【Raksul×Ubie】0→1開発の成功法 〜新規プロダクト開発でBizdevが直面した壁とその超え方〜

【Raksul×Ubie】0→1開発の成功法 〜新規プロダクト開発でBizdevが直面した壁とその超え方〜

記事更新日: 2021/07/29

執筆: 編集部

0→1を担う事業開発について、ラクスルCOOとUbie代表が自身の経験を踏まえて熱く語るトークイベントが7月14日に開催されました。

本記事ではそのイベント内容をご紹介します!

登壇企業について

ラクスル株式会社

『仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる』をミッションに、

チラシやポスターなどの印刷だけでなく、TVCMやポスティング・新聞折込などの広告、さらにはオンライン上で編集できるデザインソフトなど、印刷に関わるデザインから印刷、配布までをトータルで対応する「ラクスル」

荷主とドライバーを繋ぐマッチングサービスとしてサービスを開始。ドライバーの非稼動時間を活用することで、低価格かつ、誰でも早く簡単に配送ができる仕組み「ハコベル」

テレビCMなどの広告動画の企画・制作・放映・分析まで一気通貫して提供。広告効果を可視化させることで、改善のサイクルを向上させ企業の事業成長を支援する「ノバセル」

の3つのサービスを運営・提供しています。

 

Ubie株式会社

『テクノロジーで人々を適切な医療に案内する』をミッションに、

気になる症状について医師監修の質問に答えるだけで、関連する病気やその対処法を無料で調べられる「AI受診相談ユビー」

AIによる事前問診により問診内容の充実化や診察業務の効率化をはかり、医療機関の働き方改革を支援する「AI問診ユビー」

の2つのサービスを運営・提供しています。

 

セッション1:ラクスルCOOとUbie代表が語る0→1の事業開発の要点

登壇者

ラクスル株式会社 高城 雄大

Ubie株式会社 阿部 吉倫

ラクスルが考えるBizDevの要点

ラクスル高城さん

BizDevに求める要素は3つ+1です。

①オーナーシップ

②ゴール設定・課題設定能力

③エグゼキューション能力

これらは0→1、1→10、10→100の全てのフェーズにおいて必要で、重要な要素だと思っています。

① オーナーシップ

何かを改善すること、新しいものを立ち上げることは、理不尽で苦難が多く、ストレスがかかります。失敗もします。

そんな全て飲み込んでやり切れるオーナーシップが1番必要です。

ラクスルではこれがあればまず事業開発メンバーにアサインしています。

② ゴール設定・課題設定能力

ただ、事業は1人で進めるわけではないためチームメンバーや関係者に説明が必要になります。

チームの目指すゴールに対してクリスタルクリアな北極星(解像度が高い課題設定)を定める必要があります。

③エグゼキューション能力

そしてクリスタルクリアな北極星に向かってどう進むのか。

複数のソリューションの中から最適な解を選択し、みんなを巻き込んで実現する必要があります。

④高エネルギー生命体

そして0→1のフェーズでは事業に対する圧倒的な熱量と行動力を持ち、自然と周りが引きつけられるような「高エネルギー生命体」をアサインできると、いい事業を作ることができます。

とは言え、0→1のフェーズは成功率が低いため、うまく行かないことが多いです。

しかしながら、複数のチャレンジ経験がその人の力となり、新しい事業の成功へと繋がります。

ユビーが考える0→1 事業開発の要点3つ

ユビー阿部さん

①木を見て森も見る

②フォーカスして検証

③「スケールしないこと」を徹底する

①木を見て森も見る

個別の顧客(木)を見ることが重要です。

ただ特定の顧客にのみ貢献しようとすると、それはマーケット(森)ではないためスケールしない可能性が高くなります。

0→1においては木8、森2くらいの割合で見るのが良いでしょう。

 

②フォーカスして検証

そして課題を細かくちぎって検証することが0→1では大事です。

大きく検証し失敗するとコストも時間も無駄になってしまいます。

また1つの課題にフォーカスすることも重要です。

一緒に解けそうな課題があっても脇目も振らず解くべき課題に集中すべきです。

 

③「スケールしないこと」を徹底する

解くべき課題がわかったが、ユーザーが少ないため、課題を解くため(検証)に必要なヒアリングが足りないことが0→1のフェーズでは良くあります。

ただ、その際は無理やりユーザーを集めるのではなく、課題を細かくちぎり、検証するのに適切な人に聞きに行きましょう。

 

Q.再現性高く0→1を進めることができる型はありますか?

ユビー阿部さん

思っている以上に小さく挑戦、小さく検証することが大事です。

プロダクトとして価値ある単位で検証しがちですが、それを更に小さく 因数分解すると良いでしょう。

ラクスル高城さん

やろうとしていることは、「誰」の「どの課題」を「なに」で「どのように」解決するのかと問い続けると良いでしょう。

そしてその解が明確になったら、「誰」はどれだけいるのか、その「課題」はどれだけ大きいのか、そしてその解決策(「なに」「どのように」)でどこまで課題が解決するのかを考えると進めやすいです。

Q.新規事業の成功打率と撤退基準を教えてください

ラクスル高城さん

立ち上げまでに半年くらいかけてメンバーで徹底的に議論し、世の中に出るまでのシナリオをしっかり描いてからスタートしています。

そのため立ち上げ時はクローズすることは考えていません。

2、3年はやりきって、その後答え合わせをするようにしています。

成功打率は3割を目指しています。ただ現状打率7,8割と目標よりかなり高くなってしまっていて、チャレンジ数が少ないことを懸念視しています。

そのため立ち上げまでのプロセスを見直し、社員誰しもがチャレンジしやすい環境にしようと舵を切ろうとしている最中です。

ユビー阿部さん

既存事業内容から逸れたものはそもそもやらないため、撤退はほぼないが、優先順位的に一旦ストップすることはあります。

Q.0→1の事業機会は各社ともまだありますか?

ユビー阿部さん

事業が育つほど機会は増えていきます。

ユビーでも1年前は事業が3つだったのが、現在は7つになっています。

ラクスル高城さん

チャレンジできる環境はたくさんあります。

実際ラクスルでは今8つ事業があり、1つの事業のマザーマーケットは5,000億以上のものです。

そして今後やれる・やりたいと思いすでにリストアップされている事業領域が15個ほどあります。

セッション2: 事業開発って現場で何やってるの?

登壇者

ラクスル株式会社 茶谷祐司

 

Ubie株式会社 松村直樹

 

ラクスルが考えるチームの役割

ラクスル茶谷さん

ラクスルではとにかく担当している事業を推進させることがミッションであり、明確な役割は定義されておらず、基本的には「なんでもやります」というスタンスです。

大まかな流れは商品力を「磨く」、そしてサービスを「伸ばす」というフェーズを繰り返しています。

例えばまず売れない商材があった時のケースを考えます。

そのような時は当然、その商材をまず「売れる状態」にすることが必要で、ユーザーのニーズを満たせているか、購買に対してブロックになっているものはないかを検証していきます。

そのフェーズが終わると次はサービスを伸ばすフェーズに入ります。

ラクスルではECサイトで商材を販売しているため、具体的にはSEO対策をしっかりすることやサイト内の改善、メルマガでの訴求などが主になります。

そして、マーケティング部分の改善が一通り終わると次は商品力を更に強めていくフェーズに入ります。

サービスがグロースし、一定の注文量を担保することで、パートナーの方と一緒に工場を立ち上げ、より安価に商品を製造できるようにしています。

既存のパートナー様と価格や条件交渉をすることで、粗利率の改善や低価格での商品提供を実現していきます。

そのようにしてよりお客様から選ばれるサービスにすることで、更にマーケティングに予算を割くこともできるようになります。

ユビーが考えるチームの役割

ユビー松村さん

ユビーではプロダクト開発・検証の段階でも事業開発メンバーの活動領域は広く、チーム内で明確な役割を与えているというわけではないです。

事業開発ではスクラムチームというチームがあり、エンジニア・デザイナー・医師で一体となってお互いの仕事に関わりながら動いています。

プロダクト開発の流れは以下の通りです。

1. マーケットと課題の特定

2. ユーザーの具体的な課題の特定

3. 具体的なアプローチを決定(アライアンスが必要なのかも検討)

4. 開発・実装

5. 現場で検証

特に大事なのは最後の現場の検証で、本当に使ってもらえているのか、問題が起きていないかを実際に足を運んで検証するようにしています。

ラクスルの事業開発メンバーが直面した壁とその乗り越え方

ラクスル茶谷さん

ラクスルではお客様からの要望でマッチングのプラットフォームを開発する際に、「プロダクト開発が終わらずサービスがリリースできない」という問題に直面しました。

開発において、スコープがどんどん膨らみ、やるべきことがどんどん増えていくうちに1ヶ月ほどの遅れが出ました。

解決策としてはコア価値を提供する機能にフォーカスすることにしたことです。0→1のサービス開発をする上で、提供したい顧客価値に対する必須機能に絞り込み、そのほかはミニマムにしようと割り切ることにしました。

特に、発生頻度が低いエッジケースはオペレーションで対応することにしました。

とはいえ、開発スコープを狭めてしまうことで負債は残さないように、理想像は描きながらミニマムに落とすことが大切です。

機能を狭めることでサービスとしての拡張性がなくならないよう、今後のことも頭に置きながらプロダクト開発をしていくことを意識しています。

Q. エッジケースの割り切りはどのようなプロセスや議論があって行われていますか?

ラクスル茶谷さん

まずエッジケースの割り切りをするときに一番影響を受けるのはオペレーションを担っているチームになるので、オペレーションチームとの対話を大事にしています。

開発する上でどのくらい期間がかかるのかをベースにして相談しながら、開発が厳しいと分かったらオペレーションの方に説明し、合意が取れたら進めていきます。

逆に、合意が取れなかったらそのエッジケースをどう対応してくのが最善かを考えます。

基本的に最終的にオペレーションを担ってくれているチームのメンバーが気持ちよく働いてくれることが重要度が高いと思っているのでそこは慎重に進めています。

他にはそのエッジケースがいつ発生するのかも重要です。

例えば決済周りの機能で、お客様から決済の依頼をいただいた場合、審査がNGだった時に再審査をする機能がなく、再審査をするためには一度注文をキャンセルするしかなかったのですが、大体そのケースが起こるまで2週間くらいかかることが分かっていたので、2週間以内に見送ったりしました。

発生頻度・発生時期を考えて割り切ることも重要だと思います。

ユビーの事業開発メンバーが直面した壁とその乗り越え方

ユビー松村さん

ユビーでは患者さんが自分で問診入力することができないと、結局現場のスタッフがサポートしなくてはならず、患者さんが自分で問診入力できるようにする必要がありました。

ですが、結果指標を見ていてもどう改善していけば良いかよくわからず、離脱した箇所などのデータを見て仮説から改善を試みましたが、問診の時間が変わらないという課題がありました。

そこで実際に現場に行き、何が課題なのかを発見するために、50件くらい自分たちで実際に問診をサポートしました。

実際に足を運ぶと患者さんが本当につまづいている箇所や、タブレットが重いことが患者さんの負担になっていることなどにも気が付けました。

現場に足を運ぶことで真の課題を発見し、チームでも共有して改善に動くことが重要だと考えています。

それ以外のところだと、ユーザーセグメントを絞らなかったことによる課題がありました。

元々は医療機関で一括りにして、クリニックや病院にもプロダクトを提供しようとしていましたが、そうするとクリニックや病院ごとに課題やオペレーションが異なるため、どのような改善をしたとしても全てのユーザーにとって中途半端なプロダクトになってしまったのです。

そのため、属性や課題ごとにしっかり分け、フォーカスする課題は何なのかを見極め、そこに絞るようにしています。

Q. セグメントしすぎることによって機能が乱立してしまうこともありますか?どこかのタイミングでユニバーサル化していくことも必要だと考えていますか?

ユビー松村さん

工夫としてはセグメントごとに課題の部分はちゃんと分けることです。例えば施設の規模などによってそれぞれ抱えている課題は違います。なので課題の識別は各セグメントごとに精緻にやっていきます。

ただ、実際にプロダクトを作って課題を解決するとなった時には、課題の部分はセグメントごとに精査しつつも、他の課題にも解決できるかもしれないというバランスを持つことが大切です。

Q. 現場に足を運ぶ中でどのように真の課題を判断していますか?

ユビー松村さん

ユーザビリティの部分ではnの数を見るとわかります。何十人もの問診を見るとその課題が全員に共有する課題なのかどうかがわかるようになってきます。

他の「AI問診を導入したのになぜか使われていない」などのユーザビリティではない部分に関しては、ユーザーとやりとりをしながらすぐに改善してとりあえずあてる、ということをやっています。

やりとりをしながら本当の課題を探り当てていくことが大切なので、一つ一つをクイックにやるようにしています。

Q. クイックに課題を解決してサービスをリリースしていくという形でやっていくと、プロダクト的な負債が発生しませんか?

ユビー松村さん

負債自体はどうしても発生してしまいます。

ただ、負債が何かのボトルネックになっていることが分かった時に解決する必要が出てきますが、基本的に分からないのはユーザー課題です。

分からないことを先に解決していくことの方が重要だと思っているので、ユーザー課題の解決を先行するようにしています。

Q. MVP、ミニマムケース時点でサービスを出す場合、CMなどは出さないと思うのですがどのようにしてユーザーを獲得していますか?

ユビー松村さん

全くユーザーがいない場合と、潜在的なユーザーがいる場合の2パターンがあると思っています。

後者の方が多いのでその場合で説明すると、何らかユビーのプロダクトを使ってもらっている方はこちらで把握できているので、その方たちに先行ユーザーになってもらえないか個別にご説明しにいくことが多いです。

最初にお付き合いいただけるユーザーの皆さんはメリット・デメリットだけではなく、自分の意見を反映したかったり、プロダクト開発に対する好奇心を持っていたりするので、個別にご協力いただけるか説明するのが良いかなと思っています。

ラクスル茶谷さん

ラクスルの場合も大きく2パターンあり、サービス立ち上げの場合とはいえ、ターゲットとなるお客様は既存でラクスルで訪問いただいているお客様がまずはターゲットになるので、まずはそこからゼロ予算でアプローチをかけていくことが考えられるかなと思います。

他には既存の顧客アセットを使えることが多いので、そこから最低限のPMFを作っていき、外に広げていくというアプローチをとることもあります。

その方法が使えない場合だとマーケティング予算を獲得し、予算内でマーケティングしていくことが考えられます。

終わりに

このイベントでは「0→1開発の成功法」というところに焦点を当て、事業開発の要点や現場での動き方について自身の体験を交えながら語っていただきました。

プロダクトを開発する上で直面した壁や、その乗り越え方についても学ぶことができる貴重なセッションとなりました。

両社のサービス内容についてより興味を持った方は、是非公式HPからより詳しい内容をご覧ください!

https://corp.raksul.com/
https://ubie.life/

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