Ash,Inc. CEO
岸慶紀
ADHD起業家。ADHD向けのデジタルヘルスのサービスを行なっているHoloAshの代表。 Delaware州で登記し、米国のアクセラレータープログラムに参加。米国進出を目指す。
イベントの前半では7月から8月にかけて、シリコンバレーのアクセラレーションプログラムに参加した岸さんがご自身で感じた経験談を語ってくださいました。
岸さんはシリコンバレーのアクセラレーションを受けるため、80もの会社に応募したそうです。その中で実際に面談できたのは8社、その狭き門から通れたのが2社だそう。
実際に応募をして感じたことは「トラクションを重要視している」とのこと。KPIや具体的な数字がなければ通りづらく、自分の中で事実に基づいた論理的仮説を持っていないと通るのは難しいと解説。
これは実際に80社受けた岸さんだからこそ語れる、リアルなアドバイスでした。
シリコンバレーでは、DropBoxのCFOやBOXのCOOなど、普段では決して出会うことのできない経営界の大物に会うことができます。
岸さんはここで多くのアドバイスを受けたそうです。
シリコンバレーでは、自分の考えや事業に対して仮説を持っていないと誰も相手にしてくれないため、なんとなくシリコンバレーに行きたい、と思っている人は何も得ることはできません。
そのため、シリコンバレーに行く前には必ず事実に基づいた仮説を持つことが重要だと岸さんは言います。
さらにその仮説が浅かったり、相手の興味を引かないものであれば決まって「Oh Great!!」と感想を言い、それ以上は言及してこないというわかりやすい反応をされたそう。
日本人が海外に出る1番の障壁として言語の壁があり、シリコンバレーに行きたくても言葉が通じるか不安」と感じている方が多いと思います。
しかし英語の心配をする必要はなく、それよりも「英語をうまく話せない」という英語に対する姿勢が問題とのこと。
実際にシリコンバレーにいたインド人の方が英語が下手だが、彼らはそんなことお構いなしに自分の考えを自信満々に話していたのを目の当たりにして、スキルよりも姿勢が大事だと気づいたそうです。
実際に英語のスピーチをする岸さんの動画
他にもシリコンバレーで聞かれるであろう質問を事前にエクセルに書き出し、テンプレートを作っていたのだとか。
岸さんが一番感じたことは、投資家はお金にしか興味がないとのこと。スタートアップに求めるのはお金であり、市場規模などを良く聞かれたそうです。
さらにシリコンバレーではハードウェアスタートアップはお金にならないため、ハードウェアのスタートアップと言うと向こうでは相手にされないとか。
そのため、投資家向けのピッチの仕方も工夫したと語っていました。
後半ではシリコンバレーを経験した二人のゲストを招き、シリコンバレーに対する疑問や、経験談を元にしたアドバイスを語っていただきました。
Ayaka Matsui
楽天株式会社Eコマースのコンサルタントに従事後、シリコンバレーの多様なコミュニティに浸りながら、日系企業の米国進出とグローバル企業の日本進出のマーケティング・ブランド戦略に携わる。ソニーの新規商品立ち上げや、「靴下屋」タビオの米国進出、オーストラリアのマットレスブランド、Koala Mattressの日本進出などを手がけた。
Yu Azukizawa
ドバイ政府が運営するMENA (Middle East, North Africa)地区最大規模のインキュベーションセンターにて、アクセラレーションプログラムの立ち上げに従事。その後、全米トップアクセラレーターAlchemistでプログラムの運営統括を務める。帰国後も支援先スタートアップのアジア進出サポートを行う。
シリコンバレーのすごさとして、失敗体験を褒められる文化がある、日本では繋がることのできない人と会うことができる、など多くの点がありました。
その中でも「マインドセット・エコシステム・カルチャー要素」の3つがシリコンバレーのすごいところだとAyakaさんは言います。
投資家や経営者など必要な人にアクセスでき、優秀な学生やそれを育てる機関、発信するメディアが1つに集まっているため、日本とは比べものにならないほどのエコシステムが整っているのだそう。
Azukizawaさんはシリコンバレーと日本のアクセラの大きな違いは「教育」だと語っていました。
日本は起業家と投資家のマッチングが多いが、シリコンバレーでは投資家が聞きたいプレゼンの仕方など、スキルベースのケーススタディが多いため、実戦で使うことのできるスキルが身につくのだそうです。
他にもシリコンバレーではこちらの課題に対して、行うべきことを明確に提示してくれたり、その時に必要な人や会いたい人を繋いでくれたりなど、日本のアクセラとの違いが話されました。
1番の違いは「あなたは一体どんな人なのか?」といった”あなた自身”についてを話さないと興味を持ってもらえないのだとか。
東京だけではなく日本人に言えることですが、自己紹介の時に「〜に属している〜です。」と話す人が多く、所属している会社や行なっている事業を話す人が多いです。
しかしシリコンバレーでは「なぜそれを行なっているのか?」という本質を求められ、自己開示力が大事になるそうです。
1番のトレンドはテクノロジー×健康やデータ分析×ファッションなど、今までなかった組み合わせが注目されているのだそう。
他にも健康や幸福度を意識した、スマホからの脱却(脱スマホ)などもトレンドの1つです。
この話の中で最も面白かったのが「シリコンバレーでは誰もメルカリを知らない」という真実でした。
メルカリがグローバル展開に力を入れ、アメリカでも3,700万ダウンロードされていることからある程度の注目度があると思われていましたが、実際には向こうの人たちは誰も知りません。
なぜ3,700万以上もダウンロードされているのに誰も知らないのかについては、アメリカではメルカリをダウンロードするとポイントが貰え、そのリセマラをすることでダウンロード数が伸びた、という実態があったそうです。
日本ではわからないアメリカの実態を知ることができました。
進出する際のアドバイスは大きく分けて3つありました。
1. 著名人・大物の意見を丸呑みしない
シリコンバレーでは経営界の大物にアクセスできるため、多くのアドバイスをもらうことができます。
そのため「この人が言っているなら間違いない!」と感じてしま人が多いのですが、ユーザーのことを一番知っているのは結局「自分」なので、100%信じてしまうのは危険だそうです。
2. ヘルプを出し続ける
アメリカではとにかく色んな人に自分の事業や考えについて話しまくり、ひたすらフィードバックをもらうことが重要とのこと。
日本では「恥ずかしい・批判されたらどうしよう」と感じて自己開示しない人が多いですが、シリコンバレーのマインドセットとして自己開示力が求められるそうです。
3. シリコンバレーに行く目的を明確にする
シリコンバレーにいって「あなたは何をしたいの?」と聞かれた時に何も答えられないと話になりません。
ただ行きたいから行くでは必ず失敗するため、シリコンバレーに行く目的、どういう人を求めているのか、何を求めて行くのかを国内にいるうちに明確にしておかなければ何も得られないとのことです。
以上がイベントの内容になります。
実際にシリコンバレーに行った3人だからこそ語れる実体験が数多くあり、シリコンバレーに興味のある起業家・投資家にはとても勉強になるイベントになったのではないでしょうか?
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